コレラ

執筆者:Larry M. Bush, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;
Maria T. Vazquez-Pertejo, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center
Reviewed ByBrenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2024年 6月 | 修正済み 2025年 4月
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コレラはグラム陰性菌のコレラ菌(Vibrio cholerae)を原因とする深刻な腸の感染症です。この感染症は激しい下痢を引き起こし、治療をしない場合は死に至ることがあります。

  • 汚染された食品(貝類が多い)や水を摂取することによって感染します。

  • 衛生状態が適切でない地域を除いて、コレラが起こることはまれです。

  • 水様性下痢と嘔吐を起こしますが、通常発熱は起こりません。

  • 便のサンプルを検査して細菌を特定し、診断を確定します。

  • 失われた水分を補充し、抗菌薬を投与するのがこの感染症には効果的です。

細菌の概要も参照のこと。)

ビブリオ属(Vibrio)の細菌には、下痢を引き起こす種類がいくつかあります(表を参照のこと)。なかでも最も重篤な病気であるコレラは、コレラ菌(Vibrio cholerae)のみが引き起こします。

コレラ菌(Vibrio cholerae)感染症は、感染者の便で汚染された水、貝、その他の食品を摂取することで感染します。いったん感染が起こると、細菌を含む便が排泄されます。このために、感染は急速に拡がり、特に排泄物が処理されない地域では顕著です。

コレラはかつては世界各地で広く蔓延していましたが、現在ではアジア、中東、アフリカ、および中南米の一部で最も多く発生しています。ヨーロッパ、日本、オーストラリアでも小規模な流行が過去に起こっています。米国では、メキシコ湾沿岸地域でコレラが発生することがあります。

コレラの大規模な流行は、貧困があり、清潔な飲料水や人の排出物の衛生的処理施設がない場所で発生し続けています。2010年の地震後に、ハイチで深刻なコレラの流行が発生し、2017年まで継続しました。この流行によって820,000人以上がコレラを発症し、10,000人近くが死亡しました。イエメンでの流行は2016年に始まり、現在も継続しています。この流行は、さらに壊滅的な影響をもたらしました。イエメンでは250万人以上が病気になり、4,000人近くが死亡しています。これは、現代史において最も大きく、最も急速に拡大しているコレラの流行であると考えられており、2019年のピーク時には、世界のコレラ症例の90%以上を占めています。ハイチでも、コレラ流行の終息が宣言されてから3年後の2022年末に、新たな集団発生がみられました。これはまだ終息していません。

コレラの流行は2021年以降世界的に増加しており、報告された症例数は、2021年から2022年では2倍に急増しています。2022年には、アフリカやアジアの7ヵ国のそれぞれ国で10,000例を超える流行が報告されています。

流行地域(発症者が比較的一貫して発生している地域)では、通常は戦争や暴動により公的な衛生サービスが機能しなくなった際に集団発生が起こります。感染は温暖な時期に最も多くなり、特に幼児や低栄養の小児でよくみられます。一方で新たな流行地域では、季節を問わず集団発生が起こり、どの年齢でも等しく感染します。

多数の細菌が取り込まれなければ、感染症は発生しません。胃酸で死滅しないほど大量に細菌を取り込むと、そのうちの一部が小腸に達して増殖を開始し、毒素を作ります。毒素の作用により、小腸から大量の塩分と水が分泌されます。その液体は水様性の下痢として体から失われます。こうして水分と塩分が失われる結果として死に至ります。細菌は小腸にとどまり、他の組織に侵入することはありません。この細菌は小腸にとどまり、他の組織には侵入しません。

胃酸には殺菌効果があるため、胃酸が少ない人はコレラに罹患する可能性が高くなります。リスクが高い人には以下のような人が該当します。

  • 幼児

  • 高齢者

  • プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾールなど)やヒスタミンH2受容体拮抗薬(ファモチジンなど)の作用で胃酸が減少している人

血液型がO型の人も感染のリスクが高くなります。

コレラの頻発地域に住む人には、徐々に免疫ができてきます。

知っていますか?

  • 治療しなければ、コレラ患者の50%以上が死亡します。

コレラの症状

ほとんどの感染者では、症状がまったく出ません。

症状はコレラに接触してから1~3日後に現れ、通常は急な無痛の水様性下痢と嘔吐が突然起こります。通常、発熱はありません。

軽度から重度の下痢と嘔吐がみられます。成人の重症感染者では、下痢によって1時間に約1リットル以上の水分と塩分が失われます。多量の便は水様性であり、米のとぎ汁様便と呼ばれます。数時間以内に脱水がひどくなり、激しい口渇、筋けいれん、脱力の症状が現れます。尿量は非常に少なくなります。眼がくぼみ、指の皮膚がシワシワになります。下痢を治療せず放置すると、水分と塩分の喪失によって、腎不全ショック状態昏睡が生じ、死に至ることもあります。

治療を受けた患者では、コレラの症状は通常3~6日で治まります。

ほとんどの場合、2週間で細菌は完全になくなります。まれに細菌が死滅しないこともありますが、この場合でも症状はみられません。このような状態の人はキャリア(保菌者)と呼ばれます。

コレラの診断

  • 便サンプルの培養検査

医師は便サンプル、もしくは直腸から綿棒でサンプルを採取します。サンプルは検査室に送られ、サンプル中のコレラ菌を増殖させる検査(培養検査)が行われます。サンプル中にコレラ菌(Vibrio cholerae)が特定されれば、診断を確定します。より迅速に細菌を検出するために、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法という方法を用いて細菌の遺伝物質(DNA)の量を増加させることもあります。

脱水状態と腎機能を調べるために血液と尿の検査が行われます。

コレラの治療

  • 塩分を含む輸液

  • 抗菌薬

失われた水分と塩分の補給

失われた水分と塩分の急速補充が救命につながります。たいていの患者は、経口での水分補給で効果的に治療できます。この輸液は失われた体液を補給する目的に合わせて調製されています。

重度の脱水状態で口から水分をとれない人には、食塩水を静脈から投与します。

集団感染で点滴療法が十分に施せない場合は、経口、もしくは必要であれば鼻から胃へ管を入れて食塩水を与えます。十分に水分が補充されて症状が緩和した後も、下痢や嘔吐で失われた水分を回復するために、食塩水を十分に摂取する必要があります。

また、水を好きなだけ飲むことも勧められます。嘔吐が止まり、食欲が戻ったら、固形物を食べてもかまいません。

抗菌薬

重度の下痢の症状を緩和し、症状を早く終わらせるために、通常は抗菌薬を投与します。また、抗菌薬によってコレラの流行中にその感染拡大をわずかながら抑えることもできます。

抗菌薬のドキシサイクリンは、小児や妊婦を含むすべての人に投与されます。他にも、アジスロマイシンやシプロフロキサシンなどの抗菌薬が使用されることがあります。これらの抗菌薬はそれぞれ経口で服用します。医師は、その地域でコレラを引き起こしている細菌に対して効果があることが判明している抗菌薬を選択します。

医療などの資源が少ない地域の小児には、亜鉛のサプリメントが重症度の軽減や症状の持続期間の短縮に役立つ可能性があります。

コレラの予防

コレラの予防には以下の対策が欠かせません。

  • 飲料水の浄化

  • 排泄物の適切な処理

コレラの発生地で行えるその他の予防策としては、以下のものがあります。

  • 沸騰させた水や塩素処理された水を使用する

  • 生野菜や加熱調理が不十分な貝類を摂取しない

貝や甲殻類には、ビブリオ属(Vibrio)の別の型の細菌が生息していることもあります。

ワクチン

米国では、コレラの発生地域に旅行する2~64歳の人を対象として、コレラワクチン(Vaxchora)の接種が受けられるようになっています。接種は1回の服用で済みます。ただし、このワクチンの効果が3~6カ月以上続くかどうかは分かっていません。

米国では使用できませんが、ほかにも3種類のコレラワクチンがあります(Dukoral、ShanChol、Euvichol)。これらのワクチンは、60~85%の予防効果が2~3年間続きます。いずれのワクチンも経口で2回投与されます。コレラにかかるリスクが引き続きある人には、2年後に追加接種を受けることが推奨されます。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. 米国疾病予防管理センター(CDC):コレラ:集団発生や危険因子を含めたコレラに関する情報を提供している

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