住血吸虫症

(ビルハルツ症)

執筆者:Chelsea Marie, PhD, University of Virginia;
William A. Petri, Jr, MD, PhD, University of Virginia School of Medicine
Reviewed ByChristina A. Muzny, MD, MSPH, Division of Infectious Diseases, University of Alabama at Birmingham
レビュー/改訂 2023年 9月 | 修正済み 2024年 1月
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やさしくわかる病気事典

住血吸虫症は、住血吸虫と呼ばれる特定の扁形動物(吸虫)によって引き起こされる感染症です。

  • この吸虫に汚染された淡水で泳いだり、入浴や水浴びをしたりすると、住血吸虫症に感染します。

  • 症状としてはかゆみを伴う発疹(セルカリア皮膚炎)が現れ、その数週間後に発熱、悪寒、筋肉痛、疲労感、吐き気、腹痛、そして感染した臓器に応じた各症状が現れます。

  • 便や尿のサンプル中の虫卵を特定することで、住血吸虫症の診断が確定します。

  • この感染症はプラジカンテルで治療します。

吸虫は寄生性の扁形(平たい形)動物です。吸虫には多くの種があり、それぞれの種は、異なる体の部位に感染する傾向があります。住血吸虫症は、最も一般的な吸虫感染症です。南米、アフリカ、アジアの亜熱帯地方で2億人以上が住血吸虫症にかかっています。(寄生虫感染症の概要も参照のこと。)

人の体内で成虫に発育し、住血吸虫症症例の大半の原因となっているのは、以下の5種の住血吸虫です。

  • ビルハルツ住血吸虫は尿管(膀胱を含む)に感染します。この種はアフリカ大陸に広く分布し、中東、トルコ、およびインドの一部でもみられます。

  • マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、メコン住血吸虫(Schistosoma mekongi)、インターカラーツム住血吸虫(Schistosoma intercalatum)は腸と肝臓に感染します。マンソン住血吸虫はアフリカ全土でみられ、これは西半球に存在する唯一の住血吸虫です(南米の一部とカリブ海の島々にも生息します)。アジアと東南アジアでは、日本住血吸虫とメコン住血吸虫が生息しています。インターカラーツム住血吸虫は中央アフリカと西アフリカで発生します

かつて住血吸虫症が流行していたカナダや米国(プエルトリコを含む)に居住する人々では、これら5種の住血吸虫による住血吸虫症は発生しません。

住血吸虫症は、自由に泳げる段階にある住血吸虫に汚染された淡水で泳いだり、水中を歩行したり、入浴や水浴びをしたりすると感染します。

感染した人が便や尿中に住血吸虫の虫卵を排出します。水中で幼虫(ミラシジウム)が放出されると、この幼虫は水中に生息する特定の種類の巻貝に侵入し、増殖してセルカリアと呼ばれる形態に成熟します。セルカリアは放出されて水中を自由に泳ぐようになります。セルカリアが人の皮膚に触れると中に潜り込み、血流に乗って肝臓に到達し、そこで成虫へと成熟します。この成虫は血流に戻り、最終的な住処である膀胱か腸(種に応じます)の小静脈に移動し、そこで平均3年~10年生息し続けます。成虫は腸や膀胱の壁に多数の虫卵を産みつけます。虫卵は周辺の組織に損傷を与えて炎症を引き起こし、これによって潰瘍、出血、組織の瘢痕化が起こります。一部の虫卵が便や尿とともに排出されます。感染者の尿や便が淡水に入ると、これらの虫卵はふ化し、未成熟な幼虫が放出されます。この幼虫が巻貝に侵入することで再びサイクルが始まります。

住血吸虫のライフサイクル

  1. 1. 人では、住血吸虫の虫卵は便や尿中に排出され、水中に放出されます。

  2. 2. 水中では、虫卵がふ化して未成熟な幼虫(ミラシジウムと呼ばれます)が放出されます。

  3. 3. ミラシジウムは泳ぎ回り、やがて巻貝の体内に侵入します。

  4. 4~5. 巻貝の体内で、ミラシジウムはスポロシストへと成長し、その後、分岐した尾があり、水中で泳ぐことができる形態(セルカリア)へと成長します。セルカリアは巻貝から水中に放出され、水に入ってきた人間の皮膚に侵入します。

  5. 6. 皮膚に侵入すると、セルカリアは尾部を失い、住血吸虫となります。その後、住血吸虫は肝臓へと移動し、そこで成虫になります。

  6. 7. オスとメスの成虫はペアになり、腸または膀胱(種に応じます)の静脈へと移動します。これらの成虫はそこに留まり、メスは産卵を始めます。

マンソン住血吸虫日本住血吸虫は一般的に腸の小静脈に住み着きます。虫卵の一部が血流に乗って肝臓へと運ばれます。これによって肝臓に炎症が起こり、腸管から肝臓へ血液を送る静脈である門脈に瘢痕が生じて血圧が上がります。門脈圧が上がる(門脈圧亢進症)と、脾臓が腫大し、食道の静脈から出血が起こります。

ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma hematobium)の虫卵は通常、膀胱に寄生し、ときとして潰瘍、血尿、瘢痕化を引き起こします。ビルハルツ住血吸虫による感染症が慢性化すると、膀胱がんの危険性が高まります

すべての住血吸虫症は、上記以外の臓器(肺、脊髄、脳など)を侵すこともあります。肺に到達した虫卵は炎症と肺動脈圧の上昇を引き起こします(肺高血圧症)。その結果、心不全の一種である肺性心を発症することがあります。

成虫の住血吸虫の生存期間は平均で3~10年ですが、場合によってはさらに長くなることもあります。メスの長さは約1/4~3/4インチになります。オスはメスよりもやや小さくなります。

遊泳中のかゆみ(水泳性痒疹)

特定の種の住血吸虫は、人よりも鳥や哺乳類に感染します。しかし、これらの種のセルカリアが人の皮膚に侵入することがあります。これらの住血吸虫は体内に常在していないため、皮膚から他の臓器に移動できず、成虫になることはありません。そのため、皮膚だけに感染し、強いかゆみ(水泳性痒疹と呼ばれることもあります)を引き起こします。住血吸虫症を引き起こす5種とは異なり、これらの住血吸虫種の一部は米国とカナダにも生息しています

住血吸虫症の症状

住血吸虫症に感染した人の大半では症状がみられませんが、住血吸虫が最初に皮膚から侵入する際に、かゆみを伴う発疹(水泳性痒疹)が生じることがあります。

2~4週間(最長で12週間)後に(成虫になった住血吸虫が産卵をはじめる頃)、発疹、発熱、悪寒、せき、筋肉痛、疲労感、漠然とした不快感(倦怠感)、吐き気、腹痛を伴う急性の住血吸虫症が現れることがあります。リンパ節が一時的に腫大し、また元に戻ります。こうした症状群は片山熱と呼ばれます。

感染が長期間続くと(慢性住血吸虫症と呼ばれます)、虫卵に対する炎症反応が起こり、他の症状や瘢痕化を引き起こします。症状は侵される臓器に応じて異なります。

  • 腸の血管が慢性的に感染している場合:腹部の不快感、痛み、貧血を引き起こすことがある出血(便中に混じる)

  • 肝臓が侵され、門脈圧が高い場合(門脈圧亢進症):肝臓や脾臓が腫れて肥大する

  • 膀胱が慢性的に感染している場合:痛みを伴う頻繁な排尿、血尿、そして膀胱がんの危険性の増大

  • 尿路が慢性的に感染している場合:炎症と、その結果起こる瘢痕化によって腎臓から膀胱につながる尿管に閉塞が起こり、ときに尿が逆流して腎臓を損傷する

  • 脳または脊髄が慢性的に感染している場合(まれ):けいれん発作、筋力低下、または麻痺

  • 肺が慢性的に感染している場合:肺性心と呼ばれる心不全の一種による肺動脈の血圧上昇(肺高血圧症)、息切れ、ふらつき、胸痛

  • 女性で性器に感染した場合:外陰部、腟、子宮頸部、卵管に感染する可能性があり、性交や骨盤(婦人科)検査時の膣からの出血、性交時の痛み、不妊症異所性妊娠流産、HIVに感染するリスクの増加(ウイルスに曝露した場合)につながる可能性があります。

  • 男性で性器に感染した場合:精巣上体、精巣、精索、または前立腺に感染することがあり、骨盤痛、性交痛、または射精痛、精液中の血液(血精液症)、生殖器の異常腫脹、不妊症につながる可能性があります。

住血吸虫症の診断

  • 便、尿、ときに腸や膀胱の組織のサンプルの検査

  • ときに血液検査

住血吸虫症は、住血吸虫症の流行地域に旅行したり、その地域から移住してきた、または居住している人が典型的な症状を報告し、淡水で泳いだり水中歩行していた場合に疑われます。

便や尿のサンプルを検査して虫卵の有無を調べることで、住血吸虫症の診断を確定することができます。通常、複数のサンプルが必要になります。便や尿には虫卵が認められないが、症状や状況から住血吸虫症が示唆される場合は、腸や膀胱から組織を採取し、顕微鏡で虫卵の有無を調べることがあります。感染の初期、すなわち寄生虫が皮膚を貫通した直後、または急性住血吸虫症(片山熱)の間は、便や尿から虫卵を発見することはできません。

マンソン住血吸虫や他の種の住血吸虫に感染しているかどうかを調べるために血液検査を行うこともありますが、この検査では、感染の重症度、感染期間、生きた成虫の有無は示されません。流行地域に居住していない人では、住血吸虫症が発生する地域で最後に淡水に曝露した時から6~8週間後に血液検査を行う必要があります。片山熱では、血液中の白血球の一種である好酸球の数が多くなります。

住血吸虫症と診断された後は、超音波検査を頻繁に行って尿路や肝臓の住血吸虫症の重症度を評価します。あるいは、CT検査MRI検査を行うこともあります。

住血吸虫症の治療

  • プラジカンテル(抗寄生虫薬)

住血吸虫症の治療では、感染の原因となっている住血吸虫の種に応じて、プラジカンテルを1日で2~3回経口で服用します。最初の便や尿検査で生きた虫卵が発見されている場合は、1~2カ月後にもう一度サンプルを調べて、治療が成功したかどうかを調べることがあります。生きた虫卵がなおも存在する場合は、プラジカンテルによる治療を繰り返します。

プラジカンテルは成虫の住血吸虫を効果的に駆除しますが、感染の初期に存在する未熟な形態の幼虫は殺傷できません。したがって、旅行者の場合では、プラジカンテルによる治療は最後にこの寄生虫に曝露してから6~8週間遅れることになります。これは、未熟な形態の幼虫が成虫化するのを待つために必要な期間です。

急性住血吸虫症(片山熱)の症状が重度の場合は、コルチコステロイドが役立ちます。急性住血吸虫症の症状が消失した後(通常は約5日かかる)、プラジカンテルを服用して成体の住血吸虫を死滅させ、4~6週間後に残りの未熟な形態の住血吸虫が成体になってから服用を繰り返します。

水泳性痒疹を発症した人は、住血吸虫を死滅させるために薬を服用する必要はありません。強いかゆみを和らげるために冷湿布、重曹、かゆみ止めローションやコルチコステロイドのクリームまたは軟膏が使用されることがあります。

住血吸虫症の予防

住血吸虫症の最善の予防法は、以下のとおりです。

  • 住血吸虫に汚染されていることが知られている地域での水泳、入浴や水浴び、水中歩行を避ける

  • 排尿や排便には仮設トイレや便器を使用する

  • 住血吸虫に汚染されていることが知られている淡水中に、巻貝を駆除する化学物質(軟体動物駆除剤)を使用する

入浴に使用する淡水は1分間以上煮沸し、入浴前に冷却するべきです。ただし、保管タンクに1~2日間保管された水は、沸騰せずとも安全なはずです。

汚染された可能性のある水に誤って曝された人(例えば、川に落ちるなど)は、皮膚に侵入する前に寄生虫を取り除くために、タオルで激しく体を拭うべきです。

住血吸虫が生息する淡水中に軟体動物駆除剤を使用すると、住血吸虫症の予防に効果的ですが、実施は困難であり、かつ費用がかかり、環境上の問題が生じることもあります。流行地域で住血吸虫症をコントロールするには、地域または学校単位でのプラジカンテル(抗寄生虫薬)による集団治療と教育プログラムが用いられています。

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