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染色体異常症と遺伝子疾患の概要

執筆者:

Nina N. Powell-Hamilton

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 11月
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染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。

人間の正常な細胞は、精子と卵子を除いて、いずれも23対、計46本の染色体をもっています。精子と卵子は、各ペアにつき1本の染色体しかもたないため、全体で23本の染色体をもっています。それぞれの染色体には数百から数千個の遺伝子が含まれています。

DNAの構造

DNA(デオキシリボ核酸)は細胞の遺伝物質で、細胞核内の染色体とミトコンドリアにあります。

特定の細胞(例えば、精子や卵子、赤血球)を除き、細胞核には23対の染色体が格納されています。1本の染色体には多くの遺伝子が含まれています。遺伝子とは、DNAのうち、タンパク質をつくるためのコードが含まれている部分のことです。

DNA分子は長いコイル状の二重らせんで、らせん階段に似ています。DNAには、糖(デオキシリボース)とリン酸からできた2本の鎖(ストランド)があり、4種類の塩基が対になって、階段のステップのように鎖の間をつないでいます。ステップは、アデニンとチミンの対と、グアニンとシトシンの対で形成されます。各塩基対は水素結合で結合しています。遺伝子は塩基の配列で構成されます。3つの塩基配列を1組として1つのアミノ酸(アミノ酸はタンパク質の構成成分)をコードする部分と、その他の情報を含む部分があります。

DNAの構造

染色体異常

  • 染色体の数

  • 染色体の構造

比較的大きな異常は、染色体分析や核型分析と呼ばれる検査の際に顕微鏡で観察することができます。比較的小さな染色体異常は、染色体をスキャンして過剰部分や欠失部分を探し出す専用の遺伝学的検査を用いることで、検出が可能です。そのような検査としては、染色体マイクロアレイ解析や蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)などがあります。

数的異常とは、染色体が1本以上余分にある場合(余分な染色体が1本の場合はトリソミー、2本の場合はテトラソミーといいます)と、1本欠けている場合(モノソミー)です。トリソミーは23対ある染色体のいずれにも発生しますが、最も多いのは21トリソミー( ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は、余分な21番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 ダウン症候群は、21番染色体が余分に複製されることで発生します。 ダウン症候群の小児では、発育の遅れ、精神発達の遅れ、特異的な頭部と顔貌、しばしば低身長がみられます。... さらに読む ダウン症候群(21トリソミー) )、 13トリソミー 13トリソミー 13トリソミーは、余分な13番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、重度の知的障害と様々な身体的異常がみられます。 13トリソミーは、13番染色体が余分に複製されることで発生します。 この症候群の乳児は、典型的には体格が小さく、しばしば脳、眼、顔面、心臓に重大な異常がみられます。... さらに読む 13トリソミー 18トリソミー 18トリソミー 18トリソミーは、余分な18番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 18トリソミーは、18番染色体が余分に複製されることで発生します。 この症候群の乳児は、典型的には体格が小さく、多くの身体的異常と内臓の機能障害がみられます。... さらに読む 18トリソミー の3つです。これらの異常は、核型分析の際に顕微鏡で観察することができます。

妊娠する女性の年齢が高くなるほど、胎児に染色体の過剰や欠失が発生する可能性が高くなります( 染色体異常をもった子どもが生まれるリスク* 染色体異常をもった子どもが生まれるリスク* 染色体異常をもった子どもが生まれるリスク* )。これは男性には当てはまりません。 男性は年齢が高くなっても、染色体異常をもつ子どもができる可能性は、ごくわずかに上がるだけです。

染色体異常の種類によっては、生まれる前の胚や胎児の段階で死に至ります。また、 知的障害 知的能力障害 知的能力障害(一般に知的障害とも呼ばれます)とは、出生時や乳児期の初期から知能の働きが明らかに標準以下であり、正常な日常生活動作を行う能力が限られている状態です。 知的能力障害は、遺伝的な場合もあれば、脳の発達に影響を与える病気の結果として起こる場合もあります。 知的能力障害がある小児のほとんどでは、就学前まで目立った症状が現れません。... さらに読む 低身長 小児の低身長 低身長とは、身長が年齢相当の身長(年齢と身長の標準に基づきます)の3パーセンタイル未満の場合と定義されます。 低身長には、成長ホルモン欠損症、遺伝性の病気、慢性の病気などいくつかの原因があります。 症状は小児の年齢と原因によって異なりますが、典型的には全体的に発育が不良で、低身長を示します。... さらに読む 、けいれん発作、心臓の病気、 口蓋裂 口唇裂と口蓋裂 頭蓋と顔面で最もよくみられる先天異常は口唇裂と口蓋裂(こうがいれつ)で、新生児約700人に1人の割合でみられます。 口唇裂とは通常、鼻のすぐ下で上唇が分離している状態です。 口蓋裂とは、口の中の天井(口蓋)に裂け目があり、鼻への異常な通路ができるものです。 口唇裂と口蓋裂はしばしば同時に起こります。... さらに読む 口唇裂と口蓋裂 などを引き起こす異常もあります。

遺伝子異常

特定の遺伝子に小さな変化( 突然変異 突然変異 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は主に細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む 突然変異 )が起こることがあります。それらの変化は染色体の構造に影響を及ぼすものではないため、核型分析やその他の染色体検査で観察することはできません。特別な遺伝子検査が必要です。同じ遺伝子に生じる突然変異でも、何の問題も引き起こさない変異もあれば、わずかな問題やごく軽度の問題を引き起こす変異、さらには 鎌状赤血球貧血 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症は、鎌状(三日月形)の赤血球と、異常な赤血球の過剰破壊による慢性貧血を特徴とする、遺伝性のヘモグロビン(酸素を運搬する赤血球内のタンパク)の遺伝子異常です。 必ず貧血がみられ、ときとして黄疸がみられます。 貧血、発熱、息切れなどが悪化し、長管骨、腹部、胸部などに痛みを伴うと、鎌状赤血球症の疼痛発作(症状が急速に悪化する危険な状... さらに読む 鎌状赤血球症 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症(CF) 嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)は、特定の分泌腺が異常な分泌物を産生し、それによって組織や器官、特に肺や消化管が損傷を受ける遺伝性疾患です。 嚢胞性線維症は、遺伝子の突然変異を親から引き継ぐことで発生し、粘り気の強い濃厚な分泌物が肺やその他の臓器の働きを妨げます。 典型的な症状としては、新生児にみられる嘔吐や腹部膨満、軟便、体重増... さらに読む 筋ジストロフィー 筋ジストロフィーと関連疾患に関する序 筋ジストロフィーとは、正常な筋肉の構造と機能のために必要な遺伝子の1つ以上に異常があるために、様々な重症度の筋力低下を引き起こす遺伝性筋疾患の総称です。顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは、最も多くみられる病型の筋ジストロフィーです。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、2番目に多くみられる最も重症の病型です。ベッカー型筋ジストロフィーは、デュシ... さらに読む など、重篤な病気を引き起こす変異もあります。小児の病気の原因となる特定の遺伝子が研究者によって次々と発見されています。

大半の突然変異がどのようにして起こるのかは依然として不明です。ほとんどの突然変異は自然に発生すると考えられています。環境中の物質の中には、遺伝子に傷をつけて突然変異を引き起こす可能性のあるものがあります。それらの物質のことを変異原といいます。放射線、紫外線、特定の薬物や化学物質などの変異原は、一部のがんや 先天異常 先天異常の概要 先天異常あるいは先天奇形は、出生前の段階で生じる身体的な異常のことをいいます。それらの異常はたいてい出生時、あるいは生後1年以内に明らかになります。 ほとんどの先天異常の原因は不明ですが、感染性要因、遺伝的要因とある種の環境要因は先天異常発生のリスクを高くします。 出生前の段階では、母親の危険因子と超音波検査の結果のほか、ときに血液検査、... さらに読む の原因となります。

精子や卵子の遺伝子に起きた突然変異は、親から子に遺伝する可能性があります。その他の細胞の遺伝子に起きた突然変異は、子どもに遺伝することのない(精子や卵子には影響を及ぼさないため)病気を引き起こす可能性があります。異常な遺伝子のコピーが2つそろうと、 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症(CF) 嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)は、特定の分泌腺が異常な分泌物を産生し、それによって組織や器官、特に肺や消化管が損傷を受ける遺伝性疾患です。 嚢胞性線維症は、遺伝子の突然変異を親から引き継ぐことで発生し、粘り気の強い濃厚な分泌物が肺やその他の臓器の働きを妨げます。 典型的な症状としては、新生児にみられる嘔吐や腹部膨満、軟便、体重増... さらに読む テイ-サックス病 テイ-サックス病およびサンドホフ病 テイ-サックス病とサンドホフ病は、スフィンゴリピドーシスと呼ばれる一種のライソゾーム病であり、ガングリオシドが脳の組織内に蓄積することで起こります。これらの病気の患者は、若年で死亡します。これらの病気を引き起こす欠陥のある遺伝子が親から子どもに受け継がれることで発生します。 テイ-サックス病とサンドホフ病は、ガングリオシドを分解するのに必... さらに読む などの重篤な病気が発生することがあります。

染色体異常と遺伝子異常の検査

人の染色体と遺伝子は血液サンプルを用いて分析できます。 また、 羊水穿刺 羊水穿刺 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む 絨毛採取 絨毛採取 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む で得た細胞を用いて、胎児の特定の染色体や遺伝子の異常を検出することもできます。胎児に異常がみられた場合は、具体的な先天異常を検出するために、さらなる検査を行うことがあります。最近では、妊婦の血液サンプルを分析して、胎児に特定の遺伝性疾患がないかを判定するスクリーニング検査が開発されています。この検査は、妊婦の血液中にはごく少量ながら胎児由来のDNAが含まれているという事実に基づいています。この検査は非侵襲的出生前検査(NIPT)と呼ばれています。非侵襲的出生前検査を行うことで、21トリソミー( ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は、余分な21番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 ダウン症候群は、21番染色体が余分に複製されることで発生します。 ダウン症候群の小児では、発育の遅れ、精神発達の遅れ、特異的な頭部と顔貌、しばしば低身長がみられます。... さらに読む ダウン症候群(21トリソミー) )、 13トリソミー 13トリソミー 13トリソミーは、余分な13番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、重度の知的障害と様々な身体的異常がみられます。 13トリソミーは、13番染色体が余分に複製されることで発生します。 この症候群の乳児は、典型的には体格が小さく、しばしば脳、眼、顔面、心臓に重大な異常がみられます。... さらに読む 13トリソミー 18トリソミー 18トリソミー 18トリソミーは、余分な18番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 18トリソミーは、18番染色体が余分に複製されることで発生します。 この症候群の乳児は、典型的には体格が小さく、多くの身体的異常と内臓の機能障害がみられます。... さらに読む 18トリソミー や、その他特定の染色体異常症のリスクが高いことを特定することができますが、診断には至りません。医師は通常、何らかの遺伝子異常のリスクが高いことが判明すれば、さらなる検査を推奨します。

予防

染色体異常や遺伝子異常は是正することができませんが、一部の先天異常はときに予防できる場合があります。例えば、 神経管閉鎖不全 神経管閉鎖不全と二分脊椎 神経管閉鎖不全は脳、脊椎、脊髄に生じる先天異常の一種です。 神経管閉鎖不全により、神経損傷、学習障害、麻痺、死亡が起こることがあります。 血液検査、羊水検査、超音波検査の結果に基づいて出生前から診断できます。 母親が妊娠前と第1トリメスター(訳注:日本の妊娠初期にほぼ相当)に葉酸を摂取することが、これらの異常の予防に役立つ可能性があります... さらに読む を予防するための葉酸の摂取や、両親が特定の遺伝子異常の キャリア キャリアスクリーニング スクリーニングではカップルの家族歴を評価し、必要に応じて血液や組織のサンプルを分析します。 遺伝子スクリーニングは、遺伝性の遺伝子疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを判断するために行う検査です。すべてのカップルが遺伝子スクリーニングを受けることができますが、特に推奨されるのは以下の場合です。... さらに読む かどうかを調べるスクリーニング検査などがあります。 体外受精 体外受精 生殖補助医療は、精子と卵子、あるいは胚を培養皿の中(体外)で操作して妊娠を達成することを目標とします。 (不妊症の概要も参照のこと。) 治療開始から4~6サイクルの月経周期が経過しても妊娠に至らない場合は、体外受精や配偶子卵管内移植(GIFT)などの方法を検討します。これらの方法は、35歳未満の女性の方が成功率が高くなります。米国での体外... さらに読む 体外受精 で得られた胚についても、母親の子宮に移す前に遺伝子異常の検査を行うことが可能です( 着床前遺伝子診断 着床前遺伝子診断 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む を参照)。

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