(新生児の一般的な問題の概要も参照のこと。)
正常な場合、出生前の胎児の肺につながる血管はきつく収縮しています。生まれる前は、胎児の肺ではなく母親の胎盤が二酸化炭素を排出して酸素を胎児に運ぶ役割をしているため、胎児の肺は大量の血流を必要としません。しかし、出生後すぐに、臍帯(さいたい)が切断されると新生児の肺は血液に酸素を送り込んで二酸化炭素を除去する役目を引き継がなくてはなりません。これを行うには、肺胞を満たしている液体の代わりに空気が入るだけでなく、肺に十分な血液が流れ込むように、肺に血液を送り込むための動脈が拡張することが必要です。
原因
症状
診断
母親が妊娠中に長期間多量のアスピリンやインドメタシンを服用していた場合、妊娠後期にSSRIを服用する必要があった場合、もしくはストレスの多い出産であった場合、または新生児に重い呼吸窮迫、酸素を投与しても持続するチアノーゼ、予想以上に低い酸素レベルの測定結果がある場合に、遷延性肺高血圧症が疑われます。
新生児遷延性肺高血圧症の診断を確認するために、医師は心エコー検査を行い、心臓を通る血液の流れを見ます。
胸部X線検査は、肺の基礎疾患がなければ完全に正常な場合もありますが、基礎疾患(横隔膜ヘルニアや胎便吸引症候群など)に起因する変化を示す場合もあります。
予後(経過の見通し)
治療
新生児遷延性肺高血圧症の治療では、新生児を酸素100%の環境下に置いて呼吸させる必要があります。症状が重い場合、人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による100%の酸素の供給が必要になることもあります。血液中の酸素レベルを上げると、肺につながる動脈が拡張しやすくなります。
新生児が吸う酸素の中にごく微量の一酸化窒素を加えることがあります。吸い込まれた一酸化窒素が、新生児の肺の動脈を開いて肺高血圧症を軽減します。この治療には数日を要することがあります。
まれですが、いずれの治療法でも効果が得られない場合、体外式膜型人工肺(ECMO)を使うことがあります。この機械には、血液に酸素を加えて二酸化炭素を除去する働きがあり、新生児の血液をこの機械を通して循環させ、その後新生児に戻します。この機械は、新生児の人工肺として働きます。新生児の体内に酸素を取り込む働きを機械がしてくれるため、その間に新生児の肺は休息することができ、血管がゆっくりと開きます。ECMOを使うことで、他の治療法が無効であった一部の新生児を、遷延性肺高血圧症が治るまで延命させ、その生命を救うことができます。
必要に応じて、輸液やその他の治療(感染症に対する抗菌薬など)が行われます。