胎便吸引症候群

完全なレビュー: 2025年 9月 執筆者:Arcangela Lattari Balest, MD, University of Pittsburgh, School of Medicine | 査読者Alicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
最終更新日: 2025年 10月
v814555_ja
プロフェッショナル版を見る
やさしくわかる病気事典

胎便吸引症候群とは、出生前に、無菌性の胎便を吸い込んだ新生児に呼吸困難(呼吸窮迫)がみられることをいいます。

  • 胎児はものを食べることはありませんが、その腸内には胎便と呼ばれる無菌物質が含まれています。

  • 胎児は出生前に羊水中に胎便を排泄することがあります。これは正常でもみられる現象ですが、酸素不足などのストレスに誘発されることもあります。

  • ストレスによって胎児は反射的にあえぐため、胎便を含む羊水を肺に吸い込んでしまうことがあります。

  • 胎便吸引症候群を起こした新生児は、皮膚や唇が青みがかっているか灰色になり、呼吸が速く、息苦しそうに見え、息を吐き出すときにうめき声を発します。

  • この病気は、出生時に羊水中に胎便が観察されるとともに、新生児の呼吸困難や胸部X線検査で異常所見がみられることに基づいて診断します。

  • この病気では、酸素投与が必要で、呼吸補助が必要になる場合もあります。

  • この症候群の大半の新生児は助かりますが、重症の場合は死亡する場合もあります。

新生児の一般的な問題の概要も参照のこと。)

胎便とは、胎児が生まれる前に胎児の腸でつくられる濃い緑色の、無菌性の便です。胎便は、新生児が出生してから授乳を開始する際に排泄されるのが普通ですが、ときには出生前または周産期に羊水中に排泄されることもあります。出生前、特に予定日の直前または直後にみられる胎便の排泄は、正常な場合もあります。しかし、胎便の排泄は、感染症や血液中の酸素レベルの低下などのストレスに反応して起こることもあります。正期産児または過期産児の分娩時に胎便の排泄がみられることは正常かもしれませんが、早産児の胎便は正常ではありません。早産児の胎便排泄は、ほとんどの場合、胎児が子宮にいる間に感染症を発症したことを意味します。

胎便吸引症候群は、ストレスを受けた胎児が羊水中に胎便を排出し、次に強制的にあえぎ、液体と胎便を肺に吸い込んだ(吸引した)ときに起こります。

出生後、吸いこまれた胎便は、肺の化学的刺激と炎症(肺臓炎)の原因になり、肺感染症のリスクが高くなります。

胎便は新生児の気道をふさぎ、肺をつぶれた状態にしてしまうこともあります。あるいは一部の気道が部分的にふさがれた場合、この部分より先の肺の一部に空気を届けることはできても、この空気を吐き出すことができないという状態になることがあります。このようにして、ふさがれた肺は過剰に膨らみます。肺の一部が過剰に膨らみ続けると、肺が破裂し虚脱することがあります。そうなると空気が肺の周囲の胸腔にたまります(気胸)。

胎便吸引症候群を起こした新生児は、新生児遷延性肺高血圧症を発症するリスクも高くなります。

胎便吸引症候群の症状

胎便吸引症候群を起こした新生児は、呼吸が速くなる、息を吸いこむ際に胸壁の下部がへこむ、息を吐く際にうめき声を出すなどの呼吸困難に陥ります。肺が過剰に膨張すると、胸壁が樽(たる)のように見えることもあります。

血液中の酸素レベルが低下すると、皮膚や唇は青みがかった色(チアノーゼと呼ばれる状態)になることがあります。皮膚の色の濃い新生児では、皮膚の色が青みがかったり、灰色を帯びたり、白くなったりし、これらの変化は、口、鼻、まぶたの内側を覆う粘膜でより簡単に確認できます。新生児の臍帯、爪床、または皮膚が胎便で変色し、緑黄色を呈することがあります。

この病気の新生児は血圧が低下することもあります。

胎便吸引症候群の診断

  • 羊水中の胎便

  • 呼吸が苦しい

  • 胸部X線検査

新生児に呼吸障害があり、生まれたときに羊水中および新生児の体表に胎便が認められる場合、医師は胎便吸引症候群を疑います。

胸部X線検査に基づいて診断を確定します。

特定の種類の細菌を見つけるために、血液中の培養検査が行われることがあります。

胎便吸引症候群の治療

  • ときに気道の吸引

  • 呼吸を補助する対策

  • ときにサーファクタントと抗菌薬

新生児の気道が胎便によってふさがれているようであれば、医師は胎便の吸引を試みます。

分娩後に呼吸困難に陥った新生児には、気管に挿管して人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)下に管理しなければならない場合があり、持続陽圧呼吸(CPAP)を行うこともあります。CPAPを用いると、新生児は、両鼻腔に入れたカニューレからわずかに加圧された空気(ときに酸素を増量したもの)を投与されながら、自分で呼吸することができます。新生児は必要に応じて新生児集中治療室(NICU)に入室させます。

人工呼吸器、CPAP、または酸素が必要な場合は、肺への損傷を避けるために可能な限り低い値に設定されます。人工呼吸器をつけた新生児には、サーファクタント(肺胞の内側を覆い、肺胞を開いたままにする物質)が投与され、気胸または新生児遷延性肺高血圧症などの重篤な合併症が起きていないかモニタリングを受けます。新生児の場合、人工呼吸器の使用や酸素投与はできるだけ早い時期に終了するのが安全です。

出生前の胎児に苦痛をもたらしたものが細菌感染症であると考えられる場合は、新生児に抗菌薬を静脈内投与することがあります。

胎便吸引症候群の予後(経過の見通し)

胎便吸引症候群を生き延びた小児は、喘息脳性麻痺、発達遅滞などの合併症を発症するリスクが高くなります。

しかし、まれではありますが、重症の場合、特に新生児遷延性肺高血圧症を発症した場合は死に至ることがあります。

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS