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成人の発熱

執筆者:

Allan R. Tunkel

, MD, PhD, Warren Alpert Medical School of Brown University

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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発熱とは、体温が上昇した状態で、口腔体温計で37.8℃または直腸体温計で38.2℃より高ければ、体温が高いとみなされます。「熱がある」という表現は、あいまいに使われることが多く、実際に体温を測っていなくても、熱っぽい、寒気がする、汗をよくかくなどの状態を指して用いられる場合もあります。

37℃前後が平熱とされますが、体温は1日を通じて変動します。早朝で最も低く、夕方に最も高くなって37.7℃前後まで上がることもあります。同様に発熱の場合も、一定の温度でとどまるわけではありません。毎日いったん高くなってから平熱に戻る、間欠熱(かんけつねつ)と呼ばれる状態や、体温は変動するけれど平熱には戻らない、弛張熱(しちょうねつ)と呼ばれる状態もあります。医師たちはもはや、特定の病気の診断において発熱時の体温の変動パターンをそれほど重要なものとは考えていません。

感染症の概要も参照のこと。)

発熱の影響

症状は主に、発熱そのものよりも、発熱の原因となっている病態によって生じます。

一般には、発熱は体に有害なのではないかと心配されがちですが、たいていの短期的な(急性の)病気で起こる体温上昇は通常38~40℃の範囲であり、健康な成人であれば十分に耐えられます。ただし、発熱によって心拍数と呼吸数が増加することがあるため、心臓や肺の病気がある成人では、中等度の発熱でも若干の危険性があります。また、発熱は認知症の人の精神状態を悪化させることもあります。

極度の体温上昇(一般に41℃を超えるもの)は体に害を及ぼすことがあります。ここまで体温が上がると、ほとんどの臓器が異常をきたし、最終的には機能不全に至ります。このような極度の体温上昇は、非常に重度の感染症(敗血症、マラリア、髄膜炎)により生じることもありますが、より一般的には熱射病や特定の薬剤が原因となって起こります。極度の体温上昇を引き起こしかねない薬剤には、特定の違法薬物(コカイン、アンフェタミン、フェンシクリジンなど)、麻酔薬、抗精神病薬などがあります。

原因

発熱を引き起こす物質を発熱物質(パイロジェン)と呼びます。発熱物質は体内、体外のどちらでも作られます。微生物や微生物が作る物質(毒素など)は、体外で作られる発熱物質の例です。通常、体内でできる発熱物質は単球やマクロファージ(どちらも白血球の一種)によって作られます。体外から入ってきた発熱物質は、体を刺激して体内の発熱物質の放出を促すか、体温を制御している脳の部位に直接作用することで発熱を引き起こします。

感染症だけが発熱の原因というわけではありません。発熱はほかにも、炎症や薬に対する反応、アレルギー反応、自己免疫疾患(体内で自分自身の組織を攻撃する異常な抗体が作られる病気)、見つかっていないがん(特に白血病やリンパ腫)などの結果として生じることもあります。

発熱は多くの病気によって引き起こされますが、そのような病気は以下のように大別されます。

  • 感染性(最も一般的)

  • 腫瘍性(がん)

  • 炎症性

発熱が4日以内に治まった成人では、感染が原因である可能性が非常に高いといえます。感染以外の原因がある場合は、より長く発熱が続く、あるいは再発する可能性が高くなります。様々ながんや炎症性疾患では、発熱が生じます。炎症性疾患には関節や結合組織、血管の病気が含まれ、例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、巨細胞性動脈炎などがあります。

薬も発熱の原因になります。

がんや炎症性疾患がある人に短期間の(急性の)発熱が単独でみられた場合は、高い確率で感染性の原因が存在しています。健康な人では、急性の発熱が慢性疾患の最初の徴候であることはあまりありません。

最も一般的な原因

感染症は、ほぼすべてが発熱の原因になります。ただし全体的には、次の原因がよくみられます。

  • 上気道と下気道の感染症

  • 消化管の感染症

  • 尿路感染症

  • 皮膚感染症

気道と消化管に起こる急性の感染症は、ほとんどがウイルス性です。

危険因子

特定の条件に該当する(危険因子がある)人は発熱を起こしやすくなります。具体的な要因としては以下のものがあります。

  • 健康状態

  • 年齢

  • 特定の職業

  • 特定の医療処置や薬の投与を受けている

  • 病原体への曝露(例えば、流行地への旅行や感染した人や昆虫との接触など)

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危険因子に基づく発熱の主な原因

危険因子

原因

なし(健康)

上気道または下気道の感染症

消化管の感染症

皮膚感染症

入院

静脈カテーテル感染症(静脈内に留置されたカテーテルに関連する感染症)

尿路感染症、尿道にカテーテルを入れている人で特に多い

肺炎、特に人工呼吸器を使用している人に多い

無気肺(気道の閉塞により肺の一部がつぶれた状態で、感染症ではない)

手術部位の感染または血液の貯留(血腫)

輸血反応

感染症が多発している地域(流行地域)への旅行

下痢を引き起こす病気

デング熱または チクングニアウイルス感染症(比較的まれ)

病気を引き起こす生物を運ぶ昆虫または動物(媒介生物と呼ばれる)との接触(右記は米国の場合)

野生動物:野兎病、狂犬病ハンタウイルス感染症

ノミ:ペスト

鳥:オウム病

コウモリ:狂犬病またはヒストプラズマ症

免疫系の機能低下(易感染状態)

細菌:肺炎球菌髄膜炎菌黄色ブドウ球菌緑膿菌、ノカルジア Nocardia抗酸菌による感染症

寄生虫:トキソプラズマ原虫糞線虫クリプトスポリジウム微胞子虫、シストイソスポーラ・ベリ Cystoisospora belli

熱産生量を増加させる作用のある薬

アンフェタミン

コカイン

フェンシクリジン(PCP)

メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA、通称エクスタシー)

抗精神病薬

麻酔薬

発熱の誘因になる薬物

ベータラクタム系抗菌薬(ペニシリンなど)

サルファ剤

フェニトイン

カルバマゼピン

プロカインアミド

キニジン

アムホテリシンB

インターフェロン(免疫系により作られる物質を基にした薬剤で、ウイルスの増殖を阻害する作用がある)

評価

通常は、簡単な病歴聴取、身体診察、ときには胸部X線検査や尿検査などの簡単な検査を行うことで、医師は感染の有無を判断することができます。しかし、発熱の原因がなかなか分からない場合もあります。

医師は急性の発熱を起こしている人を最初に診察するときに、次の2点を重視します。

  • 頭痛やせきなどの他の症状を把握する:これらの症状は考えられる原因の絞り込みに役立ちます。

  • 重篤な病気や慢性疾患がないか確認する:急性のウイルス感染症の多くは、明確な診断(何のウイルスが感染症を起こしているのか正確に判断すること)が困難です。重篤な病気や慢性疾患がある人では、検査を限定することで、高価なわりに実りがない多くの不要な検査を避けることができます。

警戒すべき徴候

急性の発熱がみられる人では、次のような特定の徴候や特徴に注意します。

  • 錯乱など、精神状態の変化

  • 頭痛や項部硬直

  • 皮膚の下で起きた出血(皮下出血)を反映する、皮膚の平らで小さな赤紫色の斑点(点状出血)

  • 低血圧

  • 心拍数や呼吸数の増加

  • 息切れ(呼吸困難)

  • 40℃を超える、または35℃を下回る体温

  • マラリアなどの重篤な感染症が多発(流行)している地域への最近の旅行歴

  • 免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬)の最近の使用

受診のタイミング

こうした警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。そのような人は一般的に直ちに検査を受けるべきで、しばしば入院が必要になります。

警戒すべき徴候がない人で、発熱が24~48時間続く場合は、医師に電話してください。その人の年齢や他の症状、すでに分かっている病気を考慮して、医師は診察を受けに来院するよう伝えたり、自宅での療養を勧めたりします。他の症状の有無にかかわらず、発熱が3~4日以上続く場合は、一般的には医師の診察を受けるのがよいでしょう。

医師が行うこと

医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、発熱の原因と必要になる検査を推測することができます。

医師は最初に、現在や過去の症状や病歴、服用中の薬、感染の可能性、最近の旅行歴などを尋ねます。発熱のパターンはあまり診断の参考になりませんが、例外的にマラリアでは、2日毎または3日毎に発熱を繰り返すという特徴がみられます。ただし、医師がマラリアの可能性を検討するのは、患者がマラリアの流行地域に旅行した場合だけです。

最近の旅行歴は、発熱の原因を割り出す手がかりになることがあります。感染症の中には特定の地方でしか発生しないものがあるからです。例えば、コクシジオイデス症(真菌感染症の1つ)は、ほぼ米国南西部でしかみられない病気です。

特定の物質や動物に最近触れたかどうかも重要です。例えば精肉工場の労働者は、一般の人より高い確率でブルセラ症(家畜との接触を介して広がる細菌感染症)にかかります。

痛みは発熱の原因を探る重要な手がかりの1つであるため、医師は耳、頭部、頸部、歯、のど、胸部、腹部、側腹部(わき腹)、直腸、筋肉、関節に痛みがないか尋ねます。

発熱の原因を特定するために役立つほかの症状には、鼻づまりや鼻水、せき、下痢、泌尿器症状(頻尿、尿意切迫、排尿時の痛み)などがあります。リンパ節の腫れや発疹があるかどうか(さらには、その外観、出現した場所、他の症状との時間的な関連性)という情報も、医師が原因を特定する際の参考になります。繰り返す発熱、寝汗、または体重の減少がみられる人は、結核や心内膜炎(心臓の内側を覆っている膜と通常は心臓弁に発生する感染症)といった慢性の感染症を患っていることがあります。

医師は次の点についても質問します。

  • 感染症の患者と接触したかどうか

  • 感染症にかかりやすくなる病気はないか:例えば、HIV感染症、糖尿病、がん、臓器移植、鎌状赤血球症、心臓弁膜症(特に人工弁を使用している場合)など

  • 感染症以外で発熱が起きやすい病気はないか:例えば、全身性エリテマトーデス、痛風、サルコイドーシス、甲状腺機能亢進症(甲状腺の活動が過剰になった状態)、がんなど

  • 感染症にかかりやすくなる薬剤を使用していないか:例えば、がんの化学療法薬、コルチコステロイド、その他の免疫系抑制薬など

  • 違法薬物の注射を行っていないか

身体診察では、まず発熱の確認を行います。体温の測定法としては、直腸温を測る方法が最も正確です。問診が終わったら、医師は患者の全身をくまなく診察し、感染源や病気の証拠を探します。

検査

検査が必要かどうかは、医師による身体診察の結果によって決まります。

急性の発熱がみられるものの、漠然とした全身症状(全身の不調や痛みなど)以外に異常がみつからない人は、治療を受けなくても自然に治るウイルス感染症を起こしていると考えられます。したがって、こうした人に検査は必要ありません。ただし、特定の病気を媒介する動物や昆虫(媒介生物)に接触した人(例えばマダニに咬まれた人)や、マラリアなど特定の病気が多く発生している地域を最近訪れた人は例外で、検査が必要です。

発熱以外は健康でも、診察で特定の病気を示唆する結果がみつかった場合は、検査が必要なこともあります。医師は診察の結果に基づいて必要な検査を選択します。例えば、頭痛と項部硬直がみられる人には、腰椎穿刺を行い、髄膜炎を起こしていないか調べます。せきをしていて肺うっ血が認められる人には、胸部X線検査を行い、肺炎の有無を調べます。

感染のリスクが高い人や重篤に見える人、そして高齢者は、たとえ特定の病気を疑わせる所見がなくても、しばしば検査が必要です。そうした患者に対してよく用いられる検査には、次のようなものがあります。

  • 血算(様々な白血球の数と割合などを測定)

  • 胸部X線検査

  • 尿検査

白血球数の増加は、通常は感染があることを意味します。様々な白血球の割合(白血球分画)をみると、さらに詳しい状況が分かります。例えば、好中球が増加している場合は、比較的最近の細菌感染症が疑われます。好酸球が増加している場合は、条虫や回虫といった寄生虫に感染している可能性があります。血液などの体液を検査に出して微生物の培養を行うこともあります。さらに、血液中の特定の微生物に対する抗体を調べる検査も用いられます。

不明熱

約38.3℃以上の熱が何週間も続き、詳しく検査を行っても原因が特定できない場合は、不明熱(FUO)と診断されることがあります。このような場合、原因はまれな慢性感染症であったり、あるいは感染症ではなく、結合組織疾患やがんなどの病気であることも考えられます。

通常は血液検査(血算、血液培養検査、肝機能検査など)および結合組織の病気がないかを調べる検査が行われます。他の検査として、胸部X線検査、尿検査、尿培養検査などが行われる場合もあります。

不快感がある部位を中心に、超音波検査、CT検査、またはMRI検査を行うことで、診断に役立つ情報が得られます。また、核医学検査といって、放射性物質でマーキングした白血球を静脈内に注入して、感染や炎症の部位を特定する検査方法もあります。

これらの検査で陰性と判定された場合は、肝臓、骨髄、または感染が疑われる他の部位から生検用の組織サンプルを採取する必要があるかもしれません。そのサンプルに対して、顕微鏡での観察、培養、そして分析が行われます。

治療

発熱は体を感染から守る上で有益な反応であり、また発熱自体は(41℃を超えなければ)危険なものではないことから、一律に治療すべきかどうかは議論の分かれるところです。ただし、高熱の患者では、一般に熱を下げることで具合はかなり良くなります。加えて、心臓や肺の病気がある人や認知症の人には危険な合併症のリスクも考えられるため、そうした人に発熱がみられる場合は治療が必要です。

体温を下げるための薬を解熱薬といいます。

最も効果的で広く使用されている解熱薬は、アセトアミノフェンと非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)で、NSAIDにはアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなどがあります。

一般的には以下のうちの1つが用いられます。

  • アセトアミノフェン650ミリグラムを6時間毎(ただし、1日に3000ミリグラムを超えないこと)

  • イブプロフェン200~400ミリグラムを6時間毎

かぜやインフルエンザの市販薬の多くはアセトアミノフェンを含んでいるため、アセトアミノフェンとこうした市販薬を同時に使用しないよう注意が必要です。

他の冷却手段(ぬるま湯を霧吹きでかけて冷やす、冷却ブランケットを使用するなど)は、体温が41℃以上になった場合にのみ必要になります。アルコールを染みこませたスポンジは、皮膚からアルコールが吸収されて有害な影響が生じる可能性があるため、使用しないようにします。

高齢者での重要事項:発熱

高齢者では、若い人と同じように体が反応するとは限らず、発熱に対する対応が難しい場合があります。例えば、加齢に伴い体力が低下している高齢者では、感染症が起きても発熱がみられる可能性は比較的低くなります。感染により体温が上昇したとしても、一般的に発熱とみなされる温度まで上がらない場合や、発熱の程度が病気の重症度と釣り合わない場合もあります。痛みなどの他の症状も同様で、はっきり現れない場合があります。また、肺炎や尿路感染症の初期には、精神状態の変化や日常動作の不調くらいしか徴候がみられないことも多くあります。

一方、高齢者に発熱がみられる場合には、若い成人に発熱がみられた場合と比べて、重篤な細菌感染症が起きている可能性が高くなります。若い成人と同じく、その場合の原因は呼吸器または尿路の感染症であるのが一般的です。高齢者では、皮膚・軟部組織感染症も原因としてよくみられます。

診断は若い成人と同様に行いますが、高齢者には通常、尿検査(培養検査を含む)と胸部X線検査が勧められます。また血液サンプルを採取し、培養検査を行って血液感染(敗血症)の有無を判定します。

血液感染を起こしている、またはバイタルサインに異常がみられる高齢者(血圧低下、脈拍と呼吸数の増加など)には、入院措置がとられます。

要点

  • 健康な人にみられる発熱の大半は、呼吸器または消化管で起きたウイルス感染によるものです。

  • 発熱がある人に警戒すべき徴候(上記)がみられたら、直ちに医師の診察を受ける必要があります。

  • 医師は通常、簡単な病歴聴取、身体診察、ときには数種類の簡単な検査を行って感染症を特定し、その結果や特定の症状から、他の検査が必要かどうかを判断します。

  • 長期間の発熱がある場合、医師はその原因として基礎的な慢性疾患(特に免疫系に異常が生じる病気)を疑います。

  • 通常、アセトアミノフェンやNSAIDを服用すれば、熱が下がり、苦しさが和らぎます(ただし多くの人にとって不可欠な治療というわけではありません)。

  • 高齢者の感染症では発熱が起きにくく、他の症状も現れにくい傾向があります。

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