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関節痛:多数の関節

(多関節痛)

執筆者:

Alexandra Villa-Forte

, MD, MPH, Cleveland Clinic

最終査読/改訂年月 2017年 12月
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関節から来ていると思われる痛みは、ときとして靱帯や腱、筋肉など、関節外の構造から来ていることがあります(筋骨格系の生物学に関する序を参照)。滑液包炎腱炎がそのような病気の例です。

真の関節痛には、関節炎が伴う場合も、伴わない場合もあります。関節炎で最もよくみられる症状は痛みです。炎症を起こしている関節には、熱と腫れがある場合もあり、頻度は低いものの関節を覆う皮膚が赤くなることがあります。関節炎は、腕や脚の関節だけに起こる場合もあれば、脊椎や骨盤といった骨格の中心部の関節に起こる場合もあります。痛みは関節を動かすときにのみ起こることもあれば、安静にしているときに起こることもあります。関節痛の原因に応じて、発疹、発熱、眼の痛み、口内炎など、他の症状がみられることがあります。

影響を受ける関節の数は、病気に応じて異なる傾向があります。そのため、医師は1つの関節の痛み( 関節痛:単一の関節を参照)と複数の関節の痛みとでは、異なる原因を疑います。複数の関節が侵されている場合、一部の病気では、他の病気と比較して、体の両側にある同じ関節(例えば、両膝や両手)が侵されている可能性が高くなります。これは対称性関節炎と呼ばれます。また、一部の病気では、症状が出ている間ずっと、関節炎が同じ関節にとどまり続けます。一方、関節炎が、関節から関節へと移動するものもあります(移動性関節炎)。

原因

複数の関節内から生じる痛みの原因は、ほとんどの場合、関節炎です。関節炎の原因となる病気には、以下に挙げるものなど、特定の傾向がそれぞれ備わっています。

  • 通常侵される関節の数と部位

  • 脊椎や骨盤など、骨格の中心部が一般的に侵されるかどうか

  • 関節炎が突然(急性)のものか、長く持続する(慢性)ものか

急性関節炎が複数の関節を侵す場合、ほとんどは以下のものが原因です。

複数の関節に生じる急性関節炎で、あまり一般的でない原因としては、ライム病(1つの関節だけを侵すこともある)、淋菌感染症レンサ球菌感染症反応性関節炎(消化管または尿路の感染症の後に発生する関節炎)、痛風が挙げられます。

慢性関節炎が複数の関節を侵す場合、ほとんどは以下のものが原因です。

一部の慢性の炎症性疾患では、腕や脚の関節(末梢関節)だけでなく、脊椎が侵されることもあります。脊椎の特定の部分が侵されることが多い病気もあります。例えば、強直性脊椎炎は、脊椎の下部(腰椎)を侵す場合が多く、一方、関節リウマチは頸部にある脊椎の上部(頸椎)を侵すのが一般的です。

関節周囲の痛みを引き起こす最も一般的な関節外の病気は、以下のものです。

滑液包炎と腱炎は、けがによって起こることが多く、通常は1つの関節に発生します。ただし、一部の病気では多数の関節に滑液包炎や腱炎が起こります。

評価

関節痛を評価する際、医師はまず、関節痛の原因が関節の病気なのか、全身にわたる(全身性の)重篤な病気なのかを判断します。全身にわたる重篤な病気には、すぐに特定の治療が必要になる場合があります。以下では、どのようなときに医師の診察を受けるべきか、また受けた場合に何が行われるかについて説明しています。

警戒すべき徴候

複数の関節に痛みがあり、以下の症状を伴う場合は、すぐに医師に診てもらわなければなりません。

  • 関節の腫れ、熱感、発赤

  • 新しくできた発疹、斑点、または紫色の斑

  • 口や鼻、性器のびらん

  • 胸の痛み、息切れ、新しく始まったせき、または激しいせき

  • 腹痛

  • 発熱、汗、体重減少、悪寒

  • 眼の充血、または痛み

受診のタイミング

警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。警戒すべき徴候がない人は、医師に電話してください。医師は、痛みの強さと部位、関節が腫れているかどうか、すでに原因が診断されているかどうかなどの要因に基づき、どの程度速やかに受診する必要があるかを判断します。一般的には、警戒すべき徴候がみられない人では数日の遅れは問題になりません。

医師が行うこと

医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、関節痛の原因と必要になる検査を推測することができます(表「複数の関節における痛みの主な原因と特徴」を参照)。

医師は痛みの強さ、出現の仕方(突然か、ゆっくりか)、時間経過による症状の変化、痛みを強めたり弱めたりする要因(例えば、安静や動作、症状が悪化したり緩和したりする時間帯)について質問します。関節のこわばり、関節の腫れ、過去に診断された関節の病気、性感染症とライム病の感染リスクについても質問します。

続いて、医師は綿密な身体診察を行います。脊椎の関節を含むすべての関節について、腫れ、発赤、熱感、圧痛、関節を動かした際に生じる音(捻髪音)がないか確認します。関節を可動域全体にわたって動かし、最初は患者が補助なしで動かし(自動可動域)、次に医師が動かします(他動可動域)。この診察法は、痛みを引き起こしている構造と、炎症の有無の判定に役立ちます。併せて、医師は眼、口、鼻、陰部にびらんなど炎症の徴候がないか確認します。皮膚に発疹がないか調べます。リンパ節を触診し、肺と心臓の診察を行います。通常は、筋肉や神経の病気を発見するために神経系の機能を検査します。

所見のなかには、原因に関する手がかりとして役に立つものがあります。例えば、圧痛が関節の周りにはあって、関節自体にはない場合、原因は滑液包炎か、腱炎である可能性が高くなります。全体的に圧痛があれば、線維筋痛症の可能性があります。関節だけでなく脊椎にも圧痛がある場合は、可能性のある原因としては、変形性関節症、反応性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などがあります。手の所見は、関節リウマチと変形性関節症(特によくみられる2種類の関節炎)を医師が区別するのに役立ちます。例えば、関節リウマチでは、こぶしの大きな関節(指と手をつなぐ関節)と手首が侵される可能性が高くなります。変形性関節症では、爪の近くにある指の関節が侵される可能性が高くなります。変形性関節症では、親指のつけ根を除いて手首が侵されることはあまりありません。

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複数の関節における痛みの主な原因と特徴

原因

一般的な特徴*

検査

通常は左右対称の関節痛を引き起こす病気

関節に炎症はない

広範囲にわたる筋肉の持続的な痛みおよび圧痛(関節または背中が痛むこともある)

疲労

ときとして過敏性腸症候群または睡眠障害

通常は慢性、女性がかかることが多い

しばしば抑うつ、または他の気分障害

ときに検査の必要なし

ウイルスを原因とする感染性関節炎

炎症の有無を問わない関節痛、一般的には数時間または数日かけて発症

ウイルス感染症の他の症状(例えば、B型肝炎では黄疸、C型肝炎では脚の紫斑、HIVではリンパ節の腫れが起こります)

関節液の分析

ウイルスを特定するための血液検査(ほとんどの場合はC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、またはパルボウイルス)

小児期の慢性かつ左右対称の関節炎

腰痛

全身のリンパ節の腫れ、および発熱の発作

肝臓や脾臓の腫大

心臓、または肺の周辺の余分な体液

発疹、または眼の痛みおよび充血

自己抗体の血液検査§

関節炎の原因となる他の病気(例えばシェーグレン症候群全身性強皮症

軽度の腫れを伴う場合もある、多くの関節の痛み

自己抗体の血液検査§

大小の関節の慢性かつ左右対称の炎症

疲労と朝のこわばり

最終的には関節の変形(特にこぶしと手首の関節)

ときとして皮膚の下の硬い腫れと手根管症候群

若い成人で多いが60歳以上でもかかることがある

X線検査

自己抗体の血液検査§

血清病(血流に外来タンパクが大量にある状態に対する免疫システムの反応)

いくつかの関節の痛みと炎症

発熱、発疹、リンパ節の腫れ

最初に症状が現れる21日前以降に外来タンパクにさらされたことが分かっている人(例えば輸血による)

ときとして血液検査

関節が異常に柔軟になる症候群(例えばエーラス-ダンロス症候群

通常は多数の関節の痛み

関節の炎症は非常にまれ

皮膚のたるみ(弛緩)が増す

繰り返す関節の脱臼やずれの病歴があると分かっている人にみられる

家族にこの病気の患者がいると分かっている人にみられる

ときとして遺伝子検査

全身性エリテマトーデスや他の頻度の低い自己免疫疾患(例えば、多発性筋炎皮膚筋炎シェーグレン症候群IgA血管炎などの血管炎)

炎症を伴うことも伴わないこともある関節痛で、病気が再燃した際に起こりうる

特定の自己免疫疾患に応じた他の症状、例えば皮膚の変化、腹痛、筋肉痛、腎疾患、肺や心臓など臓器の周囲の液貯留(漿膜炎)、ドライアイと口腔乾燥

様々な自己抗体の血液検査§

ときとして皮膚、腎臓、または他の侵された臓器の生検

尿検査

通常は左右非対称の関節痛を引き起こす病気

大きな関節が侵される

ほとんどの場合腰痛

眼の充血と痛み(虹彩炎)

アキレス腱炎

血液が大動脈弁を逆流する(大動脈弁閉鎖不全)

X線検査

ときとしてCTまたはMRI検査

口と性器の慢性または繰り返し起こる潰瘍

ときとして眼の痛みと充血

20代に発症することが多い

通常はアジアの一部と中東の一部(米国では比較的まれ)

ときに検査の必要なし

突然かつ激しい痛み、熱感、腫れ(特に足の親指または膝でみられるが、ほぼすべての関節でもみられる)

ときとして発熱

侵される関節は1つだけの場合が多いが、ときに多数の関節が侵される

関節液の検査

感染性心内膜炎(心臓の内側を覆っている膜の感染症で、通常は心臓の弁も感染する)

関節の痛みと腫れ

発熱、寝汗、発疹、体重減少、心雑音がよくみられる

血液検査

心エコー検査

ほとんどの場合は膝、股関節、指の小さな関節(腫れてわずかに変形することもある)にみられる、慢性の痛み

発赤はない

しばしば背中と首の痛み

X線検査

乾癬(ときとして皮膚の病変がほとんどまたはまったくない)

ときに慢性かつ左右対称の関節の炎症

手の指、足の指、爪の慢性の変形

腱炎

眼の充血と痛み

X線検査

反応性関節炎および腸炎性関節炎

突然の痛み、通常は脚または足の大きな関節に起こり、消化管の感染症(例えば胃腸炎)または泌尿生殖器の感染症(例えば尿道炎)の1~3週間後にみられることが多い

ときとして脊椎が侵される

性感染症の検査

*この欄には症状や診察の結果などが示されています。ここに示されている特徴は典型的なものですが、常に当てはまるわけではありません。

X線検査はしばしば必要ありません。関節に貯留液がある場合は、しばしば検査のために吸引する必要があります。

症状が突然始まることもありますが、この病気は一般的には慢性であるか、または再発します。

§自己抗体とは、自分自身の組織を攻撃する抗体です。例としては、抗核抗体、抗二本鎖DNA抗体、抗環状シトルリン化ペプチド抗体、リウマトイド因子が挙げられます。

CT = コンピュータ断層撮影、MRI = 磁気共鳴画像。

検査

全体として最も重要な検査は以下の通りです。

  • 関節液の検査

  • 自己抗体の血液検査

  • 赤血球沈降速度(赤沈)とC反応性タンパク

関節が腫れている場合、医師は通常、検査のために関節に針を刺して関節内の体液のサンプルを採取します(関節穿刺と呼ばれる処置)。サンプルの採取の前にはその部分に麻酔をかけ、処置中にほとんど、またはまったく痛みを感じないようにします。一般的に、関節液を培養して感染しているかどうかを確認します。関節液の中に結晶がないか顕微鏡で見て、結晶があれば痛風か、それに関連する病気が示されます。関節液内の白血球の数から、関節に炎症があるかどうかが分かります。

自己抗体の血液検査もしばしば行います。例えば、抗核抗体、抗二本鎖DNA抗体、抗環状シトルリン化ペプチド抗体、リウマトイド因子の検査が挙げられます。血液中に自己抗体があれば、関節リウマチや全身性エリテマトーデスといった自己免疫疾患が疑われます。

赤沈は、血液サンプルが入った試験管で、赤血球が試験管の底に沈澱する速さを測定する検査です。沈澱が速ければ、一般的には全身にわたる(全身性の)炎症の可能性が高いですが、年齢や貧血など多くの要因が赤沈に影響するため、この検査は正確でないことがあります。全身の炎症があるかどうかを判断するのに役立てるために、C反応性タンパク(血液中のタンパクで、炎症があると濃度が劇的に上昇します)という別の検査を行うこともあります。

特定の病気が疑われる場合は、その他の検査が必要になることがあります(表「複数の関節における痛みの主な原因と特徴」を参照)。

画像検査が必要な場合があります(特に骨または関節の腫瘍の可能性がある場合)。まずはX線検査を行いますが、CT(コンピュータ断層撮影)検査またはMRI(磁気共鳴画像)検査が必要な場合もあります。

治療

原因となっている病気を治療します。例えば、自己免疫疾患(例えば全身性エリテマトーデス)の人には、免疫の働きを抑制する薬が必要になることがあります。関節の淋菌感染症の患者には抗菌薬が必要です。

通常、診断がはっきりする前に症状を緩和することができます。炎症は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)で緩和できます。炎症を伴わない痛みは、通常はアセトアミノフェンで治療を行う方が安全です。関節を副子またはつり包帯で固定すると、痛みを緩和できることがあります。温熱パッドなどで患部を温めると、関節の周りにある筋肉のけいれんが和らぐことで痛みが軽減することがあります(例えばけがをした後)。氷などで患部を冷やすと、関節の炎症から起こる痛みを和らげるのに役立つことがあります。温めたり冷やしたりする場合は1回に15分以上継続し、深部まで温度が伝わるようにします。極端な熱や低温から皮膚を保護しておく必要があります。例えば、氷はビニール袋に入れてタオルで包んでおきます。

急性の痛みと炎症が軽減した後は、可動域の回復や維持と周囲の筋肉の強化のために、理学療法が有用となる場合があります。慢性関節炎の患者では、永続的な関節のこわばり(拘縮)と筋肉量の減少(萎縮)を予防するために理学療法を継続することが重要です。

高齢者での重要事項

高齢者では、複数の関節の痛みの最も一般的な原因は変形性関節症です。関節リウマチは若い成人(30~40歳)により多くみられますが、より高齢(60歳以上)で発症することもあります。関節リウマチの可能性がある高齢者は、がんが合併している場合があります。55歳以上で、股関節や肩にこわばりや痛み(通常は朝の方がひどい)がある場合は、リウマチ性多発筋痛症の可能性があります。その治療が他の問題の予防に役立つことがあるため、リウマチ性多発筋痛症があると確認することが重要です。

要点

  • 複数の関節に生じる急性の痛みの原因は、ほとんどは炎症、痛風、または関節の慢性の病気が新たに出現するか再燃することです。

  • 複数の関節に生じる慢性の痛みの原因は、通常は変形性関節症か炎症性疾患(例えば関節リウマチ)、または小児では若年性特発性関節炎です。

  • 関節内に体液がかなり蓄積している場合は、通常は関節液のサンプルを吸引して検査する必要があります。

  • 生涯にわたって運動を行うことが、慢性関節炎の患者の可動域を維持するのに役立ちます。

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