血圧の上昇により血管の腫れが生じます。
肛門の内側または外側にしこりが生じ、痛んだり、出血したりします。
診断は、しばしば肛門鏡、S状結腸内視鏡、または大腸内視鏡を使用して、肛門と直腸を検査した結果に基づいて下されます。
痔核のほとんどの症状は治療をしなくても消えますが、繊維摂取、便軟化剤、坐浴により症状が緩和することがあります。
一部の痔核には、輪ゴムによる処置、注入療法(硬化療法)、赤外線光凝固術、ときに手術による治療が行われます。
直腸は肛門の上にある消化管の一部で、便が肛門を通って体外に排出されるまで便が蓄えられる部分です。
肛門は消化管の末端にある開口部で、便が体外に排出されるときの出口になる部分です。
(肛門と直腸の概要 肛門と直腸の概要 肛門は消化管の末端にある開口部で、便が体外に排出されるときの出口になる部分です。 直腸は肛門の上にある消化管の一部で、便が肛門を通って体外に排出されるまで便が蓄えられる部分です。 肛門は皮膚を含む体表層と腸管から形成されています。 直腸の内面は、腸管の他の部分と同じように、粘液腺を含んだ輝きのある赤い組織でできています。直腸の内面は痛みに... さらに読む も参照のこと。)
痔核は直腸の下部または肛門の血管が拡張することで発生します。
内痔核は、肛門と直腸の境界部(肛門直腸移行部)より上側にできる痔核です。
外痔核は、肛門直腸移行部より下側にできる痔核です。
内痔核も外痔核も、肛門内にとどまっている場合もあれば、肛門の外に突出する場合もあります。
痔核の原因
肛門直腸にある血管の圧力が高くなると痔核の発生につながります。この圧力の高まりは、妊娠や頻繁な力仕事、排便時のいきみの繰り返しによって起こることがあります。 便秘 便秘 便秘は、排便しにくい、排便回数が少ない、便が硬い、または排便後に直腸が完全に空になっていない感覚(残便感)がある状態です。( 小児の便秘も参照のこと。) 便秘には急性のものと慢性のものがあります。急性便秘は突然起こり、はっきりと現れます。慢性便秘は、徐々に始まり数カ月ないし数年間持続することがあります。 毎日排便しなければ便秘だと思う人はたくさんいます。しかし、誰にとっても毎日排便があることが正常というわけではありません。1日1~3回の... さらに読む がいきみの一因になることがあります。
痔核の症状
外痔核では肛門にしこりが形成されます。血栓ができると(血栓性外痔核と呼ばれます)、しこりが大きくなり、血栓ができていない痔核よりも痛みが強く、腫れが大きくなります。
内痔核は目に見えるしこりや痛みを生じないことが多いですが、出血することがあります。内痔核からの出血は典型的には排便後に生じ、便やトイレットペーパーに血のすじがつきます。血液によって便器の水が赤くなることもあります。しかし通常出血量は少なく、痔核によって重度の失血や貧血が起こることはめったにありません。
痔核から粘液が出て、排便後に直腸内が完全に空になっていない感じが生じることがあります。肛門部の かゆみ 肛門のかゆみ 肛門(消化管の末端にある開口部で、便が体外に排出されるときの出口になる部分です)とその周辺の皮膚(肛門周囲の皮膚)のかゆみは、肛門そう痒症と呼ばれています。 ( 肛門と直腸の概要も参照のこと。) 肛門のかゆみの最も一般的な原因は以下のものです。 不明(大多数) 衛生状態に関連するもの さらに読む (肛門のかゆみ、肛門そう痒症)は通常は痔核の症状ではありませんが、痔核のために肛門部をあまり清潔にできない場合はかゆみが生じることがあります。
痔核の合併症
痔核に炎症が生じたり、血栓ができたりすることがあります。内痔核は出血することがあります。
痔核の診断
医師の診察
肛門鏡検査
ときにS状結腸内視鏡検査または大腸内視鏡検査
腫れて痛みのある痔核は、肛門と直腸の視診によって容易に診断できます。
痛みのない痔核または出血性痔核を評価するためには、肛門鏡(直腸の観察に用いる短い硬性のチューブ)による診察が行われます。下血がある場合は、腫瘍などのより重篤な病気の可能性を否定するために、S状結腸内視鏡検査や大腸内視鏡検査(内視鏡検査 内視鏡検査 内視鏡検査とは、柔軟な管状の機器(内視鏡)を用いて体内の構造物を観察する検査です。チューブを介して器具を通すことができるため、内視鏡は多くの病気の治療にも使うことができます。 口から挿入する内視鏡検査では、食道(食道鏡検査)、胃(胃鏡検査)、小腸の一部(上部消化管内視鏡検査)が観察できます。 肛門から挿入する内視鏡検査では、直腸(肛門鏡検査)、大腸下部と直腸と肛門(S状結腸内視鏡検査)、大腸全体と直腸と肛門(大腸内視鏡検査)が観察できま... さらに読む を参照)が必要になることがあります。
痔核の治療
便軟化剤と坐浴
血栓性外痔核の場合、血栓の除去
内痔核の場合、硬化療法(注射療法)、ゴム輪結紮術、または赤外線光凝固術
ときに手術による切除
通常、痔核は症状がないかぎり治療の必要はありません。便軟化剤を服用したり、食物繊維のサプリメント(オオバコ種子など)で便を膨張させたりすることで、排便時のいきみが軽減することがあります。肛門をいわゆる坐浴で温水に浸すと、痔核の症状が軽くなることがあります。坐浴は、浴槽の途中までお湯を張って10~15分しゃがんだり座ったり、便器や室内便器の上に(熱くない)お湯を張った容器を置いたものを使ったりして行います。
血栓性外痔核に対しては、特に強い痛みが生じる場合は、 局所麻酔 局所麻酔と区域麻酔 手術とは、従来、病気やけが、体の変形を治療する目的で組織を手作業で切ったり塗ったりする処置(外科的処置といいます)を指すのに用いられてきた用語です。しかし、手術手技の進歩により、この定義はより複雑になっています。組織を切るのにメスではなくレーザーや放射線、その他の手法が用いられることもあれば、縫合せずに傷口を閉じることもあります。... さらに読む 薬を注射して感覚を麻痺させてから血栓や痔核を切除することがあり、それによりときに痛みが速やかに緩和します。
アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を服用すると、血栓性痔核の痛みの緩和に役立つことがあります。局所麻酔薬の軟膏やマンサクの湿布も役に立つ可能性があります。通常、痛みと腫れは少し経つと軽減し、血栓は4~6週間でなくなります。
出血性内痔核に対しては、瘢痕(はんこん)組織を形成して痔核を破壊する物質を注射することがあります。この処置は硬化療法または注射療法と呼ばれます。硬化療法に代わる治療として赤外線光凝固術があります。この処置では、出血性痔核の治療に赤外線を利用します。
大きな内痔核や硬化療法(注射療法)で効果がなかった内痔核は、輪ゴムで縛ることがあります(ゴム輪結紮術と呼ばれる処置)。痔核は、輪ゴムにより痛みもなくしぼんで脱落します。約2週間毎に1つの痔核を治療します。
痔核の結紮
内痔核は外来で輪ゴムで縛って除去されることがあり、これはゴム輪結紮術と呼ばれています。使用される器具(結紮器)は、鉗子(かんし)とそれを取り囲むシリンダーでできていて、端に約5ミリメートルの輪ゴムがかけてあります。肛門鏡(観察用の短くて硬い管状の機器)を通じて結紮器を肛門に挿入し、鉗子で痔核をつかみます。シリンダーをずらして鉗子と痔核を覆い、輪ゴムを押してシリンダーから外し、痔核の根元に巻きます。輪ゴムによって痔核への血液供給が遮断され、痔核はしぼんでいき数日後に痛みもなく脱落します。約2週間毎に1つの痔核を結紮します。数回の治療が必要になることがあります。1回の受診で複数の痔核の結紮を行えることもあります。 |
他の治療がうまくいかない場合は、手術が行われることがあります。しかし、痔核の手術(痔核切除術と呼ばれます)の結果、ひどい痛みや尿の滞留、便秘が起こることがあります。
ほかに環状自動縫合器による痔核切除術という方法もあり、この方法では環状の自動縫合器を使用します。この方法では、従来の外科的な痔核切除術と比べて術後の痛みが少ないものの、合併症の発生率が高くなる可能性があり、痔核が再発することもあります。
ドプラ超音波ガイド下の痔動脈結紮術など、内痔核を破壊する他の方法も試みられています。この治療では、痔核の動脈を超音波検査で確認して縫合糸で結紮することで、痔核への血流供給を減らします。
レーザー、凍結プローブ、電流(電気凝固術)を用いる治療法の効果は実証されていません。依然としてゴム輪結紮術が標準治療です。