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新生児痙攣

執筆者:

Margaret C. McBride

, MD, Northeast Ohio Medical University

最終査読/改訂年月 2016年 4月
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新生児痙攣は,新生児の中枢神経系において異常な放電が生じる現象であり,通常は定型的な筋活動または自律性運動の変化として現れる。診断は脳波検査により確定され,原因を調べるための検査が適応となる。治療は原因に応じて異なる。

痙攣性疾患も参照のこと。

痙攣発作は正期産児の最大1.4%,未熟児の20%で発生する。痙攣発作は新生児期の重篤な問題に関連している可能性があり,直ちに評価を行う必要がある。ほとんどの新生児痙攣は焦点性であるが,これはおそらく,髄鞘形成を欠くことと脳の樹状突起やシナプスの形成が不完全であることより,新生児では電気活動の汎化が阻害されるためと考えられる。

痙攣または脳症の他の症状(例,活動性低下,反応性の低下)の評価のために脳波検査を受ける新生児において,臨床的には無症状の発作が発見されることがある(脳波検査では20秒以上に及ぶてんかん様の律動的な電気活動がみられるが,臨床的に目に見える形での痙攣活動はみられない)。ときに,臨床的に無症状の電気活動が20分以上続くことがあり,その時点で,電気的てんかん重積状態と定義される。

病因

中枢神経系の異常放電は以下によって起こりうる:

  • 頭蓋内に生じる原発性の病態(例,髄膜炎,虚血性脳卒中,脳炎,頭蓋内出血,腫瘍,奇形)

  • 全身性の病態(例,低酸素虚血,低血糖,低カルシウム血症,低ナトリウム血症,その他の代謝異常)

通常,頭蓋内の異常により生じた痙攣発作を臨床的特徴(例,焦点性か全般性か)のみで全身性の問題による痙攣と鑑別することは不可能である。

低酸素虚血は,新生児痙攣の原因として最も頻度の高いものであり,分娩前,分娩中,または分娩後に起こりうる( 周産期の呼吸器疾患の概要)。このような発作は重度で治療困難となりうるが,3~4日ほどで軽快する傾向にある。新生児の低酸素症を低体温療法(通常は全身の冷却)により治療すれば,痙攣発作の重症度は下がるが,復温中に再発する可能性がある。

虚血性脳卒中は,赤血球増多,遺伝性疾患による血栓形成傾向,または重度低血圧がみられる新生児でより発生する可能性が高いが,危険因子がない新生児でも起こりうる。脳卒中は典型的には中大脳動脈領域で起こるが,低血圧と関連している場合は分水嶺領域で発生する。脳卒中から生じる痙攣は焦点性となる傾向があり,無呼吸を引き起こすことがある。

髄膜炎や敗血症などの新生児感染症から痙攣発作が惹起されることもあり,そのような場合は通常,他の症状および徴候を伴う。新生児におけるそのような感染症の一般的な原因はB群レンサ球菌とグラム陰性細菌である。サイトメガロウイルス,単純ヘルペスウイルス,風疹ウイルス,梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum),または Toxoplasma gondiiによる脳炎でも痙攣が発生することがある。

低血糖は,糖尿病母体の新生児,在胎不当過小児(SGA児),低酸素虚血,またはその他のストレスを受けた新生児によくみられる。低血糖による痙攣発作は焦点性かつ変動性の傾向がある。遷延性または反復性の低血糖は,中枢神経系に永続的な影響を及ぼすことがある。

頭蓋内出血(くも膜下出血,脳内出血,脳室内出血など)が痙攣発作を惹起することもある。脳室内出血は,未熟児により多く起こるが,胚芽層(脳室に隣接する領域で,そこから発達の過程でニューロンや神経膠細胞が発生する)での出血に端を発する。

高ナトリウム血症または低ナトリウム血症が痙攣発作の原因となることもある。高ナトリウム血症は,経口または経静脈的な塩化ナトリウムの偶発的な過剰摂取により起こりうる。低ナトリウム血症は,希釈(あまりに多量の水が経口または経静脈的に投与された場合)または便中もしくは尿中へのナトリウム喪失によって起こりうる。

低カルシウム血症(血清カルシウム濃度7.5mg/dL[1.87mmol/L]未満)では,通常は血清リン濃度が3mg/dL(0.95mmol/L)を超え,無症候性のことがある。低カルシウム血症の危険因子には未熟性や難産などがある。

低マグネシウム血症は痙攣発作のまれな原因の1つであるが,血清マグネシウム値が1.4mEq/L(0.7mmol/L)を下回ると発作が発生するようになる。低マグネシウム血症は,しばしば低カルシウム血症とともに発生するため,低カルシウム血症の新生児において十分なカルシウム投与後も痙攣発作が続く場合は,これを考慮すべきである。

先天性代謝異常症(例,アミノ酸尿症,有機酸尿症)も新生児痙攣の原因となりうる。まれに,ピリドキシン欠乏症または依存症が痙攣発作の原因となることがあり,その場合は容易に治療できる。

中枢神経系の奇形も痙攣発作の原因となることがある。

母親の物質乱用(例,コカイン,ヘロイン,ジアゼパム)の問題は,近年ますます増加してきており,その場合は出生後の急性離脱に伴って痙攣発作が生じる可能性がある。

新生児痙攣は家族性のことがあり,遺伝学的原因を有するものもある。良性家族性新生児痙攣は,カリウムチャネルに異常が生じる常染色体優性遺伝のイオンチャネル病である。早期乳児てんかん性脳症(大田原症候群)は,様々な突然変異と関連が報告されているまれな疾患である。

症状と徴候

新生児痙攣は通常は焦点性で,認識が難しいことがある。一般的な臨床像は,四肢の移動性の間代性痙攣,交代性半側痙攣,原始的な皮質下発作(呼吸停止,咀嚼運動,眼球の持続性偏位または眼振様運動,および突発的な筋緊張の変化を引き起こす)などである。全般性強直間代発作はまれである。

しばしば低酸素虚血(周産期仮死や脳卒中など)の発生後または中枢神経系感染症の患児において臨床的に無症状の電気的発作活動が出現し,特に抗てんかん薬の初回投与後によくみられるが,これは治療により電気的発作活動よりも臨床症状の方が停止する可能性が高いためである。

診断

  • 脳波検査

  • 臨床検査(例,血清血糖値,電解質,髄液検査,尿培養と血液培養)

  • 通常は頭部画像検査

評価はまず詳細な家族歴聴取と身体診察から開始する。

Jitteriness(四肢において拮抗筋同士が収縮と弛緩を交互に繰り返す)を真の痙攣発作と鑑別する必要がある。通常,jitterinessは刺激に伴って発生し,四肢を抑えることで停止できるのに対し,痙攣発作は自発的に起こり,四肢を抑えても運動が感じられる。

脳波検査

脳波検査(覚醒中および睡眠時)が不可欠であり,新生児が痙攣発作を起こしているかの判断が困難な場合は特に重要となる。脳波検査は治療に対する反応のモニタリングにも役立つ。

脳波検査は動的および静的睡眠の両方の時間帯で測定すべきであり,したがって2時間以上の記録が必要となることがある。睡眠段階での想定内の変動を伴う正常な脳波は良好な予後の徴候であり,重度の異常(例,抑制された電位または群発抑圧交代[burst suppression])が広範にみられる脳波は予後不良を示す。

ベッドサイドでのビデオ脳波検査による24時間以上のモニタリングにより,無症候性の発作を電気信号として同定できることがあり,中枢神経系の傷害が起きてから数日間は特にその可能性が高くなる。

臨床検査

治療可能な基礎疾患を検索するための臨床検査を直ちに行うべきであり,具体的な検査としては,パルスオキシメトリー,血清血糖値とナトリウム,カリウム,塩素,重炭酸,カルシウム,マグネシウムの血清中濃度の測定,腰椎穿刺による髄液検査(細胞数と分画,糖,タンパク)および髄液培養などがある。尿および血液培養を行う。

臨床的な状況によっては,その他の代謝検査(例,動脈血pH,血液ガス,血清ビリルビン,尿中アミノ酸または有機酸)や乱用がよくみられる薬物(胎盤または母乳を介して新生児に移行するもの)に関する検査も必要となる。

画像検査

原因(例,血糖や電解質の異常)が直ちに判明しない限り,典型的には画像検査を行う。MRIが望ましいが,容易に行えない場合もあり,そのような状況では頭部CTを施行する。

放射線検査室に移動できない重症の乳児には,ベッドサイドで頭部超音波検査を行うことが可能であり,その場合,脳室内出血は検出できるが,くも膜下出血は検出できない。乳児の状態が安定している場合,MRIまたはCTを行う。

頭部CTでは頭蓋内出血と一部の脳奇形を発見できる。MRIでは,奇形をより明確に描出でき,虚血組織を発症後数時間以内に検出できる。

磁気共鳴スペクトロスコピーは,虚血性損傷の範囲を明らかにしたり,基礎にある代謝性疾患に関連する特定の神経伝達物質の蓄積を同定したりするのに役立つ可能性がある。

予後

予後は病因に依存する:

  • 低酸素虚血により痙攣発作を起こした新生児の約50%は正常に発達する。

  • くも膜下出血,低カルシウム血症,または低ナトリウム血症により痙攣発作を起こした新生児の大半は良好に経過する。

  • 重度の脳室内出血を起こした患児では,合併症の発生率が高くなる。

  • 特発性または奇形を原因とする痙攣発作の場合は,初発時期が早いことが神経発達面の予後不良と関連する。

新生児痙攣が基礎疾患によるものを越える脳損傷を引き起こすか否かは不明であるが,遷延する発作過程で神経細胞の発火が長引くことによる代謝ストレスによって,さらなる脳損傷が発生するという懸念が存在する。低酸素虚血,脳卒中,感染などの脳への急性損傷が原因である場合は,一連の発作が連続して発生することがあるが,そのような発作は典型的には3~4日後には軽快する;脳に損傷が発生した場合は,数カ月から数年後に再発することがある。その他の病態により生じる痙攣発作は,新生児期にはより遷延しやすい。

治療

  • 原因の治療

  • 抗てんかん薬

治療では,第一に基礎疾患に,第二に発作に焦点を合わせる。

原因の治療

血清血糖値が低い場合は,10%ブドウ糖液2mL/kgを静注し,血清血糖値をモニタリングする;必要に応じて点滴を追加するが,高血糖を避けるため慎重に行う。

低カルシウム血症には,10%グルコン酸カルシウム1mL/kg(カルシウムとして9mg/kg)を静脈内投与し,低カルシウム血症による痙攣が遷延する場合は,この投与を繰り返してもよい。グルコン酸カルシウムは0.5mL/分(50mg/分)以上の速度で投与してはならない;投与中は継続的な心拍モニタリングが必要である。皮膚の壊死につながる可能性があるため,血管外漏出は回避する必要がある。

低マグネシウム血症には,50%硫酸マグネシウム溶液0.2mL/kg(100mg/kg)を筋注で投与する。

細菌感染症は抗菌薬で治療する。

ヘルペス脳炎はアシクロビルで治療する。

抗てんかん薬

低血糖,低カルシウム血症,低マグネシウム血症,低ナトリウム血症,高ナトリウム血症などの回復可能な病態を是正しても速やかに発作が治まらない場合は,抗てんかん薬を使用する。

フェノバルビタールは依然として最も頻用されている薬剤であり,負荷量として15~20mg/kgを静脈内投与する。発作が続く場合は,停止するか合計投与量が40mg/kgになるまで,15~30分毎に5~10mg/kgを静脈内投与してもよい。それでも発作が続く場合は,維持療法として,約24時間後に1.5~2mg/kg,12時間毎で開始し,臨床的反応,脳波上の反応,または血清中薬物濃度に基づいて2.5mg/kg,12時間毎まで増量してもよい。フェノバルビタールは,特に発作が頻回に起きているか長引く場合,静脈内投与を継続する。乳児の状態が安定している場合は,フェノバルビタール3~4mg/kg,1日1回の経口投与としてもよい。フェノバルビタールの血清中濃度の治療域は20~40μg/mL(85~170μmol/L)である。

レベチラセタムは,フェノバルビタールと比べて鎮静作用が弱いことから,新生児痙攣の治療に使用されることが増えてきている。負荷量として20~50mg/kgを静脈内投与し,その後は10~30mg/kg,静注,12時間毎で投与を継続することがある。新生児での治療濃度は十分に確立されていない。

ホスフェニトインは,フェノバルビタールおよびレベチラセタムを使用しても発作が持続する場合に使用することができる。負荷量は20mg PE(フェニトイン当量)/kg,静注とする。低血圧や不整脈を回避するため30分かけて投与する。その後,維持量として2~3mg PE/kgを12時間毎に投与することがあり,臨床反応または血清中濃度に基づいて用量を調節する。新生児におけるフェニトインの血清中濃度の治療域は8~15μg/mL(32~60μmol/L)である。

遷延する痙攣または治療抵抗性の痙攣には,ロラゼパムを0.1mg/kg,静注で開始し,5~10分間隔で8時間に最大3回まで繰り返し投与することができる。

抗てんかん薬を静脈内投与した新生児には綿密な経過観察を行う;高用量での投与や複数薬剤の併用(特にロラゼパムとフェノバルビタールの併用)は,呼吸抑制につながる可能性がある。

いずれの抗てんかん薬についても適切な治療期間は不明であるが,発作がコントロールされた場合は,新生児室からの退室前に抗てんかん薬を中止してもよい。

要点

  • 新生児痙攣は通常,全身性または中枢神経系の事象(例,低酸素/虚血,脳卒中,出血,感染症,代謝性疾患,脳の構造的異常)に対する反応として発生する。

  • 新生児痙攣は通常は焦点性で,認識が難しいことがある;よくみられる臨床像としては,四肢の移動性の間代性痙攣,咀嚼運動,眼球の持続性偏位または眼振運動,突発的な筋緊張の変化などがある。

  • 診断には脳波検査が必須であるほか,原因同定のために臨床検査と通常は神経画像検査を行う。

  • 治療は原因に対して行う。

  • 原因を是正しても発作が停止しない場合は,フェノバルビタールまたはレベチラセタムを投与する;遷延性の発作にはホスフェニトインおよびロラゼパムを追加してもよい。

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