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鼻出血

執筆者:

Marvin P. Fried

, MD,

  • Professor and University Chairman, Department of Otorhinolaryngology-Head and Neck Surgery
  • Montefiore Medical Center, The University Hospital of Albert Einstein College of Medicine

最終査読/改訂年月 2020年 4月
本ページのリソース

鼻出血は鼻の出血である。出血はしたたり程度から激しい流出にまで及ぶ可能性があり,その結果は軽微な不快感から生命を脅かす出血に及ぶ場合まで様々である。

病態生理

大半の鼻出血は,鼻腔前部のものであり,鼻中隔前下部(キーゼルバッハ部位)の血管網から生じる。

鼻腔後部の出血はより頻度が低いが比較的重篤であり,鋤骨の上にある鼻中隔後部,または外側で下鼻甲介もしくは中鼻甲介に生じる。鼻腔後部の出血は,動脈硬化または出血性疾患がすでにあり,鼻または副鼻腔の手術を受けた患者で発生する傾向がある。

病因

鼻出血の最も一般的な原因は以下のものである:

  • 局所外傷(例,鼻をかむ,ほじる)

  • 鼻粘膜の乾燥

比較的まれな原因がいくつかある(鼻出血の主な原因の表を参照)。高血圧は,すでに起こっている鼻出血の持続に寄与する場合があるが,単独の病因となる可能性は低い。

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鼻出血の主な原因

原因*

示唆する所見

診断アプローチ

一般的

局所外傷(例,鼻をかむ,ほじる,鈍的な衝撃)

病歴から明らか

臨床的評価

粘膜の乾燥(例,寒冷な気候で)

通常,診察で乾燥がみられる

臨床的評価

比較的まれ

局所感染(例,鼻前庭炎,鼻炎

しばしば局所的な疼痛および粘膜乾燥を伴う,鼻前庭の痂皮形成

臨床的評価

全身性疾患(例,AIDS肝疾患

既知の疾患の存在

粘膜のびらんおよび肥厚

臨床的評価

異物(主に小児)

しばしば,反復性の悪臭を伴う分泌物を伴う鼻出血

臨床的評価

通常,高齢患者において

臨床的評価

Rendu-Osler-Weber症候群

顔面,口唇,口腔粘膜および鼻粘膜,ならびに手足の指先における毛細血管拡張

家族歴あり

臨床的評価

上咽頭または副鼻腔の腫瘍(良性または悪性)

鼻または上咽頭内にみられる腫瘤

鼻腔側壁の膨隆

CT

外傷(手術または負傷),特定の慢性感染症,またはコカイン使用の既往

診察で視診可能

臨床検査

鼻出血の既往または他の出血部位(歯肉など)からの出血

血小板数を含む血算,PT/PTT

*いずれの原因の鼻出血も,出血性疾患(例,血小板減少症,肝疾患,凝固障害)のある患者および抗凝固薬の使用がある患者において頻度が高い。こうした患者においては,出血がより重度かつ治療困難でもあることが多い。

評価

病歴

現病歴の聴取では,左右のいずれ側から最初に出血したかの判定を試みるべきである;大出血は急速に両方の鼻孔に及ぶが,大半の患者は最初の出血位置を片側に特定でき,それにより身体診察の焦点が絞られる。また,出血の持続時間のほか,誘因(例,くしゃみ,鼻をかむ,ほじる)および患者による止血の試みを明らかにすべきである。黒色便が生じることがあり,また飲み込まれた血液は胃を刺激するため,患者は血を吐いたと表現する場合がある。出血前の重要な関連症状としては,上気道感染症(URI)の症状,鼻閉感,鼻痛,顔面痛などがある。過去の鼻出血の持続時間および回数とそれらの消失を特定すべきである。

系統的症状把握(review of systems)では,紫斑ができやすい;血便またはタール便;喀血;血尿;および歯磨き,瀉血,または軽微な外傷による出血過多など,過度の出血の症状について尋ねるべきである。

既往歴の聴取では,既知の出血性疾患(家族歴を含む)および血小板または凝固の異常に関連する状態(特に癌,肝硬変,HIV,および妊娠)の有無に注意すべきである。薬歴の聴取では,アスピリンおよび他のNSAID,他の抗血小板薬(例,クロピドグレル),ヘパリン,およびワルファリンなど,出血を促進しうる薬剤の使用について特に尋ねるべきである。

身体診察

バイタルサインを評価し,血管内容量の減少の指標(頻脈,低血圧)および著明な高血圧がないか確認すべきである。活動性出血がみられる場合は,評価と同時に治療を行う。

活動性出血がみられる期間は視診が困難であるため,後述の通り,まずは止血を試みる。その後,鼻鏡および明るいヘッドランプまたは額帯鏡(片手が空き吸引または器具を操作できる)を使用して鼻を診察する。

通常,鼻腔前部の出血部位は,直接的な診察で明確である。明らかな出血部位がなく,1~2カ所の軽微な鼻出血のみがある場合は,さらなる診察は不要である。出血が重度であるか,または繰り返し起きる,かつ出血部位がみられない場合,ファイバースコープによる内視鏡検査が必要となりうる。

全身状態の観察では,点状出血,紫斑,ならびに口腔周囲および口腔粘膜の毛細血管拡張のほか,鼻腔内の腫瘤など,出血性疾患の徴候を確認すべきである。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 循環血液量減少または出血性ショックの徴候

  • 抗凝固薬の使用

  • 出血性疾患の皮膚徴候

  • 直接圧迫または血管収縮薬を染み込ませた綿球により止血されない出血

  • 複数回の再発(特に,明らかな原因を伴わないもの)

所見の解釈

鼻出血の多くの症例では,所見から明確な誘因(特に鼻をかむ,ほじる)が示唆される(鼻出血の主な原因の表を参照)。

検査

鼻出血を診断するのに,ルーチンの臨床検査は必要ない。出血性疾患の症状または徴候を有する患者,および鼻出血が重症または再発する患者では,血算,PT,およびPTTを測定すべきである。

異物,腫瘍,または副鼻腔炎が疑われれば,CTを行うことがある。

治療

活動性出血の患者に対する推定治療は,鼻腔前部の出血に対する治療である。輸血の必要性はヘモグロビン値,貧血症状およびバイタルサインにより判断する。確認された出血性疾患を治療する。

鼻腔前部の出血

通常,出血は背筋を伸ばして患者を座らせ(可能な場合),両鼻翼を10分間つまむことにより止血できる。この手技が奏効しなければ,血管収縮薬(例,0.25%フェニレフリン)および局所麻酔薬(例,2%リドカイン)を染み込ませた綿球を挿入し,さらに10分間鼻をつまむ。その後,出血点を電気焼灼または塗薬用の棒につけた硝酸銀で焼灼することがある。出血血管のすぐ側に隣接する4つの四分円を焼灼するのが最も効果的である。粘膜を深くまで焼灼しすぎないよう注意する必要がある;ゆえに,硝酸銀が望ましい方法である。

別法として,拡張する発泡体の鼻腔タンポンを挿入することもある。バシトラシンまたはムピロシンなどの局所軟膏をタンポンに塗布すると役立つことがある。これらの方法が無効である場合は,様々な市販の鼻バルーンを出血部位の圧迫に使用しうる。

さらに別法として,0.5インチ(1.3cm)のワセリンガーゼから成るパッキングを鼻腔前部に挿入する;最長72インチ(180cm)のガーゼが必要になる場合がある。この処置は痛みを伴い,通常,鎮痛薬が必要である;他の方法が奏効しないまたは利用できない場合にのみ使用すべきである。

鼻腔後部の出血

鼻腔後部の出血では,止血困難な場合がある。市販の鼻バルーンは即効性で簡便である;鼻腔後部のガーゼパッキングは効果的であるが,適切な位置に挿入することが比較的難しい。両手技とも非常に不快である;静注による鎮静および鎮痛が必要となることがあり,入院が必要である。

市販のバルーンは,製品に付属する説明書に従って挿入する。

鼻腔後部のガーゼパッキングは4インチ(10cm)四方の正方形のガーゼを折りたたんで丸め,2本の太い絹糸で縛って固い束にし,抗菌薬の軟膏を塗布したものである。1本の糸の両端を,出血側の鼻腔に入れて口腔から導出しておいたカテーテルに結びつける。カテーテルを鼻から引くと,鼻腔後部のパッキングが上咽頭の軟口蓋の上の位置まで牽引される。2本目の糸(長く残しておく)を咽頭後部に垂らして,パッキングの除去に使用できるように軟口蓋の高さより下で切断する。鼻腔のこのパックより前の部分は0.5インチ(1.3cm)のワセリンガーゼを固く詰め,1本目の糸を前鼻孔の1巻きのガーゼに結んで鼻腔後部のパッキングを固定する。パッキングは4~5日間留置する。抗菌薬(例,アモキシシリン/クラブラン酸875mg,経口にて1日2回,7~10日間)を投与し,副鼻腔炎および中耳炎を予防する。鼻腔後部のパッキングは動脈血Po2を低下させるため,パッキングを詰めている間は酸素投与を行う。この処置には不快感を伴うため,可能であれば回避すべきである。

ときに,出血をコントロールするため内顎動脈およびその分岐を結紮する必要がある。この動脈は,内視鏡または顕微鏡によるガイドを用いたクリッピングおよび上顎洞経由の外科的アプローチにより結紮しうる。別法として,熟練した放射線科医が血管造影による塞栓術を行ってもよい。これらの処置は,適時に行えば入院期間が短縮しうる。

出血性疾患

Rendu-Osler-Weber症候群においては,分層植皮術(鼻中隔植皮術)により鼻出血の数を減少させ,貧血を是正できる。レーザー(Nd:YAG)光凝固術が手術室で施行できる。選択的塞栓術も効果が高く,特に全身麻酔に耐えられない患者または外科的介入が成功しなかった患者で非常に効果的である。新たな副鼻腔内視鏡装置により,経鼻的手術がより有効になっている。

大量の血液が嚥下されている可能性があり,重度の肝疾患を有する患者では,肝性脳症を予防するため浣腸および下剤によりできる限り迅速に血液を除去しなければならない。血液の分解およびアンモニアの吸収を防ぐために,非吸収性抗菌薬(例,ネオマイシン1g,経口にて1日4回投与)により,消化管を殺菌すべきである。

要点

  • 鼻出血のほとんどは鼻腔前部のものであり,直接圧迫により止血する。

  • 出血性疾患のスクリーニング(病歴聴取および身体診察による)が重要である。

  • アスピリン,イブプロフェン,または抗凝固薬の使用について,必ず患者に尋ねるべきである。

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