遺伝性出血性毛細血管拡張症は,遺伝性の血管奇形疾患で,常染色体顕性(優性)の形質で遺伝し,男女を問わず発生する。
(血管性の出血性疾患の概要も参照のこと。)
80%を超える患者が以下の遺伝子の1つに変異を有する(1):
形質転換増殖因子β1(TGF-β1)および形質転換増殖因子β3の受容体をコードするエンドグリン(ENG)遺伝子
アクチビン受容体様キナーゼ(ALK1)をコードするACVRL1(Activin A receptor-like type 1)遺伝子
TGF-βシグナル伝達経路に関与するタンパク質のSMAD4をコードするMADH4(MADH4)遺伝子
総論の参考文献
1.Kritharis A, Al-Samkari H, Kuter D.Hereditary hemorrhagic telangiectasia: Diagnosis and management from the hematologist’s perspective.Haematologica.103:1433–1443, 2018.doi: 10.3324/haematol.2018.193003
遺伝性出血性毛細血管拡張症の症状と徴候
遺伝性出血性毛細血管拡張症の最も特徴的な病変は,顔面,唇,口腔および鼻粘膜,ならびに指趾先端にみられる赤から紫色の毛細血管拡張性の小さな病変である。同様の病変が消化管粘膜のいたる所にみられ,反復性の消化管出血をもたらすことがある。反復性の大量の鼻出血を来す場合がある。
肺動静脈奇形(AVM)が認められる患者もいる。それらのAVMにより有意な右左短絡が形成され,呼吸困難,疲労感,チアノーゼ,または赤血球増多を引き起こすことがある。ただし,脳膿瘍,一過性脳虚血発作,または感染性もしくは非感染性の塞栓によりもたらされた脳卒中がAVMの存在を示す最初の徴候となる場合もある。一部の家系では大脳または脊髄のAVMがみられ,それによりくも膜下出血,痙攣発作,または対麻痺を起こすことがある。肝AVMは,肝不全と高拍出性心不全につながる場合がある。
慢性鉄欠乏性貧血がよくみられる。
この写真には,遺伝性出血性毛細血管拡張症に続発した多発性毛細血管拡張症の患者の顔面が写っている。
この写真には,遺伝性出血性毛細血管拡張症に続発した多発性毛細血管拡張症の患者の顔面が写っている。
DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY
遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler-Weber-Rendu症候群)は,皮膚,粘膜,および内臓の広範囲に毛細血管拡張と動静脈奇形が生じる常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患である。主に舌,唇,指先,口周囲,および体幹に丘疹状,点状,線状の毛細管拡張が生じる。
遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler-Weber-Rendu症候群)は,皮膚,粘膜,および内臓の広範囲に毛細血管拡張と動静脈奇形が生じる常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患である。主に舌,唇,指先,口周囲,および体幹に丘疹状,点状,線状の毛
By permission of the publisher. From Deitcher S.In Atlas of Clinical Hematology. Edited by JO Armitage. Philadelphia, Current Medicine, 2004.
DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY
遺伝性出血性毛細血管拡張症の診断
臨床的評価
ときに内視鏡検査または血管造影
ときに遺伝子検査
遺伝性出血性毛細血管拡張症の診断は,鼻出血と家族歴との関連において,顔面,口,鼻,手掌,指趾,および/または内部臓器にみられる特徴的な動静脈奇形の所見に基づく。 Curaçaoの基準には以下が含まれる:
繰り返す自発性の鼻出血
典型的な部位における多発性の毛細血管拡張症
確認された内臓動静脈奇形(例,肺,肝臓,脳,および脊椎)
遺伝性出血性毛細血管拡張症を有する第1度近親者
遺伝性出血性毛細血管拡張症は,これらの基準のうち3つを満たせば確定,2つを満たせば可能性ありと判断される(1, 2)。
ときに内視鏡検査,血管造影,またはその両方が必要となる。多くの患者で鉄欠乏性貧血が認められることを除けば,臨床検査所見は通常は正常である。
非定型な特徴を有する一部の患者,または無症状の家族のスクリーニングでは,ENG,ACVRL1,およびSMADH4(MADH4)変異の検査が役立つ場合がある。
診断に関する参考文献
1.Shovlin CL, Guttmacher AE, Buscarini E, et al.Diagnostic criteria for hereditary hemorrhagic telangiectasia (Rendu-Osler-Weber syndrome).Am J Med Genet.91(1):66–67, 2000.doi: 10.1002/(sici)1096-8628(20000306)91:1<66::aid-ajmg12>3.0.co;2-p
2.Faughnan ME, Mager JJ, Hetts SW, et al.Second international guidelines for the diagnosis and management of hereditary hemorrhagic telangiectasia.Ann Intern Med.173(12):989–1001, 2020.doi: 10.7326/M20-1443
遺伝性出血性毛細血管拡張症のスクリーニング
肺,肝臓,または脳の動静脈奇形の家族歴があれば,思春期に加え,青年期末期の時点で肺CT,肝CT,および大脳MRIによるスクリーニングが推奨される。スクリーニングでは,慢性失血による鉄欠乏性貧血の確認も行われる。また,前述の遺伝子変異に対する血液検査もスクリーニングに含めることがある。
遺伝性出血性毛細血管拡張症の治療
ときに症候性動静脈奇形に対するレーザー焼灼術,外科的切除,または塞栓術
経口または静脈内投与による鉄補充療法
場合により輸血
ときに抗線溶薬(例,アミノカプロン酸,トラネキサム酸)
ときに血管新生阻害薬(例,ベバシズマブ,ポマリドミド,サリドマイド)
大半の患者の治療では,鼻出血に対する局所療法,動静脈奇形に対するレーザー治療や外科的介入,輸血,鉄補充,抗線溶薬および血管新生阻害薬による全身療法などの介入が併用される。例えば,到達可能な毛細血管拡張(例,鼻の中や消化管内の内視鏡で到達可能な領域にあるもの)はレーザー焼灼術で治療したり,肺の動静脈奇形は外科的切除またはコイル塞栓術で治療したりすることがある。
肝病変は手術と塞栓術のいずれにも適さないことがある。血清アンモニア値の測定が血液の肝シャントの程度を評価するのに役立つことがある(1)。
輸血の反復が必要になることがある。
繰り返す粘膜出血で失われる鉄を補充するため,多くの患者で経口剤による継続的な鉄補充療法が必要になる(鉄欠乏性貧血の治療を参照)。多くの患者が非経口鉄剤の(静脈内)投与も必要とし,ときに遺伝子組換えエリスロポエチンが必要になることもある。
遺伝性出血性毛細血管拡張症の治療に薬物療法が用いられることが増えてきており,赤血球輸血,鉄剤投与,および外科的介入の必要性を減らすことができる(2, 3)。選択肢としては,線溶を阻害する薬剤(例,アミノカプロン酸,トラネキサム酸)や血管新生を阻害する薬剤(例,ベバシズマブ,ポマリドミド,サリドマイド,パゾパニブ)などがある(4)。特にベバシズマブは,遺伝性出血性毛細血管拡張症の患者で鼻出血および消化管出血の発生率を低下させることが示されている(5, 6, 2)。また,ポマリドミドをプラセボと比較した試験では,鼻出血の重症度および疾患特異的QOLスコアに統計学的に有意な改善が認められた(7)。
肺動静脈奇形による脳内への粒子状物質の奇異性塞栓を回避するため,全ての輸液をフィルターを通して投与する必要がある。
治療に関する参考文献
1.Bloom PP, Rodriguez-Lopez J, Witkin AS, et al.Ammonia predicts hepatic involvement and pulmonary hypertension in patients with hereditary hemorrhagic telangiectasia. Clin Transl Gastroenterol.11(1):e00118, 2020.doi:10.14309/ctg.0000000000000118
2.Faughnan ME, Mager JJ, Hetts SW, et al.Second international guidelines for the diagnosis and management of hereditary hemorrhagic telangiectasia.Ann Intern Med.173(12):989–1001, 2020.doi: 10.7326/M20-1443
3.Al-Samkari H.How I treat bleeding in hereditary hemorrhagic telangiectasia. Blood.2024;144(9):940-954.doi:10.1182/blood.2023021765
4.Al-Samkari H.Hereditary hemorrhagic telangiectasia: systemic therapies, guidelines, and an evolving standard of care.Blood.137 (7): 888–895, 2021.doi:10.1182/blood.2020008739
5.Al-Samkari H, Kasthuri RS, Parambil JG, et al: An international, multicenter study of intravenous bevacizumab for bleeding in hereditary hemorrhagic telangiectasia: the InHIBIT-Bleed study.Haematologica 106(8):2161–2169, 2021. doi: 10.3324/haematol.2020.261859
6.Dupuis-Girod S, Rivière S, Lavigne C, et al.Efficacy and safety of intravenous bevacizumab on severe bleeding associated with hemorrhagic hereditary telangiectasia: A national, randomized multicenter trial. J Intern Med.2023;294(6):761-774.doi:10.1111/joim.137142
7.Al-Samkari H, Kasthuri RS, Iyer VN, et al.Pomalidomide for Epistaxis in Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia. N Engl J Med.2024;391(11):1015-1027.doi:10.1056/NEJMoa2312749
要点
遺伝性出血性毛細血管拡張症の患者では,鼻および消化管の毛細血管拡張によって有意な外出血が引き起こされることがある。
中枢神経系,肺,および肝臓の血管奇形から出血が起こることがあり,肝臓および肺の奇形により有意なシャント形成がみられる場合がある。
到達可能な粘膜の毛細血管拡張および動静脈奇形であれば,レーザー焼灼術で治療してもよく,肺の血管奇形に対しては,コイル塞栓術または外科的切除が必要になることがある。
抗線溶薬および血管新生阻害薬は出血の発生率を低下させる可能性がある。
慢性の失血のため,多くの患者が非経口鉄剤の投与を必要とする。
肺動静脈奇形による脳内への粒子状物質の奇異性塞栓を回避するため,静注液は全てフィルターを通して投与すべきである。



