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アメーバ症

(腸管アメーバ症)

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 2月

アメーバ症は,赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)による感染症である。一般的には無症状であるが,軽度の下痢から重度の赤痢まで様々な症状が生じることもある。腸管外感染症には肝膿瘍などがある。診断は便検体中の赤痢アメーバ(E. histolytica)の同定または血清学的検査による。症候性疾患の治療はメトロニダゾールまたはチニダゾールにより,その後,管腔内のシストに対して活性のあるパロモマイシンまたは他の薬剤を使用する。

Entamoeba属の3種は形態学的には鑑別できないが,分子生物学的手法により異なる種であることが示されている。

  • 赤痢アメーバ(E. histolytica)(病原性)

  • E. dispar(比較的頻度は高いが無害な定着菌)

  • E. moshkovskii(病原性は不明)

アメーバ症は赤痢アメーバ(E. histolytica)によって引き起こされ,社会経済的条件および衛生状態が不良な地域で発生する傾向がある。大半の感染は,中米,南米西部,西および南アフリカ,ならびにインド亜大陸で発生している。先進国(例,米国)では,大半の症例は流行地域からの最近の移民および旅行者の間で発生している。

世界では,毎年4000万~5000万人がアメーバ性大腸炎または腸管外疾患を発症し,約40,000~70,000人が死亡している。

病態生理

Entamoeba属の原虫は以下の2つの形態をとる:

  • 栄養型

  • シスト(嚢子)

運動性を有する栄養型は,細菌や組織を餌として増殖し,大腸の内腔および粘膜に定着し,ときに組織や臓器に侵入する。栄養型は液状便中に多く含まれるが,体外ではすぐに死滅し,摂取されると胃酸により殺虫される。結腸内腔の栄養型の一部はシストとなり,便とともに排出される。

赤痢アメーバ(E. histolytica)の栄養型は,結腸の上皮細胞および多形核白血球(PMN)に付着してこれらを殺傷することがあり,血液および粘液を伴う赤痢の原因となりうるが,便中に検出される多形核白血球(PMN)はわずかである。栄養型はまた,細胞外基質を分解するプロテアーゼの分泌も行い,それにより腸壁への侵入および穿通が可能となる。栄養型は門脈循環を介して広がり,壊死性の肝膿瘍を引き起こすことがある。感染は肝臓から直接右肺および胸腔へ,あるいはまれに,血流を介して脳および他臓器へ進展することがある。

シストは有形便中に多く含まれ,外部環境での破壊に対して抵抗性を示す。シストはヒトからヒトへ直接的に伝播するか,食品または水を介して間接的に伝播する。アメーバ症は口腔と肛門の接触を介して性的に伝播することもある。

症状と徴候

ほとんどの感染者は無症状であるが,便中へのシストの排出が慢性的にみられる。組織侵襲に伴って以下の症状がみられる:

  • 間欠的な下痢と便秘

  • 鼓腸

  • 痙攣性の腹痛

肝臓または上行結腸の部分に圧痛を来し,便は粘液および血液を含むことがある。

アメーバ赤痢

この病型は熱帯地域でよくみられ,しばしば血液,粘液,および生きた栄養型が検出される半液状便の頻回のエピソードとして発症する。腹部所見は,軽度の圧痛から明らかな腹痛に高熱および全身中毒症状を伴うものまで様々である。アメーバ性大腸炎にはしばしば腹部の圧痛を伴う。

再発までの間,症状は軽減して反復性の痙攣および下痢便またはかなりの軟便程度にとどまるが,るいそうおよび貧血が生じうる。虫垂炎を示唆する症状が出現することがある。このような症例では,手術によりアメーバが腹腔内に播種されることがある。

慢性アメーバ感染症

慢性アメーバ感染症は炎症性腸疾患に類似し,腹痛,粘液,鼓腸,および体重減少を伴う間欠性の非赤痢性下痢として発現しうる。慢性感染症はまた,盲腸および上行結腸における圧痛のある触知可能な腫瘤または輪状病変(アメーバ性肉芽腫)として現れることもある。

腸管外アメーバ症

腸管外アメーバ症は結腸の感染症から始まり,どの臓器にも及びうるが,最も多いのは肝膿瘍である。

肝膿瘍は通常,単発性で右葉に生じる。腸管外疾患は前症状のない患者に現れることがあり,男性の方が女性より多く(7:1~9:1),潜行性に進行しうる。症状としては,肝臓付近の疼痛または不快感(ときに右肩に放散する)のほか,間欠熱,発汗,悪寒,悪心,嘔吐,脱力,体重減少などがある。黄疸はまれであり,あっても重症度は低い。膿瘍が横隔膜下腔,右胸腔,右肺,または他の隣接臓器(例,心膜)に穿孔することがある。

ときに皮膚病変が観察され,特に慢性感染症では会陰部および殿部周辺に多く,外傷または手術創にも生じうる。

診断

  • 腸管感染症:便の鏡検,酵素免疫測定法,および/または血清学的検査

  • 腸管外感染症:画像検査および血清学的検査または試験的治療

非赤痢性アメーバ症は過敏性腸症候群,限局性腸炎,または憩室炎と誤診されることがある。右側結腸の腫瘤は,癌,結核,放線菌症,またはリンパ腫と間違われることもある。

アメーバ赤痢は細菌性赤痢,サルモネラ症,住血吸虫症,または潰瘍性大腸炎と混同されることがある。アメーバ赤痢の便は通常,細菌性赤痢に比べて頻度が低く,水様性も低い。粘度の高い粘液および血液の斑点を含むのが特徴である。細菌性赤痢,サルモネラ症,および潰瘍性大腸炎とは異なり,アメーバ赤痢では栄養型が白血球を溶解するため,便中に多数の白血球は含まれない。

肝アメーバ症およびアメーバ性膿瘍を,他の肝臓感染症および腫瘍と鑑別する必要がある。

アメーバ症の診断は便または組織中のアメーバの栄養型,シスト,またはその両方の検出により裏付けられるが,病原性の赤痢アメーバ(E. histolytica)を非病原性のE. disparおよびE. moshkovskiiと形態学的に鑑別することはできない。便中の赤痢アメーバ(E. histolytica)抗原を検出する免疫測定法は,感度および特異度がともに高く,診断確定に用いられる。赤痢アメーバに対する特異的なDNA検出法が,基準となる検査施設で利用できる。

血清学的検査は以下の頻度で陽性となる:

  • アメーバ性肝膿瘍を有する患者の約95%

  • 活動性の腸管感染症を有する患者の70%超

  • 無症候性保虫者の10%

酵素免疫測定法(EIA)は最も広く用いられている血清学的検査である。抗体価により赤痢アメーバ(E. histolytica)感染症を確定できるが,抗体価は数カ月または数年持続することがあるため,感染症有病率の高い地域の住民において,急性感染と過去の感染を鑑別するのは不可能である。そのため,過去の感染の可能性が低いと考えられる場合(例,流行地域への旅行者)には,血清学的検査が有用である。

アメーバによる腸管感染症

腸管内アメーバの同定には3~6回分の便検体の検査および濃縮手技を要することがある( 寄生虫感染症の顕微鏡診断のための検体の採取および取扱い*)。抗菌薬,制酸薬,止瀉薬,浣腸,および注腸造影剤は原虫回収を妨げる恐れがあるため,便検査が済むまで投与してはならない。赤痢アメーバ(E. histolytica)は,E. disparおよびE. moshkovskiiのほか,大腸菌(E. coli),E. hartmanni,小形アメーバ(Endolimax nana),Iodamoeba bütschliiなど,その他の非病原性アメーバとも鑑別する必要がある。便中の抗原に対するPCR法を用いた分子生物学的分析法と酵素免疫測定法は,比較的感度が高く,赤痢アメーバ(E. histolytica)を非病原性微生物と鑑別することができる。

症状のある患者では,直腸鏡検査によりしばしば特徴的なフラスコ形の粘膜病変を認めるためこれを吸引し,吸引物中の栄養型の有無を検査すべきである。直腸S状部病変の生検検体においても栄養型を検出しうる。

アメーバによる腸管外感染症

アメーバによる腸管外感染症は診断が比較的困難である。便検査は通常は陰性となり,吸引した膿から栄養型が回収されることもまれである。肝膿瘍が疑われる場合は,超音波検査,CT,またはMRIを施行すべきである。これらの検査の感度は同程度で,いずれの方法でもアメーバ性膿瘍と化膿性膿瘍を確実に鑑別することはできない。

穿刺吸引は以下に対してのみ行われる:

  • 病因不明の病変

  • 破裂寸前と思われる病変

  • 薬物療法に対する反応が不良の病変

膿瘍には黄色からチョコレート色の濃厚な半流動性物質が入っている。針生検で壊死組織を認めることはあるが,膿瘍内容物から運動性を示すアメーバを検出することは困難であり,アメーバのシストは存在しない。

アメーバ性肝膿瘍に対しては,抗アメーバ薬による試験的治療が最も有用な診断ツールである。

パール&ピットフォール

  • 腸管外アメーバ症の患者では,便の鏡検は通常陰性である。

治療

  • 初期にメトロニダゾールまたはチニダゾール

  • その後はシスト除去のため,iodoquinol,パロモマイシン,またはフロ酸ジロキサニド

消化管症状および腸管外アメーバ症には,以下の薬剤が使用される:

  • メトロニダゾール:成人では500~750mg,1日3回(小児では12~17mg/kg,1日3回)で7~10日間経口投与する

  • チニダゾール:成人では2g,経口,1日1回(3歳以上の小児では50mg/kg[最大2g])で,軽度から中等度の消化管症状には3日間,重度の消化管症状には5日間,アメーバ性肝膿瘍には3~5日間投与する

メトロニダゾールとチニダゾールは妊婦に投与してはならない。これらの薬剤にはジスルフィラム様作用があるため,飲酒を控える必要がある。消化管への有害作用の点で,チニダゾールは一般にメトロニダゾールより忍容性が良好である。

顕著な消化管症状のある患者の治療には,水分および電解質の補給とその他の支持療法も含めるべきである。

メトロニダゾールおよびチニダゾールは赤痢アメーバ(E. histolytica)のシストに対してある程度の活性を有するが,シストを除去するには不十分である。そのため,腸管内に残存するシストを除去するために2つ目の経口薬が使用される:

シスト除去の選択肢は以下のものである:

  • iodoquinolを成人では650mg,経口,1日3回,食後(小児では10~13mg/kg[最大2g/日],経口,1日3回)で20日間投与する

  • パロモマイシン8~11mg/kg,経口,1日3回,食事とともに,7日間

  • フロ酸ジロキサニドを成人では500mg,経口,1日3回(小児では7mg/kg,経口,1日3回)で10日間投与する

フロ酸ジロキサニドは米国では市販されていない。

赤痢アメーバ( E. histolytica)のシストを排出する無症状の患者は,侵襲性疾患と体内の他の部位や他者への感染拡大を予防するため,パロモマイシン,iodoquinol,またはフロ酸ジロキサニドで治療する(用量は上記を参照のこと)。

E. disparまたはE. moshkovskii感染症に対する治療は必要ない。しかし,これらを赤痢アメーバ(E. histolytica)と鑑別できる抗原検査またはPCR法が利用できない場合は,臨床的な判断により治療を決定する(例,赤痢アメーバ(E. histolytica)への曝露の可能性によって)。

予防

ヒトの便による食品および水の汚染は防止しなければならないが,無症候性キャリアの頻度が高いため,問題は複雑化している。開発途上地域では,サラダおよび野菜などの非加熱調理食品,および汚染の可能性のある水および氷は避けるべきである。煮沸すれば赤痢アメーバ(E. histolytica)のシストは死滅する。ヨウ素または塩素を含有する化合物を用いた化学的消毒法の有効性は,水温および水中の有機残屑の量に左右される。携帯用濾過器の防御効果は様々である。

ワクチンの開発が続いているが,利用できるワクチンはまだない。

要点

  • 赤痢アメーバ(E. histolytica)は通常赤痢を引き起こすが,ときに肝膿瘍を引き起こすこともある。

  • アメーバによる腸管感染症は便の抗原検査または鏡検を用いて診断する。

  • アメーバによる腸管外感染症は,血清学的検査または抗アメーバ薬による試験的治療を用いて診断するが,前者は過去の感染の可能性が低いと考えられる場合(例,流行地域への旅行者)に特に有用である。

  • メトロニダゾールまたはチニダゾールで治療してアメーバを除去し,次いでiodoquinolまたはパロモマイシンで腸管内のシストを死滅させる。

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