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寄生虫感染症へのアプローチ

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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本ページのリソース

条虫腸管外寄生原虫腸管内寄生原虫線虫,および吸虫も参照のこと。)

ヒトの寄生虫は,ヒトの体表または体内に生息して,その個体(宿主)から栄養を摂取する微生物である。寄生虫には以下の3種類がある:

  • 単細胞生物である原虫

  • 多細胞生物である蠕虫

  • ダニやシラミなどの外部寄生虫

原虫および蠕虫による寄生虫感染症は,世界的に疾患および死亡の原因としてかなりの割合を占めている。寄生虫感染症は中南米,アフリカ,およびアジアで蔓延している。一方,オーストラリア,カナダ,欧州,日本,ニュージーランド,および米国では,はるかに頻度が低い。熱帯の衛生環境が不良な貧困地域の住民に及ぼす影響が群を抜いて大きいが,先進国でも移民および流行地域から戻った旅行者に寄生虫感染症がみられ,ときに旅行経験のない住民,特にAIDSまたは免疫不全の原因となる他の疾患を有する人にもみられる。

多くの寄生虫感染症が,食品または水の糞便汚染を通して広がる。寄生虫感染症は,下水設備および衛生状態の悪い地域で最も頻度が高い。鉤虫など一部の寄生虫は,汚染された土(住血吸虫の場合は汚染された淡水)との接触中に皮膚に侵入できる。マラリアなど他の寄生虫は媒介節足動物によって伝播される。まれに,輸血もしくは注射針の共用による寄生虫の伝播,または母親から胎児への先天的伝播がある。

一部の寄生虫は,米国および他の先進国で流行している。例としては,ヒト蟯虫(Enterobius vermicularis),腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis),Toxoplasma gondiiのほか,ランブル鞭毛虫(Giardia intestinalisG. duodenalisまたはG. lambliaとしても知られる])やCryptosporidium属などの腸管寄生虫が挙げられる。

原虫感染症と蠕虫感染症の特徴は重要な点で異なっている。

原虫

原虫は,単純な2分裂で増殖する単細胞生物である( 腸管内寄生原虫および微胞子虫および 腸管外寄生原虫)。原虫はヒト宿主内で増殖可能で,数が増えて極めて重症の感染症をもたらす。まれな例外を除き,原虫感染症は好酸球増多を引き起こさない。

蠕虫

蠕虫は多細胞生物であり,複雑な器官系を有する。蠕虫はさらに以下に分類される:

一部の寄生虫は嫌気条件の腸管腔における生息に適応している一方,好気条件の血液または組織に生息するものもある。

原虫とは対照的に,蠕虫はヒトの体内では増殖しないが,組織を移行する際に好酸球増多の反応を引き起こす。大部分の蠕虫の生活環は複雑で,ヒト宿主外でかなりの時間を過ごす。糞線虫(Strongyloides stercoralis),フィリピン毛細虫(Capillaria philippinensis),および小形条虫(Hymenolepis nana)を含む数種は,自家感染(子孫が別の宿主に伝播して感染するのでなく,同じ宿主に再感染する)により増殖できる。糞線虫症では,自家感染が免疫抑制患者(特にコルチコステロイド使用者)において生命を脅かす播種性の過剰感染を来しうる。

蠕虫感染症の重症度は通常感染虫体数と相関するが,1匹の回虫が膵管に移動し,膵管を閉塞して生命を脅かす膵炎を引き起こすなどの例外もある。感染虫体数は環境性曝露の程度,寄生虫側の要因,および遺伝的に決定される宿主の免疫応答によって異なる。人が流行地域から離れると,成虫数は時間とともに減少する。いくつかの寄生虫(例,肝吸虫[Clonorchis sinensis])は数十年生存できるが,多くの種の寿命は数年に過ぎない。

線虫は無体節の円柱状の蠕虫であり,体長は1mmから1mである。線虫は体腔を有する点で条虫および吸虫と異なる。ヒトに対して感染性を示す発育段階は種によって異なる。線虫は何億人ものヒトに寄生しており,その中で最も頻度が高いものは回虫(Ascaris属ー回虫症),鉤虫,および鞭虫(Trichuris属ー鞭虫症)である。

条虫(条虫類)の成虫は複数の体節で構成される扁平な蠕虫であり,消化管を欠き,宿主の小腸から栄養分を直接吸収する。成虫は宿主の消化管内で大きくなることがあり,全長が40mにもなる種もある。ヒトに感染する条虫としては,広節裂頭条虫Diphyllobothrium latum;魚条虫[fish tapeworm]),無鉤条虫Taenia saginata;ウシ条虫[beef tapeworm]),有鉤条虫Taenia solium;ブタ条虫[pork tapeworm])などがある。

吸虫(吸虫類)は血管,消化管,肺,または肝臓に寄生する体節を欠く扁形動物である。通常は体長数センチメートルに過ぎないが,中にはたった1mmのものや,7cmに及ぶものもある。ヒトの吸虫感染症のほとんどは,住血吸虫属(Schistosoma属ー住血吸虫症),ウェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani 肺吸虫症),肝吸虫(Clonorchis sinensis肝吸虫症)のいずれかによって引き起こされる。

微胞子虫

微胞子虫は胞子を形成する細胞内寄生生物であり,かつては原虫に分類されていたが,遺伝子解析から真菌またはその近縁種であることが判明している。微胞子虫によるヒトの疾患は,主にAIDSやその他の重度の易感染状態にある患者に限られる。臨床像には,胃腸炎,眼の局所的な異常,播種性感染症などがある。

診断

  • 鏡検

  • 抗原およびDNA検査

具体的な寄生虫感染症の診断法については, 寄生虫感染症の顕微鏡診断のための検体の採取および取扱い*に要約する。個々の感染症については,本マニュアルの別の箇所も参照のこと。

下水設備および衛生状態が不良の地域または昆虫媒介性疾患の流行地域の住人もしくは旅行者にみられる臨床症候群の鑑別診断では,寄生虫感染症を考慮すべきである。例えば,旅行から戻ってきた患者の発熱はマラリアの可能性を示唆する。経験的には,流行地域から先進国への移民が友人や親戚を訪ねる目的で帰省した場合に特に高リスクであることが示されている。そういった人々はしばしば旅行前に疾患予防に関する助言を求めないか,その余裕がないため,行楽地の施設に滞在する旅行者より高リスク環境に入る可能性が高い。

より頻度は低いが,疑わしい臨床症候群を呈する先進国の住人においても(たとえ旅行歴がなくても),流行している病寄生虫感染症または輸入寄生虫感染症の可能性を考慮しなければならない。

病歴情報,身体所見,および検査データからも特定の寄生虫感染症が示唆されうる。例えば,好酸球増多は蠕虫の組織移行の際によくみられ,移民または旅行から戻った者における寄生虫感染症を示唆する。

かつての寄生虫感染症の診断は,便,血液,組織,その他の検体中で虫卵,幼虫,または成虫を同定するか,血清抗体の存在に基づいて行われていたが,現在では寄生虫抗原の同定や寄生虫DNAに対する分子生物学的検査が用いられることが増えている。

多くの主要な医療施設,トラベルクリニック,および保健局において,寄生虫感染症および熱帯医学の専門知識をもつ医師へのコンサルテーションが可能である。

診断方法の詳細については,CDCのLaboratory Identification of Parasites of Public Health Concernを参照のこと。

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寄生虫感染症の顕微鏡診断のための検体の採取および取扱い*

寄生虫

最適な検体

採取の詳細

備考

血液

マラリア原虫(Plasmodium属)

毛細管血(すなわち指または耳垂から使い捨てランセットを用いて採取)または5~10mLの抗凝固処理済み新鮮血(EDTAを含む試験管を用いて採取するのが望ましい)の厚層および薄層塗抹標本

急性期に複数の検体を採取する。

採血後3時間以内に毛細管血または抗凝固処理済み血液の塗抹標本を作成する。

ライトまたはギムザ染色を用いる。

スライドガラスは必ず清潔であること。

バベシア(Babesia属)

マラリア原虫(Plasmodium)の場合と同様,厚層および薄層塗抹標本

マラリア原虫(Plasmodium)と同様の方法で採取する。

ライトまたはギムザ染色を用いる。

形態はリング状のマラリア原虫(Plasmodium)に類似するが,マラリア色素および生殖母体はない。4つ組の虫体(tetrad)はBabesia属の診断に有用であるが,まれである。

トリパノソーマ(Trypanosoma属)

毛細管血または5~6mLの抗凝固処理済み血液の薄層塗抹標本

毛細管血または抗凝固処理済み血液を使用する。スライドガラス上に塗抹する。

感度向上のために,様々な濃縮方法が用いられている。

直接鏡検で運動性を示すトリパノソーマを認める;これを同定するには,標本を固定してギムザ(またはField)染色する。

糸状虫

1mLの抗凝固処理済み血液の薄層または厚層塗抹標本;最初の検体が陰性であれば,遠心分離または濾過によって濃縮した5~10mLの検体

バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)およびマレー糸状虫(Brugia malayi)のミクロフィラリア:午後10時から午前2時の間に採血する。

ロア糸状虫(Loa loa),Dipetalonema perstans,およびMansonella ozzardi:午前10時から午後6時の間に採血する。

ギムザ染色またはヘマトキシリン-エオジン染色をそのまま行うか,感度を上げたい場合は,2%ホルマリンに浸水(Knott法)またはニュークリポア®メンブレンで濾過してから染色する。

骨髄,その他の細網内皮系組織,または髄液

リーシュマニア(Leishmania属)

骨髄,脾臓,肝臓,またはリンパ節の吸引物またはバフィーコート塗抹標本

スライドガラス上に塗抹する。

ギムザ,ライト-ギムザ,またはヘマトキシリン-エオジン染色を用いる。

ネグレリア(Naegleria属)

アカントアメーバ(Acanthamoeba属)

バラムチア(Balamuthia属)

新鮮な髄液

無菌採取法を用いる。

検体はできる限り速やかに検査する。

光学顕微鏡または位相差顕微鏡を用いて検査する。

寄生虫の動きで虫体を検出できることがある;虫体は固定してギムザ染色するか培養する。

ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)およびTrypanosoma brucei rhodesiense

リンパ節または下疳の穿刺吸引

新鮮な髄液

無菌採取法を用いる。

遠心分離による濃縮前または濃縮後に,直接鏡検によって運動性のある寄生虫を同定するか,固定およびギムザまたはField染色を行う。

十二指腸吸引物または空腸生検

ジアルジア(Giardia属)

クリプトスポリジウム(Cryptosporidium属)

シストイソスポーラ(Cystoisospora属)

サイクロスポーラ(Cyclospora属)

微胞子虫

糞線虫(Strongyloides属)

十二指腸吸引物または空腸生検の標本

吸引物は直ちに検査するか,または固定および染色する。生検標本の病理組織検査を行う。

吸引物の直接鏡検により,虫卵または糞線虫(Strongyloides属)の幼虫を同定する。診断を下すために複数の染色を使用することがある(詳細は以下の便の項目を参照のこと)。

微胞子虫の同定には,透過型電子顕微鏡による観察がゴールドスタンダードである。

直腸生検

マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni

日本住血吸虫(Schistosoma japonicum

肛門から約9cmの位置にある,背部の直腸横ひだ(Houston弁)からの直腸生検検体

病理組織学的検査用に固定を行い,感度向上のために生検材料をスライドにはさんで押しつぶす。

種の同定は虫卵の形態に基づく。

S状結腸鏡検査(直腸内視鏡検査)

赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica

鋭匙またはVolkmann spoonで採取した新鮮な擦過検体,手術器具で切除した粘膜小片,またはゴム球付き血清用1mLピペット(先端が綿のスワブは十分ではない)で病変部から得た吸引物

検体は直ちに検査するか,固定および染色の後に検査する。

栄養型およびシストの同定には,直接鏡検または固定染色標本(例,トリクローム染色)を用いる。赤痢アメーバ(E. histolytica)抗原に対する便検査を行うべきであり,この検査は比較的感度が高く,赤痢アメーバ(E. histolytica)を病原性のない他のアメーバと鑑別することができる。

便

赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica

Entamoeba dispar

Entamoeba moshkovski

その他のアメーバ

午前中の排便直後の便,複数回分(3回分以上)

形をなさない便または下痢便の検体は15分以内に検査する。

有形便は検査まで冷蔵しておく。ホルマリンまたは他の固定液の中で保存する。

シストの観察には,直接鏡検および永久染色(例,トリクローム染色)ならびに集シスト法を用いる。

赤痢アメーバ(E. histolytica)の特定の抗原に対して便検査を行うべきであり,これは比較的感度が高く,赤痢アメーバ(E. histolytica)を病原性のないE. disparE. moshkovski属原虫,およびその他病原性のない微生物と鑑別することができる。

ジアルジア(Giardia属)

隔日で午前中に採取した排便直後の便複数回分(3回分以上)

直後に検査するか,ホルマリンまたは他の固定液の中で保存する。栄養型は十二指腸吸引物中でも同定されることがある。

直接塗抹標本と濃縮検体を検査する。シストは通常は直接鏡検で観察され,栄養型はトリクローム染色した固定標本で観察される。便抗原検査はより感度が高い。

クリプトスポリジウム(Cryptosporidium属)

連日または隔日採取した排便直後の便,複数回分(3回分以上)

新鮮検体を冷蔵して検査するか,ホルマリンまたは他の固定液の中で保存する。

慎重に取り扱うこと;新鮮便および二クロム酸で保存した便は感染性を有する。

十二指腸の吸引物または生検が診断に有用である。

直接塗抹標本を通常の光学顕微鏡,微分干渉顕微鏡,および蛍光抗体顕微鏡法で鏡検する。

抗酸菌染色変法またはサフラニン染色変法で検体を染色する。便抗原検査はより感度が高い。

シストイソスポーラ(Cystoisospora属)

連日または隔日採取した排便直後の便,複数回分

新鮮な状態で検査するか,ホルマリンまたは他の固定液の中で保存する。濃縮法により感度が向上する。

直接塗抹標本を明視野微分干渉顕微鏡またはエピ蛍光顕微鏡で鏡検することで,オーシストを観察できる。固定した検体を抗酸菌染色変法で染色する。便が陰性の場合は,十二指腸の吸引物または生検検体の検査が診断につながる可能性がある。

サイクロスポーラ(Cyclospora属)

連日または隔日採取した排便直後の便,複数回分

検体は冷蔵して新鮮または凍結状態で検査するか,または10%ホルマリン液および2.5%二クロム酸カリウム水溶液で保存すべきである。検査の種類によって保存方法が異なる。濃縮法により感度が向上する。

直接塗抹標本を通常の光学顕微鏡,明視野微分干渉顕微鏡,および紫外蛍光顕微鏡で鏡検する。オーシストは紫外線下で自家蛍光する。固定した検体は抗酸菌染色変法またはサフラニン染色変法で染色できる。胞子検査(sporulation assay)によってCyclosporaと藍藻を鑑別できる。

微胞子虫

連日または隔日採取した複数回分の便

便が陰性ならば小腸生検を要することがある。

クロモトロープ酸を用いる方法での染色検体が最も広く使用されている。迅速な同定のためにカルコフロールホワイトなどの化学蛍光物質も使用できる。

電子顕微鏡検査が最も感度が高く,種の同定に使用される。

鞭虫(Trichuris属)

回虫(Ascaris属)

鉤虫

糞線虫(Strongyloides属)

条虫

吸虫

毎日採取した複数回分の便(糞線虫(Strongyloides)には最高7回必要)

検体を冷蔵して新鮮な状態で検査するか,または10%ホルマリンで固定してホルマリン・酢酸エチル法により遠心・濃縮する。

糞線虫(Strongyloides)では動く幼虫が検出され,その他の蠕虫では虫卵が検出される。

糞線虫(Strongyloides)では,虫卵および虫体の検査よりも寒天培地での培養の方が感度が高い。便を室温下に放置すると,糞線虫(Strongyloides)の幼虫が孵化した鉤虫の幼虫のように見えることがある。

Enterobiu

セロファンテープで肛門周囲から採取した虫卵をスライドガラスに載せる

午前中の排便または入浴前に肛門周囲から採取する。

蟯虫(Enterobius)の虫卵は,ときに便検体またはパパニコロウ検査で採取された腟検体中に検出されることがある。成虫は,肛門周囲または腟内に観察されることがある。

喀痰または呼吸器吸引物

肺吸虫(Paragonimus属)

新鮮な喀痰

検体はできる限り速やかに検査,または後で検査するために保存する。

濃縮法を要することがある。ときに胸水から虫卵が検出されることがある。

糞線虫(Strongyloides属)の過剰感染

喀痰,吸引物,BALで得た体液,またはドレナージ液

検体はできる限り速やかに検査,または後で検査するために保存する。

直接塗抹標本で運動する幼虫を観察できることもあれば,幼虫を固定してギムザ染色することもできる。

肺生検

肺吸虫(Paragonimus属)

直視下の肺生検または

X線透視下もしくはCTガイド下の経皮的生検

採取して滅菌生理食塩水の入った滅菌容器に入れる。固定して,ギムザまたはヘマトキシリン-エオジン染色を施す。

虫卵および成虫を同定できる。

皮膚

回旋糸状虫(Onchocerca volvulus

アフリカにおける感染患者では,大腿部,殿部,または腸骨稜の皮膚切除片

ラテンアメリカにおける感染患者では,頭部,肩甲骨,または殿部の皮膚切除片

皮膚切除の際は皮膚をアルコールで消毒し,25Gの針を表皮直下に挿入して皮膚を持ち上げ,メスまたはカミソリで組織の小片を薄切するか,強角膜のパンチ生検用の器具を使用する。出血させてはならない。新鮮な状態で検査するか,メタノールで固定してギムザまたはヘマトキシリン-エオジン染色を施す。

食塩水に懸濁した試料中に,皮膚切除片から移動してきた運動性を示すミクロフィラリアがいるか確認する。ミクロフィラリアは組織片中にみられることもある。

リーシュマニア(Leishmania属)

病変部の非潰瘍領域の生検,および捺印細胞診または擦過検体

捺印細胞診または塗抹標本のギムザ染色と生検検体のヘマトキシリン-エオジン染色により,アマスティゴートの有無を確認する。

Leishmaniaのアマスティゴートは,Trypanosoma cruziの無鞭毛体と形態的に区別できない。Leishmaniaは皮膚生検検体から培養できるが,in vitroでの増殖には数週間かかることがある。リーシュマニアDNAに対する分子生物学的検査法が利用できる。

泌尿生殖器の分泌物または生検

トリコモナス(Trichomona属)

腟,尿道,または前立腺分泌物から滅菌スワブによって採取した検体を,少量の滅菌生理食塩水入りの試験管に入れる

検体採取前3~4日間は腟洗浄をしないように女性患者に指示する。

検体はできる限り速やかに検査室に送付する。

直接鏡検で動く病原体を同定するのが最も迅速である。寄生虫に対する直接蛍光抗体検査はより感度が高く,培養は最も高感度であるが,3~7日の時間を要する。

ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium),ときに日本住血吸虫(S. japonicum

新鮮尿または膀胱三角部周辺からの生検検体

尿採取の推奨時間帯は,正午から午後3時の間である。遠心分離により検出率が高まる。

虫卵は,尿の直接鏡検によって,または膀胱の生検検体中にみられることがある。

BAL = 気管支肺胞洗浄;EDTA = エチレンジアミン四酢酸;UV = 紫外線。

消化管の寄生虫

消化管に感染する様々な段階の原虫および蠕虫は,通常便中に排泄される。ルーチンの検出には便検体の検査が必要であり,寄生虫の排泄は日によって異なるため,日を変えて3回採取するのが望ましい。虫卵および虫体に対する便検査の感度はかなり低いため,臨床的に強く疑われる場合は経験的治療を考慮すべきである。現在では,G. intestinalisCryptosporidium属,およびEntamoeba histolyticaの便中抗原を同定する感度および特異度の高い検査法が利用可能になっている。G. intestinalisCryptosporidium属,赤痢アメーバ(E. histolytica),およびCyclosporaに対する分子生物学的検査は,高価ではあるが,便検体中で腸内細菌,ウイルス,および寄生虫病原体を同定するためのPCRベースのスクリーニングに含まれている( 寄生虫感染症の血清学的および分子生物学的検査)。

尿,水,汚れ,または消毒薬などの混入していない排便直後の便を1時間以内に検査室へ送付すべきである;形をなさない便または水様便は動く栄養型を含んでいる可能性が高い。直ちに検査しないのであれば,便は冷蔵すべきであるが,凍結すべきではない。消化管に寄生する原虫を保存するため,新鮮便の一部を固定液に溶かして乳化する必要もある。感度向上のために濃縮法を用いることがある。肛門周囲のセロファンテープ法またはスワブにより蟯虫または条虫の卵を採取できることがある。糞線虫症が疑われる場合は,新鮮便を寒天培地に塗布し,培養して移動性幼虫の痕跡を同定するべきである。抗菌薬,X線造影剤,下剤,および制酸薬は虫卵および虫体の検出を数週間にわたり妨げることがある。

消化管症状が遷延する患者でアメーバ症が疑われるが,ルーチンの便検査で陰性であった場合,S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査を考慮すべきである。S状結腸内視鏡検査では鋭匙または匙で検体を採取し(綿棒によるスワブは適さない),直ちに顕微鏡検査を行う。クリプトスポリジウム症または微胞子虫症などの感染症の診断には,十二指腸吸引物および小腸生検検体を要することがある。

寄生虫感染症の血清学的検査

一部の寄生虫は血清学的検査により検出できる( 寄生虫感染症の血清学的および分子生物学的検査)。

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寄生虫感染症の血清学的および分子生物学的検査

感染

抗体

抗原またはDNA/RNA

原虫

アフリカトリパノソーマ症(西部)

CATT

アメーバ症

EIA,IHA

便:抗原(EIA),PCR

バベシア症

IFA

血液: PCR

シャーガス病

IFA,EIA,RIPA

血液,組織,または髄液: PCR

クリプトスポリジウム症

便: 抗原(EIA),PCR

サイクロスポーラ症

PCR

ジアルジア症

便: 抗原(EIA),DFA,PCR

リーシュマニア症

IFAまたはEIA(内臓リーシュマニア症に対して利用できるが,皮膚リーシュマニア症には利用できない)

血液または組織:PCR

マラリア

IFA

血液:抗原に対してICG(迅速診断検査),PCR

微胞子虫症

便または腸管組織: IFA,IIF,TEM,PCR

トキソプラズマ症

IFA,EIA(IgGおよびIgM)

組織または血液: PCR

線虫

フィラリア症

血液:抗原(ICG;米国では利用できない)

糞線虫症

EIA,IFA,IHA

旋毛虫症

EIA

トキソカラ症

EIA

吸虫

肺吸虫症

CF,IB,EIA

住血吸虫症

FAST-ELISA,IB

条虫

嚢虫症

IB(血清または髄液),EIA

血清または髄液:抗原(治療への反応の評価に用いられるが,診断に利用できるほどの感度はない)

髄液: PCR

エキノコックス症

EIA,IHA,IFA,IB

CATT = card agglutination trypanosomiasis test,ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)用;CDC = Centers for Disease Control and Prevention;CF = 補体結合試験;DFA = 直接蛍光抗体法;EIA = 酵素免疫測定法;FAST-ELISA = Falcon assay screening test–enzyme-linked immunosorbent assay;IB = イムノブロット法;ICG = イムノクロマトグラフィー法;IFA = 間接蛍光抗体法;IHA = 間接赤血球凝集反応法;IIF = 蛍光抗体法;PCR = ポリメラーゼ連鎖反応法;RIPA = radioimmunoprecipitation assay(放射性免疫沈降法);TEM = 透過型電子顕微鏡法。

:一部の抗原および寄生虫検出キットは市販されている。市販されていないキットは,CDCまたはその他の基準となる検査施設で入手できる。便検体中の腸内原虫を同定するためにDNAの分子生物学的検査(例,PCR)が利用できるが,高価である。いくつかの寄生虫に対する分子生物学的検査が,基準となる検査施設または研究施設で利用できる。

治療

  • 治療法は感染症の種類によって異なる

主要な医療施設や保健局およびトラベルクリニックの専門家,CDCのウェブサイト,感染症および熱帯医学のテキスト,ならびにThe Medical Letter on Drugs and Therapeuticsのサマリーから,寄生虫感染症の治療に関するアドバイスを得ることができる。

まれな寄生虫感染症に対する薬剤は,製造業者またはCDC Drug Serviceから入手できることが多い。

予防

多大な投資と研究にもかかわらず,ヒトの寄生虫感染症を予防するワクチンはまだ実用化されていない。予防は感染の回避が基本である。

大半の腸管寄生虫は,以下の措置によって伝播を予防できる:

  • 便の衛生的な処理

  • 食品の十分な加熱調理

  • 安全な水の供給

国際旅行者への最善のアドバイスは,「食べ物は火を通し,水は沸かし,果物類は皮をむき,さもなければ口にしない」である。これらの対策を遵守すれば,細菌性およびウイルス性胃腸炎のリスクと同様,腸管寄生虫感染症のリスクもまた排除はできないが,軽減することができる。肉(特に豚)および魚(特に淡水魚)は摂取する前に十分に加熱調理すべきである。他の安全対策には,トキソプラズマ症予防のために食品調理場所から猫のトイレを取り除くことなどがある。住血吸虫症の流行地域にある淡水湖,小川,または河川で泳いだり,鉤虫が検出された地域で裸足で歩いたり裸で座ったりしてはならない。

マラリアの予防および感染に媒介生物が関与するその他多くの感染症の予防としては,以下の対策を講じる:

  • 長袖のシャツおよびズボンを着用する

  • 露出部の皮膚にジエチルトルアミド(DEET)を含有する防虫剤を,衣類にペルメトリンを適用する

  • 網戸,空調設備,およびペルメトリンまたは他の殺虫剤を浸透させた蚊帳を使用する

  • 非流行地域の居住者がマラリア感染のある地域に旅行する場合は,マラリア予防薬を服用する。

ラテンアメリカ農村部への旅行者は,サシガメによりシャーガス病に感染する可能性がある日干しレンガ造りの住居で寝るべきではない( シャーガス病 : 予防)。アフリカでは,アフリカ睡眠病の発生地域への旅行者はツェツェバエを避けるために鮮やかな色の衣服を避け,長袖のシャツと長ズボンを着用すべきである( アフリカトリパノソーマ症 : 予防)。

旅行に関する国別の推奨事項は,CDC: Travelers' HealthCDC: Travel Health and the Yellow Book,およびCDC Health Information for International Travel 2016から入手できる。

より詳細な情報

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