ジカウイルス(ZV)感染症

執筆者:Thomas M. Yuill, PhD, University of Wisconsin-Madison
レビュー/改訂 2020年 3月
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ジカウイルスは蚊を媒介とするフラビウイルス科のウイルスで,抗原的および構造的にデングウイルス感染症,黄熱,ウエストナイルウイルス感染症の原因ウイルスに似る。ジカウイルス感染症は一般的には無症状であるが,発熱,発疹,関節痛,または結膜炎を引き起こすこともある;妊娠中にジカウイルス感染症にかかると,先天性ジカ症候群(congenital Zika syndrome)と呼ばれる小頭症(重篤な先天異常),眼の異常,およびいくつかの発達障害が胎児に生じることがある。診断は,酵素結合免疫吸着測定法または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査による。治療は支持療法による。予防策としては,蚊の刺咬を避けることと,ジカウイルス感染症のリスクのあるパートナーとの無防備な性行為を避けることに加え,妊婦であれば流行地域への旅行を控えることがある。

アルボウイルス,アレナウイルス,およびフィロウイルス感染症の概要も参照のこと。)

ジカウイルス(ZV)は,デング熱黄熱,およびチクングニア熱の原因ウイルスと同様に,よどんだ水場に散乱するヤブカ(Aedes属の蚊)によって伝播される。これらの蚊は,屋内および屋外で人を刺し,人の近くに住む;日中は盛んに人を刺す。夜間に刺すこともある。

主な媒介生物はネッタイシマカ(A. aegypti)およびヒトスジシマカ(A. albopictus)である。米国では,ネッタイシマカの分布は,米国とメキシコの国境に沿ったディープサウスからカリフォルニア南部までの範囲に限られている。ヒトスジシマカは,寒冷な気候によりよく適応し,南東部の大部分から中西部北部にかけてと,カリフォルニア南部にみられる。ネッタイシマカは,ジカウイルス感染症の流行における主要な媒介生物であると考えられている一方,ヒトスジシマカはジカウイルス感染症の二次的な媒介生物であると考えられているが,米国のより温暖な気候でもそうであるかは不明である。

ジカウイルス感染症の疫学

ジカウイルスは,1947年,ウガンダのジカ森に生息するサルから初めて分離されたが,2007年に南太平洋諸島で最初の大規模なアウトブレイクが発生するまでは,ヒトの重要な病原体であるとは考えられていなかった。2015年5月に南米で地域内伝播が初めて報告された後,中米,カリブ海諸国へと広がって,2015年11月にはメキシコまで到達した。

ジカウイルスの地域内伝播の持続は以下の地域で報告されている:

  • 南米

  • 中米およびメキシコ

  • カリブ諸島(プエルトリコおよび米国領ヴァージン諸島を含む)

  • 太平洋諸島

  • カーボベルデ(アフリカ北西岸の島国)

  • 南アジアおよび東南アジア(散発例)

  • アフリカ

  • フロリダ

米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は,アウトブレイクが発生した場合に,これらの地域の国への渡航注意勧告を出す。2019年12月の時点で,ジカウイルスのアウトブレイクのためにCDCが渡航注意を促している地域はなかったが,2020年初頭にはブラジルの一部の地域で数千例,コロンビアで数百例の症例が発生した。

2016年および2017年には,ジカウイルス感染症の地域内伝播がフロリダ州南東部のマイアミ・デイド郡およびテキサス州ブラウンズビルで報告された。CDCのウェブサイトによると,現在のところ米国本土におけるジカウイルスの地域内伝播はない。ただし,地域内伝播のある国から米国に帰国した旅行者におけるジカウイルス感染症が報告されている。

ジカウイルスがどこで発生するかを予測するのは困難である。しかしながら,ジカウイルスを伝播する蚊はデングウイルスやチクングニアウイルスも伝播するため,デングウイルス感染症チクングニア熱の伝播がみられる地域であればどこであれ,ジカウイルスの地域内伝播が起こりうる。デングウイルスへの感染はごく最近テキサス州,フロリダ州,およびハワイ州で発生しており,チクングニアウイルスへの感染はフロリダ州,プエルトリコ,米国領ヴァージン諸島で発生している。同様に,デングウイルス感染症が流行している米国の地域(カリブ海のプエルトリコや米国領ヴァージン諸島;太平洋の米国領サモア,グアム,および北マリアナ諸島)では,ジカウイルス感染症も流行する可能性がある。

ジカウイルスの伝播

感染した最初の週は,ジカウイルスが血中に存在する。蚊は感染した人を刺すことでウイルスを獲得し,その蚊が他の人々を刺すことでウイルスが伝播していく。ジカウイルスの伝播が持続している地域からの旅行者は,帰国したときに血中にジカウイルスを有する可能性があり,媒介する蚊がその地域に存在すれば,そこでジカウイルスの伝播が起こりうる。しかしながら,米国本土とハワイではヤブカ(Aedes属)の蚊と人との接触はまれであり(蚊の管理が行われ,空調設備が整い壁で仕切られた環境で人々が生活・労働しているため),ジカウイルスの地域内伝播はまれであるか限定的であると考えられる。

ジカウイルスは主に蚊によって伝播されるが,他の方法で伝播される可能性もある。例えば以下のような経路が考えられる:

  • 性感染

  • 輸血を介した感染

  • 臓器または組織の移植を介した感染(理論的な可能性)

  • 子宮内母子感染(先天性感染症につながる)

  • 感染した母親から乳児への母乳感染

ジカウイルスは精液中に存在するため,たとえ男性に症状がなくても,性行為によって男性からセックスパートナーへ感染することがあり,腟性交,肛門性交のほか,おそらくオーラルセックス(フェラチオ)によっても伝播する。ジカウイルスは,血液,腟分泌液,およびその他の体液と比べて精液中にはるかに長く残存する。無防備な(コンドームを使用しない)性行為によって,男性から女性への感染および男性から男性への感染が起こっている(CDC: Clinical Guidance for Healthcare Providers for Prevention of Sexual Transmission of Zika Virusも参照)。

ジカウイルスは,たとえ感染者に症状がなくても,性玩具を共用することで,男性または女性からセックスパートナーに伝播する可能性がある。

ジカウイルスは血中および尿中から消失した後,腟分泌物にも残存する;女性から男性への性感染が報告されている(1)。グアテマラで実施された最近の研究では,最長6カ月間にわたりウイルスRNAが腟分泌物中に間欠的に排出されることが報告された。しかしながら,ウイルスRNAの検出は感染性ウイルスの存在を証明するものではない。

輸血による感染はブラジルで報告されている;しかしながら,現在のところ,米国では輸血による感染は1例も報告されていない(Zika and Blood Transfusionも参照)。

ジカウイルスは,デングウイルス感染症チクングニア熱ウエストナイルウイルス感染症,および黄熱を引き起こすウイルスと同様に,妊娠中に母から子に伝播する。ジカウイルスは,デングウイルス感染症ウエストナイルウイルス感染症を引き起こすウイルスと同様,母乳を介して伝播される。ただし,母乳栄養には多くの利点があるため,CDCはジカウイルスの伝播が持続している地域であっても母乳育児を奨励している。

伝播に関する参考文献

  1. 1.CDC media statement: First female-to-male sexual transmission of Zika virus infection reported in New York City.July 2016.

ジカウイルス感染症の症状と徴候

ほとんど(80%)の患者は症状を示さない。

ジカウイルス感染症の症状としては,発熱,斑状丘疹状皮疹,結膜炎(充血),関節痛,眼球後部の痛み,頭痛,筋肉痛などがある。症状は4~7日続く。大半の感染症は軽症である。入院を要する重症感染症はまれである。まれに,ジカウイルス感染症により成人に脳症が発生している。ジカウイルス感染症による死亡はまれである。

極めてまれに,ジカウイルス感染症の後にギラン-バレー症候群(GBS)が発生することがある。GBSは,急性で,通常は急速に進行するが自然治癒する炎症性多発神経障害であり,自己免疫反応が原因と考えられている。GBSはデングウイルス感染症またはチクングニア熱の後にも発生している。

小頭症およびその他の先天異常

妊娠中のジカウイルス感染症は,小頭症(脳の発生が不完全で頭部が小さくなる先天性疾患)や,胎児の脳や眼などにその他の重度の障害を引き起こすことがあり,これらを合わせて先天性ジカ症候群(congenital Zika syndrome)と呼ぶ(CDC: Update: Interim Guidance for the Diagnosis, Evaluation, and Management of Infants with Possible Congenital Zika Virus Infectionも参照)。

米国本土では,重度の小頭症の症例とジカウイルスとの関連が確認されている;このような乳児の母親は,おそらく流行国への旅行によって感染したと考えられる。CDCは,米国本土またはプエルトリコもしくはその他の米国領土に住み,ジカウイルス感染症を有する数名の妊婦をモニタリングしている。

子宮内で感染した乳児は,小頭症の有無にかかわらず,眼病変または先天性の拘縮(例,内反足)を有することがある。子宮内で感染し,先天性ジカ症候群を伴わずに出生した乳児にも,神経発達遅滞が生じるリスクがある。

ジカウイルス感染症の診断

  • 血清学的検査

  • 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査

ジカウイルス感染症の症例を確認した医師は,CDCに報告する義務がある。(CDC: Diagnostic Tests for Zika Virusも参照のこと。)

ジカウイルス感染症は,症状ならびに旅行地および旅行日に基づいて疑う。しかしながら,ジカウイルス感染症の臨床像は熱帯地方の多くの発熱性疾患(例,マラリアレプトスピラ症,その他のアルボウイルス感染症)と類似し,その地理的分布は他のアルボウイルス感染症と類似している。そのため,ジカウイルス感染症の診断には,以下のいずれかの検査による確定が必要である:

  • 血清学的検査(IgMに対する酵素結合免疫吸着測定法[ELISA],ジカウイルス抗体に対するプラーク減少中和試験[PRNT])

  • RT-PCRによる血清中または尿中ウイルスRNAの同定

ウイルス特異的IgMおよび中和抗体は,感染1週目の終わりに現れるのが典型的であるが,近縁種のフラビウイルス(例,デングウイルス,黄熱ウイルス)との交差反応がよくみられる。

PRNTは,ウイルス特異的な中和抗体を測定し,近縁種のフラビウイルスにより交差反応している抗体を区別することに役立つ。

発症後最初の1週間は,ジカウイルスは血清のRT-PCRによって同定できることが多い;尿検体にRT-PCRを行うには,発症から14日以内に尿検体を採取すべきである。

米国では,緊急時におけるジカウイルスに対する以下の診断検査が承認されている:

  • Zika MAC-ELISA

  • TrioplexリアルタイムRT-PCR法

これらの検査機器は,高度な検査の実施が認可されている米国内の検査施設に配置されている(さらなる詳細については,CDC: Diagnostic Tests for Zika VirusおよびCDC: Types of Zika Virus Testsを参照)。

ジカウイルス感染症の診断および治療の指針として,CDCから妊婦向けの暫定ガイドライン(interim guidelines for pregnant women)と胎児向けの暫定ガイドライン(interim guidelines for infants)が発行されており,これらは,妊娠中にジカウイルスの伝播が持続している地域に居住または旅行した妊婦とその女性から生まれた乳児に適用される。

現在のところ,性感染のリスクを評価するため男性に対して検査を行うことは推奨されていない(CDC: Clinical Guidance for Healthcare Providers for Prevention of Sexual Transmission of Zika Virusも参照)。ジカウイルスの活発な伝播がある地域に居住しているまたは旅行した男性に,妊娠しているパートナーがいる場合は,妊娠期間中の性行為を避けるか,性交(すなわち,腟性交,肛門性交,フェラチオ)時はコンドームを常に正しく使用するべきである。

母体の検査

ジカウイルスの伝播が持続している地域から帰ってきた妊婦に対し,CDCのガイドラインでは,ジカウイルス感染症の症状があるかどうかにかかわらず,全例で血清学的検査が推奨されている。さらに,妊婦がジカウイルスに接触した可能性があれば,超音波検査により胎児の解剖を評価することが推奨されている(CDC: Update: Interim Guidance for Health Care Providers Caring for Pregnant Women with Possible Zika Virus Exposure—US (Including US Territories), July 2017も参照)。

  • 無症状の妊婦に対して:妊婦が旅行から戻った後2~12週間後に検査を行うべきである。

  • 症状のある妊婦に対して:症状のあるうちに検査を行うべきである。

ジカウイルスの伝播が持続している地域に住む妊婦には,妊娠期間中を通してジカウイルス感染症のリスクがある。妊婦にジカウイルス感染症を示唆する症状が現れた場合,最初の1週間のうちに検査を行うべきである。ジカウイルスの伝播が持続している地域に住む無症状の妊婦に対し,CDCは初回の妊婦健診時の検査を推奨し,陰性であれば第2トリメスターの中期に再検査を推奨している;胎児超音波検査を妊娠18~20週に行うべきである(CDC: Update: Interim Guidance for Health Care Providers Caring for Pregnant Women with Possible Zika Virus Exposureも参照)。

旅行者の妊婦に比べ,ジカウイルスの伝播が持続している地域に住む妊婦は近縁種のフラビウイルスに曝露する可能性が高いため,IgMが偽陽性になりやすい。

乳児の検査およびフォローアップ

乳児の母親が妊娠中にジカウイルス感染症の流行地に居住していたまたは旅行した場合,母親の検査結果,乳児に小頭症,頭蓋内石灰化,眼の異常,または先天性ジカ症候群に一致するその他の障害があるかどうかを検査の指針にすべきである(CDC: Evaluation and Testing: Congenital Zika Virus Infectionも参照)。

  • 母親がジカウイルス検査で陰性であるか検査を受けておらず,乳児に小頭症または頭蓋内石灰化がみられない場合,乳児にはルーチンのケアを行うべきである。出生後に感染した乳児における神経発達への悪影響に関する研究では互いに相反する結果が報告されているが,これらの乳児には継続的なモニタリングを行うことが賢明であることが示唆されている。

  • 母親がジカウイルスで陽性であるか検査で結論が出ておらず,乳児に小頭症または頭蓋内石灰化がある場合,CDCのUpdate: Interim Guidance for the Diagnosis, Evaluation, and Management of Infants with Possible Congenital Zika Virus Infectionに従うべきである。頭のサイズが正常な乳児でも,ジカウイルスが脳を損傷し,正常な発達を妨げる可能性があるため,小頭症または眼病変のない乳児にもフォローアップを行うべきである。

  • 乳児に小頭症または頭蓋内石灰化がみられる場合,母親の検査結果にかかわらず,乳児にジカウイルスの検査が行われる。

ジカウイルス感染症の治療

  • 支持療法

ジカウイルス感染症に対する特異的な抗ウイルス療法はない。

治療としては以下のような支持療法を行う:

  • 安静

  • 輸液による脱水の予防

  • アセトアミノフェンにより発熱および疼痛を緩和する

  • アスピリンとその他のNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)の使用を控える

アスピリンやその他のNSAIDが妊娠中に使用されるのは一般的ではないが,出血のリスクがあるため,とりわけジカウイルス感染症の治療を受けている全ての患者では,デングウイルス感染症が除外されるまで使用を控えるべきである。また,ジカウイルスによる死亡および重症感染症が免疫性血小板減少症および出血と関連付けられている(1, 2)。

妊婦の血清,尿または羊水中のジカウイルスの存在を示す所見が検査で得られた場合,胎児の解剖および成長をモニタリングするため,3~4週間毎に超音波検査を行うべきである。妊娠管理に長けた母子医学または感染症医学の専門家への紹介が推奨される。

ジカウイルスに感染した母親から生まれた全ての乳児に対し,小頭症,眼病変,または先天性ジカ症候群を示唆するその他の所見の有無にかかわらず,脳の発達を2年間以上にわたりモニタリングするべきである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Sharp TM, Muñoz-Jordán J, Perez-Padilla J, et al: Zika virus infection associated with severe thrombocytopenia.Clin Infect Dis 63 (9):1198–1201, 2016.

  2. 2.Karimi O, Goorhuis A, Schinkel J, et al: Thrombocytopenia and subcutaneous bleedings in a patient with Zika virus infection.The Lancet 387 (10022):939–940, 2016.

ジカウイルス感染症の予防

CDCは妊婦に対し,ジカウイルスのアウトブレイクが持続している地域へ旅行しないよう推奨してきた(CDC: Pregnant Womenも参照)。ジカウイルス感染のリスクがある地域へ旅行する妊婦に対しては,CDCは渡航前にジカウイルス感染症のリスクについて主治医と相談し,旅行中に蚊の刺咬を回避する方法についてアドバイスを受けるよう推奨している。

現在のところジカウイルス感染症を予防するワクチンはない。

蚊による伝播の予防

ジカウイルス感染症の予防は,ジカウイルスの伝播が持続している地域に旅行する際に,ヤブカ(Aedes属の蚊)の対策をして,その刺咬を回避することにかかっている。ネッタイシマカ(A. aegypti)の制御は困難を極めているが,現在以下の2つのアプローチが現地で検証されている:

  • 雄が野生の雌と交尾した場合に幼虫が成熟しないよう,または卵が無精卵となるよう,遺伝子操作した雄または不妊化した雄を放つ

  • 蚊をボルバキア菌に感染させ,雌の腸管におけるジカウイルスへの感受性を阻害する

蚊の刺咬を回避するには,以下の対策をとるべきである(CDCのProtection against MosquitoesおよびZika virus: Prevention and Transmissionも参照):

  • 長袖のシャツおよび長ズボンを着用する。

  • 空調設備のある場所,窓や戸に蚊を寄せ付けない網戸のある場所にとどまる。

  • 十分な網戸や空調設備がない場所では,蚊帳の中で寝る。

  • Environmental Protection Agency(米国環境保護庁)に登録されているDEET(ジエチルトルアミド)やその他の承認済みの活性物質を使用した防虫剤を露出部の皮膚に使用する。

  • 服や持ち物を殺虫剤のペルメトリンで処理する(皮膚に直接散布しないこと)。

小児には,以下の対策が推奨される:

  • 2カ月未満の乳児には防虫剤を使用しない。

  • 3歳未満の小児にはユーカリレモン(パラ-メンタン-ジオール)を含有する製品を使用しない。

  • より年長の小児には,大人が自分の手に防虫剤を噴霧し,それを小児の皮膚に塗布する。

  • 小児には腕や脚を覆う服を着せ,ベビーベッド,ベビーカー,抱っこ紐に虫よけネットを被せる。

  • 防虫剤を小児の手,眼,口,または皮膚の傷口やただれた部位に使用しない。

輸血を介した感染の予防

2018年7月,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は改訂ガイダンスを発表し,全ての州および米国領土内の血液センターに対し,提供者を疫学的因子によってスクリーニングするのではなく,FDAの承認を受けた血液スクリーニング用核酸検査を用いて提供された全血および血液成分をスクリーニングすることを推奨している(FDA: Revised Recommendations for Reducing the Risk of Zika Virus Transmission by Blood and Blood Componentsを参照)。

性感染の予防

ジカウイルスRNAは,症状出現から最大281日後まで,精液中から検出されている。しかしながら,ウイルスRNAの検出は必ずしも感染性ウイルスの存在を示すものではない。最近の研究では,発症から30日後でも少数の人で感染性ウイルスが検出されたが,一般に,感染力のあるジカウイルスの排出は時間とともに大幅に減少するようであり,主に発症から最初の数週間に限られていた;しかしながら,遅発性の伝播の可能性は依然として存在する。ジカウイルスは精液を介して伝播する可能性があるため,CDCは,パートナーの片方または両方がジカウイルスの伝播が現在みられるまたは過去にみられた地域に居住しているまたは旅行した場合には,コンドームを使用するか,性行為を控えるよう推奨している。ジカウイルス感染症のほとんどは無症状で,症状がある場合でも軽症であることが多いため,症状を有するか否かにかかわらずこの推奨を守るべきである。

  • パートナーが妊娠している男性:妊娠中は性行為を控えるか,コンドームを使用し,性玩具の共用を避ける

  • 女性パートナー同伴の有無にかかわらず,ジカウイルス感染リスクのある地域へ旅行した男性:帰国後(または症状出現後)3カ月間は性行為を控えるかコンドームを使用する

  • 男性パートナーを伴わず,ジカウイルスのリスクがある地域へ旅行した女性:帰国後(または症状出現後)2カ月間は性行為を控えるかコンドームを使用する

コンドームを使用する場合,腟性交,肛門性交,およびオーラルセックスの間は毎回,最初から最後まで使用すべきである。

女性から女性への性感染は報告されていないものの,CDCの推奨によると,ジカウイルスの流行地に旅行したまたは居住している女性のセックスパートナーがいる全ての妊婦は,妊娠期間中,腟性交,肛門性交,およびオーラルセックスの際は必ずバリア法を使用するか性行為そのものを控え,性玩具の共用を避けるべきである。

CDC Guidance for Prevention of Sexual Transmission of Zika Virusも参照のこと。

ジカウイルス感染症の要点

  • ジカウイルスはヤブカ(Aedes属の蚊)によって伝播する。

  • ほとんどのジカウイルス感染症は無症状である;症状がある場合も通常は軽症であり,発熱,斑状丘疹状皮疹,結膜炎,関節痛,眼窩後部の痛み,頭痛,および筋肉痛などがみられる。

  • 妊娠中のジカウイルス感染症は,小頭症と呼ばれる重篤な先天異常,眼病変,および先天性ジカ症候群のスペクトラムに含まれるその他の病変を引き起こす可能性がある。

  • ジカウイルスに感染した母親から生まれた全ての乳児に対し,小頭症または眼病変の有無にかかわらず,脳の発達を2年以上にわたりモニタリングするべきである。

  • ジカウイルスの伝播が持続している地域へ旅行したまたは居住している妊婦には,血清学的検査(IgMに対する酵素結合免疫吸着測定法,ジカウイルス抗体に対するプラーク減少中和試験)またはRT-PCRを行う。

  • 治療は支持療法である;発熱はアセトアミノフェンで治療し,アスピリンなどのNSAIDはデング熱が除外されるまで使用しない。

  • 妊婦は,ジカウイルスのアウトブレイクが持続している地域へ旅行すべきでない。

  • ジカウイルス感染症の予防は,ヤブカの対策とその刺咬を回避することにかかっている。

  • ジカウイルスは性行為を介して感染する可能性があるため,ジカウイルスの伝播が持続している地域に居住しているまたは旅行した人は(男性でも女性でも),パートナーが妊娠している間は性行為をしないかバリア法を常に正しく使用すべきである。

ジカウイルス感染症についてのより詳細な情報

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