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免疫性血小板減少症(ITP)

(特発性血小板減少性紫斑病;免疫性血小板減少性紫斑病)

執筆者:

David J. Kuter

, MD, DPhil, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2019年 2月
本ページのリソース

免疫性血小板減少症(ITP)は,全身性疾患と関連のない血小板減少症に起因する出血性疾患である。典型的には,成人では慢性となるが,小児では通常急性に経過して自然に軽快する。他の基礎疾患がなければ脾臓の大きさは正常である。診断には選択的検査による他疾患の除外が必要である。治療法としては,コルチコステロイド,脾臓摘出,免疫抑制療法,トロンボポエチン受容体作動薬,脾臓チロシンキナーゼ阻害薬のホスタマチニブなどがある。生命を脅かす出血に対しては,血小板輸血,静注コルチコステロイド,静注抗D免疫グロブリン,または静注用免疫グロブリン製剤を単独または組み合わせて使用する。

血小板疾患の概要も参照のこと。)

免疫性血小板減少症は通常,血小板の構造タンパク質抗原に対する自己抗体の出現に起因する。小児期のITPでは,ウイルス抗原によって自己抗体が誘発されることがある。成人における誘因は不明であるが,一部の国(例,日本,イタリア)では,ITPにHelicobacter pylori感染症との関連が報告されており,感染症の治療後にITPの寛解が認められている。ITPは妊娠中に増悪する傾向があり,母体異常のリスクを高める。

症状と徴候

無症状のことが多く,ルーチン検査での血小板数低値によってのみ同定されるが,免疫性血小板減少症の症候が現れる場合には以下がみられる:

  • 点状出血

  • 紫斑

  • 粘膜出血

大量の消化管出血および血尿はまれである。ウイルス感染症または自己免疫性溶血性貧血の合併(エヴァンズ症候群)によって腫大しない限り,脾臓の大きさは正常である。血小板破壊が亢進する他の疾患と同様に,ITPでも血栓症のリスク増加を伴う。

免疫性血小板減少症の臨床像

診断

  • 血小板数を含む血算,末梢血塗抹検査

  • まれに骨髄穿刺

  • 他の血小板減少性疾患の除外

免疫性血小板減少症は,孤立性の血小板減少症(すなわち,血小板以外は血算および末梢血塗抹標本が正常)が認められる患者で疑われる。ITPの症状は非特異的であるため,臨床的評価および適切な検査により,孤立性の血小板減少症の他の原因(例,薬剤,アルコール,リンパ増殖性疾患,他の自己免疫疾患,ウイルス感染症)を除外する必要がある。典型的には,凝固検査,肝機能検査,C型肝炎およびHIV感染の検査を実施する。通常は抗血小板抗体の検査が診断または治療に役立つことはない。ITPでは,血小板数が50,000/µL未満の場合,未成熟血小板分画が増加することがある。

診断を下すのに骨髄検査は必要とならないが,臨床的特徴が典型的ではなく,血算または血液塗抹標本で血小板減少症以外にも異常が認められた場合,または患者が標準治療(例,コルチコステロイド)に反応しない場合は,骨髄検査を行う。ITP患者では,骨髄検査において,正常またはやや増加した巨核球数以外は正常な骨髄検体を示す。

予後

小児の場合は,たとえ重度の血小板減少症でも,典型的には数週間から数カ月で自然に回復する。

成人では,最初の1年間で30%の患者で自然寛解がみられ,5年以内に最大75%の患者が改善する(1)。ただし,多くの患者は軽度で安定しており(すなわち血小板数 > 30,000/μL),出血はあっても軽微である;現在ではルーチンで血算と同時に行われる自動血小板計数器による検査で発見されることが多い。その他の患者は症状を伴う有意な血小板減少症であるが,生命を脅かす出血および死亡はまれである。

予後に関する参考文献

治療

  • 経口コルチコステロイド

  • 免疫グロブリン静注療法(IVIG)

  • 静注抗D免疫グロブリン

  • ときに脾臓摘出

  • トロンボポエチン受容体作動薬

  • リツキシマブ

  • ホスタマチニブ

  • その他の免疫抑制薬

  • 重度の出血に対しては,IVIG,静注抗D免疫グロブリン,静注コルチコステロイド,血小板輸血を単独または併用で行う

血小板数が30,000/µLを超え,出血を認めない無症状の患者には治療は不要であり,モニタリングが可能である。

出血がみられ,血小板数が30,000/µLを下回る成人患者には,通常は最初に経口コルチコステロイド(例,プレドニゾン1mg/kg,1日1回)を投与する。コルチコステロイドの代替レジメンとして,おそらく同等の効果が得られるデキサメタゾン40mg,経口,1日1回がある。ほとんどの患者で2~5日以内に血小板数が増加する。ただし,一部の患者では反応が得られるまでに2~4週間を要することがある。反応後にコルチコステロイドを漸減すると,ほとんどの成人患者が再発する。コルチコステロイドの反復投与による治療は効果的であるが,有害作用のリスクが高まる。通常は数カ月を超えてコルチコステロイドを継続すべきではない;脾臓摘出を避けるためには,他の薬剤を試みてもよい。

抜歯,出産,外科手術,またはその他の侵襲的手技のために一時的に血小板数を増加させる必要がある場合は,経口コルチコステロイド,IVIG,または静注抗D免疫グロブリンを投与してもよい。ITPで生命を脅かす出血にはIVIGまたは抗D免疫グロブリンの静注も有用であるが,反応が数日から数週間しか続かない場合があるため,これらが長期の治療に使用されることはまれである。

最初のコルチコステロイド療法後に再発した患者の約3分の2では,脾臓摘出により完全寛解を得ることができる。脾臓摘出は通常,薬物療法では出血リスクをコントロールできない重度の血小板減少症(例,15,000/µL未満)を有する患者が対象とされる。第2選択の薬物療法で血小板減少症がコントロールできる場合は,しばしば脾臓摘出が必要ない(1)。脾臓摘出により血栓症および感染症(特に肺炎球菌などの莢膜を有する細菌による感染症)のリスクが高まる;肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae),髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に対する予防接種が必要である(理想的には手術の少なくとも2週間前までに行う)。

第2選択の薬物療法

第2選択の薬物療法は,以下の免疫性血小板減少症患者に実施可能である:

  • 自然寛解を期待して脾臓摘出を控えることを希望している患者

  • 脾臓摘出の適応がないか脾臓摘出を拒否している患者

  • 脾臓摘出が奏効しなかった患者

このような患者は通常,血小板数が10,000~20,000/μL未満である(およびそのため出血のリスクがある)。第2選択の薬物療法としては,トロンボポエチン受容体作動薬,リツキシマブ,ホスタマチニブ,その他の免疫抑制薬などがある。

ロミプロスチム1~10μg/kg,皮下,週1回やエルトロンボパグ25~75mg,経口,1日1回などのトロンボポエチン受容体作動薬は,奏効率が85%を超えている。ただし,血小板数を50,000/μLを上回る水準で維持するには,トロンボポエチン受容体作動薬を継続的に投与する必要がある。

リツキシマブ(375mg/m2,静注,週1回,4週間)の奏効率は57%であるが,5年後に寛解を維持している成人患者はわずか21%である(2)。

ホスタマチニブは脾臓チロシンキナーゼ阻害薬で,奏効率は18%と報告されている(3)。用量は100mg,経口,1日2回であり,血小板数が50,000/µLを超えるまで増加しなければ1カ月後に150mg,1日2回に増量する。

症状を伴う重度の血小板減少症を有し,他の薬剤で反応が得られなかった患者では,シクロホスファミド,ミコフェノール酸,アザチオプリンなどの薬剤を用いるより強力な免疫抑制療法が必要である場合がある。

ITPにおける生命を脅かす出血

生命を脅かす出血がみられる免疫性血小板減少症の小児または成人患者では,IVIG 1g/kg,1日1回,1~2日間による,またはRh陽性患者では静注抗D免疫グロブリン75μg/kgの単回投与による迅速な食細胞の抑制を試みる。抗D免疫グロブリンの静脈内投与は,脾臓摘出を受けていない患者においてのみ効果的であり,重度の溶血および播種性血管内凝固症候群など,重度の合併症を伴うことがある。通常はこの治療により血小板数が2~4日以内に増加するが,その効果は2~4週間しか持続しない。

高用量のメチルプレドニゾロン(1gの1日1回静注を3日間)は,IVIGまたは静注抗D免疫グロブリンより投与が容易であるが,同等の効果が得られない場合がある。ITPの患者で生命を脅かす出血を来した場合は,血小板輸血も行う。予防的に血小板輸血を行うことはない。

ビンクリスチン(1.4mg/m2;最大用量2mg)も緊急の状況で使用されている。

小児におけるITPの治療

免疫性血小板減少症の小児患者に対する治療は,大半の患児が自然に回復するため,通常は支持療法となる。血小板減少症が数カ月,数年続いても,ほとんどの小児は自然寛解する。粘膜出血がある場合は,コルチコステロイドまたはIVIGを投与してもよい。血小板数が増加しても臨床転帰が改善しないことがあるため,コルチコステロイドおよびIVIGの使用については議論がある。小児での脾臓摘出はまれである。しかしながら,血小板減少症が重度で,症状が6カ月以上持続する場合は,トロンボポエチン受容体作動薬(ロミプロスチム,エルトロンボパグ)を考慮する。

治療に関する参考文献

  • 1.Neunert C, Lim W, Crowther M, et al: The American Society of Hematology 2011 evidence-based practice guideline for immune thrombocytopenia.Blood 117:4190–4207, 2011.

  • 2.Patel VL, Mahevas M, Lee SY, et al: Outcomes 5 years after response to rituximab therapy in children and adults with immune thrombocytopenia.Blood 119:5989–5995, 2012.

  • 3.Bussel J, Arnold DM, Grossbard E, et al: Fostamatinib for the treatment of adult persistent and chronic immune thrombocytopenia: Results of two phase 3, randomized, placebo‐controlled trials.Am J Hematology 93: 921–930, 2018.

要点

  • 免疫系が循環血液中の血小板を破壊し,同時に骨髄の巨核球を攻撃することにより,血小板数の産生が低下する。

  • 孤立性の血小板減少症を引き起こす他の病態(例,薬剤,アルコール,リンパ増殖性疾患,その他の自己免疫疾患,ウイルス感染症)を除外する必要がある。

  • 小児では通常,自然寛解する一方,成人でも発症後1年以内に自然寛解することがあるが,小児よりまれである(約30%)。

  • 出血または重度の血小板減少症に対しては,コルチコステロイド(ときにIVIGまたは静注抗D免疫グロブリン)が第1選択の治療である。

  • しばしば脾臓摘出が効果的であるが,薬物療法が無効に終わった患者と症状が12カ月以上継続している患者が対象とされる。

  • 血小板輸血は生命を脅かす出血に対してのみ行う。

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