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好中球減少症

(無顆粒球症,顆粒球減少症)

執筆者:

Mary Territo

, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA

最終査読/改訂年月 2016年 11月
本ページのリソース

好中球減少症は,血中の好中球数が減少した状態である。重度の場合,細菌および真菌による感染症のリスクおよび重症度が増す。感染症の局所症状が弱い場合があるが,重篤な感染症の大半で発熱がみられる。診断は,白血球数と白血球分画によるが,評価には原因の同定が必要である。発熱がある場合は,感染が疑われるため,特に好中球減少症が重度であれば,直ちに広域抗菌薬の経験的投与が必要である。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子または顆粒球コロニー刺激因子を用いた治療がときに有用である。

好中球(顆粒球)は,細菌感染および真菌感染に対する身体の主な防御因子である。好中球減少症が存在すると,これらの感染に対する炎症反応が無力となる。

好中球数(総白血球数×%好中球および桿状核球)の正常下限値は,白人で1500/μLで,黒人ではやや少ない(約1200/μL)。好中球数は他の血球数ほど安定せず,活動状態,不安,感染症,薬剤など多くの因子に依存して短期間のうちに大きく変化することがある。そのため,好中球減少症の重症度を決定する際には数回測定する必要がある。

好中球減少症の重症度は,感染症の相対リスクと関連し,以下の通りに分類される:

  • 軽度(1000~1500/μL)

  • 中等度(500~1000/μL)

  • 重度(500/μL未満)

好中球数が500/μL未満に減少すると,内在性微生物叢(例,口腔または消化管に存在)が感染症を引き起こすことがある。好中球数が200/μL未満に減少すると,炎症反応が消失することがある上に,末梢血中の白血球増多や尿中または感染部位への白血球の出現といった通常の炎症所見が認められないことがある。重度の急性好中球減少症で,特に他の要因(例,悪性腫瘍)が存在する場合は,免疫系が大きく損なわれ,急速に死に至る感染症につながる可能性がある。皮膚および粘膜の完全性,組織への血管供給,ならびに患者の栄養状態も感染リスクに影響する。

重症の好中球減少症患者で特に高い頻度で発生する感染症は以下のものである:

血管カテーテルおよびその他の穿刺部位は,皮膚感染症という余分なリスクをもたらす;特に多くみられる起因菌は,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であるが,その他のグラム陽性菌およびグラム陰性菌による感染症もみられる。口内炎,歯肉炎,直腸周囲炎,大腸炎,副鼻腔炎,爪囲炎,および中耳炎がしばしば起こる。造血幹細胞移植または化学療法後の好中球減少症が長期にわたる患者および高用量コルチコステロイドの投与を受けている患者は,真菌感染症を起こしやすい。

病因

急性の好中球減少症(数時間から数日で発症する)は,好中球の急激な消費もしくは破壊,または産生障害により生じることがある。

慢性の好中球減少症(数カ月から数年に及ぶ)は,通常好中球の産生低下または脾臓による捕捉過剰によって生じる。

好中球減少症は,主に骨髄の骨髄系細胞における内因的欠陥によるものと,二次性のもの(骨髄の骨髄系細胞に対する外的因子による― 好中球減少症の分類)に分類されることもある。

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好中球減少症の分類

分類

病因

骨髄系細胞またはその前駆細胞における内因的欠陥による好中球減少症

良性好中球減少症を含む慢性特発性好中球減少症

異常ガンマグロブリン血症を伴う好中球減少症

重症先天性好中球減少症(Kostmann症候群

症候群関連の好中球減少症(例,軟骨毛髪低形成症候群,先天性角化異常症,糖原病IB型,WHIM*症候群,Shwachman-Diamond症候群)

二次性好中球減少症

AIDSにおける慢性の二次性好中球減少症を含む自己免疫性好中球減少症

骨髄の置換(例,悪性腫瘍,骨髄線維症,肉芽腫,ゴーシェ細胞に起因)

細胞傷害性薬剤による化学療法または放射線療法

薬剤性好中球減少症

葉酸欠乏症ビタミンB12欠乏症,または重度の低栄養

脾機能亢進症

感染症

T細胞大顆粒リンパ球症

*WHIM = 疣贅,低ガンマグロブリン血症,感染症,myelokathexis。

骨髄系細胞またはその前駆細胞における内因的欠陥に起因する好中球減少症

骨髄系細胞またはその前駆細胞の内因的欠陥に起因する好中球減少症はまれであるが,もし認められた場合,最も頻度の高い原因は以下のものである:

  • 慢性特発性好中球減少症

  • 先天性好中球減少症

慢性良性好中球減少症は,慢性特発性好中球減少症の一種で,好中球以外の免疫系は正常所見を呈する;おそらく感染に反応して時折,適当量の好中球を産生するためか,好中球数が200/μL未満でも,通常は重篤な感染症は起こらない。女性で多くみられる。

重症先天性好中球減少症(SCN,Kostmann症候群)は,それぞれ多様な病態を呈するまれな疾患の総称で,骨髄系細胞の成熟が骨髄の前骨髄球の段階で停止し,好中球数が200/μL未満になり幼児期に重大な感染症が生じるという特徴がある。SCNは,常染色体優性もしくは劣性,X連鎖,または散発性の場合がある。好中球エラスターゼ(ELANE/ELA2),HAX1,GFI1,G-CSF受容体(CSF3R)に影響を及ぼす遺伝子変異など,SCNを引き起こす遺伝子異常がいくつか同定されている。SCN患者の大半は長期の増殖因子療法に反応するが,反応が不良な患者に対しては骨髄移植を考慮しなければならない可能性がある。SCN患者は骨髄異形成または急性骨髄性白血病の発生リスクが高い。

周期性好中球減少症は,まれな先天性顆粒球産生障害で,通常は常染色体優性で遺伝し,好中球エラスターゼに関する遺伝子変異(ELANE/ELA2)に起因しており,異常アポトーシスを生じる。末梢血中の好中球数の規則的で周期的な変動を特徴とする。平均変動周期は21 ± 3日間である。

Benign ethnic neutropenia(BEN)は一部の民族集団に生じる(例,一部のアフリカ系,中東系,ユダヤ系)正常な状態で好中球数が少ないが,感染症のリスクは高くない。一部の症例では,この所見は赤血球上のDuffy抗原に関連している;一部の専門家はこれらの集団における好中球減少症がマラリア防御に関連すると考えている。

好中球減少症は,まれな先天性症候群(例,軟骨毛髪低形成症候群,Chédiak-Higashi症候群,先天性角化異常症,糖原病IB型,Shwachman-Diamond症候群,WHIM症候群)による骨髄不全から生じることもある。好中球減少症は,骨髄における巨赤芽球様変化を伴うこともある骨髄異形成,および再生不良性貧血の特徴的な所見でもあり,また異常ガンマグロブリン血症および発作性夜間血色素尿症で生じることがある。

二次性好中球減少症

二次性好中球減少症は,特定の薬剤の使用,骨髄浸潤もしくは置換,ある種の感染症,または免疫応答により生じることがある。

最も一般的な原因は以下のものである:

  • 薬剤

  • 感染症および免疫反応

  • 骨髄浸潤の過程

薬剤性好中球減少症は,好中球減少症の最も頻度の高い原因の1つである。薬剤の毒性,特異体質性,または過敏性の機序により好中球産生が低下することがある;これらにより,免疫機構を介した末梢血中の好中球の破壊亢進が生じることもある。用量依存性の好中球減少症を引き起こすのは毒性の機序(例,フェノチアジン系薬剤による)のみである。特異体質性の反応は予測不能で,多様な薬剤(代替医療の調剤または抽出物を含む)および毒性物質で生じる。

過敏性の反応はまれで,ときに抗てんかん薬(例,フェニトイン,フェノバルビタール)が関与する。これらの反応は,わずか数日の場合もあれば,数カ月または数年続く場合もある。多くの場合,肝炎,腎炎,肺炎,または再生不良性貧血は,過敏性の好中球減少症を伴う。

免疫媒介性の薬剤性好中球減少症は,ハプテンとして作用して抗体産生を刺激する薬剤に起因すると考えられ,通常は原因薬剤を中止した後も約1週間持続する。アミノピリン,プロピルチオウラシル,ペニシリン,またはその他の抗菌薬が原因となりうる。

細胞傷害性の抗癌剤投与または放射線療法後は,予想される通り骨髄産生抑制のために,用量または線量依存性の重度好中球減少症が生じる。

骨髄の無効造血による好中球減少症は,ビタミンB12または葉酸の欠乏により引き起こされる巨赤芽球性貧血でみられることがある。通常は,大球性貧血およびときに軽度の血小板減少症が同時にみられる。無効造血が骨髄異形成疾患に伴うこともある。

白血病骨髄腫リンパ腫,または転移性固形腫瘍(例,乳癌前立腺癌)の骨髄浸潤により,好中球産生が損なわれることがある。腫瘍誘発性の骨髄線維症により,好中球減少症がさらに悪化する場合がある。骨髄線維症は,肉芽腫性感染症,ゴーシェ病,および放射線療法により生じることもある。

何らかの原因で脾機能亢進症になると,中等度の好中球減少症,血小板減少症,および貧血につながることがある。

感染症は,好中球の産生障害をもたらしたり,好中球の免疫性破壊または急速な消費を誘発したりすることにより,好中球減少症を引き起こすことがある。敗血症は,特に重篤な原因である。小児期の一般的なウイルス性疾患に伴って生じる好中球減少症は,発病後1~2日で認められ,3~8日間続くことがある。ウイルスまたは内毒素血症により好中球が循環プールから辺縁プールへ再分布することによって,一過性の好中球減少症が生じることもある。アルコールは,一部の感染症(例,肺炎球菌性肺炎)において骨髄の好中球反応を阻害することにより,好中球減少症の一因となる場合がある。

免疫異常により好中球減少症が生じることがある。新生児同種免疫性好中球減少症は,胎児/母体の好中球抗原不適合とともに,新生児の好中球(HNA-1抗原が最も一般的)に対するIgG抗体の胎盤を介した移行に関連して生じることがある。自己免疫性好中球減少症は,あらゆる年齢層で発生し,特発性で慢性の好中球減少症の多くの症例で生じている可能性がある。抗好中球抗体の検査(蛍光抗体法,凝集法,またはフローサイトメトリー)は常に利用または信頼できるわけではない。

二次性の慢性好中球減少症は,好中球の産生障害および抗体による好中球破壊の亢進により,しばしばHIV感染に伴って生じる。自己免疫性好中球減少症は,急性,慢性,または一過性のものがある。循環血液中の好中球または好中球前駆細胞に対する抗体が関与することがある。また,好中球のアポトーシスを引き起こす可能性のあるサイトカイン(例,インターフェロンγ,腫瘍壊死因子)が関与することもある。自己免疫性好中球減少症患者のほとんどが,自己免疫疾患またはリンパ増殖性疾患(例,SLE,フェルティ症候群)を基礎疾患として有している。

症状と徴候

好中球減少症では,感染症が発生するまで無症状である。発熱が唯一の感染症の徴候であることも多い。炎症の典型的な徴候(紅斑,腫脹,疼痛,浸潤,白血球反応)は,マスクされるかまたはみられないことがある。局所症状(例,口腔内潰瘍)がみられることもあるが,多くの場合わずかである。過敏性に起因する薬剤性好中球減少症患者では,過敏症による発熱,発疹,およびリンパ節腫脹がみられることがある。

慢性良性好中球減少症では,好中球数が200/μL未満でも,多くの重篤な感染症を経験しない患者もいる。周期性好中球減少症または重症先天性好中球減少症の患者は,重度の好中球減少状態にあるとき,口腔内潰瘍,口内炎,または咽頭炎のエピソード,およびリンパ節腫大を生じやすい。肺炎および敗血症がよくみられる。

診断

  • 臨床上の疑い(反復性またはまれな感染症)

  • 血算と白血球分画による確定

  • 培養および画像検査による感染症の評価

  • 好中球減少症の機序および原因の同定

頻繁な感染症,重度の感染症,もしくはまれな感染症の患者,またはリスクのある患者(例,細胞傷害性薬剤の投与または放射線療法を受けている患者)では,好中球減少症が疑われる。確定診断は血算と白血球分画による。

感染症の評価

感染症の有無を見きわめることが最優先である。感染症が軽微である場合もあるため,身体診察では,最も一般的な感染の原発巣,すなわち消化管などの粘膜面(歯肉,咽頭,肛門),肺,腹部,尿路,皮膚および爪,静脈穿刺部位,血管カテーテルを系統的に評価する。

急性または重症の好中球減少症であれば,臨床検査を迅速に開始しなくてはならない。

培養が検査の中心である。発熱がみられる全ての患者から細菌および真菌の血液培養検体を2セット以上得る;静脈カテーテルを留置している場合は,カテーテルからおよび別の末梢静脈から培養検体を採取する。持続性または慢性のドレナージ物質も,真菌および非定型抗酸菌について培養する。粘膜潰瘍では,スワブ採取し,ヘルペスウイルスについて培養を行う。皮膚病変では,細胞診および培養のために吸引または生検を実施する。全ての患者から尿検査および尿培養用の検体を採取する。下痢が認められる場合は,腸内細菌性病原体およびClostridium difficile毒素について便を検査する。肺感染症について評価するために喀痰培養を行う。

画像検査が有用である。全ての患者で胸部X線撮影を行う。免疫抑制患者では,胸部CTも必要になることがある。副鼻腔炎の症状または徴候(例,体位性頭痛,上顎歯または上顎の疼痛,顔面腫脹,鼻汁)が認められる場合は,副鼻腔のCTが有用なことがある。症状(例,疼痛)または病歴(例,最近の手術)から腹腔内感染症が示唆される場合,通常は腹部のCTを行う。

原因の同定

次に,好中球減少症の機序および原因を特定する。病歴聴取では,全ての薬剤,その他の調剤,および可能性のある毒素への曝露または摂取について聴取する。身体診察では,脾腫の有無およびその他の基礎疾患の徴候(例,関節炎,リンパ節腫脹)について調べる。

明らかな原因が同定できない場合(例,化学療法),最も重要な検査は次のものである:

  • 骨髄検査

骨髄検査では,好中球減少症が骨髄産生低下によるものか,好中球の破壊または消費の亢進に伴う二次的なものかを判定する(骨髄系細胞の産生が正常または亢進により判定)。骨髄検査により,好中球減少症の特異的な原因(例,再生不良性貧血骨髄線維症白血病)が示唆されることもある。追加の骨髄検査(例,細胞遺伝学的検査;白血病,その他の悪性疾患,および感染症を検出するための特殊染色およびフローサイトメトリー)を実施する。

推測される診断によっては,好中球減少症の原因を調べる検査がさらに必要な場合がある。栄養欠乏のリスクがある患者では,葉酸,およびビタミンB12の値を測定する。免疫性好中球減少症が疑われる場合は,抗好中球抗体の有無を調べる検査を行う。好中球減少症の原因として,ある種の抗菌薬と感染症との鑑別は,ときに困難なことがある。抗菌薬治療開始直前の白血球数は,通常,感染に起因する血球数の変化を反映する。

乳児期からの慢性好中球減少症があり,繰り返す発熱および慢性歯肉炎の病歴を有する患者では,周期性好中球減少症を示唆する周期性が評価できるように,総白血球数と白血球分画を週3回6週間にわたって測定する。同時に血小板数および網状赤血球数も測定する。周期性好中球減少症の患者では,好酸球,網状赤血球,および血小板は高頻度で好中球と同期して変動するが,単球およびリンパ球は同期しないことがある。

治療

  • 関連疾患(例,感染症,口内炎)の治療

  • ときに抗菌薬の予防投与

  • 骨髄増殖因子

  • 疑われる原因物質(例,薬剤)の使用中止

  • ときにコルチコステロイド

急性好中球減少症

疑われる感染症を常に速やかに治療する。発熱または低血圧が認められる場合は,重篤な感染症であると想定し,経験的に高用量の広域抗菌薬を静注する。レジメン選択は,最も可能性の高い感染微生物,当該医療機関での病原体の抗菌薬感受性,およびレジメンの潜在的毒性に基づく。バンコマイシンは,耐性菌が生じるリスクがあるため,他の薬剤に耐性のあるグラム陽性菌が疑われる場合にのみ使用する。

血管カテーテルの留置については,菌血症が疑われたり,確認されたりした場合でも,通常はそのままでよいが,黄色ブドウ球菌(S. aureus),Bacillus属,Corynebacterium属,またはCandida属による感染症の場合,または適切な抗菌薬治療にもかかわらず血液培養が引き続き陽性である場合には,抜去を考慮する。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌による感染症は,一般に抗菌薬療法のみで消失する。好中球減少症患者ではフォーリーカテーテル留置でも感染症を起こしやすく,持続性の尿路感染症に対しては,カテーテルの交換または抜去を検討すべきである。

培養が陽性であれば,抗菌薬療法を感受性試験の結果に適応させる。72時間以内に解熱した場合は,少なくとも7日間,そして感染症の症状または徴候が認められなくなるまで,抗菌薬を継続する。好中球減少症が一過性(骨髄抑制をもたらす化学療法の後に出現するものなど)である場合は,通常は好中球数が500/μLを超えるまで抗菌薬療法を続ける;ただし,持続性の好中球減少症で,特に炎症の症状および徴候が消失し,培養が陰性のままであれば,抗菌薬の中止を考慮してもよい。

抗菌薬療法にもかかわらず,発熱が72時間を超えて継続する場合は,細菌以外の原因,耐性菌による感染,別の細菌による重複感染,血清もしくは組織における不十分な抗菌薬濃度,または膿瘍などの局所感染が示唆される。発熱が続く好中球減少症患者では,2~4日毎に身体診察,培養,および胸部X線により再評価する。発熱以外に異常が認められなければ,当初の抗菌薬レジメンを継続してもよく,薬剤性の発熱を考慮すべきである。患者の状態が悪化している場合は,抗菌薬レジメンの変更を考慮する。

持続性の発熱および悪化で最も可能性の高い原因は真菌感染症である。広域抗菌薬療法の3~4日後も原因不明の発熱が持続している場合は,経験的に抗真菌薬療法を追加する。特異的な抗真菌薬(例,フルコナゾール,カスポファンギン,ボリコナゾール,ポサコナゾール)の選定は,リスクの種類(例,好中球減少症の期間および重症度,真菌感染症の病歴,狭域スペクトル抗真菌薬の使用にもかかわらず持続する発熱)に応じて異なるため,感染症専門医による指示を受けるべきである。経験的療法から3週間後(2週間の抗真菌薬療法を含む)に発熱は持続しているが,好中球減少症が消失している場合は,全ての抗菌薬の中止を検討し,発熱の原因を再評価してもよい。

発熱を伴わない好中球減少症患者で,一般的に好中球が7日間を超えて100/µL以下となる化学療法レジメンの投与を受ける患者に対し,一部の施設ではフルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン)の予防投与が行われている。抗菌薬の予防投与は,通常,治療を担当している腫瘍医によって開始される。好中球数が1500/µLを超えるまで抗菌薬を継続する。また,発熱を伴わない好中球減少症患者で,より真菌感染症のリスクが高い場合(例,造血幹細胞移植の後,急性骨髄性白血病または骨髄異形成疾患に対する強力な化学療法の後,真菌感染症の既往歴)は,抗真菌薬を投与できる。特異的な抗真菌薬の選定は,感染症専門医による指示に従うべきである。発熱を伴わない好中球減少症患者で,危険因子がなく,特異的な化学療法レジメンを基に好中球減少の持続が7日間未満であると予想される場合,ルーチンでの抗菌薬および抗真菌薬の予防投与は推奨されない。

骨髄増殖因子(顆粒球コロニー刺激因子[G-CSF])は,重度の好中球減少症(例,造血幹細胞移植および悪性腫瘍に対する強力な化学療法後)の患者で,好中球数の上昇および感染症予防のために広く用いられている。骨髄増殖因子は高価である。それでも,発熱性好中球減少症のリスクが30%以上あれば(好中球数500μL未満,前回の化学療法サイクル時の感染症発現,関連する併存疾患,または75歳以上の年齢により評価),骨髄増殖因子が適応となる。一般に,化学療法の終了から約24時間後に骨髄増殖因子の投与を開始すると,臨床的有益性が最も高くなる。特異体質性の薬物反応に起因する好中球減少症患者でも,特に回復の遅れが予想される場合に,骨髄増殖因子により有益性が得られることがある。G-CSF(フィルグラスチム)の投与量は,5~10μg/kgの1日1回皮下投与で,ペグ化G-CSF(ペグフィルグラスチム)の投与量は,化学療法のサイクル毎に6mgの1回皮下投与である。

グルココルチコイド,タンパク同化ステロイド,およびビタミンは,好中球の産生を刺激しないが,好中球の分布および破壊に影響を及ぼす可能性がある。急性好中球減少症が薬剤性または毒素性であると疑われる場合は,可能性のある病原因子を全て中止する。好中球数を減少させることが知られている薬剤(例,クロラムフェニコール)による治療中に好中球減少症が発生した場合は,代替抗菌薬への変更が有用なことがある。

中咽頭潰瘍を伴う口内炎の不快感は,生理食塩水または過酸化水素水による2~3時間毎の含嗽,液剤での含嗽(リドカインビスカス,ジフェンヒドラミン,液剤の制酸薬を含有),麻酔成分を含むトローチ剤(アミノ安息香酸エチル15mg,3または4時間毎)の服用,またはクロルヘキシジン(1%溶液)による1日2回または1日3回の含嗽で緩和することがある。口腔または食道カンジダ症の治療では,ナイスタチン(40万~60万単位の含嗽液,1日4回;食道炎の場合は嚥下),クロトリマゾールのトローチ剤(10mg,1日5回,口腔内でゆっくり溶かす),または全身性抗真菌薬(例,フルコナゾール)を用いる。急性口内炎または食道炎では,半固形食または流動食が必要となることがあり,不快感を最小限にするために外用鎮痛薬(例,リドカインビスカス)が必要な場合がある。

慢性好中球減少症

先天性好中球減少症周期性好中球減少症,および特発性好中球減少症における好中球の産生は,G-CSFを1~10μg/kgで1日1回皮下投与することで増加する可能性がある。数カ月または数年にわたってG-CSFを連日または間欠投与することで,有効性を維持できる。G-CSFの長期投与は,その他に骨髄異形成症候群,HIV,および自己免疫疾患の患者を含む慢性好中球減少症患者にも使用されている。一般に,好中球数は増加するが,特に好中球減少症が重度ではない患者に対する臨床的有益性はほとんど明らかではない。自己免疫疾患患者または臓器移植を受けた患者に対しては,シクロスポリンが有益なこともある。

自己免疫疾患に起因して好中球の破壊が亢進している一部の患者では,コルチコステロイド(一般にプレドニゾン0.5~1.0mg/kgの1日1回経口投与)により血中の好中球が増加することがある。この好中球増多は,多くの場合G-CSFの隔日投与により維持できる。

脾腫および脾臓での好中球の捕捉(例,フェルティ症候群)が認められる一部の患者では,好中球数を増加するために脾臓摘出が用いられてきたが,増殖因子およびその他のより新しい治療法がしばしば効果的であるため,脾臓摘出はほとんどの患者で避けるべきである。ただし,脾臓摘出は,痛みを伴う持続的な脾腫または重度の好中球減少症(500/μL未満)があり,感染症に伴う重篤な問題が認められる患者で,他の治療が奏効しなかった場合には考慮してよい。脾臓摘出を行った患者は莢膜を有する微生物に感染しやすくなるため,脾臓摘出の前に肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),髄膜炎菌(Neisseria meningitidis),およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)による感染に対する予防接種を行うべきである。

要点

  • 好中球減少症は,細菌および真菌感染症の素因となる。

  • 感染のリスクは,好中球減少症の重症度に比例する;好中球数が500/μL未満の患者が最もリスクが高い。

  • 炎症反応が起こりにくいため,臨床所見が認められないことがあるが,通常は発熱がみられる。

  • 発熱がみられる好中球減少症患者には,最終的な感染の同定まで経験的に広域抗菌薬を投与する。

  • 高リスク患者では,抗菌薬の予防投与が適応となる。

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