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好中球減少症

(無顆粒球症,顆粒球減少症)

執筆者:

Mary Territo

, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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好中球減少症は,血中の好中球数が減少した状態である。重度の場合,細菌および真菌による感染症のリスクおよび重症度が増す。感染症の局所症状が弱い場合があるが,重篤な感染症の大半で発熱がみられる。診断は,白血球数と白血球分画によるが,評価には原因の同定が必要である。発熱がある場合は,感染が疑われるため,特に好中球減少症が重度であれば,直ちに広域抗菌薬の経験的投与が必要である。顆粒球コロニー刺激因子を用いた治療がときに役立つ。

好中球 好中球 免疫系は,共同で抗原を破壊する細胞成分および分子成分から成る。(免疫系の概要も参照のこと。) 一部の抗原(Ag)は免疫応答を直接活性化することがあるが,T細胞依存性の獲得免疫応答では,典型的には主要組織適合抗原複合体(MHC)分子内で抗原由来ペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)を必要とする。 あらゆる有核細胞はMHCクラスI分子を発現するため,細胞内抗原(例,ウイルス)は有核細胞によって処理されてCD8陽性の細胞傷害性T細胞に提示さ... さらに読む (顆粒球)は, 細菌感染 細菌の概要 細菌は環状二本鎖DNAと細胞壁(マイコプラズマは除く)を有する微生物である。大半の細菌は細胞外で生息する。一部の細菌(例,チフス菌[Salmonella typhi],淋菌[Neisseria gonorrhoeae],Legionella属,Mycobacterium属,Ri... さらに読む および 真菌感染 真菌感染症の概要 真菌感染症はしばしば以下のいずれかに分類される: 日和見感染症 原発性感染症 日和見感染症は主に易感染性宿主にみられるが,原発性感染症は免疫能が正常な宿主でも発生することがある。 真菌感染症は以下に分類することができる: さらに読む に対する身体の主な防御因子である。好中球減少症が存在すると,これらの感染に対する炎症反応が無力となる。

好中球数(総白血球数×%好中球および桿状核球)の正常下限値は,白人で1500/μLで,黒人ではやや少ない(約1200/μL)。好中球数は他の血球数ほど安定せず,活動状態,不安,感染症,薬剤など多くの因子に依存して短期間のうちに大きく変化することがある。そのため,好中球減少症の重症度を決定する際には数回測定する必要がある。

好中球減少症の重症度は,感染症の相対リスクと関連し,以下の通りに分類される:

  • 軽度(1000~1500/μL)

  • 中等度(500~1000/μL)

  • 重度(500/μL未満)

好中球数が500/μL未満に減少すると,内在性微生物叢(例,口腔または消化管に存在)が感染症を引き起こすことがある。好中球数が200/μL未満に減少すると,炎症反応が消失することがある上に,末梢血中の白血球増多や尿中または感染部位への白血球の出現といった通常の炎症所見が認められないことがある。重度の急性好中球減少症で,特に他の要因(例,悪性腫瘍)が存在する場合は,免疫系が大きく損なわれ,急速に死に至る感染症につながる可能性がある。皮膚および粘膜の完全性,組織への血管供給,ならびに患者の栄養状態も感染リスクに影響する。

重症の好中球減少症患者で特に高い頻度で発生する感染症は以下のものである:

血管カテーテルおよびその他の穿刺部位は,皮膚感染症という余分なリスクをもたらす;特に多くみられる起因菌は,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であるが,その他のグラム陽性菌およびグラム陰性菌による感染症もみられる。 口内炎 口内炎 口内炎として知られる口腔内炎症および潰瘍は,軽症かつ限局性の場合も,重症で広汎性の場合もある。口内炎は例外なく疼痛を伴う。 (歯科患者の評価および歯肉炎も参照のこと。) 口内炎は,口腔粘膜の腫脹および発赤,または孤立した有痛性潰瘍(単発もしくは多発)を随伴することがある。あまり一般的でないが,白みを帯びた病変部が形成され,まれに,有意な症状にもかかわらず口腔は正常な外観を呈することがある(口腔灼熱症候群)。症状により摂食が妨げられ,とき... さらに読む 口内炎 歯肉炎 歯肉炎 歯肉炎は歯周病の一種であり,歯肉の炎症を特徴とし,腫脹を伴う出血,発赤,浸出液,正常歯肉形態の変化,およびときとして不快感を引き起こす。診断は視診に基づく。処置は専門家による歯の清掃と家庭での口腔衛生の強化である。進行例では抗菌薬または外科手術が必要なことがある。 正常な歯肉は硬く,歯に密着し,歯間部は先の尖った形状を呈する。歯冠近くの角化歯肉はピンク色で小さな点で覆われた組織である。この組織が歯冠の間の全スペースを満たす。歯冠からより... さらに読む 歯肉炎 ,直腸周囲炎,大腸炎, 副鼻腔炎 副鼻腔炎 副鼻腔炎はウイルス,細菌,もしくは真菌性感染症またはアレルギー反応による副鼻腔の炎症である。症状としては,鼻閉,膿性鼻汁,顔面痛または顔面の圧迫感などのほか,ときに倦怠感,頭痛,発熱もみられる。急性ウイルス性鼻炎を想定した治療には,蒸気吸入および血管収縮薬の局所薬または全身投与などがある。細菌感染が疑われる場合の治療は,アモキシシリン/クラブラン酸またはドキシサイクリンなどの抗菌薬を,急性副鼻腔炎には5~7日間,慢性副鼻腔炎には最長6週... さらに読む 副鼻腔炎 爪囲炎 急性爪囲炎 爪囲炎とは爪周囲組織の感染症である。急性爪囲炎では,爪縁に沿って発赤,熱感,および疼痛が生じる。診断は視診による。治療はブドウ球菌に有効な抗菌薬の投与と排膿である。 (爪疾患の概要も参照のこと。) 爪囲炎は通常急性であるが,慢性例もある。急性爪囲炎の起因菌は,通常は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)またはレンサ球菌であり,頻度は低くなるがPseudomonas属またはProte... さらに読む 急性爪囲炎 ,および 中耳炎 中耳炎(急性) 急性中耳炎(AOM)は,中耳の細菌感染症またはウイルス感染症であり,通常は上気道感染に併発する。症状としては耳痛があり,しばしば全身症状(例,発熱,悪心,嘔吐,下痢)を伴い,特に非常に若年の患者でその傾向が強い。診断は耳鏡検査に基づく。治療は鎮痛薬により行い,ときに抗菌薬も用いる。 急性中耳炎はどの年齢層でも生じるが,3カ月から3歳の間で最も多い。この年齢層では,耳管が構造的にも機能的にも未熟であり,耳管の角度が比較的水平で,口蓋帆張筋... さらに読む 中耳炎(急性) がしばしば起こる。造血幹細胞移植または化学療法後の好中球減少症が長期にわたる患者および高用量コルチコステロイドの投与を受けている患者は,真菌感染症を起こしやすい。

病因

急性の好中球減少症(数時間から数日で発症する)は,以下の結果として生じることがある:

  • 好中球の急激な消費または破壊

  • 産生障害

慢性の好中球減少症(数カ月から数年に及ぶ)は,通常は以下の結果として生じる:

  • 産生低下

  • 過度のsplenic sequestration

好中球減少症は,主に骨髄の骨髄系細胞における内因的欠陥によるものと,二次性のもの(骨髄の骨髄系細胞に対する外的因子による)に分類されることもある( 好中球減少症の分類 好中球減少症の分類 好中球減少症の分類 の表を参照)。

骨髄系細胞またはその前駆細胞における内因的欠陥に起因する好中球減少症

骨髄系細胞またはその前駆細胞の内因的欠陥に起因する好中球減少症はまれであるが,もし認められた場合,最も頻度の高い原因は以下のものである:

  • 慢性特発性好中球減少症

  • 先天性好中球減少症

慢性良性好中球減少症は,好中球以外の免疫系は正常を維持しているよう見える慢性特発性好中球減少症の一種であり,通常は好中球数が200/μL未満になっても重篤な感染症が起こらず,これはおそらく,感染への反応として,ときに十分量の好中球が産生されるためと考えられる。女性で多くみられる。

重症先天性好中球減少症(SCN,Kostmann症候群)は,それぞれ多様な病態を呈するまれな疾患の総称で,骨髄系細胞の成熟が骨髄の前骨髄球の段階で停止し,好中球数が200/μL未満になり乳児期に重大な感染症が生じるという特徴がある。SCNは,常染色体優性もしくは劣性,X連鎖,または散発性の場合がある。好中球エラスターゼ(ELANE/ELA2),HAX1GFI1,G-CSF受容体(CSF3R)に影響を及ぼす遺伝子変異など,SCNを引き起こす遺伝子異常がいくつか同定されている。SCN患者の大半は長期の増殖因子療法に反応するが,反応が不良な患者に対しては 造血幹細胞移植 造血幹細胞移植 造血幹細胞(HSC)移植は,造血器悪性腫瘍(白血病,リンパ腫,骨髄腫)および他の血液疾患(例,原発性免疫不全症,再生不良性貧血,骨髄異形成)で治癒をもたらす可能性がある手技で,急速に発展しつつある。HSC移植は,ときに化学療法に反応する固形腫瘍(例,一部の胚細胞腫瘍)に用いられることもある。(移植の概要も参照のこと。) HSC移植は,以下の機序によって寛解に導く: 骨髄破壊的前処置によって骨髄を再建する... さらに読む の考慮が必要になる場合もある。SCN患者は 骨髄異形成 骨髄異形成症候群(MDS) 骨髄異形成症候群(MDS)は,末梢の血球減少症,異形成の造血前駆細胞,過形成または低形成の骨髄,および急性骨髄性白血病への移行リスクが高いことを特徴とする疾患群である。症状は最も強く障害された特定の細胞系列に由来するものであり,具体的には易疲労感,筋力低下,蒼白(貧血に起因),感染および発熱の増加(好中球減少症に起因),出血および皮下出血の増加(血小板減少症に起因)などみられる。診断は血算,末梢血塗抹検査,骨髄穿刺および骨髄生検による。... さらに読む または 急性骨髄性白血病 急性骨髄性白血病(AML) 急性骨髄性白血病(AML)では,異常に分化して長い寿命をもつ骨髄前駆細胞の白血化とその無秩序な増殖により,循環血液中の幼若な血球数が増加し,悪性細胞で正常な骨髄が置換される。症状としては,易疲労感,蒼白,紫斑ができやすい状態,出血しやすい状態,発熱,感染などがある;髄外白血病細胞浸潤による症状は,約5%の患者のみにみられる(皮膚症状として現れることが多い)。末梢血塗抹標本と骨髄の検査で診断に至る。治療としては,寛解に導入する導入化学療法... さらに読む 急性骨髄性白血病(AML) の発生リスクが高い。

周期性好中球減少症は,まれな先天性顆粒球産生障害で,通常は常染色体優性で遺伝し,好中球エラスターゼに関する遺伝子変異(ELANE/ELA2)に起因しており,異常アポトーシスを生じる。末梢血中の好中球数の規則的で周期的な変動を特徴とする。平均変動周期は21 ± 3日間である。大半の症例では他の血球の周期的変動も明らかである。

良性民族性好中球減少症(benign ethnic neutropenia:BEN)は一部の民族集団に生じる(例,一部のアフリカ系,中東系,ユダヤ系)正常な状態で好中球数が少ないが,感染症のリスクは高くない。一部の症例では,この所見は赤血球上のDuffy抗原に関連している;一部の専門家はこれらの集団における好中球減少症が マラリア マラリア マラリアはマラリア原虫(Plasmodium 属原虫)による感染症である。症状および徴候としては,発熱(周期熱のことがある),悪寒,発汗,溶血性貧血,脾腫などがある。診断は血液塗抹標本におけるマラリア原虫(Plasmodium属)の観察と迅速診断検査による。治療法と予防法は,種および薬剤感受性により異なるが,具体的にはアルテミシニンベースの多剤併用療法(artemisinin-based... さらに読む 防御に関連すると考えている。

好中球減少症は,まれな先天性症候群(例,軟骨毛髪低形成症候群, チェディアック-東症候群 チェディアック-東症候群 チェディアック-東症候群は,貪食した細菌の溶解障害を特徴とする常染色体劣性のまれな症候群であり,反復性の細菌性呼吸器感染症および他の感染症,ならびに眼皮膚白皮症を引き起こす。 (免疫不全疾患の概要および免疫不全疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。) チェディアック-東症候群は,食細胞の異常が関与する,常染色体劣性遺伝のまれな原発性免疫不全症である。この症候群は さらに読む ,先天性角化異常症,糖原病IB型,シュバッハマン-ダイアモンド症候群,疣贅,低ガンマグロブリン血症,感染症,myelokathexis[WHIM]症候群)による骨髄不全から生じることもある。好中球減少症は,骨髄における巨赤芽球様変化を伴うこともある 骨髄異形成 骨髄異形成症候群(MDS) 骨髄異形成症候群(MDS)は,末梢の血球減少症,異形成の造血前駆細胞,過形成または低形成の骨髄,および急性骨髄性白血病への移行リスクが高いことを特徴とする疾患群である。症状は最も強く障害された特定の細胞系列に由来するものであり,具体的には易疲労感,筋力低下,蒼白(貧血に起因),感染および発熱の増加(好中球減少症に起因),出血および皮下出血の増加(血小板減少症に起因)などみられる。診断は血算,末梢血塗抹検査,骨髄穿刺および骨髄生検による。... さらに読む ,および 再生不良性貧血 再生不良性貧血 再生不良性貧血は,血球前駆細胞の減少,骨髄の低形成または無形成,および2系統以上(赤血球,白血球,血小板)の血球減少が生じる造血幹細胞の疾患である。症状は貧血,血小板減少症(点状出血,出血),または白血球減少症(感染症)によって引き起こされる。診断には,末梢血塗抹での汎血球減少と骨髄生検での骨髄低形成の証明が必要である。治療としては通常,ウマ抗胸腺細胞グロブリン【訳注:現在,日本で使用できるのはウサギ抗胸腺細胞グロブリンのみである。】お... さらに読む の特徴的な所見でもあり,また異常ガンマグロブリン血症および 発作性夜間血色素尿症 発作性夜間血色素尿症(PNH) 発作性夜間血色素尿症(PNH)はまれな後天性の疾患で,血管内溶血およびヘモグロビン尿を特徴とする。白血球減少症,血小板減少症,動静脈血栓症,および発作性のクリーゼがよくみられる。診断にはフローサイトメトリーを要する。治療は支持療法と終末補体阻害薬であるエクリズマブの投与である。 (溶血性貧血の概要も参照のこと。) PNHは,20代男性に最も多くみられるが,性別および年齢にかかわらず発生する。溶血は夜間だけではなく1日中起こる。... さらに読む で生じることがある。

二次性好中球減少症

二次性好中球減少症は,特定の薬剤の使用,骨髄浸潤もしくは置換,ある種の感染症,または免疫応答により生じることがある。

最も一般的な原因は以下のものである:

  • 薬剤

  • 感染症および免疫反応

  • 骨髄浸潤の過程

薬剤性好中球減少症は,好中球減少症の最も頻度の高い原因の1つである。薬剤の毒性,特異体質性,または過敏性の機序により好中球産生が低下することがある;これらにより,免疫機構を介した末梢血中の好中球の破壊亢進が生じることもある。用量依存性の好中球減少症を引き起こすのは毒性の機序(例,フェノチアジン系薬剤による)のみである。

細胞傷害性の抗がん剤投与または放射線療法後は,予想される通り骨髄産生抑制のために,用量または線量依存性の重度好中球減少症が生じる。

特異体質性の反応は予測不能で,多様な薬剤(代替医療の製剤または抽出物を含む)および毒性物質で生じる。

過敏性の反応はまれで,ときに抗てんかん薬(例,フェニトイン,フェノバルビタール)が関与する。これらの反応は,わずか数日の場合もあれば,数カ月または数年続く場合もある。多くの場合, 肝炎 急性ウイルス性肝炎の概要 急性ウイルス性肝炎は,多様な伝播様式と疫学的性質を有する一群の肝親和性ウイルスによって引き起こされる,肝臓のびまん性炎症である。ウイルス感染による非特異的な前駆症状に続いて,食欲不振,悪心,しばしば発熱または右上腹部痛がみられる。黄疸がしばしばがみられ,典型的には他の症状が消失し始める頃に発生する。ほとんどの症例で自然消失するが,慢性肝炎に進行する場合もある。ときに,急性ウイルス性肝炎から急性肝不全に進行する(劇症肝炎を示唆する)。診断... さらに読む ,腎炎,肺炎,または 再生不良性貧血 再生不良性貧血 再生不良性貧血は,血球前駆細胞の減少,骨髄の低形成または無形成,および2系統以上(赤血球,白血球,血小板)の血球減少が生じる造血幹細胞の疾患である。症状は貧血,血小板減少症(点状出血,出血),または白血球減少症(感染症)によって引き起こされる。診断には,末梢血塗抹での汎血球減少と骨髄生検での骨髄低形成の証明が必要である。治療としては通常,ウマ抗胸腺細胞グロブリン【訳注:現在,日本で使用できるのはウサギ抗胸腺細胞グロブリンのみである。】お... さらに読む は,過敏性の好中球減少症を伴う。

免疫性の薬剤性好中球減少症は,ハプテンとして作用して抗体産生を刺激する薬剤に起因すると考えられ,通常は原因薬剤を中止した後も約1週間持続する。アミノピリン,プロピルチオウラシル,ペニシリン,またはその他の抗菌薬が原因となりうる。

骨髄の無効造血による好中球減少症は,ビタミンB12または葉酸の欠乏により引き起こされる 巨赤芽球性貧血 巨赤芽球性貧血 巨赤芽球性貧血は,そのほとんどがビタミンB12および葉酸の欠乏により生じる。無効造血は全ての血球系統に影響を及ぼすが,特に赤血球に強く影響する。診断は通常,血算および末梢血塗抹標本に基づき,通常はこれにより赤血球大小不同および変形赤血球増多を伴う大球性貧血,卵円形の大きな赤血球(大楕円赤血球),過分葉好中球,ならびに網状赤血球減少が明らかになる。治療は基礎疾患に対して行う。 (赤血球産生低下の概要も参照のこと。)... さらに読む 巨赤芽球性貧血 でみられることがある。通常は,大球性貧血およびときに軽度の血小板減少症が同時にみられる。無効造血が 骨髄異形成疾患 骨髄異形成症候群(MDS) 骨髄異形成症候群(MDS)は,末梢の血球減少症,異形成の造血前駆細胞,過形成または低形成の骨髄,および急性骨髄性白血病への移行リスクが高いことを特徴とする疾患群である。症状は最も強く障害された特定の細胞系列に由来するものであり,具体的には易疲労感,筋力低下,蒼白(貧血に起因),感染および発熱の増加(好中球減少症に起因),出血および皮下出血の増加(血小板減少症に起因)などみられる。診断は血算,末梢血塗抹検査,骨髄穿刺および骨髄生検による。... さらに読む に伴うこともある。

白血病 白血病の概要 白血病は,未成熟または異常な白血球の過剰産生が起きることで,最終的に正常な血球の産生が抑制され,血球減少に関連する症状が現れる悪性疾患である。 白血化は,自己複製能が少し制限された造血前駆細胞レベルで生じることもあるが,通常は多能性幹細胞の段階で発生する。異常な増殖,クローン性増殖,異常な分化,およびアポトーシス(プログラム細胞死)の低下... さらに読む 骨髄腫 多発性骨髄腫 多発性骨髄腫は,形質細胞の悪性腫瘍で,単クローン性免疫グロブリンを産生し,隣接する骨組織に浸潤し,それを破壊する。一般的な臨床像としては,骨痛および/または骨折を引き起こす溶骨性骨病変,腎機能不全,高カルシウム血症,貧血,繰り返す感染症などがある。典型的には,Mタンパク質(ときに尿中にみられ,血清中に認められない場合があるが,まれに全く認められない場合もある)および/または軽鎖タンパク尿,および骨髄中の過剰な形質細胞の証明が診断に必要で... さらに読む 多発性骨髄腫 リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫は,網内系およびリンパ系から発生する不均一な一群の腫瘍である。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫(NHL)に大別される(Professional.see table ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の比較)。 リンパ腫はかつて,白血病とは全く異なる疾患と考えられていた。しかし現在では,細胞マーカーとそれらのマーカーを評価する... さらに読む ,または転移性固形腫瘍(例, 乳癌 乳癌 乳癌は乳管や小葉の腺性の乳腺細胞を侵す。大半の患者に無症状の腫瘤があり,それらは診察やスクリーニングのマンモグラフィーで発見される。診断は生検により確定される。治療は通常,外科的切除と,しばしば放射線療法を併用し,場合によりアジュバント化学療法,ホルモン療法,またはその両方を施行する。 米国では,白人,黒人,アジア系/太平洋諸島系,およびアメリカンインディアン/アラスカ先住民の女性において,乳癌は癌による死亡原因として2番目に多いが(肺... さらに読む 乳癌 前立腺癌 前立腺癌 前立腺癌は通常腺癌である。典型的には,腫瘍の増殖によって血尿や疼痛を伴う閉塞が引き起こされるまで,症状はみられない。診断は直腸指診または前立腺特異抗原測定によって示唆され,経直腸的超音波生検によって確定される。スクリーニングについては議論があり,意思決定の共有が行われるべきである。大部分の前立腺癌患者の予後は,特に癌が限局または局在する場合(通常は症状の発生前),非常に良好であり,前立腺癌で死亡する患者と比較してそれ以外の原因で死亡する... さらに読む )の骨髄浸潤により,好中球産生が損なわれることがある。腫瘍誘発性の骨髄線維症により,好中球減少症がさらに悪化する場合がある。骨髄線維症は,肉芽腫性感染症,ゴーシェ病,および放射線療法により生じることもある。

感染症は,好中球の産生障害をもたらしたり,好中球の免疫性破壊または急速な消費を誘発したりすることにより,好中球減少症を引き起こすことがある。 敗血症 敗血症および敗血症性ショック 敗血症は,感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは,組織灌流が危機的に減少する;肺,腎臓,肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。免疫能の正常な患者における敗血症の一般的な原因は,多様なグラム陽性または陰性菌などによる。易感染性患者では,まれな細菌または真菌が原... さらに読む は,特に重篤な原因である。小児期の一般的なウイルス性疾患に伴って生じる好中球減少症は,発病後1~2日で認められ,3~8日間続くことがある。ウイルスまたは内毒素血症により好中球が循環プールから辺縁プールへ再分布することによって,一過性の好中球減少症が生じることもある。アルコールは,一部の感染症(例,肺炎球菌性肺炎)において骨髄の好中球反応を阻害することにより,好中球減少症の一因となる場合がある。

免疫異常から好中球減少症が起きることがある。新生児同種免疫性好中球減少症は,胎児/母体の好中球抗原不適合とともに,新生児の好中球(HNA-1抗原が最も一般的)に対するIgG抗体の胎盤を介した移行に関連して生じることがある。自己免疫性好中球減少症は,あらゆる年齢層で発生し,特発性で慢性の好中球減少症の多くの症例で生じている可能性がある。抗好中球抗体の検査(蛍光抗体法,凝集法,またはフローサイトメトリー)は常に利用または信頼できるわけではない。

二次性の慢性好中球減少症は,好中球の産生障害および抗体による好中球破壊の亢進により,しばしば HIV感染 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 に伴って生じる。自己免疫性好中球減少症は,急性,慢性,または一過性のものがある。循環血液中の好中球または好中球前駆細胞に対する抗体が関与することがある。また,好中球のアポトーシスを引き起こす可能性のあるサイトカイン(例,インターフェロンγ,腫瘍壊死因子)が関与することもある。自己免疫性好中球減少症患者のほとんどが,自己免疫疾患またはリンパ増殖性疾患(例, SLE 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデス(SLE)は,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー現象,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよびときに免疫抑制薬を必要とする。... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) ,フェルティ症候群)を基礎疾患として有している。

症状と徴候

好中球減少症では,感染症が発生するまで無症状である。発熱が唯一の感染症の徴候であることも多い。局所炎症の典型的な徴候(紅斑,腫脹,疼痛,浸潤)は,マスクされるか,みられないことがある。局所症状(例,口腔内潰瘍)がみられることもあるが,多くの場合わずかである。過敏性に起因する薬剤性好中球減少症患者では,過敏症による発熱,発疹,およびリンパ節腫脹がみられることがある。

慢性良性好中球減少症では,好中球数が200/μL未満でも,多くの重篤な感染症を経験しない患者もいる。周期性好中球減少症または重症先天性好中球減少症の患者は,重度の好中球減少状態にあるとき,口腔内潰瘍,口内炎,または咽頭炎のエピソード,およびリンパ節腫大を生じやすい。肺炎および敗血症がよくみられる。

診断

  • 臨床上の疑い(反復性またはまれな感染症)

  • 血算と白血球分画による確定

  • 培養および画像検査による感染症の評価

  • 好中球減少症の機序および原因の同定

頻繁な感染症,重度の感染症,もしくはまれな感染症の患者,またはリスクのある患者(例,細胞傷害性薬剤の投与または放射線療法を受けている患者)では,好中球減少症が疑われる。確定診断は血算と白血球分画による。

感染症の評価

感染症の有無を見きわめることが最優先である。感染症が軽微である場合もあるため,身体診察では,最も一般的な感染の原発巣,すなわち消化管などの粘膜面(歯肉,咽頭,肛門),肺,腹部,尿路,皮膚および爪,静脈穿刺部位,血管カテーテルを系統的に評価する。

急性または重症の好中球減少症であれば,臨床検査を迅速に開始しなくてはならない。

培養が検査の中心である。発熱がみられる全ての患者から細菌および真菌の血液培養検体を2セット以上得る;静脈カテーテルを留置している場合は,カテーテルからおよび別の末梢静脈から培養検体を採取する。持続性または慢性のドレナージ物質も,真菌および非定型抗酸菌について培養する。粘膜潰瘍では,スワブ採取し,ヘルペスウイルスについて培養を行う。皮膚病変では,細胞診および培養のために吸引または生検を実施する。全ての患者から尿検査および尿培養用の検体を採取する。下痢が認められる場合は,腸内細菌性病原体およびClostridium difficile毒素について便を検査する。肺感染症について評価するために喀痰培養を行う。

画像検査が役立つ。全ての患者で胸部X線撮影を行う。免疫抑制患者では,胸部CTも必要になることがある。副鼻腔炎の症状または徴候(例,頭位により変化する頭痛,上顎歯または上顎の疼痛,顔面腫脹,鼻汁)が認められる場合は,副鼻腔のCTが役立つことがある。症状(例,疼痛)または病歴(例,最近の手術)から腹腔内感染症が示唆される場合,通常は腹部のCTを行う。

原因の同定

次に,好中球減少症の機序および原因を特定する。病歴聴取では,全ての薬剤,その他の製剤,および可能性のある毒素への曝露または摂取について聴取する。

明らかな原因が同定できない場合(例,化学療法),以下が最も重要な検査となる:

  • 骨髄検査

骨髄検査では,好中球減少症が骨髄産生低下によるものか,好中球の破壊亢進に伴う二次的なものかを判断する(骨髄系細胞の産生が正常か亢進かで判定)。骨髄検査により,好中球減少症の特異的な原因(例, 再生不良性貧血 再生不良性貧血 再生不良性貧血は,血球前駆細胞の減少,骨髄の低形成または無形成,および2系統以上(赤血球,白血球,血小板)の血球減少が生じる造血幹細胞の疾患である。症状は貧血,血小板減少症(点状出血,出血),または白血球減少症(感染症)によって引き起こされる。診断には,末梢血塗抹での汎血球減少と骨髄生検での骨髄低形成の証明が必要である。治療としては通常,ウマ抗胸腺細胞グロブリン【訳注:現在,日本で使用できるのはウサギ抗胸腺細胞グロブリンのみである。】お... さらに読む 骨髄線維症 原発性骨髄線維症 原発性骨髄線維症(PMF)は,骨髄線維化,脾腫,ならびに有核および涙滴赤血球を伴う貧血を特徴とする,慢性の骨髄増殖性腫瘍である。診断には骨髄検査が必要で,骨髄線維化(二次性骨髄線維症)の原因となりうる他の疾患を除外する。治療は支持療法となることが多いが,ルキソリチニブなどのJAK2阻害薬により症状を軽減できる場合があり,造血幹細胞移植により治癒が得られる可能性もある。 (骨髄増殖性腫瘍の概要も参照のこと。)... さらに読む 白血病 白血病の概要 白血病は,未成熟または異常な白血球の過剰産生が起きることで,最終的に正常な血球の産生が抑制され,血球減少に関連する症状が現れる悪性疾患である。 白血化は,自己複製能が少し制限された造血前駆細胞レベルで生じることもあるが,通常は多能性幹細胞の段階で発生する。異常な増殖,クローン性増殖,異常な分化,およびアポトーシス(プログラム細胞死)の低下... さらに読む )が示唆されることもある。追加の骨髄検査(例,細胞遺伝学的検査;白血病,その他の悪性疾患,および感染症を検出するための特殊染色およびフローサイトメトリー)を実施する。

推測される診断によっては,好中球減少症の原因を調べる検査がさらに必要な場合がある。栄養欠乏のリスクがある患者では, 後天性銅欠乏症 銅は体内の多数のタンパク質の構成要素であり,体内の銅のほとんどは銅タンパク質と結合している。結合していない(遊離)銅イオンには毒性がある。遺伝的機序により,銅のアポタンパク質への組み込みおよび体内への有毒な銅蓄積を防ぐプロセスが制御される。代謝必要量を超えて吸収された銅は,胆汁を介して排泄される。 銅欠乏症は,後天性のこともあれば,遺伝性のこともある。 銅中毒も,後天性の事もあれば,遺伝性のこともある(... さらに読む 葉酸 葉酸欠乏症 葉酸欠乏症はよくみられる。不十分な摂取,吸収不良,または様々な薬物の使用の結果生じることがある。欠乏症は巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏症によるものと鑑別できない)を引き起こす。母体に葉酸欠乏症があると,神経管の先天異常のリスクが高まる。確定診断には臨床検査が必要である。好中球の過分葉の測定は,高感度であり容易に利用できる。通常は葉酸の経口投与による治療が奏効する。 米国およびカナダでは現在,栄養強化穀類食品に葉酸が添加されている。葉... さらに読む ,および ビタミンB12 ビタミンB12欠乏症 食事によるビタミンB12欠乏症は通常,不十分な吸収に起因するが,ビタミンサプリメントを摂らない完全菜食主義者に欠乏症が生じることがある。欠乏症により,巨赤芽球性貧血,脊髄および脳の白質への障害,ならびに末梢神経障害が起こる。診断は通常,血清ビタミンB12値の測定によって行う。シリング試験が病因の特定に役立つ。治療はビタミンB12の経口または静脈内投与による。葉酸塩(葉酸)は,貧血を軽減することがあるが,神経脱落症状を進行させることがある... さらに読む の値を測定する。免疫性好中球減少症が疑われる場合は,抗好中球抗体の有無を調べる検査を行う。好中球減少症の原因として,ある種の抗菌薬と感染症との鑑別は,ときに困難なことがある。抗菌薬治療開始直前の白血球数は,通常,感染に起因する血球数の変化を反映する。

乳児期からの慢性好中球減少症があり,繰り返す発熱および慢性歯肉炎の病歴を有する患者では,周期性好中球減少症を示唆する周期性が評価できるように,総白血球数と白血球分画を週3回6週間にわたって測定する。同時に血小板数および網状赤血球数も測定する。周期性好中球減少症の患者では,好酸球,網状赤血球,および血小板は高頻度で好中球と同期して変動するが,単球およびリンパ球は同期しないことがある。

治療

  • 関連疾患(例,感染症,口内炎)の治療

  • ときに抗菌薬の予防投与

  • 骨髄増殖因子

  • 疑われる原因物質(例,薬剤)の使用中止

  • ときにコルチコステロイド

急性好中球減少症

疑われる感染症を常に速やかに治療する。発熱または低血圧が認められる場合は,重篤な感染症であると想定し,経験的に高用量の広域抗菌薬を静注する。レジメン選択は,最も可能性の高い感染微生物,当該医療機関での病原体の抗菌薬感受性,およびレジメンの潜在的毒性に基づく。バンコマイシンは,耐性菌が生じるリスクがあるため,他の薬剤に耐性のあるグラム陽性菌が疑われる場合にのみ使用する。

血管カテーテルの留置については,菌血症が疑われたり,確認されたりした場合でも,通常はそのままでよいが,黄色ブドウ球菌(S. aureus),Bacillus属,Corynebacterium属,またはCandida属による感染症の場合,または適切な抗菌薬治療にもかかわらず血液培養が引き続き陽性である場合には,抜去を考慮する。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌による感染症は,一般に抗菌薬療法のみで消失する。好中球減少症がみられる患者では,フォーリーカテーテル留置でも感染症を起こしやすく,持続性の尿路感染症に対しては,カテーテルの交換または抜去を検討すべきである。

培養が陽性であれば,抗菌薬療法を感受性試験の結果に適応させる。72時間以内に解熱した場合は,少なくとも7日間,そして感染症の症状または徴候が認められなくなるまで,抗菌薬を継続する。好中球減少症が一過性(骨髄抑制をもたらす化学療法の後に出現するものなど)である場合は,通常は好中球数が500/μLを超えるまで抗菌薬療法を継続するが,持続性の好中球減少症があり,特に炎症の症状・徴候が消失し,培養が依然として陰性の患者には,抗菌薬の中止を考慮することができる。

抗菌薬療法にもかかわらず,発熱が72時間を超えて継続する場合は,細菌以外の原因,耐性菌による感染,別の細菌による重複感染,血清もしくは組織における不十分な抗菌薬濃度,または膿瘍などの局所感染が示唆される。発熱が続く好中球減少症患者では,2~4日毎に身体診察,培養,および胸部X線により再評価する。発熱以外に異常が認められなければ,当初の抗菌薬レジメンを継続してもよく,薬剤性の発熱を考慮すべきである。患者の状態が悪化している場合は,抗菌薬レジメンの変更を考慮する。

持続性の発熱および悪化で最も可能性の高い原因は 真菌感染症 真菌感染症の概要 真菌感染症はしばしば以下のいずれかに分類される: 日和見感染症 原発性感染症 日和見感染症は主に易感染性宿主にみられるが,原発性感染症は免疫能が正常な宿主でも発生することがある。 真菌感染症は以下に分類することができる: さらに読む である。広域抗菌薬療法の3~4日後も原因不明の発熱が持続している場合は,経験的に抗真菌薬療法を追加する。特異的な抗真菌薬(例,フルコナゾール,カスポファンギン,ボリコナゾール,ポサコナゾール)の選定は,リスクの種類(例,好中球減少症の期間および重症度,真菌感染症の病歴,狭域スペクトル抗真菌薬の使用にもかかわらず持続する発熱)に応じて異なるため,感染症専門医による指示を受けるべきである。経験的療法から3週間後(2週間の抗真菌薬療法を含む)に発熱は持続しているが,好中球減少症が消失している場合は,全ての抗菌薬の中止を検討し,発熱の原因を再評価してもよい。

発熱を伴わない好中球減少症については,一般的に好中球数が7日以上にわたり100/µL以下に減少するレジメンで化学療法を受ける患者に対して,一部の施設でフルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン)の予防投与が行われている。抗菌薬の予防投与は,通常,治療を担当している腫瘍医によって開始される。好中球数が1500/µLを超えるまで抗菌薬を継続する。また,発熱を伴わない好中球減少症患者で,より真菌感染症のリスクが高い場合(例,造血幹細胞移植の後, 急性骨髄性白血病 急性骨髄性白血病(AML) 急性骨髄性白血病(AML)では,異常に分化して長い寿命をもつ骨髄前駆細胞の白血化とその無秩序な増殖により,循環血液中の幼若な血球数が増加し,悪性細胞で正常な骨髄が置換される。症状としては,易疲労感,蒼白,紫斑ができやすい状態,出血しやすい状態,発熱,感染などがある;髄外白血病細胞浸潤による症状は,約5%の患者のみにみられる(皮膚症状として現れることが多い)。末梢血塗抹標本と骨髄の検査で診断に至る。治療としては,寛解に導入する導入化学療法... さらに読む 急性骨髄性白血病(AML) または 骨髄異形成疾患 骨髄異形成症候群(MDS) 骨髄異形成症候群(MDS)は,末梢の血球減少症,異形成の造血前駆細胞,過形成または低形成の骨髄,および急性骨髄性白血病への移行リスクが高いことを特徴とする疾患群である。症状は最も強く障害された特定の細胞系列に由来するものであり,具体的には易疲労感,筋力低下,蒼白(貧血に起因),感染および発熱の増加(好中球減少症に起因),出血および皮下出血の増加(血小板減少症に起因)などみられる。診断は血算,末梢血塗抹検査,骨髄穿刺および骨髄生検による。... さらに読む に対する強力な化学療法の後,真菌感染症の既往歴)は,抗真菌薬を投与できる。特異的な抗真菌薬の選定は,感染症専門医による指示に従うべきである。発熱を伴わない好中球減少症患者で,危険因子がなく,特異的な化学療法レジメンを基に好中球減少の持続が7日間未満であると予想される場合,ルーチンでの抗菌薬および抗真菌薬の予防投与は推奨されない。

骨髄増殖因子(顆粒球コロニー刺激因子[G-CSF])は,重度の好中球減少症(例,造血幹細胞移植および悪性腫瘍に対する強力な化学療法後)の患者で,好中球数の上昇および感染症予防のために広く用いられている。骨髄増殖因子は高価である。それでも,発熱性好中球減少症のリスクが30%以上あれば(好中球数500μL未満,前回の化学療法サイクル時の感染症発現,関連する併存疾患,または75歳以上の年齢により評価),骨髄増殖因子が適応となる。一般に,化学療法の終了から約24時間後に骨髄増殖因子の投与を開始すると,臨床的有益性が最も高くなる。特異体質性の薬物反応に起因する好中球減少症患者でも,特に回復の遅れが予想される場合に,骨髄増殖因子により有益性が得られることがある。G-CSF(フィルグラスチム)の投与量は,5~10μg/kgの1日1回皮下投与で,ペグ化G-CSF(ペグフィルグラスチム)の投与量は,化学療法のサイクル毎に6mgの1回皮下投与である。

グルココルチコイド,タンパク質同化ステロイド,およびビタミンは,好中球の産生を刺激しないが,好中球の分布および破壊に影響を及ぼす可能性がある。急性好中球減少症が薬剤性または毒素性であると疑われる場合は,可能性のある病原因子を全て中止する。好中球数を減少させることが知られている薬剤(例,クロラムフェニコール)による治療中に好中球減少症が発生した場合は,代替抗菌薬への変更が役立つことがある。

中咽頭潰瘍を伴う口内炎の不快感は,生理食塩水または過酸化水素水による2~3時間毎の含嗽,液剤での含嗽(リドカインビスカス,ジフェンヒドラミン,液剤の制酸薬を含有),麻酔成分を含むトローチ剤(アミノ安息香酸エチル15mg,3または4時間毎)の服用,またはクロルヘキシジン(1%溶液)による1日2回または1日3回の含嗽で緩和することがある。口腔または食道カンジダ症の治療では,ナイスタチン(40万~60万単位の含嗽液,1日4回;食道炎の場合は嚥下),クロトリマゾールのトローチ剤(10mg,1日5回,口腔内でゆっくり溶かす),または全身性抗真菌薬(例,フルコナゾール)を用いる。急性口内炎または食道炎では,半固形食または流動食が必要となることがあり,不快感を最小限にするために外用鎮痛薬(例,リドカインビスカス)が必要になる場合がある。

慢性好中球減少症

先天性好中球減少症 骨髄系細胞またはその前駆細胞における内因的欠陥に起因する好中球減少症 周期性好中球減少症 骨髄系細胞またはその前駆細胞における内因的欠陥に起因する好中球減少症 ,および 特発性好中球減少症 骨髄系細胞またはその前駆細胞における内因的欠陥に起因する好中球減少症 における好中球の産生は,G-CSFを1~10μg/kgで1日1回皮下投与することで増加する可能性がある。数カ月または数年にわたってG-CSFを連日または間欠投与することで,有効性を維持できる。G-CSFの長期投与は,その他に骨髄異形成症候群,HIV,および自己免疫疾患の患者を含む慢性好中球減少症患者にも使用されている。一般に,好中球数は増加するが,特に好中球減少症が重度ではない患者に対する臨床的有益性はほとんど明らかではない。自己免疫疾患患者または臓器移植を受けた患者に対しては,シクロスポリンが有益なこともある。

自己免疫疾患に起因して好中球の破壊が亢進している一部の患者では,コルチコステロイド(一般にプレドニゾン0.5~1.0mg/kgの1日1回経口投与)により血中の好中球が増加することがある。この好中球増多は,多くの場合G-CSFの隔日投与により維持できる。

脾腫と好中球のsplenic sequestrationが認められる一部の患者(例,フェルティ症候群)では,好中球数を増加させるために脾臓摘出が用いられてきたが,増殖因子およびその他のより新しい治療法がしばしば効果的であるため,脾臓摘出はほとんどの患者で避けるべきである。脾臓摘出は,痛みを伴う持続的な脾腫または重度の好中球減少症(500/μL未満)がみられ,かつ感染症に伴って重篤な問題が生じている患者において,他の治療が不成功に終わった場合に考慮することができる。脾臓摘出を行った患者は莢膜を有する微生物に感染しやすくなるため,脾臓摘出の前に肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),髄膜炎菌(Neisseria meningitidis),およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)による感染に対する予防接種を行うべきである。

要点

  • 好中球減少症は,細菌および真菌感染症の素因となる。

  • 感染のリスクは好中球減少症の重症度に比例し,好中球数が500/μL未満の患者で最もリスクが高くなる。

  • 炎症反応が起こりにくいため,臨床所見が認められないことがあるが,通常は発熱がみられる。

  • 発熱がみられる好中球減少症患者には,最終的な感染の同定まで経験的に広域抗菌薬を投与する。

  • 高リスク患者では,抗菌薬の予防投与が適応となる。

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