前立腺癌

執筆者:Thenappan Chandrasekar, MD, University of California, Davis
Reviewed ByLeonard G. Gomella, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 修正済み 2025年 2月
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前立腺癌は通常腺癌である。典型的には,腫瘍の増殖によって血尿や疼痛を伴う閉塞が引き起こされるまで,症状はみられない。診断は直腸指診(DRE)または前立腺特異抗原(PSA)の測定により示唆され,経直腸的超音波ガイド下生検によって確定される。スクリーニングについては議論があり,共有意思決定(shared decision-making)を行うべきである。治療は前立腺摘除術,放射線療法,緩和療法(例,ホルモン療法,放射線療法,化学療法),あるいは多くの高齢患者と慎重に選択した若年患者では積極的サーベイランスによる。大部分の前立腺癌患者の予後は,特にがんが限局または局在する場合(通常は症状の発生前),非常に良好であり,前立腺癌で死亡する患者と比較してそれ以外の原因で死亡する前立腺癌患者の方が多い。

前立腺腺癌は,皮膚悪性腫瘍を除けば,米国の50歳以上の男性において最も頻度の高いがんである。米国では,2024年に約299,010例が新規に発生し,約35,250例が死亡すると推定されている(1)。発生率は10歳毎に上昇し,剖検では60~90歳の男性の15~60%で前立腺癌が認められ,その頻度は年齢とともに上昇する。前立腺癌と診断される生涯リスクは6分の1である。診断時年齢の中央値は72歳であり,前立腺癌の60%以上が65歳以上の男性で診断される(1)。リスクは黒人男性で最も高く,特にカリブ系の男性で高い。遺伝学的危険因子としては,BRCA1/2変異,リンチ症候群,一部の遺伝性乳癌および卵巣がんの家族歴などがある。

前立腺の肉腫はまれであり,主に小児で発生する。未分化前立腺癌,扁平上皮癌,および導管由来の移行上皮癌もまれに発生する。前立腺上皮内腫瘍は,前がん性の組織学的変化の可能性があるとされている。

ホルモンは腺癌の経過に対しては影響するが,前立腺癌のその他の型には影響しないことがほぼ確実である。テストステロンのサプリメントが前立腺癌のリスクに及ぼす影響については,依然として議論がある。症候性性腺機能低下症の治療としてのテストステロンサプリメントの使用は前立腺癌のリスク上昇につながらないことが,データから示唆されている(2)。

参考文献

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前立腺癌の症状と徴候

前立腺癌は一般的に進行が遅く,進行以前に症状が出現することはまれである。進行例では,血尿および下部尿路閉塞の症状(例,腹圧排尿,排尿遅延,尿勢低下または尿線途絶,残尿感,終末時滴下)または尿管閉塞の症状(例,腎仙痛,側腹部痛,腎機能障害)が現れる場合がある。造骨性骨転移(一般的に骨盤,肋骨,椎体)により骨痛,病的骨折,または脊髄圧迫が生じる場合がある。

前立腺癌の診断

  • 前立腺のマルチパラメトリックMRI(mpMRI)

  • 前立腺の針生検(最も一般的)または転移病変の生検による診断

  • 組織学的な悪性度分類

  • CT/MRIと骨シンチグラフィーのほか,場合により前立腺特異膜抗原(PSMA)やその他のPET製剤によるPET-CTなど,新しい手法も用いた病期診断

症状がみられる患者には前立腺癌の診断的評価が行われるが,診断的評価に進むケースとしては,前立腺特異抗原(PSA)検査(一部は直腸指診との併用)によるスクリーニングで異常が認められた場合の方が多い。PSA値の上昇はがんを示唆している可能性があるが,感染症や前立腺腫大でも起こりうるため,前立腺癌の確定診断には役立たない。

ときに,岩のように硬い硬結または結節がDREで触知できるが,診察ではしばしば正常であり,硬結と結節はがんを示唆するものの,肉芽腫性前立腺炎,前立腺結石およびその他の前立腺疾患と鑑別しなくてはならない。精嚢への硬結の進展と腺の側方の固定は,局所進行前立腺癌を示唆する。直腸指診(DRE)で検出される前立腺癌は大きい傾向があり,50%以上が被膜を越えて進展する。

前立腺癌の診断には組織学的な確定診断が必要であり,最も一般的には経会陰超音波ガイド下針生検が用いられ,これは診察室で局所麻酔下または手術室で鎮静下で施行できる。超音波検査での低エコー領域はがんを反映している可能性が高い。ときとして,前立腺癌は前立腺肥大症の手術中に切除した組織から偶然診断されることがある。マルチパラメトリックMRIは,生検の必要性に関する患者のリスク層別化を可能とし,標的とすべき疑わしい領域を同定することができる。現在では,初回生検の前や積極的サーベイランスの実施中に一般的に用いられている。

悪性度および病期診断

悪性度分類は,腫瘍構造と正常な腺組織の類似に基づき,腫瘍の悪性度の定義に役立つ。悪性度分類では腫瘍の組織学的多様性を考慮する。一般的にはGleasonスコアが用いられる。最も頻度の高いパターンとその次に頻度の高いパターンをそれぞれ1~5のグレードで分類し,これら2つのグレードの合計を総スコアとする。大半の専門家は,スコア6以下を高分化,7を中分化,8~10を低分化としている。スコアが低いほど,腫瘍の悪性度と浸潤性が低く,予後は良好である。限局性腫瘍に対しては,Gleasonスコアは被膜浸潤,精嚢浸潤,またはリンパ節転移の可能性を予測する上で有用である。Gleasonグレード1および2は現在は廃止されており,結果として実質的な最低スコア(3 + 3)は6となっている。しかしながら,Gleasonスコア6は以前の2~10のスケールでは低いようには聞こえない。

Gleasonグレードグループは,これを患者に伝える際に役立つとともに,病理学的分類を単純化する効果もある,より新しいスコアである。この新たなスコアリングシステムは2016年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)に受け入れられた(1):

レードグループ1 = Gleasonスコア 6(3 + 3)

グレードグループ2 = Gleasonスコア 7(3 + 4)

グレードグループ3 = Gleasonスコア 7(4 +3 )

グレードグループ4 = Gleasonスコア 8

グレードグループ5 = Gleasonスコア 9および10

Gleasonグレードグループ,臨床病期,およびPSA値の併用(表またはノモグラムを使用)は,それぞれを単独で用いる場合と比較して,病理学的病期および予後の予測に優れている。

前立腺癌では,病期診断により腫瘍の進展範囲を明らかにする(前立腺癌のAJCC/TNM病期分類および前立腺癌のTNM定義の各表を参照)。前立腺の経直腸的超音波検査(TRUS)またはMRIでは,病期診断に必要な情報,特に被膜浸潤および精嚢浸潤に関する情報が得られる可能性がある。臨床病期がT1c~T2aで,Gleasonスコアが低値(7以下),かつPSA値が10ng/mL(10μg/L)未満の患者には,治療に進む前の追加の病期診断検査は通常行わない。骨シンチグラフィーは,PSA値が20ng/mL(20μg/L)を超えるかGleasonスコアが高値(すなわち,8以上または[4 + 3]以上)でない限り,骨転移の検出に役立つことはまれである(関節炎変化による損傷でもしばしば異常を示す)。Gleasonスコアが7~10でかつPSA値が10ng/mL(10μg/L)を超える場合,またはGleasonスコアにかかわらずPSA値が20ng/mL(20μg/L)を超える場合は,骨盤リンパ節および後腹膜リンパ節を評価するため,腹部および骨盤CT(またはMRI)がよく施行される。

現行のガイドライン(1)では,利用可能性に応じて,PSMA-PET/CTまたはPSMA-PET/MRIを用いて骨と軟部組織(全身)を同時撮影する画像検査を行うことで,中リスクまたは高リスク患者の病期診断が容易になると示唆されている。マルチパラメトリックMRIも局所進行前立腺癌(T3)の患者で腫瘍の局所的な進展範囲を判定するのに役立つ可能性があり,骨盤リンパ節の病期診断にはCTより望ましい。疑わしいリンパ節は,針生検でさらに評価することができる。

血清酸性ホスファターゼ高値,特に酵素活性測定での高値は,転移(特にリンパ節転移)の有無と良好に相関する。しかしながら,この酵素は前立腺肥大症でも上昇する可能性があり,強い前立腺マッサージの後や多発性骨髄腫ゴーシェ病,および溶血性貧血がある状況でも,わずかに高値になることがある。現在では治療指針の決定や治療後のフォローアップを目的として使用されることはまれとなっており,これは特に,放射免疫アッセイ(通常用いられる方法)として行った場合の診断価値が確立されていないことに起因する。循環血中の前立腺癌細胞を検出する逆転写PCR法が病期診断と予後判定の手段として研究されている。

表&コラム
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転移のリスクは,T分類,Gleasonスコア(Gleasonグレードグループ),およびPSA値から以下のように推定することができる:

  • 低リスク:T2a以下,Gleasonスコア6(Gleasonグレードグループ1),かつPSA値10ng/mL(10μg/L)以下である

  • 中リスク:T2b-c,Gleasonスコア7(Gleasonグレードグループ2~3),PSA値10ng/mL(10μg/L)以上20ng/mL(20μg/L)以下のいずれかに該当する

  • 高リスク:T3以上,Gleasonスコア8以上(Gleasonグレードグループ4~5),PSA値20ng/mL(20μg/L)以上のいずれかに該当する

酸性ホスファターゼ値とPSA値は,どちらも治療後に低下し,再発により上昇するが,PSAはがん進行と治療に対する反応をモニタリングする上で最も感受性の高いマーカーであり,この目的ではほぼ完全に酸性ホスファターゼから置き換わっている。

新たに前立腺癌と診断された男性に導管内浸潤の組織所見,転移性または高悪性度の限局性前立腺癌,前立腺癌の濃厚な家族歴,またはBRCA1/2変異/リンチ症候群/遺伝性乳癌および卵巣がんの既知の家族歴を認める場合は,生殖細胞系列遺伝子検査と遺伝カウンセリングを勧めるべきである。

診断に関する参考文献

  1. 1.Humphrey PA, Moch H, Cubilla AL, Ulbright TM, Reuter VE.The 2016 WHO Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs-Part B: Prostate and Bladder Tumours.Eur Urol.2016 Jul;70(1):106-119.doi: 10.1016/j.eururo.2016.02.028

前立腺癌の治療

  • 前立腺内に限局しているがんには,手術,放射線療法,局所療法,または積極的サーベイランス

  • 前立腺外に進展したがんには,ホルモン療法,放射線療法,および/または化学療法による緩和療法

治療では,前立腺特異抗原(PSA)値,腫瘍の悪性度および病期,年齢,併存疾患,期待余命,および患者の希望を指針とする。治療の目標は以下の可能性がある:

  • 治癒を目標とした積極的なサーベイランス

  • 局所療法(治癒を目標とする)

  • 全身療法(腫瘍の進展範囲を低下または制限することを目標とする),余命の延長,および生活の質の改善

年齢にかかわらず,がんが生命を脅かしており,かつ治癒の可能性がある場合には,多くの患者が根治的な治療を望む。しかしながら,がんが前立腺の外に拡大した場合は治癒の可能性が低いことから,根治的ではなく緩和的な治療を行う。根治的治療が有益となる可能性が低い男性(例,高齢者,併存症あり)では,注意深い経過観察とすることが可能で,それらの患者では症状が現れた場合に緩和的処置で治療する。

積極的サーベイランス

積極的サーベイランス(active surveillance)は,低リスクまたは場合によっては中リスクの限局性前立腺癌を有するか,生命に関わる疾患を併発している無症状の患者では多くの場合に適切であり,そのような患者では,前立腺癌による死亡リスクと比較して他の原因による死亡リスクの方が大きい。このアプローチは,定期的な直腸指診(DRE),PSA測定および症状のモニタリングを必要とする。低リスクのがんと診断された健康な若年男性に対する積極的サーベイランスでは,生検も定期的に繰り返す必要がある。生検の至適な施行間隔はまだ確立されていないが,大半の専門家が1年以上としており,生検陰性が反復した場合はより少ない頻度で施行することに同意している。がんが進行した場合は,治療が必要である。積極的サーベイランスを受ける患者のうち,約30%は最終的に治療が必要となる。

局所療法

局所療法は,前立腺癌の治癒を目標とし,そのため根治的治療と呼ばれることもある。主要な選択肢としては前立腺全摘除術,いくつかの形態の放射線療法,および局所療法がある。決定を下す上では,これらの治療法のリスクとベネフィットに関する慎重なカウンセリングと,患者毎の特徴(年齢,健康状態,腫瘍特性)の考慮が極めて重要である。

前立腺全摘除術

腫瘍が前立腺に限局していて,期待余命が10~15年の75歳未満である患者では,前立腺全摘除術(前立腺に加えて精嚢および所属リンパ節も切除する)がおそらく最善である。一部の高齢患者では,その期待余命,併存疾患,ならびに手術および麻酔に対する耐容性に基づき,前立腺摘除術が適切である。前立腺摘除術は,かつては下腹部を切開して施行されていた。現在では,大半の前立腺摘除術がロボット支援腹腔鏡下アプローチで施行されており,失血量および入院期間が最小限に抑えられているが,合併症発生率や死亡率の変化は示されていない。前立腺全摘除術の合併症としては,一時的な腹圧性尿失禁(重度であり,全患者の約5~10%で長期化する可能性がある),膀胱頸部狭窄または尿道狭窄(約7~20%),勃起障害(約30~100%,年齢と術前の機能に強く依存する),直腸損傷(1~2%)などがある(1)。神経温存前立腺全摘除術は勃起障害の可能性を低下させるが,常に施行可能というわけではなく,病期と腫瘍の位置に依存する。

放射線療法

標準の外照射療法では通常70グレイ(Gy)を7週間で照射するが,この治療法は原体照射法による3次元放射線療法と強度変調放射線療法(IMRT)に取って代わられており,これらは80Gy近い線量を前立腺に安全に照射でき,局所制御率が(特に高リスク患者で)高いことがデータから示されている(2)。少なくとも40%の患者では,勃起機能にいくかの低下がみられる。その他の有害作用は,放射線性直腸炎,膀胱炎,下痢,疲労感などで,このほかに尿道狭窄の可能性があり,特に経尿道的前立腺切除術の手術歴を有する患者で認められる(1)。外照射療法,前立腺全摘除術,および積極的なモニタリングの成績は,ProtecT試験で実証された(3)ように,限局性前立腺癌に対する治療から中央値で10年後の時点で同程度であることが示された。陽子線治療などの新しい形態の外照射療法はかかる費用が高く,前立腺癌患者で得られるベネフィットが明確に確立されていないことを考慮すると,その費用は正当化できない可能性がある。外照射療法は,前立腺全摘除術後にがんが残存しているか,PSA値が手術後に上昇を開始し,転移が見つけられない場合にも役割を果たす。

最近のエビデンス(4)も,腫瘍量の少ない転移例(しばしばオリゴ転移と呼ばれ,一般的には転移部位が3~5カ所未満と定義される)では前立腺に対する放射線療法の施行を支持している。前立腺癌に対する放射線療法における最近の進歩として,照準を改善するために前立腺周囲に留置するマーカー(fiducial marker)の使用がある。直腸毒性の軽減に役立てるため,経直腸的に針を挿入してハイドロゲルスペーサーを留置することもできる。ハイドロゲルスペーサーは時間の経過とともに吸収される。寡分割照射(hypofractionation)は,放射線治療において進歩のみられる概念であり,総線量を複数の大きな線量に分割して,1日1回以下の頻度で治療を行うものである。寡分割照射による放射線療法は,標準的な放射線療法よりも短い期間(数日または数週間)で施行される。

密封小線源治療では,放射性シードを会陰を介して前立腺に埋め込む。低線量率(LDR)密封小線源治療では,通常は一時的に挿入したカテーテルを用いて放射性シードを会陰から挿入し,前立腺内に直接留置する。それらのシードは限定された期間(通常3~6カ月間)にわたり放射線を集中的に放射した後,不活化する。高線量率(HDR)密封小線源治療では,通常はイリジウム192(Ir-192)が使用される。

中リスク患者に対して,高品質インプラントの単独療法としての使用か,あるいはインプラントと外照射療法の併用のどちらが優れているかは,研究プロトコルで調査が進められている。密封小線源治療も勃起機能を低下させるが,発症が遅くなる可能性があり,また患者のホスホジエステラーゼ5阻害薬に対する反応は,手術中に神経血管束の切除または損傷があった患者と比べて高いと考えられる。頻尿,尿意切迫,また頻度は低いものの尿閉が一般的にみられるが,通常は時間とともに軽減する。その他の有害作用としては,排便回数の増加,便意切迫,出血または潰瘍形成,前立腺直腸瘻などがある。

局所療法は,前立腺の腫瘍がある領域のみを標的とするもので,低リスクまたは中リスクの限局性前立腺癌の治療に用いられる。腫瘍が前立腺(通常は片側のみ)に限局しており,前立腺外または他臓器への進展を示す所見が認められないことが適応の条件である。各種の局所療法では,特定のエネルギー源(熱,冷却,電気ショックなど)を用いて腫瘍細胞を破壊する。現在の方法としては以下のものがある:

  • HIFU(高密度焦点式超音波療法):強力な超音波エネルギーを経直腸的に照射して,前立腺組織を焼灼する

  • 凍結療法:前立腺癌細胞をクリオプローブで凍結した後に解凍することで破壊する

  • 局所的レーザー焼灼術(FLA):レーザーの熱を利用して腫瘍細胞を破壊する

  • 不可逆電気穿孔法(IRE):腫瘍の周囲に設置した電極を介して電気ショックを与えて,腫瘍細胞を破壊する

  • 経尿道的前立腺超音波アブレーション(TULSA):音波による熱を利用して腫瘍細胞を破壊する

これらの治療法は十分に確立されておらず,現在も長期成績が収集されている(5)。よく選択された患者での短期および中期成績は前立腺全体の根治的治療と匹敵するようである。

前立腺に限局しているがんが高リスクの場合,様々な治療法の併用が必要になることがある(例,外照射療法で治療された高リスク前立腺癌に対して,6カ月から2~3年のホルモン療法の追加)。

全身療法

がんが前立腺を越えて拡大した場合,治癒の可能性は低く,通常は腫瘍の進展範囲を縮小または抑制することを目標とする全身療法が施行される(6)。

局所進行例および転移例では,去勢(両側精巣摘除術による外科的去勢と黄体形成ホルモン放出ホルモン[LHRH]作動薬または拮抗薬による内科的去勢がある)によるアンドロゲン遮断療法(ADT)に場合により放射線療法を併用する治療が有益となる可能性がある。LHRHアゴニストとしてはリュープロレリン,ゴセレリン,トリプトレリン[triptorelin],ヒストレリン[histrelin],ブセレリンなどがあり,LHRHアンタゴニストとしては注射剤のデガレリクスや経口剤のレルゴリクスなどがある。LHRHアンタゴニストは,LHRHアゴニストより速やかにテストステロン値を低下させる。LHRHアゴニストとLHRHアンタゴニストは通常,血清テストステロン値を両側精巣摘除術とほぼ同等に低下させる。アンドロゲン受容体標的療法(アビラテロン酢酸エステルとプレドニゾン,エンザルタミド,アパルタミド,ダロルタミドの併用)または化学療法(ドセタキセル)をADTと併用することが可能であり,治療法の選択は転移病変の体積と患者の併存症によって決まる。

これらのアンドロゲン除去療法はいずれも性欲減退と勃起障害を引き起こし,ホットフラッシュを引き起こすこともある。LHRHアゴニストは,一時的にPSA値の上昇を引き起こすことがある。一部の患者ではアンドロゲン完全遮断のために抗アンドロゲン薬(例,フルタミド,ビカルタミド,ニルタミド[nilutamide],酢酸シプロテロン[米国では入手できない])の追加が有益である。併用アンドロゲン遮断療法とは,通常はLHRHアゴニストと抗アンドロゲン薬の併用を指すが,LHRHアゴニスト(またはLHRHアンタゴニストもしくは精巣摘除術)単独と比較した場合の有益性はごくわずかのようである。もう1つのアプローチは間欠的アンドロゲン遮断であり,これはアンドロゲン非依存性前立腺癌の発生を遅延させることを意図したもの,アンドロゲン遮断のいくつかの有害作用を制限する上で有用である。完全アンドロゲン除去療法は,PSA値が低下するまで(通常は検出限界未満まで)継続し,その後は中止する。PSA値が特定の閾値を超えて上昇した時点で治療を再開するが,理想的な閾値はまだ確立されていない。治療および治療休止期間の至適なスケジュールもまだ確立されておらず,施設間で大きなばらつきがある。

アンドロゲン遮断は,生活の質を大きく損なう可能性があり(例,自己像,がんとその治療に対する態度,活力),長期治療により骨粗鬆症,貧血,および筋肉量の減少をもたらす可能性がある。エストロゲン製剤は,心血管合併症および血栓塞栓性合併症のリスクを有するため,まれにしか使用されない。

転移性前立腺癌では,ホルモン療法は限られた期間のみ効果を示す。テストステロン値が去勢レベル(50ng/dL[1.74 nmol/L]未満)であるにもかかわらず進行するがん(PSA値の上昇により示唆される)は,去勢抵抗性前立腺癌に分類される。去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)は,さらにM0(非転移性)CRPCとM1(転移性)前立腺癌に分類できる。テストステロン値が低く,CTおよび骨シンチグラフィーで病変を認めないにもかかわらずPSA値が上昇する場合は,非転移性の去勢抵抗性前立腺癌と呼ばれる。転移のリスクが高い。

転移性前立腺癌で生存期間を延期する治療法としては,以下のものがある(6):

  • ドセタキセル(タキサン系の化学療法薬)

  • シプロイセル-T(sipuleucel-T)(前立腺癌細胞に対して免疫を誘導するよう設計された患者由来のワクチン)

  • アビラテロン(精巣および副腎のみならず腫瘍内でのアンドロゲン合成を遮断する)

  • エンザルタミド,ダロルタミド,アパルタミド(アンドロゲンの受容体との結合を阻害する)

  • カバジタキセル(ドセタキセル耐性を獲得した腫瘍に活性を示す可能性があるタキサン系の化学療法薬)

  • ラジウム233(α線を放射し,CRPC患者において骨転移に起因する合併症を予防するとともに,生存期間も延長することが最近明らかにされた)

  • 外照射療法(EBRT)

  • BRCA1/2などの変異を有するmCRPC患者に単剤療法として用いた場合に活性を示すようである,PARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)阻害薬(オラパリブ,ルカパリブ[rucaparib])。PARP阻害薬のタラゾパリブがエンザルタミドとの併用で使用可能であるが,現在ではBRCA変異を有する転移性の去勢抵抗性前立腺癌患者に対して,オラパリブおよびニラパリブもアビラテロン/プレドニゾンとの併用で使用されている(6)。

  • 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)の前立腺癌患者に対する免疫療法(ペムブロリズマブ)

  • ルテチウム(177Lu)ビピボチド テトラキセタン(Lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan):前立腺癌細胞の表面上の分子を特異的に標的とする薬剤であり,PET/CTで前立腺特異膜抗原(PSMA)陽性と判定された患者に投与される。

治療の選択には多くの因子が関係する可能性があり,結果を予測する上で援用できるデータはあまりないと考えられることから,最新の臨床試験に精通しておくとともに,患者教育と共有意思決定(shared decision-making)が推奨される。

現時点では,新たに去勢感受性と診断された患者であっても,機能状態が良好な患者にはADT + ドセタキセル + アビラテロン酢酸エステルまたはダロルタミドの3剤併用による治療が推奨されている。あるいは,ADT + アビラテロン酢酸エステル,アパルタミド,またはエンザルタミドの2剤併用療法で治療することもできる。診断時の腫瘍量が少ない転移例では,これらの薬剤との併用で外照射療法も推奨される。

進行して去勢抵抗性となるか初期治療が不成功に終わった場合は,ADTを継続しながら他の治療を開始してもよい。具体的には,アンドロゲン受容体を標的とする薬剤,化学療法,免疫療法,PARP阻害薬,放射性核種を用いる分子標的療法などがある。さらに,特定の変異を有する患者に対しては,発生部位を問わないがん種横断的な治療を考慮することができ,例えば,高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)の固形腫瘍を有する患者に対するペムブロリズマブの使用などがある。

骨転移に起因する合併症(例,病的骨折,疼痛,脊髄圧迫)の治療および予防の補助として,破骨細胞阻害薬(例,デノスマブ,ゾレドロン酸)を使用することが可能である。ADTを受けている全ての患者にビタミンDおよびカルシウムのサプリメントを処方するとともに,DEXA法を選択的に用いて骨粗鬆症または骨減少症の検出を試みるべきである。荷重運動も体重,骨密度,筋肉量,および体幹の筋力の維持に役立つ可能性がある。個々の骨転移巣の治療には,従来から外照射療法が用いられている。

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前立腺癌の予後

大部分の前立腺癌患者の予後は,特に限局性または局所性の場合は極めて良好である。高齢の前立腺癌患者の期待余命は,年齢および併存症に依存するが,年齢をマッチさせた前立腺癌のない男性とほとんど変わらない可能性がある。多くの患者では,長期の局所コントロールだけでなく,治癒さえも可能である。治癒の可能性は,たとえ臨床的に限局がんであっても,腫瘍の悪性度および病期に依存する。早期治療を行わなければ,高悪性度の低分化癌患者の予後は不良である。未分化の前立腺癌,扁平上皮癌,および導管由来の移行上皮癌は,従来の治療法に対する反応が不良である。遠隔転移を来した場合は,根治的治療法はないものの,新しい治療法を用いることで何年も持続する寛解導入を達成できる可能性がある。転移例における期待余命の中央値は典型的には1~3年であるが,何年も生存する患者もいる。

スクリーニング

現在では前立腺癌の大半が,PSA値(およびときにDRE)による無症状男性のスクリーニングによって発見されている。スクリーニングに関する推奨はそれぞれで異なる場合があるが,一般的には45~75歳の男性で年1回または年2回の頻度で実施され,高リスク男性(例,前立腺癌の家族歴を有する人,黒人男性,生殖細胞系列変異を有する男性)ではときに,より若年で開始される。スクリーニングは通常,期待余命が10~15年未満の男性と75歳以上の男性には推奨されない。

異常所見を認めた場合は,医師の選好と患者の希望に基づいて,追加検査を行う。マルチパラメトリックMRIで疑わしい病変を検出することができ,また前立腺生検が必要かどうかのリスク層別化に様々な尿検査や血液検査が役立つ可能性がある。しかしながら,究極的には,前立腺生検が前立腺癌を診断する唯一の方法であることに変わりはない。

スクリーニングによって罹病率が低下するかどうかは定かではない;死亡率は低下する可能性が高いようであるが(1),スクリーニング必要数は高い水準にある。スクリーニングによって得られる効果が無症状のがんを治療することで生じるQOLの低下を上回るかどうかは,依然として不明である。スクリーニングは一部の専門家団体によって推奨され,他の組織では反対されている。ERSPC(European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer)およびPLCO(Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian)試験のデータについての統合解析から,PLCO試験の対照群でコンタミネーションの頻度が高かったものの,スクリーニングの程度の差で調整した場合,どちらの試験でもスクリーニングにより前立腺癌死亡率の低下が得られたことが示唆された(2, 3)。その結果,United States Preventive Services Task Force(USPSTF)は2018年,前立腺癌スクリーニングに反対(レベルD)した2012年版の推奨を見直して,70歳未満の男性では有益となる可能性がある(レベルC)に変更した(4)。USPSTFによる現行の推奨では,55~69歳の男性が前立腺特異抗原(PSA)に基づく前立腺癌スクリーニングを定期的に受けるかどうかは,スクリーニングの潜在的な便益と害について医師と話し合った上で個別に決定すべきであるとされている(4)。

新たに前立腺癌と診断された患者の大半は,DREが正常であり,血清PSA測定はスクリーニング検査としては理想的ではない。PSA値は前立腺癌患者の25~92%(腫瘍の大きさに依存)で上昇するが,中等度の上昇が前立腺肥大症患者の30~50%(前立腺の大きさおよび閉塞の程度に依存),一部の喫煙者,前立腺炎または前立腺処置(カテーテル,膀胱鏡検査,前立腺生検)後の数週間でも認められる。まれに,性行為や極端に激しいサイクリングなどの活動によってPSA値が偽性高値を示すことがある。

血清PSA値4ng/mL(4μg/L)以上が45歳または50歳以上の男性における生検の適応とされていることが多い。著しい高値は有意であり(腫瘍の被膜外進展または遠隔転移を示唆する),PSA値の上昇とともにがんの可能性が高まるが,その値を下回ればリスクがないと言えるカットオフ値は存在しない。

無症状の患者でのがんの陽性適中率は,PSA値10ng/mL(10μg/L)超で67%,PSA値4~10ng/mL(4~10μg/L)で25%であり,最近のエビデンスから55歳以上の男性の前立腺癌有病率はPSA値4ng/mL(4 μg/L)未満で15%,PSA値0.6~1.0ng/mL(0.6~1.0μg/L)で10%であることが示唆されている(5)。PSA低値の患者で認められるがんは小さく悪性度も低い傾向にあるが,悪性度の高いがん(Gleasonスコア7~10)はPSA値にかかわらず存在する可能性があり,PSA値4ng/mL(4μg/L)未満で発生するがんのうち悪性度の高いがんの割合はおそらく15%である。カットオフ値4ng/mL(4μg/L)では一部の重篤となりうるがんを見逃すようであるが,それらのがんを発見するために必要な生検数の増加による費用や合併症発生数は明らかではない。

生検を施行するかどうかの決定では,前立腺癌の家族歴がない場合にも,その他のPSA関連因子が有用と考えられる。例えば,PSAの変化率(PSA velocity)は0.75ng/mL/年(0.75μg/L/年)未満で,若年者ではより低値であるべきである。PSA velocityが0.75ng/mL/年(0.75μg/L/年)を上回る場合は,通常は生検が推奨される。同様に,PSA density(前立腺体積に対するPSA値の比)も生検の必要性を判断する上で役立つことがあり,この値が0.15ng/mL以上(またはときに0.10ng/mL以上)の場合は,生検を考慮すべきである。

総PSAに対する遊離型PSAの比および複合型PSAを測定するアッセイは,標準的な総PSA測定と比較して腫瘍に対してより特異的であり,がんを有していない患者に対する生検の頻度を低下しうる。遊離型PSAの低値には前立腺癌との関連が認められる。標準的なカットオフ値は確立されていないものの,一般に10~20%未満で生検が必要と判断される。その他のPSAアイソフォームや前立腺癌に対する新規マーカーの研究が進められている(5)。こうしたPSAの他の利用法いずれをもってしても,過剰な生検につながる可能性に関する全ての懸念に答えることはできない。多くの新規検査(例,尿中PCA-3[prostate cancer antigen 3],Prostate Health Index,4Kscore,urinary SelectMDXなど)が市販されており,スクリーニングの実施を判断するのに有用となる可能性がある。

PSA検査のリスクとベネフィットについて患者と話し合うべきである。患者によっては,どのような犠牲を払おうとも,進行や転移の可能性がどれだけ低くとも,がんが一切ない状態を望み,PSA検査を毎年受けることを望む場合もある。一方,患者によってはQOLを重視し,ある程度の不確かさを受容することができ,PSA検査の施行頻度を減らす(あるいは施行しない)ことを望む場合がある。

スクリーニングに関する参考文献

  1. 1.de Vos II, Meertens A, Hogenhout R, et al: A detailed evaluation of the effect of prostate-specific antigen-based screening on morbidity and mortality of prostate cancer: 21-year follow-up results of the Rotterdam section of the European Randomised Study of Screening for Prostate Cancer.Eur Urol.84(4):426-434, 2023.doi: 10.1016/j.eururo.2023.03.016

  2. 2.European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer: 16-yr followup data.Accessed February 3, 2025.

  3. 3.Shoag JE, Mittal S, Hu JC: Reevaluating PSA testing rates in the PLCO trial.N Engl J Med.374(18):1795-1796, 2016.doi: 10.1056/NEJMc1515131

  4. 4.U.S. Preventive Services Task Force: Prostate cancer: Screening.Final recommendation statement.Accessed February 3, 2025.

  5. 5.National Comprehensive Cancer Network® (NCCN).Clinical Practice Guidelines in Oncology.Prostate Cancer.Version 1.2025—December 2, 2024.Accessed February 3, 2025.

前立腺癌の予防

前立腺癌を確実に予防できる方法はない。しかしながら,健康的な生活習慣が妥当なアプローチの1つと考えられており,具体的には運動,バランスのとれた食習慣(赤身肉と飽和脂肪酸の摂取を制限し,緑色の葉物野菜を豊富に摂取する),飲酒量の制限,禁煙などがある。

要点

  • 前立腺癌は加齢とともに極めて一般的に発生するが,常に臨床的に重要なわけではない。

  • 症状はがんが拡大し,治癒がより困難となった後にのみ発生する。

  • 前立腺癌の診断は経直腸的または経会陰超音波ガイド下の針生検による。

  • 限局性前立腺癌では,局所の根治的治療(例,前立腺摘除術,放射線療法,局所療法)と積極的サーベイランスを考慮する。

  • 前立腺外に進展している場合は,全身療法(例,様々なホルモン療法,シプロイセル-T(sipuleucel-T),タキサン系化学療法)に場合により放射線療法を併用する治療を考慮する。

  • 骨転移に起因する合併症がよくみられ,重要であり,ラジウム233および破骨細胞阻害薬による治療を考慮する。

  • 50歳以上の男性で期待余命が10年または15年以上の場合は,スクリーニングの長所および短所について話し合いを行う。

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