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低ナトリウム血症

執筆者:

James L. Lewis III

, MD, Brookwood Baptist Health and Saint Vincent’s Ascension Health, Birmingham

最終査読/改訂年月 2018年 3月
本ページのリソース

低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがある。診断は血清ナトリウムの測定による。血清および尿の電解質や浸透圧,ならびに循環状態の評価が原因の解明に有用である。治療として,水分摂取制限,水分排出促進,欠乏しているナトリウムの補充,および基礎疾患の是正などを行う。

病因

低ナトリウム血症は,体内の総ナトリウム量に対する体内総水分量(TBW)の過剰を意味する。細胞外液量の状態が体内の総ナトリウム量を反映するため,低ナトリウム血症では細胞外液量の状態も考慮しなければならない:つまり,細胞外液量が減少しているのか(hypovolemia),正常であるのか(euvolemia),過剰であるのか(hypervolemia)ということである(Professional.see table 低ナトリウム血症の主な原因 低ナトリウム血症の主な原因 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがあ... さらに読む )。細胞外液量は有効血漿量と同じでないことに注意する。例えば,有効血漿量の減少は細胞外液量の減少とともに認められる場合もあるが(利尿薬の使用や出血性ショックのときなど),細胞外液量が増加しても生じることがある(例,心不全,低アルブミン血症,または毛細血管漏出症候群)。

ときに,水とナトリウムの不均衡ではなく,特定の物質(例,ブドウ糖,脂質)が血中に過剰にあることによって血清ナトリウムの値が低く出ることがある(高浸透圧性低ナトリウム血症[translocational hyponatremia],偽性低ナトリウム血症)。

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細胞外液量減少型(hypovolemic)の低ナトリウム血症

体内総水分量および体内の総ナトリウム量の欠乏が共に生じるが,水分よりもナトリウムの方が相対的に多く失われている状態であり,ナトリウム欠乏が細胞外液量の減少を引き起こす。細胞外液量減少型の低ナトリウム血症では,血清浸透圧が低下し血液量も減少する。浸透圧の低下にもかかわらず,血液量を維持するためにバソプレシン(抗利尿ホルモン[ADH])の分泌が亢進する。その結果生じる水の貯留が,血漿の希釈および低ナトリウム血症を助長する。

腎外性の水分喪失(長引く嘔吐,重度の下痢,またはサードスペースへの体液の隔絶[Professional.see table 体液の組成 体液の組成 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがあ... さらに読む ]などでナトリウムを含む液体を喪失することによって生じる)は,低ナトリウム血症を引き起こすことがあるが,これは一般に真水もしくは低ナトリウム飲料水の摂取(Professional.see table 一般的な飲料のナトリウムの概算含有量 一般的な飲料のナトリウムの概算含有量 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがあ... さらに読む )または低張液輸液による補充が行われた場合に発生する。細胞外液の著明な喪失もバソプレシンの分泌を引き起こし,その結果腎臓により水が保持され,低ナトリウム血症が持続または悪化する場合がある。体液量減少に対する正常な腎臓の反応はナトリウム保持であるため,細胞外液量減少の原因が腎外性であれば,尿中ナトリウム濃度は典型的には10mEq/L未満となる。

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細胞外液量減少型の低ナトリウム血症に結果的につながる腎性の体液喪失が,ミネラルコルチコイド欠乏症,サイアザイド系利尿薬の使用,浸透圧利尿,または塩類喪失性腎症に伴って生じることがある。塩類喪失性腎症は,尿細管機能障害を主な特徴として大まかに定義される1群の内因性腎疾患である。この疾患群には,間質性腎炎 尿細管間質性腎炎 尿細管間質性腎炎は,尿細管と間質の原発性損傷であり,腎機能低下をもたらす。急性型はほとんどの場合,薬物アレルギー反応または感染症が原因である。慢性型は,多種多様な原因により発生し,これには遺伝性または代謝性疾患,閉塞性尿路疾患,環境毒素または特定の薬物およびハーブへの慢性的な曝露が挙げられる。診断は病歴と尿検査によって示唆され,しばしば生検によって確定される。治療と予後は,病因および診断時の疾患の可逆性の可能性によって様々である。... さらに読む 尿細管間質性腎炎 髄質嚢胞性疾患 ネフロン癆と常染色体優性尿細管間質性腎疾患(ADTKD) ネフロン癆と常染色体優性尿細管間質性腎疾患(ADTKD)は,腎髄質または皮髄境界に限局した嚢胞形成を引き起こし,最終的に末期腎臓病を来す遺伝性疾患である。 (嚢胞性腎疾患の概要も参照のこと。) ネフロン癆と常染色体優性尿細管間質性腎疾患(ADTKD)は,共通する特徴が多くあることから,同じ疾患群に分類されている。病理学的には,これらの疾患は腎髄質または皮髄境界に限局した嚢胞形成を引き起こす可能性があるほか,尿細管萎縮,尿細管基底膜の崩壊... さらに読む ,部分的な尿路閉塞,およびときに多発性嚢胞腎 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD) 多発性嚢胞腎(PKD)は腎嚢胞を形成する遺伝性疾患で,両腎の段階的な腫大をもたらし,ときには腎不全に進行する。ほぼ全種類が家族性の遺伝子変異に起因する。症状と徴候は,側腹部痛,腹痛,血尿,高血圧などである。診断はCTまたは超音波検査による。治療は,腎不全に至る前は対症療法,腎不全発生後は透析または移植である。 (嚢胞性腎疾患の概要も参照のこと。) PKDの遺伝は以下の形式をとる:... さらに読む 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD) が含まれる。

細胞外液量減少型の低ナトリウム血症の腎性の原因は,通常は病歴によって腎外性の原因と鑑別できる。腎性の体液喪失が進行中の患者は,尿中ナトリウム濃度が不適切に高い(> 20mEq/L)ことによっても,腎外性の体液喪失患者と鑑別できる。代謝性アルカローシス 代謝性アルカローシス 代謝性アルカローシスは重炭酸イオン(HCO3−)の一次性の増加で,二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の上昇を伴う場合と伴わない場合とがある;pHは高値またはほぼ正常範囲内である。一般的な原因としては,遷延性の嘔吐,循環血液量減少,利尿薬の使用,低カリウム血症などがある。アルカローシスが持続するためには,腎臓からのHCO3−の排泄障害が存在しなければならない。重症例の症状および徴候には,頭痛,嗜眠,テタニーなどがある。診断は臨床的に行い,... さらに読む (長引く嘔吐などに伴って生じる)が存在し,大量の重炭酸が尿中に流出し,電気的中性を維持するために強制的にナトリウムが排泄される場合には,尿中ナトリウム濃度が鑑別に役立たない可能性がある。代謝性アルカローシスでは,体液量減少の原因が腎性か腎外性かを尿中塩素濃度によってしばしば鑑別できる。

利尿薬も細胞外液量減少型の低ナトリウム血症を引き起こすことがある。サイアザイド系利尿薬は特に,腎臓の希釈能を低下させ,ナトリウム排泄量を増加させる。一旦体液量減少が生じると,非浸透圧刺激によるバソプレシン分泌によって水の貯留が生じ,低ナトリウム血症が悪化する。随伴する低カリウム血症は,細胞内にナトリウムを移動させることによりバソプレシン分泌を増加させ,その結果さらに低ナトリウム血症が悪化する。サイアザイド系利尿薬のこの作用は,投薬中止後も最大2週間持続する可能性がある;しかし,不足したカリウムや体液を補充するとともに薬物の作用が消失するまで水分摂取を適切にモニタリングすれば,低ナトリウム血症は通常それに反応する。高齢患者はナトリウム利尿が増加している可能性があり,特にサイアザイド系利尿薬による低ナトリウム血症を起こしやすく,とりわけ腎臓の自由水排泄能にすでに障害がある場合にこれが当てはまる。まれに,こうした患者は,サイアザイド系利尿薬の開始後数週間以内に,生命を脅かす重度の低ナトリウム血症を発症する。ループ利尿薬が低ナトリウム血症を引き起こすことははるかに少ない。

細胞外液量正常型(euvolemic)の低ナトリウム血症

細胞外液量が正常な(希釈性)低ナトリウム血症は,体内の総ナトリウム量,および細胞外液量が正常またはほぼ正常であるが,TBWが増加している状態である。

心因性多飲症は,水分摂取が腎臓の水排泄能を上回った場合にのみ,低ナトリウム血症の原因となりうる。正常な腎臓は1日に最大25Lの尿を排泄できるため,多飲症を原因とする低ナトリウム血症は専ら大量の水分摂取または自由水排泄能の障害がある場合にのみ発生する。これが生じる患者は精神病患者,またはより軽度の多飲症に加えて腎機能不全を有する患者である。

細胞外液量が正常な低ナトリウム血症は,アジソン病 アジソン病 アジソン病は潜行性で通常は進行性の副腎皮質の機能低下である。低血圧,色素沈着など種々の症状を引き起こし,心血管虚脱を伴う副腎クリーゼにつながる恐れがある。診断は臨床的に行われ,血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)高値および血漿コルチゾール低値の所見によってなされる。治療は原因に応じて異なるが,一般にはヒドロコルチゾンや,ときに他のホルモンを用いる。 (副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む アジソン病 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏である。診断は典型的な顔貌,嗄声および言語緩徐,乾燥皮膚などの臨床的特徴,ならびに甲状腺ホルモン低値による。原因の治療およびサイロキシン投与などにより管理を行う。 (甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能低下症は年齢を問わず生じるが,特に高齢者でよくみられ,その場合症状が軽微で認識しにくい可能性がある。甲状腺機能低下症は以下に分類される:... さらに読む 甲状腺機能低下症 ,または非浸透圧刺激によるバソプレシン分泌(例,ストレス,術後,クロルプロパミド,トルブタミド,オピオイド,バルビツール酸系,ビンクリスチン,クロフィブラート,またはカルバマゼピンなどの薬剤の使用)の存在下での過剰な水分摂取に起因することもある。術後の低ナトリウム血症は,最も一般的には,非浸透圧刺激によるバソプレシン分泌および術後の低張液の過剰輸液が組み合わさって生じる。ある種の薬剤(例,シクロホスファミド,NSAID,クロルプロパミド)は腎臓に対する内因性バソプレシンの作用を増強するが,腎臓にバソプレシン様の作用を直接及ぼす薬剤(例,オキシトシン)もある。3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA) MDMA(3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン)は,刺激作用と幻覚誘発作用があるアンフェタミン類似化合物である。 (アンフェタミンも参照のこと。) 主にセロトニンを産生および放出するニューロンに作用するが,ドパミン作動性ニューロンにも作用する。通常は錠剤として摂取され,摂取後30~60分で効果が現れ,一般に4~6時間持続する。MDMAはしばしばダンスクラブ,コンサート,およびレイブパーティ(rave... さらに読む ,[エクスタシー])中毒は,過剰な飲水とバソプレシン分泌の亢進を促すことにより,低ナトリウム血症をもたらす。水排泄の不足がこれら全ての病態において一般的にみられる。利尿薬は,別の要因が水貯留または過剰な水分摂取を引き起こしている場合,細胞外液量が正常な低ナトリウム血症を引き起こすか,それに寄与する可能性がある。

細胞外液量増加型(hypervolemic)の低ナトリウム血症

細胞外液量増加型の低ナトリウム血症は体内の総ナトリウム量(したがって細胞外液量)および体内総水分量の両方の増加を特徴とし,相対的には体内総水分量の増加の方が大きい状態である。心不全 心不全(HF) 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全(HF) 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には,門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む を含む様々な浮腫性疾患が細胞外液量増加型の低ナトリウム血症を引き起こす。まれに,ネフローゼ症候群 ネフローゼ症候群の概要 ネフローゼ症候群では,糸球体疾患が原因で尿タンパク排泄量が3g/日を超え,これに浮腫および低アルブミン血症が伴う。小児でより多くみられ,原発性および続発性いずれの原因もある。診断は随時尿検体の尿タンパク/クレアチニン比測定または24時間蓄尿での尿タンパクの測定により,原因は病歴,身体診察,血清学的検査,腎生検に基づき診断される。予後および治療は原因によって異なる。 (糸球体疾患の概要も参照のこと。)... さらに読む で低ナトリウム血症が生じるが,脂質の上昇がナトリウム値に干渉して偽性低ナトリウム血症が生じている可能性もある。これらの各疾患では,有効循環血漿量の減少により,結果としてバソプレシンおよびアンジオテンシンIIが放出される。以下の因子が低ナトリウム血症に寄与する:

  • 腎臓に対するバソプレシンの抗利尿作用

  • アンジオテンシンIIによる,腎臓の水排泄の直接的減少

  • GFRの低下

  • アンジオテンシンIIによる口渇刺激

尿中ナトリウム排泄は通常10mEq/Lを下回り,血清浸透圧と比較して尿浸透圧が高い。

AIDSの低ナトリウム血症

50%を上回る入院中のAIDS患者で低ナトリウム血症が報告されている。多数の可能性のある寄与因子としては以下のものがある:

  • 低張液輸液

  • 腎機能障害

  • 血管内容量減少の結果生じる非浸透圧刺激によるバソプレシン分泌

  • 腎臓の水排泄を障害する薬物の投与

さらに,サイトメガロウイルス性副腎炎,抗酸菌感染症,またはケトコナゾールによる副腎でのグルココルチコイドおよびミネラルコルチコイドの合成障害の結果,AIDS患者では副腎機能不全が一般的になりつつある。併存する肺感染または中枢神経系感染が原因でSIADHを呈することもある。

ADH不適合分泌症候群

ADH(バソプレシン)不適合分泌症候群(SIADH)の原因はバソプレシンの過剰分泌にある。SIADHは,心臓,肝臓,腎臓,副腎,および甲状腺の機能が正常な患者において,体液量の不足または過剰,精神的ストレス,疼痛,利尿薬投与,バソプレシン分泌を刺激する他の薬剤(例,クロルプロパミド,カルバマゼピン,ビンクリスチン,クロフィブラート,抗精神病薬,アスピリン,イブプロフェン,バソプレシン)の使用がいずれもない状態で,血漿浸透圧が低値(低ナトリウム血症)であるにもかかわらず尿が最大に希釈されない状態と定義される。SIADHは種々の疾患に伴って生じる(Professional.see table ADH不適合分泌症候群を合併する疾患 ADH不適合分泌症候群を合併する疾患 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがあ... さらに読む )。

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症状と徴候

症状は主に中枢神経系の機能障害である。しかし,低ナトリウム血症に体内の総ナトリウム量の異常を伴う場合には,細胞外の体液量減少 体液量減少 体液量の減少(または細胞外液の減少)は,体内総ナトリウムの喪失の結果として生じる。原因には,嘔吐,大量発汗,下痢,熱傷,利尿薬の使用,腎不全がある。臨床的特徴は皮膚ツルゴールの低下,粘膜の乾燥,頻脈,起立性低血圧である。診断は臨床的に行う。治療はナトリウムおよび水分の投与である。 (水とナトリウムの平衡および体液量異常の概要も参照のこと。) 水は受動浸透(passive osmosis)によって体内の形質膜を通過するため,主要な細胞外陽... さらに読む または体液量過剰 体液量過剰 体液量の過剰は通常,細胞外液の増加を指す。細胞外液の増加は,典型的には,心不全,腎不全,ネフローゼ症候群,肝硬変でみられる。腎臓でのナトリウム保持は,体内総ナトリウム量の増加につながる。この増加により,様々な程度の体液量過剰が生じる。体液量過剰の患者では(体内総ナトリウム量が増加しているにもかかわらず),血清中ナトリウム濃度は高値,低値,または正常範囲内になる。治療では,利尿薬により過剰な水分を排泄するか,または透析や穿刺などの機械的方... さらに読む の徴候も生じる。一般に,高齢で慢性的な低ナトリウム血症患者は,他には異常のない若年患者よりも多くの症状を呈する。また,低ナトリウム血症の発症が速いほど,症状はより重度である。一般に有効血漿浸透圧が240mOsm/kg未満に低下すると症状が現れる。症状は軽微な場合もあり,パーソナリティの変化,嗜眠,錯乱など,主として精神状態の変化から成る。血清ナトリウム濃度が115mEq/Lを下回ると,昏迷,神経筋の興奮性亢進,反射亢進,痙攣,昏睡が生じ,死に至ることもある。

急性低ナトリウム血症を呈する閉経前女性では重度の脳浮腫が生じることがあるが,これはおそらくエストロゲンおよびプロゲステロンが脳のNa+,K+-ATPaseを阻害し脳細胞からの溶質排出が低下するためである。続発症には,視床下部および下垂体後葉の梗塞,ときに浸透圧性脱髄症候群または脳幹ヘルニアがある。

診断

  • 血清および尿の電解質および浸透圧

  • 体液量の臨床的評価

低ナトリウム血症は,神経学的異常を有し,リスクのある患者でときに疑われる。しかし,所見が非特異的であることから,低ナトリウム血症はしばしば,血清電解質を測定して初めて認識される。

高浸透圧性低ナトリウム血症(translocational hyponatremia)および偽性低ナトリウム血症の除外

重度の高血糖(または外から投与されたマンニトールもしくはグリセロール)により浸透圧が上昇し,水分が細胞内から細胞外液に移動した場合,血清ナトリウムが低値になる場合がある。血清血糖値が正常範囲から100mg/dL(5.55mmol/L)上昇する毎に,血清ナトリウム濃度は約1.6mEq/L低下する。この状態は,細胞膜を通過する水の移動(translocation)により引き起こされるため,しばしば,高浸透圧性低ナトリウム血症(translocational hyponatremia)と呼ばれる。

高脂血症または極度の高タンパク血症では血清浸透圧正常の偽性低ナトリウム血症が生じることがあるが,これは分析用に採取した血清中で脂質またはタンパク質が容積を占めることによる;血清ナトリウム濃度自体は影響を受けない。イオン選択性電極を用いて血清電解質を測定する新しい方法によってこの問題は回避される。

原因の同定

低ナトリウム血症の原因の同定は複雑な場合がある。ときに病歴から原因が示唆される(例,嘔吐または下痢による著明な体液喪失,腎疾患,強迫性の水分摂取,バソプレシン分泌を刺激するまたはバソプレシン作用を増強する薬物の服用)。

  • 明らかに細胞外液量が減少している患者には,通常は体液喪失の明らかな原因があり,典型的には低張液の補充による治療が行われてきた。

  • 明らかに細胞外液量が増加している患者では,通常は心不全,肝疾患,腎疾患など容易に認識される病態がある。

  • 細胞外液量が正常な患者および体液量の状態が不明瞭な患者では,原因を同定するためにさらなる臨床検査が必要である。

臨床検査には,血清および尿の浸透圧および電解質測定を含めるべきである。細胞外液量が正常な患者では甲状腺および副腎の機能も検査すべきである。細胞外液量が正常な患者の低浸透圧は大量の希釈尿(例,浸透圧100mOsm/kg未満,比重1.003未満)の排泄につながる。血清ナトリウム濃度および血清浸透圧が低く,その低い血清浸透圧に対し尿浸透圧が不適切に高ければ(120~150mmol/L),体液量過剰,体液量減少,またはSIADHが示唆される。体液量過剰 体液量過剰 体液量の過剰は通常,細胞外液の増加を指す。細胞外液の増加は,典型的には,心不全,腎不全,ネフローゼ症候群,肝硬変でみられる。腎臓でのナトリウム保持は,体内総ナトリウム量の増加につながる。この増加により,様々な程度の体液量過剰が生じる。体液量過剰の患者では(体内総ナトリウム量が増加しているにもかかわらず),血清中ナトリウム濃度は高値,低値,または正常範囲内になる。治療では,利尿薬により過剰な水分を排泄するか,または透析や穿刺などの機械的方... さらに読む 体液量減少 体液量減少 体液量の減少(または細胞外液の減少)は,体内総ナトリウムの喪失の結果として生じる。原因には,嘔吐,大量発汗,下痢,熱傷,利尿薬の使用,腎不全がある。臨床的特徴は皮膚ツルゴールの低下,粘膜の乾燥,頻脈,起立性低血圧である。診断は臨床的に行う。治療はナトリウムおよび水分の投与である。 (水とナトリウムの平衡および体液量異常の概要も参照のこと。) 水は受動浸透(passive osmosis)によって体内の形質膜を通過するため,主要な細胞外陽... さらに読む は臨床的に鑑別される。

体液量過剰および体液量減少のいずれの可能性も低いと考えられる場合は,SIADHが考慮される。SIADH患者は通常,循環血液量が正常またはわずかに増加している。BUNおよびクレアチニンの値は正常範囲内であり,血清尿酸値は一般に低い。尿中ナトリウム濃度は通常30mmol/Lを超え,ナトリウム排泄率は1%を上回る(計算についてはProfessional.see page その他の尿検査 その他の尿検査 腎疾患患者では,症候が非特異的である場合や,重症化するまで症候が認められない場合,その両方に該当する場合がある。認められる所見は,局所的な所見(例,腎臓の炎症または腫瘤を反映する),腎機能障害の全身的影響に起因する所見,または尿への影響(例,尿自体の変化,尿産生の変化)に分けられる。(泌尿器科患者の評価も参照のこと。)... さらに読む その他の尿検査 )。

細胞外液量が減少している患者で腎機能が正常の場合,ナトリウム再吸収の結果,尿中ナトリウム濃度は20mmol/L未満となる。細胞外液量が減少している患者で尿中ナトリウム濃度が20mmol/Lを上回れば,ミネラルコルチコイド欠乏症または塩類喪失性腎症が示唆される。高カリウム血症は副腎機能不全を示唆する。

治療

  • 細胞外液量が減少している場合,生理食塩水

  • 細胞外液量が増加している場合,水分制限,ときに利尿薬,場合によってはバソプレシン拮抗薬

  • 細胞外液量が正常の場合,原因の治療

  • 重度の,急速に発症するまたは症状が顕著な低ナトリウム血症では,高張(3%)食塩水による部分的かつ急速な是正

低ナトリウム血症は生命を脅かす恐れがあるため,迅速な認識と適切な治療が必要である。低ナトリウム血症を急激に補正すると,浸透圧性脱髄症候群 浸透圧性脱髄症候群 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがあ... さらに読む などの神経系の合併症のリスクが生じる。そのため重度の低ナトリウム血症がみられる患者であっても,最初の24時間で血清ナトリウム濃度を8mEq/Lを超えて上昇させるべきではない。また,重度の低ナトリウム血症の治療開始後数時間を除いて,ナトリウムは0.5mEq/L/時を上回る速さで是正すべきではない。低ナトリウム血症の程度,発症速度と持続,患者の症状を参考に,最も適切な治療を判定する。

細胞外液量の減少がみられるが副腎機能は正常な患者では,生理食塩水の輸液によって通常は低ナトリウム血症および細胞外液量減少の両方が是正される。血清ナトリウム濃度が120mEq/L未満の場合,血管内容量が回復しても低ナトリウム血症が完全には是正されないことがある;その場合自由水の摂取量を24時間で500~1000mLに制限する必要が生じうる。

細胞外液量の増加がみられる患者で,低ナトリウム血症が腎臓のナトリウム保持(例,心不全,肝硬変,ネフローゼ症候群)および希釈に起因する場合は,基礎疾患の治療を組み合わせた水分制限が必要になる。心不全患者では,ACE阻害薬とループ利尿薬の併用により難治性低ナトリウム血症を是正できる。その他の患者で,単純な水分制限が無効である場合は,用量を漸増しながらループ利尿薬を使用でき,ときに生理食塩水の静注を併用する。尿中に失われたカリウムおよびその他の電解質を補充しなければならない。低ナトリウム血症がさらに重度で利尿薬に反応しない場合は,生理食塩水を静注し低ナトリウム血症を是正すると同時に,細胞外液量を調節するために間欠的または持続的な血液濾過が必要となる場合がある。重度または難治性の低ナトリウム血症は,一般に心疾患または肝疾患が末期に近いときにのみ生じる。

細胞外液量が正常の場合は,治療は原因(例,甲状腺機能低下症,副腎機能不全,利尿薬投与)に向けられる。SIADHが存在する場合,厳格な水分制限(例,250~500mL/24時間)が一般に必要である。さらに,細胞外液量増加型の低ナトリウム血症の場合と同様に,ループ利尿薬を生理食塩水の静注と併用することがある。是正された状態が持続するかは基礎疾患の治療が成功するかによる。転移性のがんのように基礎疾患が是正できず,厳格な水分制限を患者が許容できない場合は,デメチルクロルテトラサイクリンの投与(300~600mg,経口,12時間毎)により腎臓の濃縮異常を誘導することが助けになる場合がある。しかしながら,デメチルクロルテトラサイクリンは薬剤性の急性腎障害を引き起こす恐れがあるため,広く使用されてはいない。バソプレシン受容体拮抗薬であるコニバプタンの静脈内投与は,電解質を尿中に大量に喪失することなく効果的な水利尿をもたらすため,入院患者の難治性低ナトリウム血症の治療に使用できる。経口トルバプタンは,コニバプタンと同様の作用をもつ別のバソプレシン受容体拮抗薬である。トルバプタンは肝毒性を有する可能性があるため30日未満の使用に限り,肝疾患または腎疾患のある患者では使用すべきでない。

軽度から中等度の低ナトリウム血症

軽度から中等度の無症候性の低ナトリウム血症(すなわち,血清ナトリウムが121Eq/L以上135Eq/L未満)では,わずかな補正で通常は十分であるため水分摂取制限が行われる。利尿薬による低ナトリウム血症では,利尿薬を中止すれば十分であろう;一部の患者ではナトリウムやカリウムの補充がいくぶん必要となる。同様に,水排泄障害のある患者に不適切な低張液輸液を行って生じた軽度の低ナトリウム血症であれば,輸液療法の変更だけで十分であると考えられる。

重度の低ナトリウム血症

無症状の患者では,重度の低ナトリウム血症(血清ナトリウム濃度121mEq/L未満;有効浸透圧240mOsm/kg未満)は,厳格な水分摂取制限によって安全に治療できる。

神経症状のある患者(例,錯乱,嗜眠,痙攣,昏睡)の治療については議論が分かれている。争点は主に,低ナトリウム血症を是正する速度および程度に関するものである。専門家の多くは,一般的に,血清ナトリウムの是正速度は1mEq/L/時を超えるべきでないとしている。しかしながら,痙攣発作のある患者または顕著な意識変容のある患者では最初の2~3時間の補充速度として最大2mEq/L/時が提唱されている。いずれにせよ,最初の24時間の上昇幅は8mEq/L以下とすべきである。それよりも急激に補正すると,浸透圧性脱髄症候群 浸透圧性脱髄症候群 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがあ... さらに読む が突然発生するリスクがある。

急速に発症する低ナトリウム血症(rapid-onset hyponatremia)

急速に(すなわち,24時間以内に)発症したことがわかっている急性低ナトリウム血症は特殊なケースである。このような急速な発症は以下の場合に起こりうる:

  • 急性の心因性多飲症

  • レクリエーショナルドラッグであるエクスタシー(MDMA)の使用

  • 術中に低張液を投与された術後患者

  • マラソンランナー

急速に発症する低ナトリウム血症が厄介なのは,細胞内浸透圧と細胞外浸透圧の均衡をとるために利用される細胞内浸透圧物質の一部を中枢神経系の細胞が除去する時間がないためである。そのため,細胞内環境が血清に比べて比較的高張になり,その結果細胞内へ液体が急速に移動して脳浮腫を引き起こし,脳幹ヘルニアや死亡につながる恐れがある。そのような患者では,たとえ神経症状が軽度(例,もの忘れなど)であっても,低張食塩水による急速な是正が適応となる。痙攣発作などのより重度の神経症状があれば,高張食塩水によるナトリウム4~6mEq/Lの急速な是正が適応となる。患者は集中治療室でモニタリングし,血清ナトリウムの値は2時間毎にモニタリングすべきである。ナトリウムの上昇値が当初の目標(4~6mEq/L)を達成すれば,是正速度を下げ,最初の24時間での上昇幅が8mEq/Lを超えないようにする。

高張食塩水

高張(3%)食塩水(ナトリウム513mEq/Lを含有)を使用する場合は,頻繁な(2時間毎)電解質の測定が必要である。場合によっては,高張食塩水がループ利尿薬と併用されることもある。所定量の高張食塩水に対するナトリウムの反応の予測に役立つ方程式が利用できるが,そうした公式は大まかな目安にすぎず,電解質の頻繁なモニタリングは依然として必要である。例えば,細胞外液量減少型の低ナトリウム血症では,水分が補給されるとナトリウム値の正常化が極めて急速に生じて細胞外液量減少によるバソプレシン分泌刺激がなくなるため,腎臓から大量の水が排泄される。

別の推奨として,デスモプレシン1~2μgを8時間毎に高張食塩水と同時に投与することなどがある。デスモプレシンは予期せぬ水利尿を予防するが,これは低ナトリウム血症の基礎疾患が是正されて内因性バソプレシンが突然正常化した後に起こることがある。

急速に発症する低ナトリウム血症と神経症状がある患者では,100mLの高張食塩水を15分かけて静注することで急速な是正を行う。それでも神経症状が残る場合は,同用量を再度投与してもよい。

痙攣または昏睡を来しているが低ナトリウム血症の発症が緩徐な場合は,血清ナトリウム濃度を4~6mEq/L上昇させるための必要十分量を100mL/時以下で4~6時間かけて投与する。この量(単位はmEq)は,下記のナトリウム欠乏量の式を用いて算出できる:

equation

ここで,TBWは男性では0.6 × 体重(kg),女性では0.5 × 体重(kg)とする。

例えば,体重70kgの男性でナトリウム濃度を106から112mEq/Lへ上昇させるために必要なナトリウム量は,以下のように算出できる:

equation

高張食塩水には513mEq/Lのナトリウムが含まれるため,ナトリウムを106mEq/Lから112mEq/Lへ上昇させるにはおよそ0.5Lの高張食塩水が必要である。是正速度を1mEq/L/時とするには,この0.5Lを約6時間かけて点滴することになる。

点滴速度は血清ナトリウム濃度に基づいて調整する必要があり,血清ナトリウム濃度は治療開始後数時間,慎重にモニタリングする。痙攣,昏睡,または精神状態の変化を来している患者には,痙攣に対する気管挿管 気管挿管 人工エアウェイを必要とする患者の多くは,気管挿管によって管理可能である。経口気管挿管は,一般的には喉頭鏡による直視下で行われるが,経鼻気管挿管よりも通常手早く施行できるため無呼吸および重症(critically ill)の患者で選択され,経鼻気管挿管は意識があり自発呼吸を行っている患者または経口挿管を避けるべき状況にのみ用いられる。 (呼吸停止の概要および気道確保および管理も参照のこと。)... さらに読む ,機械的人工換気,およびベンゾジアゼピン系薬剤の投与(例,ロラゼパム1~2mg,必要に応じて5~10分毎に静注)を含む支持療法が必要である。

選択的バソプレシン受容体拮抗薬

選択的バソプレシン(V2)受容体拮抗薬であるコニバプタン(静注)およびトルバプタン(経口)は,重度または難治性の低ナトリウム血症に対する比較的新しい治療選択肢である。これらの薬剤は,血清ナトリウム濃度を急速に是正することがあるため,危険な可能性がある;そのため典型的には,重度(121mEq/L未満)かつ/または症候性の低ナトリウム血症で,水分制限による是正に抵抗を示す場合にのみ使用される。水分制限による場合と同じ補正速度(24時間で10mEq/L以下)を用いる。これらの薬剤は,細胞外液量減少型の低ナトリウム血症または肝疾患もしくは進行した慢性腎臓病の患者には使用すべきでない。

コニバプタンは,細胞外液量増加型の低ナトリウム血症および細胞外液量が正常な低ナトリウム血症の治療に適応となる。患者の状態,体液バランス,および血清電解質を綿密にモニタリングする必要があるため,使用は入院患者に限定される。負荷量を投与し,続いて最長4日間にわたる持続点滴を行う。進行した慢性腎臓病(推定GFRが30mL/min未満)の患者には推奨されず,無尿が存在する場合には使用すべきでない。中等度から重度の肝硬変では注意が勧められる。

トルバプタンは,細胞外液量増加型の低ナトリウム血および細胞外液量が正常な低ナトリウム血症の治療に適応となる,1日1回投与の錠剤である。綿密なモニタリングが推奨される(特に投与開始時と用量変更時)。トルバプタンは肝毒性のリスクがあるため,30日未満の使用に限られる。また,トルバプタンは進行した慢性腎臓病または肝疾患のある患者には推奨されない。口渇の亢進により有効性が制限される可能性がある。高額であることも使用が制限される理由の1つである。

これらの薬剤はいずれも強力なCYP3A阻害薬であるため,多剤併用による薬物相互作用を有する。他の強力なCYP3A阻害薬(例,ケトコナゾール,イトラコナゾール,クラリスロマイシン,レトロウイルスプロテアーゼ阻害薬)は避けるべきである。治療の試行開始前に,患者が服用中の他の薬剤とV2受容体拮抗薬の間で生じうる危険な相互作用について検討すべきである。

慢性低ナトリウム血症

SIADHの患者は通常,低ナトリウム血症に対する長期的な治療を必要とする。しばしば,水分制限だけでは低ナトリウム血症の再発予防に不十分である。塩(NaCl)の内服錠は,用量を調節しつつ,このような患者の軽度から中等度の慢性低ナトリウム血症の治療に使用できる。

経口尿素は低ナトリウム血症に対する非常に効果的な治療であるが,味の問題があり忍容性が低い。より食べやすい味の尿素の新しい経口製剤も開発されてきている。

浸透圧性脱髄症候群

浸透圧性脱髄症候群(以前は橋中心髄鞘崩壊症と呼ばれた)が低ナトリウム血症の性急な是正に続発する可能性がある。脱髄は橋にみられるのが典型的であるが,脳の他の領域に起こることもある。病変は,アルコール依存症,低栄養,またはその他の慢性消耗性疾患の患者でより一般的にみられる。低ナトリウム血症のエピソードの後,数日または数週間かけて弛緩性麻痺,構音障害,嚥下困難が発生する可能性がある。古典的な橋病変は背部に広がって感覚神経路を巻き込み,「閉じ込め」症候群(患者は覚醒し感覚もあるが,全身性の運動神経麻痺のため,橋より上で制御される垂直眼球運動による合図を除いて意思疎通を図れない)をもたらすことがある。損傷はしばしば恒久的である。ナトリウムの急速すぎる補充により(例,> 14mEq/L/8時間)神経症状が出現し始めた場合は,高張液を中止してそれ以上血清ナトリウム濃度を上昇させないことが極めて重要である。このような場合は,低張液を用いて低ナトリウム血症を誘発することで恒久的な神経学的損傷の発生を軽減しうる。

要点

  • 低ナトリウム血症は,細胞外液量が正常でも,増加していても,減少していても生じる場合がある。

  • 一般的な原因は,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患である。

  • 低ナトリウム血症は,生命を脅かす危険性がある。低ナトリウム血症の程度,持続,および症状によって,血清ナトリウムの是正速度が決まる。

  • 治療は体液量の状態によって異なるが,浸透圧性脱髄症候群を回避するため,いずれの場合も血清ナトリウムを緩徐に(24時間で8mEq/L以下の速さで)是正すべきである;しかし,重度の神経症状をなくすためには,高張食塩水を使って最初の数時間のうちに4~6mEq/L上昇させるというかなり急速な是正が必要になることが多い。

  • 浸透圧性脱髄症候群が低ナトリウム血症の性急な是正に続発する可能性がある。

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