(自律神経系の概要も参照のこと。)
純粋自律神経不全症は,以前は特発性起立性低血圧やBradbury-Eggleston症候群と呼ばれていた病態で,中枢神経系の障害を伴わない全般的な自律神経障害を指す概念である。この疾患は,中枢神経系と節前神経に障害がみられないという点で多系統萎縮症とは異なる。純粋自律神経不全症は女性に多く,40~50代で発症する傾向にあるが,死に至ることはない。
純粋自律神経不全症はシヌクレイノパチー(シヌクレインの蓄積による病態)の一種であるが,シヌクレインの蓄積はパーキンソン病,多系統萎縮症,およびレビー小体型認知症でもみられる。(シヌクレインはニューロンおよび神経膠細胞のタンパクであり,これが非可溶性の線維へと凝集し,レビー小体を形成する。)純粋自律神経不全症患者の一部は,最終的に多系統萎縮症またはレビー小体型認知症を発症する。