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多系統萎縮症(MSA)

執筆者:

Phillip Low

, MD, College of Medicine, Mayo Clinic

最終査読/改訂年月 2018年 12月
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多系統萎縮症は,錐体路,小脳,および自律神経の障害を引き起こし,間断なく進行する神経変性疾患である。この疾患概念には,かつては異なるとされていた3つの疾患,すなわち,オリーブ橋小脳萎縮症,線条体黒質変性症,およびシャイ-ドレーガー症候群が含まれる。症状としては,低血圧,尿閉,便秘,運動失調,筋強剛,姿勢不安定などがある。診断は臨床的に行う。治療は循環血液量の増量,圧迫帯,および血管収縮薬による対症療法となる。

多系統萎縮症は女性より男性で約2倍多く発生する。発症時の平均年齢は約53歳であり,症状出現からの生存期間は約9~10年である。

多系統萎縮症(MSA)には2つの病型があり,それらは優勢な初期症状に基づく:

どちらの病型でも自律神経系の機能障害がみられる。多系統萎縮症はどちらか一方の病型として始まるが,最終的にはもう一方の病型の症状も現れる。約5年後には,最初にみられた病型にかかわらず,症状が類似する傾向がある。

病因

多系統萎縮症の病因は不明であるが,神経細胞変性が脳のいくつかの領域で発生し,その領域と損傷の程度によって初発症状が異なる。特徴的な所見は,乏突起膠細胞内に認められるα-シヌクレインを含有する細胞質封入体である。

多系統萎縮症はシヌクレイノパチー 病態生理 (シヌクレインの蓄積による病態)の一種であるが,シヌクレインの蓄積はパーキンソン病 パーキンソン病 パーキンソン病は,安静時振戦,筋強剛(固縮),緩徐で減少した動作(運動緩慢),および歩行または姿勢の不安定性を特徴とする,緩徐に進行する神経変性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は脳内のドパミン系の機能を回復することを目的とし,レボドパに加えてカルビドパおよび/または他の薬剤(例,ドパミン作動薬,MAO-B阻害薬,アマンタジン)を投与する。認知症のない患者における生活に支障を来す難治性の症状には,脳深部刺激療法または凝固術ならびにレボ... さらに読む 純粋自律神経不全症 純粋自律神経不全症 純粋自律神経不全症は,自律神経節の神経細胞脱落により生じ,起立性低血圧やその他の自律神経症状を引き起こす。 (自律神経系の概要も参照のこと。) 純粋自律神経不全症は,以前は特発性起立性低血圧やBradbury-Eggleston症候群と呼ばれていた病態で,中枢神経系の障害を伴わない全般的な自律神経障害を指す概念である。この疾患は,中枢神経系と節前神経に障害がみられないという点で多系統萎縮症とは異なる。純粋自律神経不全症は女性に多く,40... さらに読む ,およびレビー小体型認知症 レビー小体型認知症およびパーキンソン病認知症 レビー小体型認知症は,皮質ニューロン細胞質内のレビー小体と呼ばれる細胞封入体を特徴とする,慢性の認知機能低下である。パーキンソン病認知症(Parkinson disease dementia)は,黒質のレビー小体を特徴として認知機能が低下する病態であり,パーキンソン病の後期に発生する。 (せん妄および認知症の概要と認知症も参照のこと。) 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。... さらに読む でもみられる。シヌクレインはニューロンおよび神経膠細胞のタンパク質であり,これが凝集して非可溶性の線維となり,レビー小体を形成する。

症状と徴候

多系統萎縮症の初期症状は多様であるが,以下の組合せがみられる:

  • レボドパに反応しないパーキンソニズム

  • 小脳の異常

  • 自律神経機能不全による症状

パーキンソン症状

パーキンソン病とは対照的に,多系統萎縮症では安静時振戦とジスキネジアは通常みられず,症状はレボドパにあまり反応しないか,反応しても一時的である。

小脳の異常

オリーブ橋小脳萎縮症では,小脳の異常が優勢となる。症状としては,運動失調,測定障害,拮抗運動反復障害(迅速な交代運動が困難となる),協調運動障害,眼球運動異常などがある。

自律神経症状

自律神経機能不全では,典型的には起立性低血圧 起立性低血圧 起立性(体位性)低血圧は,立位をとった際に生じる過度の血圧低下である。コンセンサスに基づく定義は,20mmHgを上回る収縮期血圧の低下,10mmHgを上回る拡張期血圧の低下,またはその両方である。症状としては意識の遠のき,ふらつき,めまい,錯乱,霧視などが,起立後数秒から数分以内に起こり,臥位により速やかに消失する。患者によっては,転倒,失神,さらには全身痙攣を起こす場合もある。運動または大食が症状を増悪させることもある。その他に併発す... さらに読む (症状を伴う起立時の血圧低下で,しばしば失神を伴う),尿閉 尿閉 尿閉とは,膀胱を完全に空にすることができないか排尿が途中で停止する状態であり,以下の場合がある: 急性 慢性 原因としては,膀胱収縮性の障害,下部尿路閉塞,排尿筋括約筋協調不全(膀胱収縮と括約筋弛緩の調整の欠如),これらの組合せなどがある。(排尿の概要も参照のこと。) 尿閉は男性で多くみられるが,男性では前立腺異常または尿道狭窄により下部尿路閉塞が生じる。男女いずれにおいても,尿閉の原因は薬物(特に抗コリン作用を有する薬で,多くの一般用... さらに読む 尿失禁 成人の尿失禁 尿失禁とは,意図せずに尿が流出することであるが,患者がそれを問題視することを必須の条件とする専門家もいる。尿失禁は,大幅に過少認識および過少報告されている。多くの患者は医師にこの問題を報告せず,多くの医師は尿失禁を具体的には尋ねない。尿失禁は,どの年齢でも起こりうるが,高齢者と女性に多く,女性高齢者の約30%および男性高齢者の15%で発生している。 尿失禁は,困惑,非難,隔離,抑うつなどにつながり,生活の質を著しく低下させる。尿失禁は介... さらに読む 便秘 便秘 便秘は,排便が困難,排便回数が少ない,便が硬い,残便感がある状態である。(小児の便秘も参照のこと。) 排便ほど変化に富み,外部の影響を受けやすい身体機能はない。排便習慣は人によって大幅に異なり,年齢,生理機能,食事,社会的および文化的影響を受ける。何の根拠もなく排便習慣のことばかり考えている人もいる。欧米では,正常な排便回数は2~3回/日から2~3回/週である。 多くの人が,毎日排便がなければならないと誤解し,排便回数がそれよりも少なけ... さらに読む ,および勃起障害 勃起障害 勃起障害とは,性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できない状態である。大半の勃起障害は血管,神経,精神,または内分泌疾患に関連したものであり,さらに薬剤使用も原因となりうる。評価は典型的には基礎疾患のスクリーニングとテストステロン濃度の測定である。治療選択肢としては,ホスホジエステラーゼ阻害薬の服用,プロスタグランジンの尿道内または海綿体内投与,陰圧式勃起補助具,外科的インプラントなどがある。... さらに読む がみられる。

夜間多尿がみられることがあり,その寄与因子として,日内変動におけるアルギニンバソプレシンの分泌低下や循環血液量を増加させるための治療などが考えられる。

診断

  • 臨床的評価(レボドパに対する反応が不良なパーキンソニズムまたは小脳症状と自律神経機能不全)

  • MRI

  • 自律神経機能検査

多系統萎縮症の診断では,自律神経機能不全とパーキンソニズムまたは小脳症状の組合せに基づき,臨床的に本疾患を疑う。同様の症状はパーキンソン病 パーキンソン病 パーキンソン病は,安静時振戦,筋強剛(固縮),緩徐で減少した動作(運動緩慢),および歩行または姿勢の不安定性を特徴とする,緩徐に進行する神経変性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は脳内のドパミン系の機能を回復することを目的とし,レボドパに加えてカルビドパおよび/または他の薬剤(例,ドパミン作動薬,MAO-B阻害薬,アマンタジン)を投与する。認知症のない患者における生活に支障を来す難治性の症状には,脳深部刺激療法または凝固術ならびにレボ... さらに読む レビー小体型認知症 レビー小体型認知症およびパーキンソン病認知症 レビー小体型認知症は,皮質ニューロン細胞質内のレビー小体と呼ばれる細胞封入体を特徴とする,慢性の認知機能低下である。パーキンソン病認知症(Parkinson disease dementia)は,黒質のレビー小体を特徴として認知機能が低下する病態であり,パーキンソン病の後期に発生する。 (せん妄および認知症の概要と認知症も参照のこと。) 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。... さらに読む 純粋自律神経不全症 純粋自律神経不全症 純粋自律神経不全症は,自律神経節の神経細胞脱落により生じ,起立性低血圧やその他の自律神経症状を引き起こす。 (自律神経系の概要も参照のこと。) 純粋自律神経不全症は,以前は特発性起立性低血圧やBradbury-Eggleston症候群と呼ばれていた病態で,中枢神経系の障害を伴わない全般的な自律神経障害を指す概念である。この疾患は,中枢神経系と節前神経に障害がみられないという点で多系統萎縮症とは異なる。純粋自律神経不全症は女性に多く,40... さらに読む 自律神経性ニューロパチー 自律神経性ニューロパチー 自律神経性ニューロパチーは,自律神経線維が不均衡に侵される末梢神経疾患である。 (自律神経系の概要も参照のこと。) 最もよく知られた自律神経性ニューロパチーは,アミロイドーシス,自己免疫疾患または糖尿病に起因する末梢神経障害に伴うものである。 自己免疫性自律神経性ニューロパチーは,ウイルス感染後にしばしば発症する特発性疾患であり,発症は亜急性のことがある。 自律神経機能不全は通常,アルコール性末梢神経障害においては晩期の症候である。 さらに読む 進行性核上性麻痺 進行性核上性麻痺(PSP) 進行性核上性麻痺は,眼球の随意運動を進行性に障害し,動作緩慢,進行性体軸性ジストニアを伴う筋強剛,仮性球麻痺,および認知症をもたらす,まれな中枢神経系の変性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は症状の緩和に焦点を置く。 (運動障害疾患および小脳疾患の概要も参照のこと。) 進行性核上性麻痺の原因は不明である。 基底核および脳幹のニューロンが変性し,異常なリン酸化を示すタウタンパク質を含んだ神経原線維変化も認められる。基底核および深部白質の... さらに読む ,多発性脳梗塞,および薬剤性パーキンソニズムでもみられる。

確実な診断検査はないが,一部の検査(例,MRI,123Iメタヨードベンジルグアニジン[MIBG]による核医学検査,自律神経機能検査)が多系統萎縮症の疑いを確認する上で役立つ場合があり,例えば次のような状況が挙げられる:

  • MRIで中脳,橋,または小脳に特徴的変化を認める。

  • MIBGシンチグラフィーで心臓の神経支配が正常である。

  • 自律神経機能検査で全般的な自律神経不全を認める。

治療

  • 支持療法

多系統萎縮症に特異的な治療法はないが,以下のように症状を管理する:

多系統萎縮症は進行性かつ致死的であるため,患者には支持療法が必要となる。

要点

  • 多系統萎縮症では,パーキンソン症状,小脳異常,および自律神経機能不全が様々な重症度で生じうる。

  • この疾患は臨床所見,自律神経所見,およびMRI所見に基づいて診断するが,パーキンソン病,レビー小体型認知症,純粋自律神経不全症,自律神経性ニューロパチー,進行性核上性麻痺,多発性脳梗塞,および薬剤性パーキンソニズムでも同様の症状が生じることがある。

  • 認められる症状に応じた治療を行う。

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