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脊髄疾患の概要

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM,

  • Attending Neurologist and Director, Neuromuscular Service and EMG Laboratory
  • New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 10月
本ページのリソース

脊髄疾患は永続的な重度の神経機能障害を引き起こす可能性がある。評価および治療が迅速であれば,そのような身体障害を回避または最小化することが可能になる場合もある。

脊髄疾患は通常,以下のような脊髄外の病態の結果として発生する:

頻度は低いが,脊髄内の要因に起因することもある。脊髄内の原因としては ,脊髄梗塞,出血,横断性脊髄炎,HIV感染症,ポリオウイルス感染症,ウエストナイルウイルス感染症,梅毒(脊髄癆を来すことがある),外傷,ビタミンB12欠乏症(亜急性連合性脊髄変性症を引き起こす),減圧症雷撃傷(雷撃麻痺を引き起こしうる),放射線療法(脊髄症を引き起こしうる),空洞症脊髄腫瘍などがある。動静脈奇形は外因性と内因性の両方がある。銅欠乏症は,ビタミンB12欠乏症によるものに似た脊髄症を引き起こすことがある。

脊髄外の脊髄神経根が損傷することもある( 神経根疾患)。

解剖

脊髄は大後頭孔で延髄から尾側に向かって伸び,上位腰椎(通常はL1とL2の間)で終わり,そこで脊髄円錐を形成する。腰仙部では,下位髄節からの神経根はほぼ垂直な束となって脊柱管内を下行して,馬尾を形成する。

脊髄辺縁部の白質は,有髄感覚神経線維および運動神経線維の上行路および下行路を含む。中心のH形の灰白質は,細胞体と無髄神経線維から構成される( 脊髄神経)。「H」形の前角(腹側角)は下位運動ニューロンを含んでおり,運動野から下行する皮質脊髄路を介してインパルスを受け取り,一方で末梢レベルでは,介在ニューロンおよび筋紡錘の求心性線維からインパルスを受け取る。下位運動ニューロンの軸索は脊髄神経の遠心性線維である。後角(背側角)は後根神経節にある細胞体から出る感覚神経線維を含む。灰白質はまた多数の介在ニューロンを有し,運動,感覚,反射インパルスを後根から前根へ,脊髄の一側から他側へ,脊髄のあるレベルから別のレベルへと伝達する。

脊髄視床路は脊髄内で対側性に温痛覚を伝達する;他の大部分の神経路は同側性に情報を伝達する。脊髄は,31対の脊髄神経根の付着部にほぼ対応する機能的な髄節(レベル)に区分される。

脊髄神経

脊髄神経

症状と徴候

脊髄疾患による神経機能障害は,損傷を受けた髄節( 髄節レベル毎の脊髄機能障害の影響)およびそれ以下の全ての髄節で発生する。例外は中心性脊髄損傷( 脊髄症候群)で,損傷レベルより下の髄節は侵されない場合がある。

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髄節レベル毎の脊髄機能障害の影響

病変の位置*

可能性のある影響

C5以上

呼吸麻痺

四肢麻痺

C5~C6

下肢,手関節,および手の麻痺

肩関節の外転力および肘関節の屈曲力低下

上腕二頭筋反射消失

腕橈骨筋深部腱反射消失

C6~C7

下肢,手関節,および手に麻痺が生じるが,肩関節の運動と肘関節の屈曲は通常可能である

C7~C8

三頭筋反射消失

下肢および手の麻痺

C8~T1

ホルネル症候群(縮瞳,眼瞼下垂,顔面無汗症)

下肢の麻痺

T1から脊髄円錐まで

下肢の麻痺

*略号は椎骨を示す;脊髄は脊椎より短いため,脊椎の下方に向かうにつれて,脊髄の区分と椎骨のレベルのずれが次第に大きくなる。

いずれのレベルの脊髄損傷でも,病変レベル以下の深部腱反射に変化が起こり(初期は減弱し,後に亢進する),直腸および膀胱の制御が不能となり,損傷レベル以下の感覚が消失する。

脊髄疾患では,脊髄内のどの神経路あるいは脊髄外のどの脊髄神経根が損傷を受けるかによって,様々なパターンの障害が生じる。疾患が脊髄神経に及んでいるが直接脊髄に及んでいない場合には,その脊髄神経が支配する領域のみにおいて,感覚もしくは運動の異常またはその両方の異常が生じる。

脊髄機能障害は以下を引き起こす:

  • 不全麻痺

  • 感覚消失

  • 反射の変化

  • 自律神経機能障害(例,腸管,膀胱,勃起障害,発汗の消失)

機能障害は部分的(不完全)に生じることもある。通常は自律神経異常と反射異常が脊髄機能障害の最も客観的な徴候であり,感覚異常は最も客観性が低い。

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脊髄症候群

症候群

原因

症状と徴候

前脊髄症候群

脊髄腹側部を不釣り合いに障害する病変があり,一般的には梗塞(例,前脊髄動脈の閉塞に起因する)による

後索以外の全ての神経路の機能異常,したがって位置覚および振動覚は保たれる

Brown-Séquard症候群(まれ)

片側性の脊髄病変があり,典型的には穿通性外傷による

同側の不全麻痺

同側の触覚,位置覚,および振動覚の消失

対側の温痛覚の消失*

頸髄を侵す中心性脊髄損傷

頸髄中心部,主に中心灰白質(交叉する脊髄視床路を含む)を侵す病変があり,一般的には外傷,空洞症,または脊髄中心部の腫瘍による

不全麻痺は下肢や仙髄領域と比べて上肢でより重度となる傾向がある

上頸部,肩,および体幹上部にケープ様に分布する温痛覚の低下傾向がみられるが,軽い触覚,位置覚,および振動覚は比較的温存される(解離性感覚障害)

脊髄円錐症候群

L1周囲に病変がある

下肢遠位部の不全麻痺

肛門周囲および会陰の感覚消失(サドル型感覚脱失)

勃起障害

尿閉,頻尿,または尿失禁

便失禁

肛門括約筋緊張低下

異常な球海綿体反射および肛門括約筋反射

横断性脊髄症

1つまたは複数の髄節レベルに全てまたはほとんどの脊髄神経路を障害する病変がある

脊髄を介する全ての機能の障害(全ての神経路がある程度影響を受けるため)

*ときに,片側の脊髄の一部分のみが機能異常に陥る場合もある(部分的Brown-Séquard症候群)。

皮質脊髄路の病変は,上位運動ニューロンの機能障害を引き起こす。重度の急性病変(例,梗塞,外傷性病変)は,弛緩性不全麻痺(筋緊張低下,反射低下があり,伸展性足底反応はない)を伴う脊髄ショックを引き起こす。数日または数週間後,上位運動ニューロンの機能障害は痙性不全麻痺(筋緊張亢進,反射亢進,およびクローヌス)へと進展する。伸展性足底反応および自律神経機能不全がみられるようになる。数週間以上続く弛緩性不全麻痺は,下位運動ニューロンの機能障害(例,ギラン-バレー症候群による)を示唆する。

具体的な脊髄症候群としては以下のものがある( 脊髄症候群):

  • 感覚運動障害を伴う横断性脊髄症

  • Brown-Séquard症候群

  • 中心性脊髄損傷

  • 前脊髄症候群

  • 脊髄円錐症候群

馬尾症候群は,脊髄の尾側端における神経根の損傷であり,脊髄症候群ではない。しかしながら,脊髄円錐症候群に類似し,下肢遠位部の不全麻痺ならびに会陰部および肛門とその周辺の感覚低下(サドル型感覚脱失),膀胱,腸管,および外陰の機能障害(例,尿閉,頻尿,尿または便失禁,勃起障害,直腸の緊張低下,異常な球海綿体反射および肛門括約筋反射)を引き起こす。馬尾症候群では(脊髄損傷と異なり),下肢の筋緊張および深部腱反射は減弱する。

診断

  • MRI

髄節レベル単位で生じる神経脱落症状は脊髄疾患を示唆する。類似の神経学的障害(特に片側性の場合)が神経根または末梢神経の疾患によって生じることもあるが,通常は臨床的に鑑別できる。脊髄機能障害のレベルおよびパターンは,脊髄病変の存在診断および部位診断には役立つが,病変の種類の診断には必ずしも有用ではない。

MRIは脊髄疾患に対する最も正確な画像検査であり,脊髄実質,軟部組織病変(例,膿瘍,血腫,腫瘍,椎間板の異常),および骨病変(例,びらん,重度の肥大性変化,崩壊,骨折,亜脱臼,腫瘍)が描出される。

放射線不透過性物質による脊髄造影とそれに続くCTは,あまり頻用されていない。この検査法はMRIより精度が低く侵襲性が高いが,比較的すぐに利用できる。

単純X線は骨病変の検出に有用である。

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