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重症筋無力症

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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重症筋無力症は,自己抗体および細胞性の機序を介したアセチルコリン受容体の破壊に起因する,反復発作性の筋力低下および易疲労性である。若年女性により多いが,あらゆる年齢の男女に起こりうる。症状は筋の活動により悪化し,安静により軽減する。診断は,血清抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体値,筋電図検査,およびときにエドロホニウム静注試験により行い,エドロホニウム静注試験は筋力低下を一時的に緩和する。治療法としては,抗コリンエステラーゼ薬,免疫抑制薬,コルチコステロイド,血漿交換,免疫グロブリン静注のほか,ときに胸腺摘出術などがある。

末梢神経系疾患の概要も参照のこと。)

重症筋無力症は20~40歳の女性に最もよくみられる。

重症筋無力症は,シナプス後アセチルコリン受容体に対する自己免疫攻撃により,神経筋伝達が破綻することで生じる。自己抗体産生の引き金は不明であるが,胸腺の異常,自己免疫性甲状腺機能亢進症,およびその他の自己免疫疾患(例,RA,SLE,悪性貧血)に合併する。

筋無力症における胸腺の役割は不明であるが,65%の患者に胸腺肥大が,10%に胸腺腫が認められる。胸腺腫の約半数は悪性である。

重症筋無力症の誘発因子としては以下のものがある:

  • 感染症

  • 手術

  • 特定の薬剤(例,アミノグリコシド系薬剤,キニーネ,硫酸マグネシウム,プロカインアミド,カルシウム拮抗薬)

異常抗体

全身型重症筋無力症の患者で血清中にアセチルコリン受容体(AChR)に対する抗体をもたないのは約10~20%のみである;これらのAChR抗体陰性患者の最大約50%は,筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)に対する抗体をもつが,このMuSKは神経筋接合部の形成過程でAChR分子が集合するのを助ける表面膜酵素である。しかしながら,抗MuSK抗体は,抗AChR抗体を有する患者と孤立性の眼筋型筋無力症の患者ではほとんどみられない。

抗MuSK抗体の臨床的意義については依然として研究中であるが,この抗体を有する患者は抗AChR抗体を有する患者と比べて,胸腺肥大または胸腺腫を有する可能性がかなり低いほか,抗コリンエステラーゼ薬に反応しにくい可能性があり,初期からより積極的な免疫療法が必要になる場合がある。

まれな病型

眼筋型重症筋無力症では,外眼筋のみが侵される。症例の約15%を占める。

先天性筋無力症は,小児期に始まるまれな常染色体劣性遺伝疾患である。これは自己免疫疾患ではなく,以下に挙げるようなシナプス前または後受容体の構造的異常に起因する:

  • コリンアセチルトランスフェラーゼの欠乏により,アセチルコリンの再合成が低下する

  • 神経筋終末におけるアセチルコリンエステラーゼの欠乏

  • シナプス後受容体の構造的異常

眼筋麻痺がよくみられる。

新生児筋無力症は,重症筋無力症の女性から生まれた乳児の12%にみられる。これは,受動的に胎盤を通過するIgG抗体に起因する。全身の筋力低下が生じるが,抗体価が減少するにつれて数日から数週間のうちに消退する。したがって,治療は通常支持療法である。

症状と徴候

最も頻度の高い症状は,眼瞼下垂,複視,および罹患筋使用後の筋力低下である。罹患筋を休ませると筋力低下は解消されるが,その筋を再び使うと再発する。

眼筋は初期には40%,最終的には85%の患者で障害され,15%の患者では唯一の罹患筋となる。眼症状に続いて全身性の筋無力症が発生する場合には,通常は最初の3年以内に現れる。

握力は低下したり正常になったりを交互に繰り返すことがある(乳搾りの手[milkmaid’s grip])。頸部の筋力は低下しうる。近位肢の筋力低下が一般的である。球症状(例,声の変化,食物の鼻腔への逆流,むせる,嚥下困難)を訴えて受診する例もある。感覚および深部腱反射は正常である。数分から数時間または数日かけて病状が強まったり弱まったりする。

筋無力症クリーゼは,重度の全身性四肢不全麻痺または生命を脅かす呼吸筋力低下であり,約15~20%の患者が生涯に1回は経験する。しばしば,免疫系を再活性化させる感染症の併発に起因する。一旦呼吸機能不全が開始すると,急速に呼吸不全が起こりうる。

コリン作動性クリーゼは,抗コリンエステラーゼ薬(例,ネオスチグミンまたはピリドスチグミン)の用量が高すぎる場合に生じうる筋力低下である。軽度のクリーゼは,筋無力症の悪化との鑑別が困難なことがある。重度のコリン作動性クリーゼは,重症筋無力症と異なり,流涙および流涎の増加,頻脈,および下痢を生じることから通常鑑別できる。

診断

  • ベッドサイド検査

  • 抗AChR抗体値,筋電図検査,またはその両方

重症筋無力症の診断は症状と徴候から示唆され,検査により確定される。

ベッドサイド検査

明らかな筋力低下がみられる筋無力症患者では,短時間作用型(5分未満)エドロホニウムを用いた従来の抗コリンエステラーゼ検査をベッドサイドで行うと,ほとんどが陽性を示す。しかしながら,この検査は明らかな眼瞼下垂または眼筋麻痺のある患者でのみ行うべきである;これらの障害が認められる必要があるのは,筋力が正常に回復するのをはっきりとみるため,またそれによって結果が陽性であることの疑う余地のない客観的証拠が得られるようにするためである。検査のため,疲労が生じるまで罹患筋を使用するよう患者に指示し(例,眼瞼下垂が生じるまで両眼を開けたままでいる),その後にエドロホニウム2mgを静注する。30秒以内に有害反応(例,徐脈,房室ブロック)が生じなければ,さらに8mgを投与する。筋機能が速やかに(2分未満)回復した場合は陽性である。しかしながら,この検査は以下の理由で理想的ではない:

  • こうした改善は他の神経筋障害でもみられるため,陽性の結果は重症筋無力症を決定づけるものではない。

  • 特に明らかな眼瞼下垂または眼筋麻痺のない患者で行った場合,結果が明確でない場合がある。

  • 検査中,コリン作動性クリーゼによる筋力低下は悪化する可能性がある;そのため,検査中は,蘇生装置および(解毒剤として)アトロピンを使用できる状態にしておかなければならない。

筋無力症による筋力低下は,寒冷で緩和するため,眼瞼下垂のある患者はアイスパック試験によって検査できる。この検査では,患者に閉眼させてその上にアイスパックを乗せ,2分後に取り除く。眼瞼下垂が完全または部分的に消失すれば陽性である。患者に眼筋麻痺がある場合は,通常アイスパック試験は無効である。

眼筋麻痺のある患者は安静試験によって検査できる。この試験では,暗い部屋で患者に静かに横たわってもらい,5分間閉眼してもらう。この安静後に眼筋麻痺が消失すれば,陽性である。

パール&ピットフォール

  • 抗コリンエステラーゼ検査を行う前にアイスパック試験または安静試験を試す。

  • 抗コリンエステラーゼ検査は,患者に明らかな眼瞼下垂または眼筋麻痺がある場合にのみ(明確な結果を得るために)行う。

抗体検査および筋電図検査

ベッドサイド検査が明らかに陽性であっても,診断確定には以下の一方または両方が必要である:

  • 血清中抗AChR抗体値

  • 筋電図検査

抗AChR抗体は,全身型筋無力症患者の80~90%に認められるが,眼筋型では50%にしかみられない。抗体濃度と重症度の間に相関はみられない。抗AChR抗体をもたない患者の最大50%で,抗MuSK抗体検査が陽性になる。

反復刺激(2~3/秒)を用いた筋電図検査では,60%の患者で複合筋活動電位の振幅が10%超減少する。95%超で,単線維筋電図により神経筋伝達の異常が検出される。

さらなる検査

筋無力症と診断された場合には,胸部CTまたはMRIを施行し,胸腺肥大および胸腺腫の有無を確認すべきである。

重症筋無力症に高頻度に合併する自己免疫疾患(例,悪性貧血,自己免疫性甲状腺機能亢進症,RA,SLE)のスクリーニングのため,その他の検査を施行する。

筋無力症クリーゼの患者については,引き金となった感染の有無を評価すべきである。ベッドサイドの肺機能検査(例,努力肺活量)は,差し迫った呼吸不全の検出に有用である。

治療

  • 症状緩和のため抗コリンエステラーゼ薬

  • コルチコステロイド,免疫修飾療法(例,免疫グロブリン静注[IVIG],血漿交換),免疫抑制薬,および自己免疫反応を抑えるため胸腺切除術

  • 支持療法

先天性筋無力症患者には,抗コリンエステラーゼ薬および免疫修飾療法は有益でないため,避けるべきである。呼吸不全の患者には,挿管および機械的人工換気が必要である。

対症療法

抗コリンエステラーゼ薬は対症療法の主力であるが,基礎にある疾患プロセスを変化させるわけではない。さらに,全ての症状が軽減することはまれであり,筋無力症がこれらの薬剤に反応しなくなることがある。

ピリドスチグミンは60mg,経口,3~4時間毎で開始し,症状に応じて最大120mg/回まで増量する。注射剤による治療が必要な場合(例,嚥下困難のため)には,ネオスチグミン(1mg = ピリドスチグミン60mg)で代用することもある。抗コリンエステラーゼ薬により腹部痙攣および下痢が生じることがあるが,これは経口アトロピン0.4~0.6mg(ピリドスチグミンまたはネオスチグミンと併用する)あるいはプロパンテリン15mg,1日3回~1日4回の投与により治療する。

治療によく反応していた患者の病態が悪化した場合は,コリン作動性クリーゼを来した可能性があるため,呼吸補助が必要となり,抗コリンエステラーゼ薬を数日間中止しなければならない。

免疫修飾療法

免疫抑制薬は自己免疫反応を阻害し,疾患の経過を遅らせるものの,症状を速やかに軽減するものではない。IVIG400mg/kg,1日1回を5日間投与した後,70%の患者は1~2週間で改善する。効果は1~2カ月持続することもある。血漿交換(例,7~14日間かけて3~5Lの血漿を5回交換する)も同様の効果を有する。

多くの患者には,維持療法としてコルチコステロイドが必要であるが,筋無力症クリーゼに対する迅速な効果は少ない。半数以上の患者は,高用量コルチコステロイド開始後に急激な悪化を示す。最初はプレドニゾンを10mg,経口,1日1回で投与し,1週間毎に10mgずつ最大60mgまで増量し,約2カ月維持した後,緩やかに漸減する。改善には数カ月を要することがある;その後は症状をコントロールできる最低必要量まで減量すべきである。

アザチオプリン2.5~3.5mg/kg,経口,1日1回でコルチコステロイドと同等の効果が得られることがあるが,何カ月続けても有意な効果が得られない場合もある。シクロスポリン2~2.5mg/kg,経口,1日2回の投与により,コルチコステロイドの減量が可能になることがある。これらの薬剤については,通常通りの注意が必要である。

その他に有益となりうる薬剤として,メトトレキサート,シクロホスファミド,ミコフェノール酸モフェチルなどがある。難治性の患者にはモノクローナル抗体(例,リツキシマブ,エクリズマブ)が有益な可能性があるが,高額である。

胸腺摘出術は,80歳未満の全身型筋無力症患者で適応となることがあり,また胸腺腫の患者では全例に施行すべきである。術後は80%の患者で寛解がみられる,または薬剤の維持量を低減できる。

血漿交換またはIVIGは,筋無力症クリーゼ,および薬剤に無反応の患者に(胸腺摘出術前の治療として)有用である。

要点

  • 眼瞼下垂,複視,および罹患筋使用後の筋力低下のある患者では,重症筋無力症を考慮する。

  • 診断確定には,血清抗AChR抗体濃度の測定(重症筋無力症で通常陽性),筋電図検査,またはその両方を行う。

  • 診断確定後は,重症筋無力症にしばしば合併する胸腺肥大,胸腺腫,甲状腺機能亢進症,および自己免疫疾患の検査を行う。

  • ほとんどの患者で,症状緩和のために抗コリンエステラーゼ薬を使用し,疾患進行を遅らせ症状緩和を促進するために免疫修飾療法を行う;先天性筋無力症の患者ではこれらの治療を用いるべきではない。

  • 治療によく反応していた患者の状態が突然悪化した場合は,呼吸補助を行い,数日間にわたり抗コリンエステラーゼ薬を中止する。

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