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ギラン-バレー症候群 (GBS)

(急性特発性多発神経炎;急性炎症性脱髄性多発根神経炎;Guillain-Barre症候群)

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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ギラン-バレー症候群は,急性で,通常は急速に進行するが自然治癒する炎症性多発神経障害であり,筋力低下および軽度の遠位部感覚消失を特徴とする。原因は自己免疫性であると考えられている。診断は臨床的に行う。治療には,免疫グロブリン静注,血漿交換などがあり,重症例では機械的人工換気が用いられる。

末梢神経系疾患の概要も参照のこと。)

ギラン-バレー症候群は,最も頻度の高い後天性の炎症性ニューロパチーである。いくつかの亜型が存在する。

原因は完全にはわかっていないが,自己免疫によるものと考えられている。脱髄が優勢な病型もある;他方,軸索が侵される病型もある。

ギラン-バレー症候群は,約3分の2の患者では,ごく普通の感染症,手術,またはワクチン接種から5日~3週間後に始まる。半数を超える患者では感染が引き金となり,一般的な病原体としては,Campylobacter jejuni腸内ウイルス,ヘルペスウイルス(サイトメガロウイルスやエプスタイン-バーウイルスなど),Mycoplasma属細菌などがある。1976年のブタインフルエンザワクチン接種計画後に集団発生があったが,両者の関連性は確認バイアスに起因する疑似的なものであることが後に証明された。

症状と徴候

ほとんどの患者では弛緩性の筋力低下が優勢である;弛緩性筋力低下は,常に感覚異常よりも著明で,近位部で最も顕著となることがある。錯感覚を伴う比較的対称性の筋力低下が通常は下肢から始まり上肢へと進行するが,ときに上肢または頭部から始まることもある。90%の患者では,筋力低下は3~4週目に最大となるのが通常である。深部腱反射は消失する。通常,括約筋は侵されない筋力低下は,ある程度の期間(典型的には1週間程度)にわたり同じ水準で持続し,その後軽快する。

重症患者の半数超では,顔面および中咽頭の筋力が低下する。脱水および低栄養が起こりうる。5~10%では,気管挿管および機械的人工換気を要するほどの重度の呼吸麻痺が生じる。

少数の患者(おそらく変異型)には生命を脅かす重大な自律神経機能不全が生じ,血圧変動,ADH不適合分泌,不整脈,消化管内容物うっ滞,尿閉,および瞳孔の変化を来す。

まれな亜型(フィッシャー症候群,またはMiller-Fisher症候群)では,眼筋麻痺,運動失調,および反射消失のみが生じることもある。

診断

  • 臨床的評価

  • 電気診断検査

  • 髄液検査

ギラン-バレー症候群の診断は主として臨床的に行う。

鑑別診断

重症筋無力症,ボツリヌス症,ポリオ(主に米国外),ダニ麻痺症,ウエストナイルウイルス感染症,および代謝性神経障害によっても類似の急性の筋力低下が生じるが,これらの障害は通常以下のように識別可能である:

  • 重症筋無力症は間欠的で,労作により悪化する。

  • ボツリヌス症では,瞳孔が散大したまま固定し(50%の患者),著明な脳神経機能障害を呈することがあるが,感覚は正常である。

  • ポリオは通常,流行性に生じる。

  • ダニ麻痺症では上行性麻痺が生じるが,感覚は正常に保たれる。

  • ウエストナイルウイルスは,頭痛,発熱,および非対称性の弛緩麻痺を引き起こすが,感覚は正常に保たれる。

  • 代謝性神経障害は慢性の代謝性疾患に伴って生じる。

検査

感染症ならびに免疫機能障害の検査(肝炎およびHIVの検査を含む),さらに血清タンパク電気泳動を行う。

ギラン-バレー症候群が疑われる場合は,患者を入院させ,電気診断検査(神経伝導検査および筋電図検査),髄液検査,ならびに6~8時間毎の努力肺活量測定によるモニタリングを行うべきである。3分の2の患者では,初回の電気診断検査で神経伝導速度の遅延および節性脱髄を示す所見が検出される;しかしながら,結果が正常であっても診断が除外されるわけではなく,治療を遅らせてはならない。

髄液検査でタンパク細胞解離(タンパクが増加するにもかかわらず白血球数は正常)を認めることがあるが,この所見は最初の1週間はみられないこともあり,また10%の患者では出現しない。

まれに,頸髄圧迫―特に多発神経障害(反射低下の原因または寄与因子となる)が共存する場合および延髄障害が著明でない場合―がギラン-バレー症候群に類似することがあり,そのような症例では,MRIを施行すべきである。

予後

ギラン-バレー症候群で死に至るのは全症例の2%未満である。ほとんどの患者は数カ月間で大きく改善するが,成人の約30%,および小児の場合はそれ以上の割合で,3年後もいくらか筋力低下が残存する。障害が残る患者には,再訓練,整形外科的装具,または手術が必要である。

初期の改善後,3~10%の患者が慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)を発症する。

治療

  • 集中的な支持療法

  • 免疫グロブリン静注(IVIG)または血漿交換

ギラン-バレー症候群は医学的な緊急事態であり,生命機能の継続的なモニタリングとサポートが必要で,これらは典型的にはICUで行われる。必要に応じて呼吸補助が行えるよう,努力肺活量を頻回に測定すべきである;肺活量が15mL/kg未満であれば,気管挿管が適応となる。首を曲げて枕から頭を起こすことができないというのは,もう1つの危険徴候である;これは,横隔神経(横隔膜)の減弱と同時にしばしば生じる。

経口水分補給が困難であれば,輸液を行い,少なくとも1~1.5L/日の尿量を維持できるようにする。外傷および床上安静による圧力から四肢を保護すべきである。

温熱療法は疼痛の軽減に役立ち,理学療法の早期開始を可能にする。不動状態は強直および拘縮の原因となりうるため,回避すべきである。全可動域にわたる関節の他動運動を速やかに開始し,急性症状が治まったところで自動運動を開始すべきである。ヘパリン5000単位,1日2回の皮下投与は,寝たきりの患者の深部静脈血栓症を予防するのに有用である。

早期から免疫グロブリンを400mg/kg,静注,1日1回で5日間投与するのが第1選択の治療法であり,発症から最長1カ月間にわたって,いくらかの効果が得られる。

血漿交換は早期に行えば有用であり,IVIGが無効の場合に用いられる。血漿交換は比較的安全であり,疾患の経過および入院期間を短縮し,死亡リスクおよび永続的な麻痺の発生率を低減する。血漿交換は以前に投与されたあらゆるIVIGを除去し,その効果を打ち消すため,IVIG投与中または投与直後に血漿交換を行うべきではない。IVIG投与中止後少なくとも2~3日待つことが推奨される。

パール&ピットフォール

  • コルチコステロイドはギラン-バレー症候群の転帰を悪化させうるため,投与しない。

コルチコステロイドは転帰を改善させることはなく,悪化させる可能性がある。

要点

  • ギラン-バレー症候群は,典型的には上行性,比較的対称性の弛緩性筋力低下に始まる。

  • まず,病歴および診察結果に基づいて,同様の症状を引き起こすその他の疾患(例,重症筋無力症,ボツリヌス症,ダニ麻痺症,ウエストナイルウイルス感染症,代謝性神経障害;米国外ではポリオ)と鑑別する。

  • 診断は主に臨床的に行うが,電気診断検査および髄液検査を施行する。

  • 約70%の患者は完全回復するが,3~10%は慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーを発症する。

  • 集中的な支持療法が回復の鍵である。

  • 始めにIVIGを試し,効果がなければ血漿交換を行う。

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