(せん妄および認知症の概要 せん妄および認知症の概要 認知障害の原因として最も頻度の高い病態は, せん妄(ときに急性錯乱状態とも呼ばれる)と 認知症であるが,気分障害(例,うつ病)によって認知機能が障害されることもある。せん妄と認知症は異なる病態であるが,ときに鑑別が困難である。どちらも認知機能が障害されるが,両者の鑑別には以下の点が役立つ:... さらに読む と 認知症 認知症 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。診断は臨床的に行い,治療可能な原因の同定には通常,臨床検査および画像検査を利用する。治療は支持療法による。コリンエステラーゼ阻害薬はときに認知機能を一時的に改善する。 ( せん妄および認知症の概要も参照のこと。) 認知症はいかなる年齢にも起こりうるが,主として高齢者を侵す。介護施設入居者の半数以上にみられる。... さらに読む も参照のこと。)
認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。
正常圧水頭症は,くも膜顆粒による髄液の吸収に欠陥があることが原因と考えられている。この疾患は認知症の最大6%を占める。
正常圧水頭症は以下のように分類される:
続発性:他の疾患(例, くも膜下出血 くも膜下出血 (SAH) くも膜下出血は,くも膜下腔への突然の出血である。自然出血の最も一般的な原因は動脈瘤破裂である。症状としては突然の重度の頭痛などがあり,通常は意識消失または意識障害を伴う。二次性の血管攣縮(局所的な脳虚血を引き起こす),髄膜症,および水頭症(持続性の頭痛および意識障害を引き起こす)がよくみられる。診断はCTまたはMRIによる;脳画像検査が正常であれば,診断は髄液検査による。治療は支持療法と脳神経外科手術または血管内治療によるが,包括的脳卒... さらに読む
, 髄膜炎 髄膜炎の概要 髄膜炎は髄膜および,くも膜下腔の炎症である。感染症,その他の疾患,または薬剤への反応によって起こりうる。重症度および急性度は様々である。典型的な所見には,頭痛,発熱,項部硬直などがある。診断は髄液検査による。治療は適応に応じて抗菌薬を投与する他に,補助的手段などがある。 ( 脳感染症に関する序論および... さらに読む , 外傷性脳損傷 外傷性脳損傷(TBI) 外傷性脳損傷(TBI)は,脳機能を一時的または恒久的に障害する脳組織の物理的損傷である。診断は臨床的に疑い,画像検査(主にCT)により確定する。初期治療は確実な気道確保,十分な換気,酸素化,および血圧の維持で構成される。損傷が重度の患者では,しばしば外科手術が必要となり,頭蓋内圧亢進の追跡および治療のためにモニターを設置し,頭蓋内圧亢進に... さらに読む
)の合併症として発生する
特発性:基礎疾患を特定できない場合
認知症 認知症 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。診断は臨床的に行い,治療可能な原因の同定には通常,臨床検査および画像検査を利用する。治療は支持療法による。コリンエステラーゼ阻害薬はときに認知機能を一時的に改善する。 ( せん妄および認知症の概要も参照のこと。) 認知症はいかなる年齢にも起こりうるが,主として高齢者を侵す。介護施設入居者の半数以上にみられる。... さらに読む と せん妄 せん妄 せん妄は,注意,認知,および意識レベルが急性かつ一過性に障害される病態で,その程度には変動がみられ,通常は可逆的である。ほぼ全ての疾患および薬剤が原因となりうる。診断は臨床的に行い,原因同定のために臨床検査と通常は画像検査を施行する。治療は原因の是正と支持療法である。 ( せん妄および認知症の概要も参照のこと。) せん妄はあらゆる年齢で起こりうるが,高齢者でより多くみられる。入院する高齢患者の10%以上にせん妄があり,15~50%は入院... さらに読む は,認知機能が低下するという点で共通するが,両者を混同すべきではない。両者の鑑別には以下の点が役立つ:
認知症は主に記憶に影響を及ぼし,典型的には脳の解剖学的変化によって生じ,発症がより緩徐で,一般に不可逆的である。
せん妄は主に注意力に影響を及ぼし,典型的には急性疾患または薬物中毒(ときに生命を脅かす)によって引き起こされ,可逆的であることが多い。
その他の特異的な特徴も,認知症とせん妄の鑑別に有用である(せん妄と認知症の相違点 せん妄と認知症の相違点* の表を参照)。
正常圧水頭症の症状と徴候
magnetic gait(足が床に張り付いているように見える歩容)は正常圧水頭症に特徴的な歩行障害と考えられているが,一般的にみられるのは非特異的な不安定性とバランス障害である。
この疾患では 認知症 症状と徴候 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。診断は臨床的に行い,治療可能な原因の同定には通常,臨床検査および画像検査を利用する。治療は支持療法による。コリンエステラーゼ阻害薬はときに認知機能を一時的に改善する。 ( せん妄および認知症の概要も参照のこと。) 認知症はいかなる年齢にも起こりうるが,主として高齢者を侵す。介護施設入居者の半数以上にみられる。... さらに読む は後期まで起こらないことがある。最もよくみられる認知症の早期症状は,遂行機能および注意の障害であり,記憶は後から障害される傾向がある。
尿失禁がよくみられる。
正常圧水頭症の診断
臨床的評価
脳画像検査
しばしば髄液の除去
古典的症状(歩行障害,尿失禁,および認知症)は,たとえ同時にみられたとしても,正常圧水頭症に特異的なものではなく,特に高齢者ではその傾向が強くなる。例えば,一部の病型の 血管性認知症 血管性認知症 血管性認知症は,びまん性または局所性脳梗塞に起因して急性または慢性の認知機能低下が生じる病態であり,脳血管疾患に関連している場合が最も多い。 ( せん妄および認知症の概要と 認知症も参照のこと。) 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。 血管性認知症は,高齢者の認知症で2番目に多い原因である。男性に多くみられ,通常は70歳以上で発症する。血管系の危険因子(例,高血圧,糖尿病,高脂血症,喫煙)を有する人,お... さらに読む では,認知症と歩行障害のほか,より頻度は低いが尿失禁が生じることがある。
一般的な 認知症の診断 臨床基準 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。診断は臨床的に行い,治療可能な原因の同定には通常,臨床検査および画像検査を利用する。治療は支持療法による。コリンエステラーゼ阻害薬はときに認知機能を一時的に改善する。 ( せん妄および認知症の概要も参照のこと。) 認知症はいかなる年齢にも起こりうるが,主として高齢者を侵す。介護施設入居者の半数以上にみられる。... さらに読む には以下の全てを満たす必要がある:
認知症状または行動(神経心理学的)症状が仕事や日常的な活動を行う能力を妨げている。
それらの症状が以前の機能レベルからの低下を反映している。
それらの症状をせん妄または主な精神障害によって説明することができない。
認知機能の評価には,患者および患者のことをよく知る関係者からの病歴聴取に加えて,ベッドサイドでの 精神医学的診察 精神状態の評価 まず注意の持続時間を評価する;注意力のない患者は十分な協力ができず,診察を困難にする。認知機能低下を示唆する徴候があれば,精神医学的診察( Professional.see sidebar 精神医学的診察)を行う必要があり,その中で認知機能を以下のように多面的に検査する: 時間,場所,人の見当識 注意力および集中力 記憶 言語および計算能力 さらに読む または(ベッドサイドでの検査で結論が出なければ) 正式な神経心理学的検査 認知機能の評価 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。診断は臨床的に行い,治療可能な原因の同定には通常,臨床検査および画像検査を利用する。治療は支持療法による。コリンエステラーゼ阻害薬はときに認知機能を一時的に改善する。 ( せん妄および認知症の概要も参照のこと。) 認知症はいかなる年齢にも起こりうるが,主として高齢者を侵す。介護施設入居者の半数以上にみられる。... さらに読む が必要である。
脳画像検査では皮質の萎縮に対して不相応な脳室の拡大を認めることがあり,この所見は非特異的ではあるが,正常圧水頭症の診断の裏付けとなりうる。皮質凸部高位の脳溝がしばしば圧縮されており,シルビウス裂は萎縮により不相応に拡大している。
腰椎穿刺 腰椎穿刺 腰椎穿刺は以下を目的として行われる: 頭蓋内圧と髄液組成を評価する( 様々な疾患における髄液異常の表を参照)。 治療として頭蓋内圧を低下させる(例, 特発性頭蓋内圧亢進症) 髄腔内に薬剤または 脊髄造影用の造影剤を投与する 相対的禁忌として以下のものがある: さらに読む による30~50mLの髄液の除去を,診断的に施行することがある。除去後の歩行,失禁,および認知機能の改善は診断確定に役立つが,除去後数時間までは改善がはっきりしない場合がある。腰椎穿刺後にさらに髄液が漏れ出ることがあり,それによりしばしば神経学的な改善が進む。
正常圧水頭症の治療
しばしば脳室腹腔シャント術
脳室腹腔シャント術は,手術リスクが許容できる患者に有用である。診断時に行われた腰椎穿刺による髄液除去でどの程度改善したかにより,シャント術に対する反応を予測できる。いくつかの症例集積研究(ランダム化試験はなし)では,シャント術後に大きな改善がみられ,典型的には歩行,失禁,および日常機能の改善が多かった;認知機能の改善はより頻度が低かった。
正常圧水頭症の要点
正常圧水頭症は古典的症状(歩行障害,尿失禁,認知症)に基づいて疑うが,診断確定の参考として,診断的腰椎穿刺による過剰な髄液の除去を考慮する。
手術のリスクが許容できる場合は,脳室腹腔シャントを留置することで,歩行,失禁,および日常機能が有意に改善する可能性がある;精神機能の改善はより小さい。