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滑液包炎

執筆者:

Joseph J. Biundo

, MD, Tulane Medical Center

最終査読/改訂年月 2017年 2月
本ページのリソース

滑液包炎は,滑液包の急性または慢性の炎症である。原因は通常不明であるが,外傷(反復性または急性)が一因となることがあり,同様に感染症および結晶誘発性の疾患も一因となりうる。症状としては,疼痛(特に動作または圧迫に伴う),腫脹,圧痛などがある。診断は通常,臨床的に行うが,深部の滑液包を評価するために超音波検査が必要になることがある。感染症および結晶誘発性の疾患の診断には滑液の分析が必要である。治療法としては,副子固定やNSAIDのほか,ときにコルチコステロイド注射,基礎にある原因の治療などがある。

滑液包は,摩擦が生じる部位(例,腱または筋肉が骨突出部の上を通る箇所)に位置する,滑液で満たされた嚢状の腔または潜在的な腔である。滑液包は可動部分の間の摩擦を最小限にし,運動を容易にする。関節と連絡しているものもある。

滑液包炎は肩関節に起こる(肩峰下滑液包炎または三角筋下滑液包炎)ことがあり,特に肩腱板の腱炎(通常は肩関節の初期病変)の患者でその可能性が高い。他によく侵される滑液包には,肘頭(miner's elbowまたはbarfly's elbow),膝蓋前(housemaid's knee),膝蓋上,踵骨後方,腸恥(腸腰筋),坐骨(weaver’s bottom),大転子,鵞足部,および第1中足骨頭(バニオン)などの滑液包がある。ときに,滑液包炎は連絡している関節に炎症を引き起こす。

病因

滑液包炎は以下によって生じることがある:

  • 外傷

  • 慢性的な酷使

  • 炎症性関節炎(例,痛風RA乾癬性関節炎脊椎炎

  • 急性または慢性感染症(例,化膿性微生物,特に黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus])

特発性および外傷性の原因が圧倒的に最も多い。急性の滑液包炎は,通常と異なる運動または過負荷による損傷に続いて起こることがあり,通常は滑液包の液貯留を生じる。感染症がある場合,肘頭および膝蓋骨前方の滑液包が最もよく侵される。

慢性の滑液包炎は,それ以前の滑液包炎の発作または反復する外傷の後に発生することがある。滑液包の壁が滑膜表層の増殖によって肥厚する;滑液包の癒着,絨毛形成,垂れ下がる突起物,およびチョーク状の沈着物が生じることがある。

症状と徴候

急性の滑液包炎は痛みを引き起こす(特に動作中に滑液包が圧迫されるまたは引き延ばされるとき)。滑液包が表在性の場合(例,膝蓋骨前方,肘頭),腫脹がよくみられる(ときに他の炎症徴候を伴う)。肘頭滑液包炎では腫脹が痛みよりも顕著なことがある。結晶誘発性または細菌性の滑液包炎は通常,滑液包上の部位に紅斑,圧痕性浮腫,痛み,および熱感を伴う。

慢性の滑液包炎は,数カ月持続することがあり,また頻回に再発することもある。発作は数日から数週間続く可能性がある。炎症が関節の近くで持続すると,関節の可動域が制限されることがある。長期間の運動制限は筋萎縮を招くことがある。

診断

  • 臨床的評価

  • 深部の滑液包炎に対し超音波検査またはMRI

  • 感染症,出血(外傷または抗凝固薬による),または結晶誘発性の滑液包炎の疑いに対し吸引

滑液包上に腫脹または炎症の徴候のある患者では表在性の滑液包炎を疑うべきである。滑液包炎と一致する部位に動かすと悪化する説明のつかない痛みがある患者では,深部の滑液包炎を疑う。通常,滑液包炎は臨床的に診断できる。深部の滑液包で視診,触診,または吸引を行おうとしても容易に到達できない場合は,超音波検査またはMRIが診断を確定するのに役立つ。これらの検査は疑われる診断を確定するため,または他の可能性を除外するために行う。これらの画像検査法により罹患した構造を同定する精度が上がる。

滑液包の腫脹に特に痛み,発赤,もしくは熱感がある場合,または肘頭もしくは膝蓋前滑液包が侵されている場合は,滑液包の吸引によって感染症および結晶誘発性の疾患を除外すべきである。局所麻酔薬を注射してから,無菌操作を用いて滑液包から滑液を吸引する;分析には細胞数測定,グラム染色および培養,ならびに結晶の顕微鏡的検索などがある。グラム染色は有用ではあるが特異的でないことがあり,感染した滑液包における白血球数は細菌に感染した関節における白血球数よりも通常は少ない。尿酸結晶は偏光顕微鏡下で容易に観察されるが,石灰沈着性腱炎で典型的なアパタイト結晶は輝く複屈折性でない塊としてしか見えない。滑液包炎が持続性である場合または石灰化が疑われる場合,X線撮影を行うべきである。

急性の滑液包炎は滑液包内への出血と鑑別すべきであり,後者はワルファリンを投与されている患者が急性の滑液包炎を発症した場合に特に考慮すべきである。出血性の滑液包炎は,血液が炎症性であるために,似た症状を引き起こすことがある。外傷性の滑液包炎における滑液は,通常は漿液血性である。蜂窩織炎は炎症の徴候を引き起こすことがあるが,通常は滑液包に液貯留を生じることはない;滑液包上の蜂窩織炎は,蜂窩織炎を通しての滑液包穿刺の相対的禁忌であるが,化膿性滑液包炎が強く疑われる場合,穿刺吸引を行う必要がある。

治療

  • 安静

  • 高用量のNSAID

  • 結晶誘発性の疾患または感染症の治療

  • ときにコルチコステロイド注射

結晶誘発性の疾患については,痛風の治療を参照。感染症に対しては,最初に黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して効果的な抗菌薬を経験的に投与すべきである(ブドウ球菌感染症の治療を参照のこと)。その後の抗菌薬の選択はグラム染色および培養の結果により決定する。感染性の滑液包炎では,抗菌薬に加えてドレナージまたは切除が必要である。

急性の非化膿性の滑液包炎は,一時的な安静または固定および高用量のNSAIDならびにときに他の鎮痛薬により治療する。痛みが鎮静化するにつれて随意運動を増やすべきである。肩関節に対しては振り子運動が有用である。

経口薬および安静では不十分な場合,吸引および徐放性コルチコステロイド0.5~1mL(例,トリアムシノロンアセトニド40mg/mL)の滑液包内注射が第1選択の治療法である。コルチコステロイドの注射前に約1mLの局所麻酔薬(例,2%リドカイン)を注射することがある。同じ注射針を用いる,すなわち注射針を留置したまま注射筒を取り換える。コルチコステロイドの用量および液量は,滑液包の大きさに従って変わりうる。まれに徐放性コルチコステロイドを注射してから数時間以内に急性増悪(flare-up)が起こる;そのような急性増悪はおそらく注射剤内の結晶に反応した滑膜炎である。持続するのは通常24時間以下であり,冷罨法に加えて鎮痛薬に反応する。局所注射ができない場合,主要な問題の治療に経口コルチコステロイド(例,プレドニゾン)を用いてもよい。

慢性の滑液包炎の治療は急性の滑液包炎の場合と同様であるが,副子固定および安静が有用である可能性が比較的低く,関節可動域訓練が特に重要である点が異なる。まれに,滑液包を切除する必要がある。

要点

  • 滑液包炎の通常の原因は外傷および酷使であるが,感染症および結晶誘発性の疾患が原因となる可能性もある。

  • 肘頭もしくは膝蓋骨前方の滑液包が侵されている場合,または熱感,発赤,圧痛,および圧痕性浮腫がある場合は,細菌性または結晶誘発性の滑液包炎を診断するために滑液を吸引する。

  • 感染がない場合,ほとんどの症例は,安静,高用量のNSAID,およびときにコルチコステロイドの滑液包内注射で治療する。

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