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気胸

執筆者:

Richard W. Light

, MD, Vanderbilt University Medical Center

最終査読/改訂年月 2019年 7月
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気胸は胸腔内に空気が存在することであり,部分的または完全な肺虚脱を引き起こす。気胸は,自然に起こることもあれば,外傷または医療行為が原因で起こることもある。診断は,臨床基準および胸部X線に基づく。ほとんどの気胸は経カテーテル的吸引または胸腔ドレナージを必要とする。

病因

原発性自然気胸は,肺の基礎疾患がなく,典型的には,背が高く痩身の10代および20代の若年男性に発生する。原発性自然気胸は,喫煙によって生じた,または患者が遺伝的にもつ,胸膜下肺尖部のブレブまたはブラの自然破裂によると考えられている。一般に安静時に発症するが,症例によっては手を伸ばすかストレッチをするなどの活動中に発症する。原発性自然気胸はダイビングおよび高所飛行中に生じるものもある。

続発性自然気胸は肺の基礎疾患がある患者に発生する。重症慢性閉塞性肺疾患 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例で... さらに読む 慢性閉塞性肺疾患(COPD) (FEV1 < 1L),HIV関連Pneumocystis jirovecii感染症 Pneumocystis jirovecii肺炎 Pneumocystis jiroveciiは免疫抑制患者,特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者およびコルチコステロイドの全身投与を受けている患者における肺炎の一般的な起因菌である。症状としては,発熱,呼吸困難,乾性咳嗽などがある。診断には,誘発または気管支鏡によって採取した喀痰検体における起因菌の証明が必要である。治療は抗菌薬によって行い,通常トリメトプリム/スルファメトキサゾールもしくはジアフェニルスルホン/トリメトプリム,ク... さらに読む <i>Pneumocystis jirovecii</i>肺炎 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症は,主に消化器系と呼吸器系を侵す外分泌腺の遺伝性疾患である。慢性肺疾患,膵外分泌機能不全,肝胆道疾患,および汗の電解質濃度の異常高値を引き起こす。診断は,新生児スクリーニング検査で陽性と判定された患者または特徴的な臨床的特徴を認める患者において,汗試験を行うか,嚢胞性線維症の原因遺伝子変異を2つ同定することによる。治療は,積極... さらに読む 嚢胞性線維症 ,または肺実質の基礎疾患を有する患者において,ブレブまたはブラの破裂に起因することが最も多い(続発性自然気胸の原因 続発性自然気胸の原因 気胸は胸腔内に空気が存在することであり,部分的または完全な肺虚脱を引き起こす。気胸は,自然に起こることもあれば,外傷または医療行為が原因で起こることもある。診断は,臨床基準および胸部X線に基づく。ほとんどの気胸は経カテーテル的吸引または胸腔ドレナージを必要とする。 原発性自然気胸は,肺の基礎疾患がなく,典型的には,背が高く痩身の10代および20代の若年男性に発生する。原発性自然気胸は,喫煙によって生じた,または患者が遺伝的にもつ,胸膜下... さらに読む 続発性自然気胸の原因 の表を参照)。続発性自然気胸は,肺の基礎疾患により肺予備能が減少している患者に発生するため,通常,原発性自然気胸よりも重篤である。

月経随伴性気胸は続発性自然気胸のまれな形態であり,閉経前の女性で月経の開始後48時間以内に,およびときにエストロゲンを服用している閉経後女性に発生する。原因は胸腔内子宮内膜症であり,おそらくは腹腔内子宮内膜組織の横隔膜欠損孔を介した移動,または骨盤静脈を介した塞栓によるものである。

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医原性気胸は経胸壁穿刺吸引,胸腔穿刺,中心静脈カテーテル留置,機械的人工換気,および心肺蘇生などの医療行為により引き起こされる。

病態生理

胸腔内圧は,肺が内向きに収縮しようとし,胸壁が外向きに拡張しようとするため,通常は陰圧である(大気圧より低い)。気胸では,空気が胸腔外もしくは肺自体から,縦隔組織面を介してまたは胸膜穿孔を直接通って胸腔内に入る。胸腔内の圧が上がり,肺容量が減少する。

緊張性気胸 気胸(緊張性) 緊張性気胸は圧力下での胸腔内に空気が貯留した状態のことであり,肺を圧迫し,心臓への静脈還流量を減少させる。 (胸部外傷の概要も参照のこと。) 肺または胸壁の損傷が,空気が胸腔に入ることが可能でも出ていくことができない損傷(一方向弁)である場合に,緊張性気胸が発生する。その結果,空気が貯留して肺を圧迫し,最終的に縦隔を偏移させ,対側肺が圧迫され,心臓への静脈還流量が減少するほどに胸腔内圧が上昇し,ショックが生じる。このような作用は急速に発... さらに読む 気胸(緊張性) では,胸腔内圧が進行性に上昇し,呼吸周期を通して陽圧になり,肺の虚脱および縦隔の偏位が生じ,心臓への静脈還流が妨げられるレベルにまで圧が上昇する。空気は胸腔へ入り続けるが,出ていくことができない。適切な治療を行わなければ,静脈還流の障害により数分以内に全身性低血圧および心停止(無脈性電気活動)が生じうる。緊張性気胸は,陽圧人工換気(機械的人工換気または特に蘇生中)を受けている患者で起こる頻度が最も高い。まれに外傷性気胸の合併症となるが,これは胸部創傷が一方向性の弁として働き,吸気中に空気を胸腔内にとらえ込み,胸腔内の空気量を増加させることによる。

症状と徴候

小さい気胸はときに無症状である。気胸の症状としては,呼吸困難や胸膜性胸痛などがある。呼吸困難の発症は,気胸の発生の速さと大きさにより,突然であることもあれば緩徐であることもある。痛みは,心膜炎 心膜炎 心膜炎とは心膜の炎症であり,しばしば心嚢液貯留を伴う。心膜炎は,多くの疾患(例,感染症,心筋梗塞,外傷,腫瘍,代謝性疾患)によって引き起こされるが,特発性のことも多い。症状としては胸痛や胸部圧迫感などがあり,しばしば深呼吸により悪化する。心タンポナーデまたは収縮性心膜炎が発生した場合には,心拍出量が大きく低下することがある。診断は症状,心膜摩擦音,心電図変化,およびX線または心エコー検査での心嚢液貯留の所見に基づく。原因の特定には,さら... さらに読む 心膜炎 肺炎 肺炎の概要 肺炎は,感染によって引き起こされる肺の急性炎症である。初期診断は通常,胸部X線および臨床所見に基づいて行う。 原因,症状,治療,予防策,および予後は,その感染が細菌性,抗酸菌性,ウイルス性,真菌性,寄生虫性のいずれであるか,市中または院内のいずれで発生したか,機械的人工換気による治療を受けている患者に発生したかどうか,ならびに患者が免疫能... さらに読む 胸膜炎 ウイルス性胸膜炎 ウイルス性胸膜炎は胸膜のウイルス感染症である。 ウイルス性胸膜炎は,コクサッキーB群ウイルスによる感染が原因で生じることが最も多い。ときに,エコーウイルスが流行性胸痛症またはボルンホルム胸膜痛(Bornholm pleurodynia)として知られるまれな病態を引き起こし,胸膜炎,発熱,および胸部の筋攣縮として発症する。この疾患は夏の終わりに発生し,青年および若年成人が罹患する。... さらに読む ,肺塞栓,筋骨格の損傷(肩への関連痛の場合),または腹腔内の病的変化(腹部への関連痛の場合)に類似する。痛みはまた,心虚血に類似することもあるが,心虚血の痛みは典型的には非胸膜性である。

身体所見は古典的に,触覚振盪音の消失,打診上の過共鳴音,および患側の呼吸音の減弱から成る。気胸が大きければ,患側が拡張し,気管が明らかに対側に偏位することがある。緊張性気胸では,低血圧が起こりうる。

診断

  • 胸部X線

診断は,呼吸困難または胸膜性胸痛を有し状態が安定した患者で疑われ,吸気時の立位X線で確定する。放射線透過性の空気が存在すること,および縮小した肺葉または肺と壁側胸膜の間に肺紋理が存在しないことが,気胸の診断に有用である。気管偏位および縦隔偏位は大きい気胸で発生する。

気胸の大きさは,片側胸郭に占める空気の割合として定義される。この割合は,肺の幅と片側胸郭の幅をそれぞれ3乗したものの比率を1から差し引いて算出した値である。例えば,片側胸郭の幅が10cmで肺の幅が5cmであれば,比率は53/103= 0.125である。したがって,気胸のおよその大きさは1から0.125を引いた値,つまり87.5%となる。肺と胸壁の間に癒着がある場合は,肺は対称的には虚脱せず,気胸は異型性あるいは多房性となり,前述の計算は的確ではない。

小さい気胸(例,< 10%)は,ときに胸部X線で見落とされる。気胸の可能性がある患者では,胸部X線上で肺紋理を胸膜の縁まで追って確かめるべきである。X線上で気胸に類似する状態には,肺気腫によるブラ,皮膚のひだ,ベッドシーツのしわ,および胃または腸管の陰影が肺野に重なっていることなどがある。

パール&ピットフォール

  • 機械的人工換気を受けている患者において突然の低血圧がみられれば,緊張性気胸を考慮すべきである。さらに呼吸音が減弱し,打診への過共鳴音があれば,緊張性気胸を推定し,胸部X線による診断確定を待たずに直ちに治療を行うべきである。

治療

  • 緊張性気胸に対し,穿刺による緊急減圧

  • 症状のない小さい原発性自然気胸に対し,経過観察およびX線によるフォローアップ

  • 症状のある大きい原発性自然気胸に対し,カテーテルによる吸引

  • 続発性および外傷性気胸に対し,胸腔ドレナージ

酸素は胸膜による空気の再吸収を促進するため,胸部X線の結果が得られるまで,患者には酸素投与を行うべきである。その後の治療は,気胸の種類,大きさ,および影響によって異なる。大きさが20%未満で,肺の症状も心臓の症状も引き起こしていない原発性自然気胸は,約6時間後および約48時間後の胸部X線によるフォローアップで何ら進行がみられなければ,無治療で安全に経過観察できる。比較的大きい,または症状のある原発性自然気胸は,カテーテル吸引により脱気すべきである。胸腔ドレナージは代替手段である。

カテーテル吸引は,小口径(約7~9Fr)の静脈カテーテルまたはピッグテールカテーテルを第2肋間鎖骨中線上から胸腔内に挿入することにより行う。カテーテルは三方活栓および注射器に取り付ける。胸腔から三方活栓を通して注射器へと空気を引き抜き,室内に排出する。肺が再膨張するまで,または空気が4L除去されるまでこの手順を繰り返す。肺が膨張すれば,カテーテルは除去または一方向性ハイムリッヒバルブに接続して留置でき(これにより歩行が可能になる),患者が入院する必要はない。肺が膨張しなければ,胸腔ドレーンを挿入すべきであり,患者を入院させるべきである。原発性自然気胸は,初期は水封室に接続した胸腔ドレーンによって管理することもでき,吸引は行うこともあれば行わないこともある。原発性自然気胸の患者は,禁煙 禁煙 ほとんどの喫煙者は禁煙したいと願い,それを試みているが,成功率は限られている。効果的な介入としては,禁煙カウンセリングとバレニクリン,ブプロピオン,ニコチン代替製品などの薬剤投与がある。 米国の喫煙者の約70%は,喫煙をやめることを望んでおり,少なくとも1回は禁煙を試みたことがあると言う。ニコチンの離脱症状は,禁煙の重大な障壁となりうる。 (タバコも参照のこと。) 離脱症状はしばしば強力で,多くの喫煙者は,たとえ健康面のリスクを認識して... さらに読む カウンセリングも受けるべきである。

緊張性気胸は医学的緊急事態であり,臨床的に診断すべきである;胸部X線による診断確定に時間を浪費すべきではない。緊張性気胸は胸腔穿刺による脱気 胸腔穿刺による脱気 胸腔穿刺による脱気とは,胸腔に針を刺入して緊張性気胸の減圧を行うことである。 胸腔穿刺による脱気は,胸腔ドレナージが速やかに行えない場合に緊急で行われ,救命につながる可能性がある。 緊張性気胸の症例で,胸腔ドレナージの実施が可能になる前に減圧が必要な場合 なし この処置は,他の考慮事項に優先する生命に対する差し迫った脅威がある場合にのみ行... さらに読む 胸腔穿刺による脱気 により直ちに治療すべきであり,カテーテル付きの14Gまたは16Gの針を胸壁の第2肋間鎖骨中線上から挿入する。高圧の空気が出てくる音で診断が確定する。カテーテルは外気と開通させておくこともあれば,ハイムリッヒバルブに接続することもある。緊急減圧の直後に続けて胸腔ドレナージを行わねばならず,その後にカテーテルを抜去する。

合併症

気胸の治療時に遭遇する3つの主な問題は以下の通りである:

  • エアリーク

  • 肺拡張不全

  • 再膨張性肺水腫

エアリークは通常,本来の問題(すなわち,肺から胸腔への空気の持続的な漏出)が原因であるが,胸腔ドレーン挿入部が適切に縫合閉鎖されていなければ,挿入部周囲のエアリークによる可能性もある。エアリークは原発性よりも続発性の自然気胸により多くみられる。ほとんどは1週間以内に自然に消失する。

肺拡張不全の原因には通常以下のものが考えられる:

  • 持続的エアリーク

  • 気管支内閉塞

  • trapped lung

  • 胸腔ドレーンの位置異常

エアリークまたは肺の不完全拡張が1週間以上持続する場合は,気管支バルブ,自己血胸膜癒着術(自己血パッチ),胸腔鏡,または開胸を考慮すべきである。

再膨張性肺水腫は,肺が2日以上虚脱していた後に胸腔ドレーンを陰圧に接続したときなど,肺が急速に膨張する際に生じる。治療は支持療法であり,酸素および利尿薬を投与するとともに,必要に応じて心肺補助を行う。

予防

初回自然気胸後の3年間で50%近くが再発する。最善の予防法は胸腔鏡下手術 胸腔鏡検査および胸腔鏡下手術 胸腔鏡手技では,内視鏡を挿入して胸腔を視覚化する。胸腔鏡は胸腔内の観察(胸腔鏡検査),または外科的手技のために用いられる。 胸腔鏡による外科手技は,より一般的には胸腔鏡下手術(VATS)と呼ばれる。 胸腔鏡検査が内視鏡検査室で意識下鎮静で行われるのに対し,VATSは全身麻酔を必要とし,手術室で行われる。いずれの手技でも,明瞭な視野を得るために気胸を誘発させる。 胸腔鏡は以下の目的で使用される:... さらに読む (VATS)であり,術中にブレブをステープラーで縫合し,胸膜擦過,壁側胸膜切除術,またはタルクの注入によって胸膜癒着術を行う;いまだに開胸を施行する医療施設もある。これらの手技が推奨されるのは,カテーテル吸引が自然気胸に奏効しない場合,気胸が再発する場合,または続発性自然気胸の患者の場合である。これらの手技後の再発率は < 5%である。胸腔鏡手術ができない場合または禁忌の場合,胸腔ドレーンを介した化学的胸膜癒着術 悪性胸水 胸水は胸膜腔(pleural space)内における体液の貯留である。胸水には複数の原因があり,通常,漏出液または滲出液に分類される。検出は身体診察および胸部X線による;原因を同定するために胸腔穿刺および胸水分析がしばしば必要とされる。無症状の漏出液は治療の必要はない。症状のある漏出液およびほぼ全ての滲出液には,胸腔穿刺,胸腔ドレナージ,胸膜切除術,またはこれらの組合せが必要となる。... さらに読む  悪性胸水 を行うこともある;この手技は侵襲性は大幅に低いが,再発率は約25%にまでしか低下しない。

要点

  • 原発性自然気胸は,肺の基礎疾患がなく,典型的には,背が高く痩身の10代および20代の若年男性に発生する。

  • 続発性自然気胸は基礎に肺疾患がある患者に発生する;重症COPD患者においてブレブまたはブラの破裂により生じることが最も多い。

  • 診断は立位胸部X線によるが,例外的に緊張性気胸の場合は,疑いがあればすぐに臨床的に診断する。

  • 大きさが20%未満で,肺の症状も心臓の症状も引き起こしていない原発性自然気胸は,約6時間後および約48時間後の胸部X線によるフォローアップで何ら進行がみられなければ,無治療で安全に経過観察できる。

  • それよりも大きい,または症状のある原発性自然気胸は,カテーテル吸引または胸腔ドレナージにより脱気すべきである。

  • 続発性および外傷性気胸は一般に胸腔ドレナージにより治療する。

  • 胸腔鏡下手術(VATS)とその他の手技は,自然気胸の再発予防に役立つ可能性があり,これらを行わない場合の再発率は3年間で50%である。

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