(不整脈の概要 不整脈の概要 正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性を有する筋細胞によって電気パルスが生成・伝達され,それにより一連の組織化された心筋収縮が誘発されることによって生じる。不整脈と伝導障害は,そうした電気パルスの生成,伝導,またはその両方の異常により引き起こされる。 先天的な構造異常(例,房室副伝導路)や機能異常(例,遺伝性のイ... さらに読む も参照のこと。)
いくつかの変異が関与するが,そのほとんどは電位依存性心筋ナトリウムチャネルのαサブユニットをコードするSCN5A遺伝子の変異である。典型的には,患者に構造的心疾患はみられない。それでも, QT延長症候群3型 先天性QT延長症候群 トルサード・ド・ポワンツは,QT延長を呈する患者でみられる特殊な形態の多形性心室頻拍である。速く不規則なQRS波を特徴とし,心電図の基線を中心にねじれたような形を呈する。この不整脈は自然に治まることもあれば,増悪して心室細動に移行することもある。有意な血行動態障害を引き起こし,しばしば死に至る。診断は心電図検査による。治療はマグネシウムの静注,QT間隔を短縮する処置,および心室細動の可能性が高まっている場合は電気的除細動による。... さらに読む や不整脈源性右室異形成症(ARVD)とのオーバーラップ症候群のように,遺伝性および後天性の構造的心疾患との関係がますます認識されてきている。
ブルガダ症候群の一部の患者では,臨床的な異常がみられない。しかしながら,多くの患者では多形性 心室頻拍 心室頻拍(VT) 心室頻拍は,連続で3拍以上にわたり心拍数が120/分以上となる状態である。症状は持続時間に依存し,無症状から動悸,血行動態の破綻,さらには死に至ることもある。診断は心電図検査による。短時間の発作に収まらない場合の治療には,症状に応じてカルディオバージョンまたは抗不整脈薬を用いる。必要な場合は,植込み型除細動器による長期治療を行う。 ( 不整脈の概要も参照のこと。) 心室頻拍(VT)のカットオフ値としては,心拍数100/分以上を採用してい... さらに読む または 心室細動 心室細動(VF) 心室細動では,心室が非協調的に震動し,有効な収縮は発生しない。直ちに失神を来し,数分以内に死亡する。治療は,即時の除細動を含めた心肺蘇生による。 ( 不整脈の概要も参照のこと。) 心室細動(VF)は複数の微小な興奮波によるリエントリー性の電気活動を原因とし,心電図上では超高速の基線の動揺として出現し,動揺のタイミングと形態は不規則である。 VFは 心停止状態にある患者の約70%でみられる調律であり,したがって多くの疾患における最終的な事... さらに読む に起因した失神や心臓突然死がみられる。発作の発生は夜間に多く,通常は労作と関連しない。また発熱や特定の薬剤(ナトリウムチャネル遮断薬,β遮断薬,三環系抗うつ薬,リチウム,コカインなど)によっても発作が惹起されることもある。
ブルガダ症候群の診断
心電図検査
家族歴
原因不明の心停止もしくは失神がみられた患者,またはこれらの家族歴を有する患者では,本症を考慮すべきである。心臓電気生理検査の役割は現時点で明らかでない。
ブルガダ症候群の初期診断は,特徴的な心電図波形(1型のブルガダ型心電図パターン)に基づいて下される(1型のブルガダ型心電図パターン 1型のブルガダ型心電図パターン の図を参照)。1型のブルガダ型心電図パターンは,V1およびV2で(ときにV3でも)著明なST上昇がみられ,結果として,これらの誘導のQRS波は 右脚ブロック 脚ブロックおよび束枝ブロック に類似する。ST部分はcoved型で,逆転したT波に向かって下降する。これらのパターンで程度が低いもの(2型および3型のブルガダ型心電図パターン)は診断的所見とはみなさない。2型および3型のパターンは,自然発生的に,発熱に伴い,または薬剤に対する反応として,1型パターンに変化することがある。後者は負荷試験の根拠となる変化であり,通常はアジマリンまたはプロカインアミドが使用される。
1型のブルガダ型心電図パターン
Coved型のST部分に向かってJ点が著明に上昇し,V1およびV2誘導ではT波逆転が生じている。 ![]() |
ブルガダ症候群の治療
植込み型除細動器
失神がみられる患者と心停止から蘇生した患者には, 植込み型除細動器 植込み型除細動器(ICD) 不整脈治療のニーズは,不整脈の症状および重篤度に依存する。治療は原因に対して行う。必要に応じて, 抗不整脈薬, カルディオバージョン/電気的除細動,植込み型除細動器(ICD), ペースメーカー(および特殊なペーシング, 心臓再同期療法), カテーテルアブレーション, 手術,またはこれらの併用などによる直接的な抗不整脈療法が用いられる。 ICDは 心室頻拍(VT)または 心室細動(VF)に反応してカルディオバージョンまたは除細動を行う。最... さらに読む を使用すべきである。
心電図変化と家族歴に基づき診断されたブルガダ症候群患者における最善の治療法は明確ではないが,そのような患者では突然死のリスクが高い。