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腎動脈の狭窄および閉塞

執筆者:

Zhiwei Zhang

, MD, Loma Linda University

最終査読/改訂年月 2016年 7月
本ページのリソース

腎動脈狭窄は,片側または両側腎動脈の本幹または分枝を通る血流が低下する状態である。腎動脈閉塞は,片側または両側腎動脈の本幹または分枝を通る血流が完全な遮断である。狭窄および閉塞の原因は通常,血栓塞栓症,動脈硬化,線維筋性異形成である。急性閉塞の症状は,間断なくうずく側腹部痛,腹痛,発熱,悪心,嘔吐および血尿などである。急性腎障害が発生する場合がある。慢性,進行性の狭窄は,難治性高血圧をもたらし,慢性腎臓病に至る場合がある。診断は画像検査(例,CT血管造影,MRアンギオグラフィー)による。急性閉塞の治療は,抗凝固療法ならびに,ときに血栓溶解薬および外科的またはカテーテルによる塞栓除去術,またはその組合せによる。慢性,進行性狭窄の治療は,ステント留置による血管形成術または外科的バイパスによる。

腎臓の血流低下は,腎血管性高血圧および腎不全につながり,完全閉塞が発生した場合には腎梗塞および腎壊死が生じる。

病因

閉塞は急性または慢性の場合がある。急性閉塞は通常は一側性である。慢性閉塞は一側性または両側性の場合がある。

急性腎動脈閉塞

最も一般的な原因は血栓塞栓症である。塞栓は心臓(心房細動,心筋梗塞後,もしくは細菌性心内膜炎による疣贅に起因)または大動脈(アテローム塞栓)に由来する可能性があり,より頻度は低いものの脂肪または腫瘍塞栓も原因である。血栓症は,腎動脈に自然発生するか,または外傷,手術,血管造影,血管形成術後に生じうる。急性閉塞のその他の原因には,大動脈解離および腎動脈瘤の破裂がある。

大型腎動脈の急速な完全閉塞は30~60分で梗塞をもたらす。梗塞は,典型的に楔状で,罹患血管から外に向かって放射状に広がる。

慢性進行性腎動脈狭窄

症例の約90%は動脈硬化に起因し,通常は両側性である。症例のほぼ10%は線維筋性異形成(FMD)に起因し,一般的には一側性である。症例の1%未満は高安動脈炎,川崎病,神経線維腫症1型,大動脈壁血腫,大動脈解離に起因する。

動脈硬化は主に50歳以上の患者(男性が多い)で発生し,通常は大動脈開口部または腎動脈の近位区域が罹患する。慢性進行性狭窄は動脈硬化の約10年後に臨床的に明白になる傾向があり,腎萎縮および慢性腎臓病を生じる。

FMDは動脈壁の病的な肥厚であり,ほとんどの場合,腎動脈本幹の遠位部または腎内分枝に認められる。肥厚は不規則な傾向があり,いずれの層も関与する可能性がある(しかしながら最も一般的には中膜)。本疾患は主に若年成人,特に20~50歳の女性において発生する。FMD患者の第1度近親者およびACE1遺伝子の保有者で頻度はより高い。

症状と徴候

臨床像は,発症の急性度,程度,一側性か両側性か,および腎血流低下の持続時間によって異なる。腎動脈の一側性狭窄は,しばしば相当な期間にわたり無症候性である。

腎動脈の一側性または両側性の急性完全閉塞は,間断なくうずく側腹部痛,腹痛,発熱,悪心,嘔吐をもたらす。肉眼的血尿,乏尿または無尿が起こる場合があり,高血圧はまれである。24時間後に,急性腎障害の症状と徴候が生じる可能性がある。原因が血栓塞栓性の場合,血栓塞栓症のその他の部位での特徴(例,つま先の青色の変色,網状皮斑,眼底検査での網膜病変)も存在する場合がある。

慢性進行性狭窄は高血圧を生じ,非典型的な年齢で発生する可能性があり(例,30歳未満または50歳以上),複数の降圧薬の使用にもかかわらずコントロール抵抗性の場合がある。身体診察で,腹部血管雑音または動脈硬化の徴候を検出することがある。慢性腎臓病の症候が緩徐に出現する。

診断

  • 臨床的な疑い

  • 画像検査

診断は以下がみられる腎不全患者で疑われる:

  • 急性腎動脈閉塞の症状

  • 血栓塞栓症の症状または徴候

  • 30歳未満で発症した高血圧,または3剤を超える降圧薬治療で難治性となった高血圧

血液および尿検査を行って腎不全を確認する。診断は画像検査により確定される( 腎動脈狭窄または閉塞を診断するための画像検査)。行う検査は患者の腎機能やその他の特徴,また各検査の利用可能性によって異なる。

一部の検査(CT血管造影,動脈造影,デジタルサブトラクション血管造影)には静注用のイオン性造影剤が必要であり,それらの造影剤は腎毒性を生じる可能性がある;一方,現在広く使用されている非イオン性の低浸透圧または等浸透圧造影剤では,このリスクが低い( 放射線造影剤および造影剤反応)。MRアンギオグラフィー(MRA)にはガドリニウム造影剤の使用が必要であるが,重度の慢性腎臓病患者でガドリニウム造影剤を使用すると,腎性全身性線維症のリスクがあり,この疾患は全身性強皮症に極めて類似し,十分な治療法が存在しない。

他の検査結果が断定的でないか,または陰性であるが臨床的に強く疑われる場合には,確定診断のために動脈造影が必要となる。動脈造影はまた,侵襲的な介入を行う前にも必要になる場合がある。

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腎動脈狭窄または閉塞を診断するための画像検査

検査

長所

短所

非侵襲的である

迅速である

広く利用可能である

腎毒性を示す可能性があるヨード造影剤の静脈内投与が必要である

精度が高い

非侵襲的である

GFR > 60mL/minの患者と,おそらくはGFR 30~60mL/minの患者でも安全である

腎性全身性線維症のリスクを増大させるガドリニウム造影剤の使用が必要である

非侵襲的で,精度が高い

腎機能に関する情報が得られる

検者の技量に依存し,時間がかかり,常に利用可能とは限らず,肥満患者では精度に限界がある

腎シンチグラフィー

非侵襲的である

腎血流の画像が得られる

両側性狭窄と比較して一側性狭窄での精度が高く,カプトプリルの使用時により精度が高いが,偽陽性率および偽陰性率はカプトプリルを使用した場合でも10%以上である

通常は最初の検査としては用いられない

動脈造影

診断のゴールドスタンダードである

外科的手技や侵襲的な放射線学的処置のための詳細な解剖学的情報が得られる

侵襲的である

アテローム塞栓症(動脈カテーテル留置に起因)および造影剤腎症のリスクがある

非侵襲的である

動脈造影と比較してヨード造影剤の使用量が少ない

ヨード造影剤が必要であるが,動脈造影と比較すると少量である

二酸化炭素血管造影

造影剤が必要ない

利用可能性が比較的低い

血栓塞栓性疾患が疑われる場合,塞栓の治療可能な発生源を同定するため,心電図(心房細動の検出)および凝固亢進検査が必要になることがある。経食道心エコー検査は,上行大動脈および胸部大動脈の動脈硬化病変と心臓由来の血栓または弁疣贅を検出するために施行される。

血液および尿検査は診断には不十分であるが,腎不全の確認のために施行され,クレアチニンおよびBUNの高値と高カリウム血症によって示唆される。白血球増多,肉眼的または顕微鏡的血尿,およびタンパク尿も出現することがある。

治療

  • 急性閉塞,および患者が難治性高血圧または腎不全の可能性を有する場合の慢性狭窄では,血管の開存性回復

治療は原因に応じて異なる。

急性腎動脈閉塞

腎血栓塞栓性疾患は,抗凝固療法,血栓溶解薬,外科的またはカテーテルによる塞栓除去術の併用で治療することができる。症状出現後3時間以内に治療を行えば,腎機能が改善する可能性が高い。しかしながら,完全な回復が得られることはまれであり,腎臓以外での塞栓形成や基礎にある動脈硬化性心疾患のため,早期および後期死亡率は高い。

3時間以内に受診した患者では,静脈内または局所動脈内注射による血栓溶解療法(例,ストレプトキナーゼ,アルテプラーゼ)が有益となりうる。しかし,そのような迅速な診断および治療はまれである。

血栓塞栓性疾患の全患者で,ヘパリン静脈内投与による抗凝固療法が,禁忌の場合を除いて必要である。侵襲的介入の計画がない場合は,経口ワルファリンによる長期の抗凝固療法をヘパリンと同時に開始することができる。抗凝固療法を少なくとも6~12カ月継続すべきであり,血栓塞栓症を繰り返す患者や凝固亢進性疾患の患者には無期限に継続する。

血管の開存性を回復するための手術は血栓溶解療法に比べ死亡率が高く,腎機能の回復に関する利益はない。しかしながら外傷性腎動脈血栓症患者では,手術は,特に最初の数時間以内に行われるのであれば好ましい治療法である。非外傷性の重症腎不全患者が4~6週間の薬物療法によっても機能を回復しない場合は,外科的血行再建術(塞栓除去術)を考慮することができるが,ごくわずかの症例のみで有用である。

原因が血栓塞栓の場合は,発生源を同定し,適切に治療すべきである。

慢性進行性腎動脈狭窄

治療は以下の5つの基準の1つ以上を満たした患者で適応である:

  • 3剤以上の薬物療法で難治性となった高血圧

  • 至適な薬物療法にもかかわらず腎機能の増悪

  • 腎血管障害の診断前に短期間の血圧上昇

  • 再発性急性肺水腫

  • 腎機能不全の原因不明の急速な進行

治療は,経皮的血管形成術(PTA)とステント留置の併用,または狭窄部位の外科的バイパス術による。通常,動脈硬化による閉塞にはPTAより外科手術の方が効果的であり,60~70%の患者で高血圧の治癒または症状軽減が得られる。しかしながら,手術は患者が複雑な器質的病変を有している場合か,PTAが無効で,特にステント内再狭窄が再発する場合にのみ考慮される。FMDに対してはPTAが優先され,リスクは最小限で,成功率が高く,再狭窄率も低い。

腎血管性高血圧

治療は,血管の開存性( 腎血管性高血圧 : 治療)が回復されない限り,典型的に無効である。しかしながら,2014年のCORAL試験では,有害な心血管イベントまたは腎イベントの予防における腎動脈ステント留置術および薬物療法の併用は,薬物療法単独に比べ,有意な便益をもたらさないことが示された(1)。ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,レニン阻害薬は,一側性腎動脈狭窄に対して用いることが可能で,GFR値が綿密にモニタリングされる場合は両側性腎動脈狭窄に対しても用いることができる。これらの薬剤はGFRを低下させ,血清BUNおよびクレアチニン値を上昇させる可能性がある。GFR値が低下することで血清クレアチニン値が上昇する場合は,カルシウム拮抗薬(例,アムロジピン,フェロジピン—)または血管拡張薬(例,ヒドララジン,ミノキシジル)を追加するか,これらに置換すべきである。

治療に関する参考文献

要点

  • 腎動脈狭窄または閉塞は急性(通常は血栓塞栓症に起因)または慢性(通常は動脈硬化もしくは線維筋性異形成に起因)の場合がある。

  • 患者が間断なくうずく側腹部痛または腹痛,ときに発熱,悪心,嘔吐を呈し,および/または肉眼的血尿が認められる場合は急性閉塞を疑う。

  • 患者が原因不明の重症または早期発症の高血圧を発症する場合は慢性閉塞を疑う。

  • 診断は血管画像検査で確定する。

  • 急性閉塞を呈する患者および選択された慢性閉塞患者(例,重度の合併症または難治性疾患を呈する)では血管の開存性を回復する。

  • 高血圧は血管開存性が回復するまではコントロールが困難なことがあるが,ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,またはレニン阻害薬で治療を開始し,GFRを綿密にモニタリングし,GFRが低下する場合はカルシウム拮抗薬または血管拡張薬に置き換える。

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