新生児の結核

(周産期結核)

執筆者:Brenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2022年 10月 | 修正済み 2022年 12月
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結核は、結核菌という細菌によって引き起こされる感染力の強い感染症です。

  • 新生児は様々な形で細菌にさらされる可能性があります。

  • 症状には、発熱、活力の低下、呼吸困難などがあります。

  • 診断では、胸部X線検査、血液検査、体液や組織のサンプルの検査と培養、腰椎穿刺が行われることがあります。

  • 乳児が元気でも、活動性の感染症の人と接触した場合には抗菌薬が投与されることがあります。

  • 感染した新生児と妊婦には、治療のために抗菌薬が投与されます。

新生児の感染症の概要と成人の結核も参照のこと。)

乳児は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)にさらされると感染します。乳児は以下のように様々な形で細菌にさらされる可能性があります。

  • 出生前:細菌が胎盤(胎児に栄養を供給する器官)を通過し、胎児に感染する

  • 分娩中:新生児が産道で感染した体液を吸い込んだり飲み込んだりすることで感染する

  • 出生後:家族や新生児室のスタッフがせきやくしゃみをしたときに出る病原体を含んだ飛沫を、新生児が吸い込むと感染が起きる

肺に活動性の結核がある母親から生まれた小児の約50%は、抗菌薬の予防投与またはBCG(カルメット-ゲラン桿菌)と呼ばれるワクチンの接種を受けない限り、生後1年以内に結核を発症します。肺に活動性の結核がある人は体調が悪く、他の人に病気を広める可能性があります。

新生児の結核の症状

新生児では症状がみられない場合もあります。

状態が悪そうに見えたり、発熱がみられたり、元気がなかったり、呼吸困難になったり、治療の難しい肺炎になったりする場合もあります。体重の増加と身体の成長が遅れることもあります(発育不良)。結核は通常、複数の臓器に影響を与えるため、新生児の肝臓と脾臓が肥大することもあります。

新生児の結核の診断

  • 胸部X線検査

  • 体液と組織のサンプルの検査と培養

  • ときにツベルクリン検査

新生児には検査が必要な場合とそうでない場合とがあります。

検査が必要な新生児

結核を示唆する症状があるか、または活動性の結核の母親から生まれた新生児は、以下の検査を受けます。

  • 胸部X線検査

  • 体液や組織のサンプルの検査と培養

  • 腰椎穿刺

  • 血液検査

  • ときにツベルクリン検査

胸部X線検査で結核の徴候が認められることがあります。

体液や組織のサンプルは、のど、胃、尿、胎盤から採取されます。これらのサンプルの中に結核菌がいるかどうかを顕微鏡で調べ、菌の培養検査を行います。

腰椎穿刺によって、検査用の髄液のサンプルが採取されます。

新生児にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症などの他の感染症があるかどうかを判断するため、血液検査が行われます。

ときに、ツベルクリン検査が行われることもあります。この検査では、結核菌由来の少量のタンパク質(ツベルクリン)が皮膚のすぐ下に注射されます。約2日後に注射した部分を調べ、注射部位が所定のサイズよりも大きく腫れている場合、検査は陽性とみなされ、新生児が結核菌に感染していることを意味します。しかし、新生児が感染していても、検査で感染が示されない場合があります。このような場合、医師がまだ結核を疑っているのであれば、追加の検査を行うことがあります。

検査が必要な可能性のある新生児

新生児が元気そうに見えて、母親はツベルクリン検査で陽性であるものの、胸部X線検査で結核の徴候がみられず、活動性結核の証拠もない場合、その新生児は医師による注意深いモニタリングを受ける必要があります。家族全員が評価を受ける必要があります。医師の評価により、新生児が活動性の結核にさらされていないと判断されれば、新生児に治療または検査は不要です。医師の評価により、新生児が活動性の結核にさらされたと判断されれば、新生児には上記の検査が行われます。

新生児の結核の予防

医師は通常、活動性の結核にさらされた乳児に対し、イソニアジドという抗菌薬を投与しますが、この薬剤は感染の活性化を予防するのに役立つため、たとえ乳児が元気そうに見えていても投与されます。

医療が行き届いていない国や地域では、結核の発生リスクが高いため、小児結核の予防に役立つBCG(カルメット-ゲラン桿菌)というワクチンが、基本的にすべての新生児に接種されています。感染リスクが比較的低い医療などの資源が豊富な国に住む人々には、BCGワクチンの接種は通常推奨されません。

新生児の結核の治療

  • イソニアジド

  • その他の薬剤

活動性結核の新生児は、抗菌薬のイソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エチオナミド、エタンブトールのほか、ときにその他の薬剤を組み合わせて治療されます。

ツベルクリン検査で陽性の新生児、または出生後に活動性の結核にさらされた新生児には、感染症の発症を予防するためにイソニアジドが投与されます。

新生児では、結核に対する薬剤はすべて6カ月以上にわたり投与されます。

結核を発症するリスクが高い妊婦には、ビタミンB6(ピリドキシン)とともにイソニアジドが9カ月間投与されます。妊娠中に結核にさらされた女性でも、活動性結核を発症するリスクに応じて、妊娠の第1トリメスター【訳注:日本でいう妊娠初期にほぼ相当】が過ぎるまで、または出産が終わるまで、イソニアジドとビタミンB6の投与が控えられることがあります。

活動性の結核のある妊婦には、イソニアジド、エタンブトール、リファンピシンの3剤が9カ月以上投与されます。

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