この病気では、かくことでかゆみが生じ、そのためさらにかいてしまうという悪循環が生じます。
ほとんどの場合は胸の上部、腕、首、脚、陰部などの手が届きやすい部位に生じ、背中の中央部から上部などの手が届きにくい部位には生じないことがよくあります。
皮膚に塗るコルチコステロイドと、かゆみを緩和する対策が役立ちますが、皮膚をかいたりこすったりしないようにすべきです。
(皮膚炎の概要 皮膚炎の概要 皮膚炎は皮膚の上層に起きた炎症で、かゆみ、水疱、発赤、腫れを生じ、多くの場合、じくじくしてかさぶたになり、鱗屑(うろこ状のくず)が生じます。 原因として分かっているものには、皮膚の乾燥、特定の物質への接触、特定の薬、静脈瘤などがあります。 典型的な症状には、かゆみを伴う赤い発疹、鱗屑、ただれ、じくじく、かさぶたなどがあります。 診断は一般的には症状に基づいて下され、皮膚テストもしくは皮膚生検の結果、または原因として疑われる薬(被疑薬)や... さらに読む も参照のこと。)
慢性単純性苔癬は皮膚のある部位を長期的にかいたりこすったりすることで生じます。皮膚をかくこと自体が刺激になって、さらにかゆみが生じることで、「かゆいからかき、かくことでさらにかゆくなる」という悪循環が起こります。
皮膚をかく行為は特に理由もなく始まることがあります。また、 慢性皮膚炎 接触皮膚炎 接触皮膚炎は、特定の物質に直接触れることで皮膚に炎症が起きる病気です。発疹はかゆいことがあり、特定の部位に限定され、しばしば境界がはっきりしています。 接触皮膚炎は、刺激反応かアレルギー反応のどちらかによって引き起こされます。 発疹が現れ、かゆみ、痛み、またはその両方を伴うことがあります。 診断は、発疹の外観と患者が触れた可能性のある物質に基づいて下されます。 皮膚炎を引き起こす物質を避けるか、そういうものから身を守るべきです。 さらに読む などの他の病気が原因で皮膚をかく行為が始まり、原因になる病気が治った後もずっとかき続けてしまうことがあります。この持続的なかゆみには、神経系がかゆみの感覚を知覚して処理する過程に変化が生じている可能性があります。
慢性単純性苔癬は不安症や精神的ストレスのある人によくみられます。 アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎(一般には湿疹と呼ばれます)とは、皮膚の上層に生じる、かゆみを伴う慢性的な炎症です。花粉症や喘息のある人、また家族にそのような病気の人がいる人にみられることの多い病気です。 アトピー性皮膚炎は非常によくみられるもので、特に高所得国やアレルギーを起こしやすい人で多くみられます。 乳児では、じくじくしてかさぶたを伴う赤い発疹が、顔面、頭皮、手、腕、足、脚にできる傾向があります。... さらに読む 、 花粉症 季節性アレルギー 季節性アレルギーとは、1年の特定の時期にだけ出現する花粉などの空気中を漂う物質にさらされることが原因で起こるアレルギーです。 症状は皮膚のかゆみ、鼻水、くしゃみ、ときに眼のかゆみ、涙目、目の充血です。 通常は、特定の季節に典型的な症状(鼻水、鼻のかゆみ、目のかゆみなど)がみられる場合に、このアレルギーと診断できます。 症状緩和には、コルチコステロイドの鼻腔スプレー、抗ヒスタミン薬、鼻閉改善薬が有用です。... さらに読む 、 喘息 喘息 喘息は、気道が何らかの刺激に反応して狭くなる(通常は可逆性)病態です。 症状としては、特定の誘因に反応して生じる、せき、喘鳴(ぜんめい)、息切れなどが最もよくみられます。 医師は、呼吸の検査(肺機能検査)を行って喘息の診断を確定します。 喘息発作を防ぐためには、誘因となる物質を吸い込まないようにするとともに、気道の開口を保つ薬を服用する必... さらに読む のある人や、アトピー性皮膚炎だけがある人は、かゆみが起こりやすい傾向があることから、特に慢性単純性苔癬を発症しやすいです。
慢性単純性苔癬の症状
慢性単純性苔癬は、肛門(肛門そう痒症 肛門のかゆみ 肛門(消化管の末端にある開口部で、便が体外に排出されるときの出口になる部分です)とその周辺の皮膚(肛門周囲の皮膚)のかゆみは、肛門そう痒症と呼ばれています。 ( 肛門と直腸の概要も参照のこと。) 肛門のかゆみの最も一般的な原因は以下のものです。 不明(大多数) 衛生状態に関連するもの さらに読む を参照)や陰部(外陰そう痒症や陰嚢そう痒症― 性器のかゆみ 性器のかゆみ 性器のかゆみは、腟または外性器を含む性器周辺(外陰部)に及ぶことがあります。かゆみとは、掻かないと治まらないように感じられる不快な感覚です。 多くの女性はときに短期間、性器のかゆみを感じますが、治療しなくても治まります。かゆみが問題とみなされるのは、かゆみが続く場合や、強いかゆみがある場合、繰り返し起こる場合、... さらに読む を参照)を含め、体のあらゆる部位に生じます。
早期には皮膚は正常に見えますが、かゆみがあります。その後、長期的にかいたりこすったりした結果として、皮膚に乾燥、鱗屑(うろこ状のくず)、肥厚、暗い色の斑が生じます。この過程は、苔癬化と呼ばれ、皮膚が皮革に似た状態になります。
慢性単純性苔癬の診断
医師による評価
ときに皮膚生検
肛門や腟のかゆみについては、他の原因の可能性を否定する検査
慢性単純性苔癬の診断は身体診察の結果に基づいて下され、ときには皮膚のサンプルを取って検査室に送ることもあります(生検 生検 皮膚の病気には、医師が皮膚を観察しただけで特定できるものが数多くあります。全身の皮膚の診察には、頭皮、爪、粘膜の診察も含まれます。ときに、皮膚の一部を詳細に観察するために、手持ち式の拡大鏡やダーモスコープ(拡大レンズと内蔵式のライトを備えた器具)を使用することもあります。 診断につながる特徴としては、皮膚に現れている異常部分の大きさ、形、色、部位に加え、その他の症状や徴候の有無があります。皮膚の異常の広がりを調べるため、しばしば衣服をす... さらに読む )。診断では、最初のかゆみの原因になった可能性のあるアレルギーや病気の発見を試みます。
肛門や陰部の周辺に強いかゆみがある場合、以下のような別の原因がないかどうかを調べます。
慢性単純性苔癬の治療
かゆみを緩和し、かいたりこすったりするのをやめさせるための対策
コルチコステロイド
抗ヒスタミン薬
かゆみの原因を特定できる場合は、それを治療します。
強力なコルチコステロイドの軟膏を患部に塗ります。その部分をラップで覆って一晩そのままにしておくことで、コルチコステロイドの軟膏の効果を高めることができます。コルチコステロイドをしみこませた市販のサージカルテープを貼ることで、かゆみと炎症を和らげ、皮膚をかかないよう保護することができます。範囲が狭い場合は、かゆみを抑えるため、長時間作用型のコルチコステロイドを皮下注射することもあります。
抗ヒスタミン薬の内服薬を使用することもあります。保湿剤(皮膚軟化剤)やカプサイシンクリームを患部に塗ることもあります。
肛門や陰部の周辺に発生している場合は、コルチコステロイドクリームによる治療が最適です。