染色体欠失症候群

執筆者:Nina N. Powell-Hamilton, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2020年 6月
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    染色体欠失症候群は,染色体の一部が欠損することによって生じる。重度の先天奇形と有意な知能および身体障害が生じる可能性がある。特定の染色体欠失症候群が生前から疑われる可能性は比較的低いが,他の理由で実施された核型分析の際に偶然発見されることがある。出生後診断では,臨床的な外観から疑い,核型分析(欠失が比較的大きい場合)またはその他の細胞遺伝学手法(蛍光in situハイブリダイゼーションやマイクロアレイ解析など)によって確定する。

    染色体異常症の概要も参照のこと。)

    染色体欠失症候群の典型例には,核型分析で通常観察できる比較的大きな欠失が関与する。1つの染色体上で隣接する複数の遺伝子に影響を及ぼすが核型分析では観察できない比較的小さな欠失(および重複)が関与する症候群は,微小欠失および重複症候群とみなされる。(次世代シークエンシング技術も参照のこと。)

    5p欠失症候群(5p-症候群)

    5番染色体短腕末端部の欠失(5p-,通常は父親由来)は,猫の鳴き声に似た高調の啼泣を特徴とし,この啼泣は一般的に出生直後から聞かれ,数週間継続して消失する。しかしながら,この聴き慣れない啼泣が罹患した全ての新生児で聴かれるわけではない。罹患した新生児には,筋緊張低下がみられ,出生体重が低く,小頭症,両眼が離れた円形の顔貌,眼瞼裂斜下(内眼角贅皮を伴う場合もある),斜視,および広い鼻底が認められる。耳介の位置が低く,形状も異常であり,しばしば外耳道の狭小化と副耳がみられる。しばしば合指症眼間開離,および心奇形もみられる。精神的および身体的発達は著明に遅滞する。患児の多くが成人期まで生存するが,有意な障害がみられる。

    4p欠失症候群(4p-症候群,ウォルフ-ヒルシュホーン症候群)

    4番染色体短腕(4p)の欠失は様々な知的障害を引き起こし,通常,欠失が大きいほど知的障害は重度となる。臨床像としては,てんかん,幅広い鼻稜または鷲鼻,正中部の頭皮欠損,眼瞼下垂およびコロボーマ口蓋裂,骨成長の遅延などがみられ,さらに男児では尿道下裂停留精巣もみられる。一部のウォルフ-ヒルシュホーン症候群には免疫不全もみられる。患児の多くは乳児期に死亡し,20歳代まで生存した患者にはしばしば重度の障害がみられる。

    サブテロメア欠失

    この種の欠失は,核型分析で観察可能な場合もあるが,ときに微小で顕微鏡で観察できないこともあり,いずれのテロメア(染色体の端部)にも起こりうる。表現型の変化は軽微なこともある。サブテロメア欠失は,非特異的な知的障害や軽度の形態異常のほか,複数の先天奇形と関連している可能性がある。

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