新生児の高カルシウム血症

執筆者:Kevin C. Dysart, MD, Nemours/Alfred I. duPont Hospital for Children
レビュー/改訂 2021年 3月
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高カルシウム血症は,血清総カルシウムが12mg/dL(3mmol/L)以上,またはイオン化カルシウムが6mg/dL(1.5mmol/L)以上の状態である。最も頻度の高い原因は医原性のものである。消化管徴候(例,食欲不振,嘔吐,便秘)が起こり,ときに嗜眠または痙攣も発生する。治療には,静注生理食塩水に加えてフロセミド,ときにコルチコステロイド,カルシトニン,ビスホスホネートを用いる。

高カルシウム血症についての一般的な考察も参照のこと。)

病因

新生児の高カルシウム血症の最も一般的な原因は以下の通りである:

  • 医原性

医原性の原因には通常,カルシウムもしくはビタミンDの過剰,またはリン酸欠乏があり,これは調製が不適切な人工乳の長期間の授乳によって引き起こされる。

新生児高カルシウム血症のその他の原因としては以下のものがある:

  • 母体の副甲状腺機能低下症

  • 皮下脂肪壊死

  • 副甲状腺過形成

  • 腎機能異常

  • ウィリアムズ症候群

  • 特発性

母親の副甲状腺機能低下症または母親の低カルシウム血症は,二次的な胎児副甲状腺機能亢進症を引き起こすことがあり,胎児の骨石灰化の変化を伴う(例,骨減少症)。

皮下脂肪壊死は重度外傷後に発生することがあり,通常は自然消失する高カルシウム血症を引き起こす。

新生児の副甲状腺機能亢進症は非常にまれである。

ウィリアムズ症候群の主な特徴としては,大動脈弁上狭窄,肺動脈弁または末梢肺動脈の狭窄,心房中隔欠損症,および/または心室中隔欠損症腎動脈狭窄,大動脈の異常,妖精様顔貌,原因不明の病態生理による高カルシウム血症などがある;患児は在胎不当過小(SGA)となることもあり,また高カルシウム血症は乳児期早期から認められ,通常は生後12カ月までに消失する。

特発性の新生児高カルシウム血症は除外診断により診断し,ウィリアムズ症候群との鑑別は難しく,しばしば遺伝子検査が必要になる。

症状と徴候

新生児の高カルシウム血症の症状および徴候は,血清総カルシウムが12mg/dL(3mmol/L)を超えると認められる。食欲不振,胃食道逆流,悪心,嘔吐,嗜眠または痙攣または全般的な易刺激性,高血圧などが徴候である可能性がある。その他の症候としては,便秘,腹痛,脱水,哺乳不良(feeding intolerance),発育不良などがある。新生児ではときに筋力低下がみられる。皮下脂肪壊死を伴う硬い赤紫色の結節が,体幹,殿部,または下肢に観察されることがある。

診断

  • 血清総カルシウム値または血清イオン化カルシウム値

新生児の高カルシウム血症の診断は,血清総カルシウムまたはイオン化カルシウム値の測定による。

治療

  • 生理食塩水とフロセミド静注

  • ときにコルチコステロイド,カルシトニン,およびビスホスホネート

血清カルシウムの著明な上昇は,生理食塩水20mL/kgの静注に続いてフロセミド2mg/kg静注,長引く場合はコルチコステロイドおよびカルシトニンで治療可能である。ビスホスホネートもまた,このような状況で次第に使用されるようになっている(例,経口でのエチドロン酸またはパミドロン酸の静注)。皮下脂肪壊死の治療には,低カルシウムの人工乳を用い,輸液,フロセミド,カルシトニン,コルチコステロイドは,高カルシウム血症の程度によって適応となれば使用される。

母親の副甲状腺機能低下症による胎児の高カルシウム血症は,通常は数週間で自然に治癒するため,待機的に治療できる。

慢性化した場合の治療法として,低カルシウムおよび低ビタミンDの人工乳がある。

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