細菌性気管炎はあまり多くはみられないが,いずれの年齢の小児でも罹患しうる。 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) ブドウ球菌感染症 ブドウ球菌はグラム陽性好気性細菌である。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は最も病原性が強く,典型的には皮膚感染症を引き起こすほか,ときに肺炎,心内膜炎,骨髄炎を引き起こすこともある。一般的には膿瘍形成につながる。一部の菌株は,胃腸炎,熱傷様皮膚症候群,および毒素性ショック症候群を引き起こす毒素を産... さらに読む および A群β溶血性レンサ球菌 レンサ球菌感染症 レンサ球菌(streptococcus)は,咽頭炎,肺炎,創傷および皮膚感染症,敗血症,心内膜炎など,多くの疾患を引き起こすグラム陽性好気性細菌である。症状は感染臓器により異なる。A群β溶血性レンサ球菌による感染症の続発症としてリウマチ熱と糸球体腎炎がある。ほとんどの菌株はペニシリンに感受性を示すが,最近になってマクロライド耐性株が出現し... さらに読む が最も高頻度に関係する。
ほとんどの小児は,重度の 吸気性喘鳴(stridor) 吸気性喘鳴(stridor) 吸気性喘鳴は,高調な,主に吸気時に生じる音である。 異物誤嚥などの急性の病態と関連することが最も多いが,気管軟化症などの慢性の病態に起因することもある。 クループにおける吸気性喘鳴。 吸気性喘鳴は,胸郭外上気道の狭小化した箇所や部分的に閉塞した箇所を空気の乱流が急速に通り抜ける際に生じる。具体的な部位としては,咽頭,喉頭蓋,喉頭,および胸... さらに読む および 呼吸困難 呼吸困難 呼吸困難とは,不快または苦しさを感じる呼吸である。患者による呼吸困難の感じ方および訴え方は原因によって異なる。 呼吸困難は比較的頻度の高い症状であるが,呼吸に伴う不快感の病態生理はほとんど解明されていない。他の種類の有害な刺激に対する受容器とは異なり,呼吸困難に特化した受容器は存在しない(ただし,MRIを用いた研究では,呼吸困難の知覚を仲... さらに読む を発症する前の1~3日間,ウイルス性呼吸器感染症の症状を呈する。少数の小児では発症が急性であり,その場合は吸気性喘鳴(stridor)と高熱を特徴とし,しばしば多量の膿性分泌物がみられる。まれに,細菌性気管炎がウイルス性 クループ クループ クループは上下気道の急性炎症であり, 1型パラインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされることが最も多い。金属音様で犬吠様の咳嗽と吸気性喘鳴(stridor)を特徴とする。診断は通常臨床的に明白であるが,頸部X線の前後像によっても診断可能である。治療では,解熱薬,水分,霧状のラセミ体アドレナリン,およびコルチコステロイドを投与する。... さらに読む または気管挿管の合併症として発生する。 喉頭蓋炎 喉頭蓋炎 喉頭蓋炎は喉頭蓋および周辺組織において急速に進行する細菌感染症であり,突然の気道閉塞および死亡に至ることもある。症状としては,重度の咽頭痛,嚥下困難,高熱,流涎,吸気性喘鳴などがある。診断には声門上部構造の直接観察が必要であるが,これは十分な呼吸補助が可能になるまで行うべきではない。治療には気道の保護および抗菌薬などがある。... さらに読む を有する患者と同様に,患児に顕著な重症感および急速に進行する呼吸窮迫がみられる場合があり,挿管を要することもある。
細菌性気管炎の合併症には,低血圧,心肺停止,気管支肺炎,および敗血症などがある。声門下狭窄が長期の挿管に続発することはまれである。適切な治療を受けた患児のほとんどが続発症もなく回復する。
診断
直接喉頭鏡
特徴的なX線所見
細菌性気管炎の診断は臨床的に疑われ,直接喉頭鏡検査で膿性分泌物および声門下部の毛羽だった化膿性粘膜を伴う炎症を明らかにするか,または頸部X線(側面像)で声門下の狭小化(クループに典型的にみられる対称的な先細りの狭小化とは対照的に,不規則な場合がある)を明らかにすることによって確定される。必要なら迅速に人工気道で気道を確保できる管理された状況下では,直接喉頭鏡を行うべきである。
治療
十分な気道確保
黄色ブドウ球菌(S. aureus)およびレンサ球菌性敗血症に効果的な抗菌薬
細菌性気管炎の重症例の治療は 喉頭蓋炎 治療 喉頭蓋炎は喉頭蓋および周辺組織において急速に進行する細菌感染症であり,突然の気道閉塞および死亡に至ることもある。症状としては,重度の咽頭痛,嚥下困難,高熱,流涎,吸気性喘鳴などがある。診断には声門上部構造の直接観察が必要であるが,これは十分な呼吸補助が可能になるまで行うべきではない。治療には気道の保護および抗菌薬などがある。... さらに読む の治療と同様であるが,できれば, 気管挿管 気管挿管 人工エアウェイを必要とする患者の多くは,以下のような気管挿管による管理が可能である: 経口気管挿管(口腔から管を挿入する) 経鼻気管挿管(鼻から管を挿入する) ほとんどの場合,経鼻気管挿管よりも経口気管挿管が望ましく,喉頭直達鏡またはビデオ喉頭鏡により施行される( ビデオ喉頭鏡を用いた経口気管挿管を参照)。経口気管挿管は,経鼻気管挿管より... さらに読む は管理された環境下で小児の気道の扱いに長けた医師が実施すべきである。
最初の抗菌薬投与には,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MRSA)を含む黄色ブドウ球菌(S. aureus)およびレンサ球菌属を対象に含めるべきである;経験的にはバンコマイシンおよびセフトリアキソンの静脈内投与が適切となりうる。セフタロリン(ceftaroline)は,単剤療法として,この併用レジメンの妥当な代替薬である。重症(critically ill)の小児の治療は,地域の感受性パターンに精通している医師が行うべきである。起因菌の確定診断がなされれば,抗菌薬療法は対象を狭め10日以上継続する。