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思春期遅発

執筆者:

Andrew Calabria

, MD, The Children's Hospital of Philadelphia

レビュー/改訂 2020年 7月
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思春期遅発は,性的成熟が想定されている時期に起こらないことである。診断は,性腺ホルモン(テストステロンおよびエストラジオール),黄体形成ホルモン,卵胞刺激ホルモンの測定による。治療が必要な場合,通常は特定のホルモンの補充が行われる。

思春期遅発は,体質的遅れに起因することがあり,成長遅滞の家族歴を伴う青年にしばしば起こる。そのような小児はしばしば「おくて(late bloomer)」と呼ばれる。思春期の成長速度は正常であるが,骨成熟および青年期の成長スパートに遅れがみられる;性的成熟は遅滞するが正常である。

その他の原因としては,遺伝性疾患(女児の ターナー症候群 ターナー症候群 ターナー症候群の女児は,2つのX染色体のうち1つが部分的または完全に欠失した状態で出生する。診断は臨床所見に基づき,細胞遺伝学的分析で確定する。治療法は臨床像に応じて異なり,心奇形に対して手術を行うこともあれば,しばしば低身長に対する成長ホルモン療法と思春期発来異常に対するエストロゲン補充を行うこともある。 ( 染色体異常症の概要および 性染色体異常の概要も参照のこと。) ターナー症候群は世界中で出生女児の約1/2500に発生する。しか... さらに読む ターナー症候群 ,男児の クラインフェルター症候群 クラインフェルター症候群(47,XXY) クラインフェルター症候群は,2つ以上のX染色体に加えて1つのY染色体が存在する異常であり,表現型は男性となる。診断は臨床所見に基づき,細胞遺伝学的分析で確定する。治療にはテストステロンの補充を含めることがある。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) クラインフェルター症候群は最も頻度の高い 性染色体異常で,出生男児の約1/500に発生する。過剰なX染色体は60%の症例で母親由来である。胚細胞が精巣内で生存できないため,精子およびアンド... さらに読む クラインフェルター症候群(47,XXY) ),中枢神経系疾患(例,ゴナドトロピン分泌を低下させる視床下部または下垂体の腫瘍),中枢神経系への放射線照射,特定の慢性疾患(例,コントロール不良の 糖尿病 小児および青年における糖尿病 糖尿病にはインスリン分泌の欠乏(1型)または末梢のインスリン抵抗性(2型)が関連し,結果,高血糖が生じる。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および体重減少などがある。診断は血漿血糖値の測定による。治療は病型によって異なるが,血糖降下薬,食事,および運動などである。 (成人の 糖尿病も参照のこと。) 小児の糖尿病の種類は成人のものと同様であるが,心理社会的な問題が異なり,これが治療を複雑にする。... さらに読む 炎症性腸疾患 炎症性腸疾患の概要 炎症性腸疾患(IBD)は,消化管の様々な部位で再燃と寛解を繰り返す慢性炎症を特徴とする病態であり,下痢および腹痛を引き起こし, クローン病と 潰瘍性大腸炎が含まれる。 消化管粘膜における細胞性免疫応答により炎症が生じる。炎症性腸疾患の正確な病因は不明であるが,多因子性の遺伝的素因を有する患者において,腸内常在菌叢が異常な免疫反応を引き起こ... さらに読む ,腎疾患, 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症は,主に消化器系と呼吸器系を侵す外分泌腺の遺伝性疾患である。慢性肺疾患,膵外分泌機能不全,肝胆道疾患,および汗の電解質濃度の異常高値を引き起こす。診断は,新生児スクリーニング検査で陽性と判定された患者または特徴的な臨床的特徴を認める患者において,汗試験を行うか,嚢胞性線維症の原因遺伝子変異を2つ同定することによる。治療は,積極... さらに読む 嚢胞性線維症 ), カルマン症候群 続発性性腺機能低下症 低栄養 低栄養の概要 低栄養は栄養障害の一種である。(栄養障害には栄養過多も含まれる。)低栄養は,栄養素の不十分な摂取,吸収不良,代謝障害,下痢による栄養素の喪失,または栄養必要量の増大(がんや感染症などで起こる)に起因する。低栄養は段階的に進行する;食欲不振による場合にゆっくりと発生することもあれば,ときにがん関連の急速に進行する悪液質による場合のように非常... さらに読む / 摂食障害 摂食障害群に関する序論 摂食障害群では,摂食または摂食に関連する行動に関して,以下のような持続的な障害が認められる: 食物の摂取または吸収を変容させる 身体的健康および/または心理社会的機能を大きく損なう 具体的な摂食障害群としては以下のものがある: 神経性やせ症 さらに読む ,過剰な身体活動(特に女児)などがある(1 総論の参考文献 思春期遅発は,性的成熟が想定されている時期に起こらないことである。診断は,性腺ホルモン(テストステロンおよびエストラジオール),黄体形成ホルモン,卵胞刺激ホルモンの測定による。治療が必要な場合,通常は特定のホルモンの補充が行われる。 ( 男児の思春期, 女児の思春期, 体質性の思春期遅発も参照のこと。) 思春期遅発は,体質的遅れに起因することがあり,成長遅滞の家族歴を伴う青年にしばしば起こる。そのような小児はしばしば「おくて(late... さらに読む )。

総論の参考文献

  • 1.Howard SR, Dunkel L: The genetic basis of delayed puberty.Neuroendocrinology 106(3):283–291, 2018. doi: 10.1159/000481569

症状と徴候

青年は同輩と比べて著しく背が低く,からかわれたりいじめられたりすることがあるため,社会的な問題に対処する上での助けがしばしば必要になる。一般に青年は同輩との違いを気に病むが,男児は女児と比べて,低身長と思春期遅発に起因する精神的ストレスおよび羞恥を感じる可能性がより高いようである。

思春期遅発の考えられる原因の臨床像

考えられる慢性疾患の徴候には,成長の急激な変化,低栄養,発達の不整合(例,陰毛は生えるが乳房の発達はない),または思春期の発達の停滞(思春期は開始するものの,正常に進行しない)などがある。

神経症状(例,頭痛,視覚の異常),多飲,および/または 乳汁漏出 乳汁漏出症 乳汁漏出症は,男性または授乳していない女性での乳汁分泌である。一般にプロラクチンを分泌する下垂体腺腫が原因である。診断はプロラクチンの測定および画像検査による。治療はドパミン作動薬による腫瘍の抑制であり,ときに腺腫の切除または破壊が行われる。 乳汁漏出症では母乳の分泌がみられる。 乳頭分泌物一般に関する考察は,別の箇所で行っている。 プロラクチンは,下垂体前葉細胞の約30%を占めるラクトトロフという細胞で産生される。ヒトにおけるプロラク... さらに読む は中枢神経系の疾患を示唆している可能性がある。嗅覚低下または 嗅覚脱失 嗅覚脱失 嗅覚脱失は嗅覚の完全消失である。嗅覚低下は嗅覚の部分的消失である。片側性の場合,嗅覚脱失はしばしば認識されない。 大半の嗅覚脱失患者は,塩味,甘味,酸味,および苦味の物質の正常な知覚を有するが,嗅覚に大きく依存する風味の識別能力が欠如する。そのため,患者はしばしば味覚の欠如(味覚脱失)および食事を楽しめないことを訴える。 嗅覚脱失は,鼻腔内の腫脹または他の閉塞が匂いの嗅覚野への伝達を妨げる場合;嗅上皮が破壊された場合;または嗅糸,嗅球,... さらに読む はカルマン症候群を示唆している可能性がある。

診断

  • 臨床基準

  • テストステロンまたはエストラジオール,黄体形成ホルモン(LH),および卵胞刺激ホルモン(FSH)の測定

  • 画像検査

  • 遺伝子検査

思春期遅発の初回評価では,思春期発達,栄養状態,および成長に関する徹底的な病歴聴取と身体診察を行うべきである。所見に応じて,成長の遅れのその他の原因について以下のような臨床検査を検討すべきである:

  • 甲状腺機能低下症(例,甲状腺刺激ホルモン,サイロキシン)

  • 腎疾患(例,電解質,クレアチニン値)

  • 炎症性疾患および免疫疾患(例,抗組織トランスグルタミナーゼ抗体,赤沈,C反応性タンパク[CRP])

  • 血液疾患(例,白血球分画を含む血算)

思春期遅発の基準

女児では,以下のうち1つが認められる場合,思春期遅発が診断される:

  • 13歳までに乳房の発達がない

  • 乳房の成長の開始から初経までに3年以上かかっている

  • 16歳までに月経が起こらない

男児では,以下のうち1つが認められた場合,思春期遅発が診断される:

  • 14歳までに精巣の増大がない

  • 性器の成長の開始から完了までに5年以上かかっている

低身長,成長速度の低下,またはその両者は男女において思春期遅発を示唆することがある。多くの小児で,過去に比べて早い時期に思春期が開始していると考えられるが,思春期遅発の基準を変えるべき根拠はない。

ホルモン検査

LH,FSH,およびテストステロンまたはエストラジオール値が測定される。LHおよびFSHは下垂体から分泌されるゴナドトロピンであり,性ホルモンの産生を刺激する。LHおよびFSHの値の測定は,最も有用な初期検査である(原発性無月経の評価 原発性無月経の評価[a] 原発性無月経の評価[a] のアルゴリズムも参照)。

血清LHおよびFSH高値は以下を意味する:

そのような症例では,核型分析を行い,男児では クラインフェルター症候群 クラインフェルター症候群(47,XXY) クラインフェルター症候群は,2つ以上のX染色体に加えて1つのY染色体が存在する異常であり,表現型は男性となる。診断は臨床所見に基づき,細胞遺伝学的分析で確定する。治療にはテストステロンの補充を含めることがある。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) クラインフェルター症候群は最も頻度の高い 性染色体異常で,出生男児の約1/500に発生する。過剰なX染色体は60%の症例で母親由来である。胚細胞が精巣内で生存できないため,精子およびアンド... さらに読む クラインフェルター症候群(47,XXY) ,女児では ターナー症候群 診断 ターナー症候群の女児は,2つのX染色体のうち1つが部分的または完全に欠失した状態で出生する。診断は臨床所見に基づき,細胞遺伝学的分析で確定する。治療法は臨床像に応じて異なり,心奇形に対して手術を行うこともあれば,しばしば低身長に対する成長ホルモン療法と思春期発来異常に対するエストロゲン補充を行うこともある。 ( 染色体異常症の概要および 性染色体異常の概要も参照のこと。) ターナー症候群は世界中で出生女児の約1/2500に発生する。しか... さらに読む 診断 の有無を確認すべきである。核型が正常である場合,重度の思春期遅発がある女児では, 原発性卵巣機能不全 診断 原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で,血中ゴナドトロピン(特に卵胞刺激ホルモン[FSH])値が高いにもかかわらず,排卵が規則的に起こらず,卵巣が十分な性ホルモンを産生しない。診断はFSHおよびエストラジオール値の測定による。典型的には,治療はエストロゲン-プロゲストーゲン併用療法による。 原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で卵巣の正常な機能が停止する。この疾患は,以前は早発卵巣不全または早発閉経と呼ばれていたが,原発性卵巣機... さらに読む のその他の原因を調べるべきである。

低身長で思春期発達の遅れがみられる小児において,FSHおよびLH低値に加え,テストステロンおよびエストラジオール低値がみられる場合は,以下の可能性がある:

現在利用できるテストステロンおよびエストラジオール値の検査では,思春期早期の値と思春期前の値を常に区別できるわけではない。 体質性の思春期遅発 続発性性腺機能低下症 は,男児で診断されることがより多いが,これは,青年期の男児が仲間と比べて成熟速度が遅い場合,よりストレスを感じやすく,評価のために来院する可能性が高いことが一因である。体質性の思春期遅発と低ゴナドトロピン性性腺機能低下症との鑑別は難しいことがある。慢性疾患による栄養不良のためにゴナドトロピン放出ホルモンの放出が妨げられている場合も,思春期遅発を来す場合がある。1~2コースのテストステロン短期療法への反応がない場合,永続的な低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の可能性が高まる。低ゴナドトロピン性性腺機能低下症は単独の場合もあれば他のホルモン欠損症を合併している場合もあるため,下垂体疾患が疑われる例では他の下垂体ホルモンの値を測定すべきである。

画像検査

成長が異常な場合は,最初にX線検査による骨年齢の評価を行うべきである。骨年齢は従来から,左手のX線検査で判定され,それによりどの程度成長の余地が残されているかを推定し,成人身長を予測することができる。

MRIによる下垂体の評価は,低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の疑いがある患者において腫瘍および構造的異常を除外するために適応となることがある。

遺伝子検査

治療

  • ホルモン療法

男児に思春期発達の徴候がみられない,または14歳までに11~12歳以上の骨成熟の徴候がみられない場合,低用量テストステロンエナント酸エステルまたはシピオン酸テストステロン(testosterone cypionate)50~100mg,月1回筋注の4~6カ月コース投与を行う。このような低用量ではある程度の男性化を伴う思春期が誘発される一方で,成人身長まで伸びる潜在力も確保される。このコース終了後,治療を中止しテストステロン値を数週~数カ月後に測定する;これが思春期の値に上昇していれば,永続的な欠損ではなく一次的な欠乏であることが示唆される。この治療終了後にテストステロン値が最初の値より高くないかつ/または思春期の発達が続かない場合,低用量投与による2回目のコースを行うこともある。2つの治療コース後,内因性思春期が始まらない場合,永続的な欠損の可能性が高く,性腺機能低下症の他の原因について再評価する必要がある。永続的な性腺機能低下症の場合,テストステロンの用量を18~24カ月かけて漸増し,成人の補充用量にもっていく(小児における男性性腺機能低下症の治療 治療 男性性腺機能低下症は,テストステロン,精子,またはその両方の産生の減少,またはまれにテストステロンに対する反応の低下であり,結果として 思春期遅発,生殖不全またはその両方が生じる。診断は,テストステロン,黄体形成ホルモン,卵胞刺激ホルモンの血清中濃度の測定およびヒト絨毛性ゴナドトロピンまたはゴナドトロピン放出ホルモンによる刺激試験により行われる。治療は原因に応じて異なる。 (成人における... さらに読む を参照)。

女児では,原因に応じて異なるが,思春期を誘発するためホルモン療法が行われたり,場合によっては(例,ターナー症候群)長期的な補充が必要になる場合がある。エストロゲンの補充にはピルまたはパッチを使用し,18~24カ月かけて用量を漸増する。その後,エストロゲンとプロゲスチンを配合した経口避妊薬による長期治療に移行できる。

要点

  • 思春期遅発は,体質性の遅れの場合もあれば,様々な遺伝性疾患および後天性疾患に起因する場合もある。

  • テストステロンまたはエストラジオール,黄体形成ホルモン,および卵胞刺激ホルモンを測定する。

  • 初期評価の一環として,X線検査による骨年齢の評価を行う。

  • 原因を診断するために下垂体画像検査および遺伝学的検査が行われることがある。

  • 思春期誘発のため,または長期補充療法として,ホルモン療法が適応となることがある。

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