在胎期間 在胎期間 在胎期間と 成長パラメータは,新生児の病態のリスクを同定するのに役立つ。在胎期間は器官成熟の第1の決定因子である。 在胎期間は,大まかには,最後の正常な月経がみられた日から分娩日までの週数として定義されている。より正確には,在胎期間は受胎日の14日前から分娩日までの期間を指す。在胎期間は実際の胎齢とは異なるが,産科医および新生児専門医が胎... さらに読む は,大まかには,最後の正常な月経がみられた日から分娩日までの週数として定義されている。より正確には,在胎期間は受胎日の14日前から分娩日までの期間を指す。在胎期間は実際の胎齢とは異なるが,産科医および新生児専門医が胎児の成熟を議論する上での世界共通の基準となっている。
Fenton成長曲線により,在胎期間に対するより正確な発育の評価が可能になる( Professional.see figure 早産男児のFenton成長曲線 早産男児のFenton成長曲線 および Professional.see figure 早産女児のFenton成長曲線 早産女児のFenton成長曲線 )。
早産男児のFenton成長曲線
Fenton T, Kim J: A systematic review and meta-analysis to revise the Fenton growth chart for preterm infants. BMC Pediatrics 13:59, 2013.doi: 10.1186/1471-2431-13-59; used with permission.Available at www.biomedcentral.com. |
早産女児のFenton成長曲線
Fenton T, Kim J: A systematic review and meta-analysis to revise the Fenton growth chart for preterm infants. BMC Pediatrics 13:59, 2013.doi: 10.1186/1471-2431-13-59; used with permission.Available at www.biomedcentral.com. |
病因
遺伝的要因以外で,在胎不当過大児(LGA児)となる主な原因は 母体糖尿病 妊娠中の糖尿病 妊娠は,既存の1型(インスリン依存性)および2型(インスリン非依存性) 糖尿病を増悪させるが,糖尿病網膜症,腎症,または神経障害を悪化させることはないようである( 1)。 妊娠糖尿病(妊娠中に始まる糖尿病[ 2])は,過体重,高インスリン血症,インスリン抵抗性の妊婦,またはやせ型,相対的にインスリンの不足している妊婦に発生しうる。妊娠糖尿病は全妊娠の少なくとも5%に起こるが,特定の集団(例,メキシコ系アメリカ人,アメリカンインディアン,... さらに読む である。体が大きいことは,在胎中に母体の過剰な血糖に反応して生じる胎児の高インスリン状態による同化作用の結果である場合や,ときに尿中へのグルコース排出を補うための母親によるカロリー摂取増加の結果である場合がある。妊娠中の母体糖尿病のコントロールが不良であるほど,胎児の体は大きくなる。
巨大児のまれな原因には,ベックウィズ-ヴィーデマン症候群(巨大児,臍帯ヘルニア,巨舌症,および低血糖を特徴とする),Sotos症候群,Marshall症候群,およびWeaver症候群がある。
症状,徴候および治療
LGA児は大きく,肥満で,多血である。5分時の アプガースコア アプガースコア 出生の過程には広範な 生理的変化を伴うため,ときに子宮内での生活中には問題とはならなかった状態が明らかになる場合がある。そのため,全ての出産に新生児蘇生の技能を有する人物の立ち会いが必要である。 在胎期間と 成長パラメータは,新生児の病態のリスクを同定するのに役立つ。 新生児の約10%は,分娩時に何らかの呼吸補助を必要とする。新生児の1%未満が,より包括的な蘇生を必要とする。出生時に蘇生を必要とする抑制の原因は数多くある(... さらに読む は低いことがある。このような乳児は元気がなく,だらりとしており,哺乳不良を呈することがある。分娩合併症はどのLGA児でも起こる可能性がある。先天異常ならびに一部の代謝性および心合併症は,母体糖尿病のLGA児に特異的である。
分娩合併症:
新生児の体が大きいために経腟分娩が困難となる場合があり,ときに 分娩損傷 分娩損傷 分娩時の力により,ときに新生児に身体的損傷が引き起こされる。難しい回転術, 吸引分娩, 中位鉗子分娩または高位鉗子分娩に代わり 帝王切開を用いることが増えているため,困難な分娩または外傷を引き起こしうる分娩に起因する新生児の損傷発生率は低下している。 新生児が 在胎期間に対して大きい場合( 母体糖尿病に関連する場合がある)や, 骨盤位や他の異常胎位である場合(特に初産婦において)などに,外傷のリスクが上昇する。... さらに読む が生じる;特に以下がみられる:
周産期仮死
他の合併症は体重が4000g以上の場合起こる。以下により,罹病率および死亡率が比例的に上昇する:
糖尿病母体児(IDM):
糖尿病母体児には以下のリスクがある:
低カルシウム血症 新生児低カルシウム血症 低カルシウム血症は,血清総カルシウムが正期産児で8mg/dL(2mmol/L)未満,または早期産児で7mg/dL(1.75mmol/L)未満の状態である。イオン化カルシウム値3.0~4.4mg/dL(0.75~1.10mmol/L)未満と定義されることもあり,閾値は使用する方法(電極の種類)によって変動する。徴候は主に神経系のもので筋緊張低下,無呼吸,およびテタニーなどである。治療は,静注または経口でのカルシウム補充である。... さらに読む および 低マグネシウム血症 低マグネシウム血症 低マグネシウム血症とは,血清マグネシウム濃度が1.8mg/dL(0.70mmol/L)未満となった状態である。原因には,マグネシウムの摂取不足および吸収不足や,高カルシウム血症またはフロセミドなどの薬物による排泄増加がある。臨床的特徴はしばしば随伴する低カリウム血症や低カルシウム血症によるものであり,嗜眠,振戦,テタニー,痙攣,不整脈がある。治療はマグネシウムの補充による。 (... さらに読む
特定の先天異常
高インスリン状態,および臍帯切断によって母体からのブドウ糖供給が突然絶たれるため,出生後最初の数時間に 低血糖 新生児の低血糖 新生児における低血糖の定義は困難であるが,症状のある正期産児では一般に血清血糖値40mg/dL(2.2mmol/L)未満,生後24~48時間の無症状の正期産児では,45mg/dL(2.5mmol/L)未満,生後48時間以内の早期産児では30mg/dL(1.7mmol/L)未満とされる。危険因子として,未熟性,在胎不当過小児(SGA児),母体糖尿病,および周産期仮死などが挙げられる。最も頻度の高い原因は,グリコーゲン貯蔵の不足,授乳遅延と... さらに読む が生じる可能性が非常に高い。出生前に母体糖尿病を綿密に管理し,早期に頻回の哺乳を行うことによって,新生児低血糖を低減できる。生後24時間は,ベッドサイドでの検査により血糖値を注意深くモニタリングすべきである。まず40%グルコースゼリーによる経口治療を試みることもあるが,低血糖が持続する場合は,ブドウ糖の静脈内投与を行う。
低カルシウム血症 新生児低カルシウム血症 低カルシウム血症は,血清総カルシウムが正期産児で8mg/dL(2mmol/L)未満,または早期産児で7mg/dL(1.75mmol/L)未満の状態である。イオン化カルシウム値3.0~4.4mg/dL(0.75~1.10mmol/L)未満と定義されることもあり,閾値は使用する方法(電極の種類)によって変動する。徴候は主に神経系のもので筋緊張低下,無呼吸,およびテタニーなどである。治療は,静注または経口でのカルシウム補充である。... さらに読む および 低マグネシウム血症 低マグネシウム血症 低マグネシウム血症とは,血清マグネシウム濃度が1.8mg/dL(0.70mmol/L)未満となった状態である。原因には,マグネシウムの摂取不足および吸収不足や,高カルシウム血症またはフロセミドなどの薬物による排泄増加がある。臨床的特徴はしばしば随伴する低カリウム血症や低カルシウム血症によるものであり,嗜眠,振戦,テタニー,痙攣,不整脈がある。治療はマグネシウムの補充による。 (... さらに読む が起こる可能性があるが,通常一過性かつ無症候性である。出生前の血糖管理が良好な場合,新生児低カルシウム血症のリスクは低下する。低カルシウム血症の臨床徴候を認めるか,正期産児で血清総カルシウム値が7mg/dL(1.75 mmol/L)未満またはイオン化カルシウム値が4mg/dL(1 mmol/L)未満の場合を除いて,低カルシウム血症は一般に治療を要しない。イオン化カルシウム値は利用可能なカルシウムをより正確に反映するため,治療はイオン化カルシウム値に基づくべきである。治療は通常,グルコン酸カルシウムを静脈内投与で補給する。低マグネシウム血症は副甲状腺ホルモンの分泌を妨げることがあるため,マグネシウムの値が是正されるまで低カルシウム血症が治療に反応しない可能性がある。
赤血球増多 周産期の赤血球増多症および過粘稠度症候群 赤血球増多症とは赤血球量の異常な増加(新生児では静脈血ヘマトクリットが65%以上と定義される)であり,血管内の血液の泥化(sludging),およびときに血栓を伴う過粘稠につながることがある。新生児赤血球増多症の主な症候は非特異的であり,赤味がかった皮膚,哺乳困難,嗜眠,低血糖,高ビリルビン血症,チアノーゼ,呼吸窮迫,および痙攣などがある。診断は臨床的に,かつ動脈血または静脈血のヘマトクリット測定により行う。治療は部分交換輸血による。... さらに読む 症は,糖尿病母体児でみられることがやや多い。インスリン値上昇により胎児の代謝が亢進するため,酸素消費量が増大する。胎盤が酸素消費量増大に対応できない場合,胎児低酸素血症が起こり,エリスロポエチン増加を誘発しそのためヘマトクリットも上昇する。
高ビリルビン血症 新生児高ビリルビン血症 黄疸とは,高ビリルビン血症(血清ビリルビン濃度の上昇)が原因で皮膚および眼球が黄色く変色することである。黄疸を発生させる血清ビリルビン値は,皮膚の色調および体の部位によって異なるが,通常,2~3mg/dL(34~51μmol/L)で強膜に,約4~5mg/dL(68~86μmol/L)で顔面に黄疸が認められるようになる。ビリルビン値が上昇す... さらに読む はいくつかの原因から生じる。糖尿病母体児は,生後数日間にわたり経口での栄養摂取に耐えられないことが多く(特に早期産の場合),そのためビリルビンの腸肝循環が増大する。また赤血球増多症がある場合,ビリルビン負荷が増大する。
呼吸窮迫症候群 新生児呼吸窮迫症候群 呼吸窮迫症候群は,新生児の肺における肺サーファクタントの欠乏によって引き起こされ,在胎37週未満で出生した新生児で最もよくみられる。リスクは未熟性の程度に伴い上昇する。症状と徴候としては,呻吟呼吸,呼吸補助筋の使用,鼻翼呼吸などがあり,出産後すぐに出現する。診断は臨床的に行われ,胎児肺成熟度の検査により出生前のリスク評価が可能である。治療は,サーファクタント療法および支持療法による。... さらに読む (RDS)の発生は,インスリン値の上昇によりサーファクタント産生が減少することによる;肺成熟が在胎後期まで遅延しうる原因でもある。RDSは,後期早産児または正期産児でも発生する可能性がある。 呼吸窮迫症候群の治療 糖尿病母体児(IDM): については本マニュアルの別の箇所で考察されている。
新生児一過性多呼吸 糖尿病母体児(IDM): は,胎児の肺液排出遅延のため,糖尿病母体児でみられる可能性が2~3倍高い。
先天異常は,器官発生時の母体高血糖が有害であることから,糖尿病母体児で起こる可能性が高い。特異的な異常としては以下のものがある:
尾部退行症候群(caudal regression syndrome)
small left colon syndrome
また持続的なインスリン値上昇によって,心筋細胞でのグリコーゲンおよび脂肪の沈着が増加する可能性がある。この沈着によって,一過性の心筋肥大が主に中隔に起こりうる。
要点
母体糖尿病が在胎不当過大児の主な原因である。
体が大きいこと自体が分娩損傷(例,鎖骨骨折または四肢長管骨骨折)および周産期仮死のリスクを増大させる。
糖尿病母体児では,低血糖,低カルシウム血症,および赤血球増多症などの代謝性合併症が分娩直後にみられる可能性がある。
糖尿病母体児には,呼吸窮迫症候群および先天異常のリスクがある。
母体血糖値の良好な管理によって,合併症リスクが最小となる。