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ALTEおよびBRUE

(Brief, Resolved, Unexplained Event)

執筆者:

Christopher P. Raab

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2019年 5月
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乳幼児突発性危急事態(apparent life-threatening event:ALTE)およびBRUE(brief, resolved, unexplained event)は,具体的な疾患ではなく,乳児に生じる一群の緊急症状を指す用語である。呼吸器症状(例,無呼吸),皮膚色や筋緊張の変化,および/または反応性の変化の突然の出現を伴う。養育者は子どもが死亡している,あるいは瀕死の状態であると恐れる。典型的には1歳未満の小児に起こり,発生のピークは生後10~12週である。原因不明のもの(BRUEに分類されるもの)もあるが,消化管,神経,呼吸器,感染,心臓,代謝,または外傷性(例,虐待によるもの)の疾患など考えられる多数の原因によるものもある。もし同定された場合,特異的原因に対して治療を行う。

呼吸,意識,筋緊張,および/または皮膚色がいくつか組み合わさって養育者に危急を告げるほど―保育者の中には心肺蘇生(CPR)を開始するほど,変化する一過性の事象が乳児に起こることがある。不安を抱かせる症候であることから,このような事象は「乳幼児突発性危急事態(ALTE)」と称されている。しかし,このような乳児のごく少数には重大な基礎疾患があることが判明するものの,大多数は再発することも合併症がみられることもなくそのまま正常に発達する。ゆえに,米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)による最近の診療ガイドラインでは,親を不必要に脅さず,多くの症例で必要のない広範な検査をしなくてはならないと医師が思わないよう,「生命を脅かす(life-threatening)」という用語を排除することを推奨している。新しい用語は「brief, resolved, unexplained event(BRUE)」である。

BRUEとは,1歳未満の乳児において以下の徴候の1つ以上を伴い持続は1分未満の事象を指す:

  • 呼吸休止,低呼吸,または不規則呼吸

  • チアノーゼまたは蒼白

  • 反応レベルの変化

  • 筋緊張の著明な変化(過緊張または低緊張)

また,乳児は他の点では健康にみえ,診察時には元の健康状態に戻っていることが必要である。よって,発熱,咳嗽,または何らかの苦痛の徴候もしくは他の異常がある乳児は,BRUE疑い例とは考えられない。

BRUEという用語は,基礎的原因が何もない(つまり「説明できない」)事象にのみ適用されるもので,徹底的な病歴聴取と身体診察およびときに検査後に初めてそう言えることに留意する必要がある。また,原因が特定されていた乳児が同様の症候を呈した場合にもBRUEは適用されないため,このような乳児にはALTEという用語が有用であると考える医師もいる。

病因

定義により,事象を説明しうる状況が何もない場合のみBRUEと診断されるものの,いくつかの疾患が呼吸,反応性,筋緊張,および/または皮膚色の同様の異常で顕在化する。したがって原因の検索が重要である。

最も頻度の高い原因としては以下のものがある:

比較的まれな原因としては以下のものがある:

原因は遺伝性または後天性のこともある。乳児の養育者が1人の場合で,明らかな病因がなくエピソードが反復する場合は,小児虐待を考慮すべきである。

評価

BRUEとして定義された症状・徴候以外の症状・徴候(例, 咳嗽 小児の咳嗽 咳嗽は,気道からの分泌物除去を助け,異物誤嚥から気道を保護し,疾患の症状にもなりうる1つの反射である。咳嗽は,親が子を受診させる最も多い愁訴の1つである。 咳嗽の原因は,症状が急性(4週間未満)か慢性(4週以上)かによって異なる。( 小児における咳嗽の主な原因の表を参照のこと。)... さらに読む 発熱 乳児および小児の発熱 正常体温は,人によってまた1日を通しても異なる。正常体温は就学前の年齢の小児で最も高い。体温は午後にピークに達する傾向があり,生後約18~24カ月で最も高く,この月齢の正常かつ健康な小児では多くの場合38.3℃であることが複数の研究で示されている。しかし発熱とは,通常,38.0℃以上の深部体温(直腸温)と定義されている。... さらに読む 悪心および嘔吐 乳児および小児における悪心・嘔吐 悪心とは嘔吐が今にも起こりそうな感覚で,心拍数増加や唾液分泌亢進などの自律神経系の変化をしばしば伴う。典型的には悪心と嘔吐は続いて起こるが,別々に起こることもある(例,頭蓋内圧亢進により,悪心が先行せず嘔吐が起こりうる)。 嘔吐は不快であり,水分が失われかつ経口による水分補給が制限されるため,脱水を引き起こしうる。... さらに読む 痙攣 新生児痙攣 新生児痙攣は,新生児の中枢神経系において異常な放電が生じる現象であり,通常は定型的な筋活動または自律性運動の変化として現れる。診断は脳波検査により確定され,原因を調べるための検査が適応となる。治療は原因に応じて異なる。 ( Professional.See also heading... さらに読む )を有する乳児の評価については,本マニュアルの別の箇所に記載されている。

病歴

初期評価では以下のような徹底的な病歴聴取を行う:

退避は,一部には家族の能力とリソースによって決まるため,住居および家族状況,養育者の心配の程度,ならびにフォローアップのため医療機関をすでに受診しているか評価することが重要である。

身体診察

リスク分類

BRUE疑診例は,病歴と身体診察に基づいて低リスクまたは高リスクに分類される。

以下の基準を満たす場合,低リスクの乳児とする:

  • 年齢 > 60日

  • 在胎期間 > 32週および受胎後期間 > 45週

  • 初めての発症,BRUEの既往がない,家族性がない

  • 訓練を受けた医療提供者による心肺蘇生を必要としない

  • 懸念される病歴を認めない(例,小児虐待の懸念,突然死の家族歴)

  • 正常な身体所見(例,発熱なし,正常血圧)

低リスク例には重篤な基礎疾患がある可能性が非常に低く,新しいガイドラインは養育者の教育以外の介入をほとんどまたは全く推奨していない。

低リスクの基準を満たさない乳児全例が高リスクの乳児に含まれる。新しいガイドラインには,高リスク例の評価および管理についての推奨が記載されていない。

検査

低リスクの乳児に対し,新しいガイドラインは最小限の検査を推奨している。救急診療部または医院で乳児を短期間観察し(パルスオキシメトリーによるモニタリングなど),12誘導心電図検査を行い,百日咳の確認のため鼻咽頭拭い液の検査(培養またはPCR)を行うことは妥当である。画像検査および血液検査など,他の検査は必要ではない。ルーチンの入院も必要ではないが,養育者の不安が強いか保育者が24時間中に乳児をフォローアップに連れて来られない場合,呼吸循環モニタリングのため乳児を入院させることもある。

高リスクの乳児には,臨床検査および画像検査を行い可能性のある原因を検索する。ルーチンに行われる検査もあれば,乳児にまだ症状がみられるか,または医学的介入が必要であるかなど,臨床上の疑い( Professional.see table 高リスク例の診断検査 高リスク例の診断検査 高リスク例の診断検査 )に基づいて行うべき検査もある。乳児はしばしば呼吸循環モニタリングのため入院するが,蘇生を必要とした場合または評価により何らかの異常が検出された場合は特に入院することが多い。

予後

高リスクの事象の予後は原因に依存する。例えば,原因が重篤な神経疾患の場合,死亡リスクは高くなる。原因が同定されない場合,そのような事象とSIDSとの関係は不明である。SIDSにより死亡した乳児の約4~10%にはそのような事象の病歴があり,2回以上みられた乳児のSIDSリスクは高くなる。また,事象を経験した乳児は,SIDSで死亡した乳児と同じ特徴を多く共有する。しかし,ALTEの発生率はSIDSの発生率とは異なり,Safe to Sleep® campaignに応じた低下はみられていない。

ALTE自体による発達への長期的影響はないようであるが,原因疾患(例,心臓または神経疾患)は影響を及ぼす可能性がある。

治療

  • 原因の治療

  • ときに在宅モニタリング装置

  • 綿密なフォローアップ

低リスクの乳児

親および養育者には,BRUEについて教育を受けさせ,乳児CPRおよび安全な保育についての訓練を勧めるべきである。在宅呼吸循環モニタリングは必要ではない。乳児は24時間以内に再評価を受けるべきである。

高リスクの乳児

原因が同定された場合は治療する。

親および養育者が無呼吸モニタリング装置に関心があり使用する能力があると思われる場合,その処方を受け,ある一定の期間家庭で使用することもある。モニターはイベントレコーダーが付属したものであることが望ましい。親にはモニターの使用法を教え,警報が誤って鳴ることが多いこと,在宅モニタリングは死亡率を低下させるとは示されていないことを忠告すべきである。またタバコ煙への曝露を排除する必要がある。

入院しなかった乳児は,24時間以内にかかりつけのプライマリケア医によるフォローアップを受けるべきである。

要点

  • 乳児には,呼吸,意識,筋緊張,および/または皮膚色の変化を伴う,一過性の危急的事象が起こることがある。

  • 事象は,病歴と身体診察に基づいて低リスクまたは高リスクに分類される。

  • 低リスクの基準を満たす事象は危険な原因がある可能性は低く,最小限の評価しか必要としない。

  • 徹底的な病歴聴取および診察後,事象の原因が不明な場合のみ,BRUEとする。

  • 高リスクの事象には可能性のある多数の原因があるが,しばしば病因はみつからない。

  • 呼吸器疾患,神経疾患,感染症,心疾患,代謝性疾患,および消化管疾患のほか虐待も考慮すべきであり,臨床所見に基づいて検査を行う。

  • 予後は原因に依存する;神経疾患のある小児,2回以上の既往がある小児,非偶発的な外傷がみられた小児,生後6カ月以上で事象の持続時間が長く,特に心疾患を有する小児では死亡リスクが高い。

  • 診察所見または検査結果が異常であるか,または介入を要したあるいは気がかりな病歴がある小児は入院させる。

  • 治療は原因に照準を当てて行う;在宅モニタリングを行うこともあるが死亡を減少させるとは示されていない。

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