抜歯後の問題は,歯科的緊急事態の一種であり迅速な治療を必要とする。具体的には以下のものがある:
腫脹および疼痛
出血
歯槽骨炎
骨髄炎
顎骨壊死
腫脹および疼痛
出血
抜歯後出血は,通常,小血管に生じる。抜歯窩から外へ出ている血餅は全てガーゼで除去し,4インチ(10.16cm)のガーゼのパッド(折りたたんだもの)またはティーバッグ(これはタンニン酸を含んでいる)を抜歯窩上に置く。その後,患者にそれを1時間ほど噛んで継続的な圧をかけるように指示する。この処置は2回または3回繰り返さなければならないことがある。患者には血餅の形成が妨げられないように,最低1時間は待ってから抜歯部位を確認するよう指示する。また,数滴の血液が口中の唾液で希釈されると,実際の出血より多量に感じられると伝える。
もし出血が続くならば,抜歯部位に1:100,000で希釈したアドレナリン添加2%リドカインによる神経ブロックまたは局所浸潤麻酔で処置を行う場合がある。次に抜歯窩を掻爬し既存の血餅を除去して骨をきれいにし,生理食塩水で洗浄する。そして適度な張力で抜歯部位を縫合する。酸化セルロース,ゼラチンスポンジに含ませた局所トロンビン,または細線維コラーゲンなどの局所止血薬を縫合前に抜歯窩に入れることもある。
ほとんどの場合,抗凝固薬(例,アスピリン,クロピドグレル,ワルファリン,直接作用型経口抗凝固薬)を服用している患者は,歯科手術前にそれらを中止する必要はない(2)。併存疾患により出血のリスクが高い患者またはより広範な処置を受ける患者では,抗血小板薬または抗凝固薬の投与タイミングまたは24~48時間の短期間の治療中断について主治医と相談する必要がある。
抜歯後歯槽骨炎(ドライソケット)
抜歯後歯槽骨炎は,抜歯窩の血餅が溶解した場合に,むき出しの骨から生じる疼痛である。この状態は自然治癒するが,かなり強い痛みが生じ,通常は何らかの介入が必要となる。喫煙者と経口避妊薬使用者においてはるかに高頻度にみられ,主に下顎大臼歯,通常は智歯の抜歯後に生じる。典型例では,疼痛は術後2日または3日目に始まり,耳にまでおよび,数日から何週間にもわたって続く。
抜歯窩は生理食塩水で洗浄すべきである(クロルヘキシジンは掻爬にのみ使用できる)。疼痛緩和に対しては,局所麻酔薬のゲルを塗布するか,局所麻酔薬を注射することが可能である。症状緩和のための別の選択肢として,ユージノール(鎮痛薬)をしみ込ませた,または2.5%リドカインや0.5%テトラカインなどの麻酔軟膏をつけた1~2インチ(2.5~5cm)のヨードホルムガーゼ片を抜歯窩に置く処置がある(3)。ガーゼを除去して2~3時間経過しても症状が再発しなくなるまで,ガーゼを1~3日毎に交換する。最近では,市販のブタンベン(麻酔薬),ユージノール,およびヨードホルム(抗菌薬)の配合剤が,より一般的に使用されるようになってきている。この配合剤は吸収されないが,数日後に抜歯窩から自然に洗い流される。これらの処置により通常は鎮痛薬の全身投与の必要性が無くなるが,さらなる痛みの緩和が必要な場合は,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を投与することがある。24時間以内に歯科医師によるフォローアップが必要である。
骨髄炎
まれに歯槽骨炎と混同される骨髄炎,は,発熱,局所の圧痛,腫脹の有無で鑑別する。症状が1カ月以上続く場合は,骨髄炎の診断につながる所見である腐骨(すなわち,限局した領域の壊死骨)を専用の歯科X線またはCTで検索すべきである。骨髄炎には,グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に効果がある抗菌薬の長期投与と,モニタリングおよび/または根治ケアを目的とする口腔外科医への紹介が必要である。
Image courtesy of Byron (Pete) Benson, DDS, MS, Texas A&M University Baylor College of Dentistry.
顎骨壊死
顎骨壊死は,上顎骨または下顎骨の持続性の露出を伴う口腔病変であり,通常は疼痛,歯の動揺,および排膿で発症する。顎骨壊死は抜歯後に発生することがあるが,外傷や頭頸部の放射線療法の後に発生することもある。
薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)は,骨吸収抑制薬の使用と顎骨壊死の間に発見された関連に基づく疾患概念である。そのような薬剤としては骨吸収抑制薬(例,ビスホスホネート,デノスマブ)や血管新生阻害薬(例,シロリムス,ベバシズマブ)などがある。臨床経過は顎骨壊死のそれと類似するが,MRONJは必ずしも抜歯やその他の口腔外科処置に先行して発生するわけではない。
顎骨壊死の治療は容易ではないが,典型的には緩和療法,限局的掻爬,抗菌薬投与,および含嗽が行われる。
参考文献
1.Lockhart PB, Tampi MP, Abt E, et al.Evidence-based clinical practice guideline on antibiotic use for the urgent management of pulpal- and periapical-related dental pain and intraoral swelling: A report from the American Dental Association. J Am Dent Assoc.2019;150(11):906-921.e12.doi:10.1016/j.adaj.2019.08.020
2.American Dental Association Library & Archives, Research Services and Scientific Information.Oral anticoagulant and antiplatelet medications and dental procedures.Key Points.Accessed November 1, 2024.
3.Daly BJ, Sharif MO, Jones K, Worthington HV, Beattie A.Local interventions for the management of alveolar osteitis (dry socket). Cochrane Database Syst Rev.2022;9(9):CD006968.Published 2022 Sep 26.doi:10.1002/14651858.CD006968.pub3



