円形脱毛症は,明らかな皮膚疾患や全身性疾患のない患者に典型的には突如として瘢痕形成を伴わない脱毛斑が生じる病態である。診断は典型的には視診によるが,ときに皮膚生検が必要になる。治療としては外用薬,経口薬,頭皮への注射薬を併用するが,具体的にはコルチコステロイド,アンスラリン,ミノキシジル,外用免疫療法(すなわちジフェニルシクロプロペノン),全身投与の免疫抑制薬などを使用することができる。
(脱毛症も参照のこと。)
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頭皮と須毛部に好発するが,有毛部ならどこにでも生じうる。脱毛が頭皮全体(全頭脱毛症)や体の大部分または全身(汎発性脱毛症)に及ぶこともある。円形脱毛症は,遺伝的素因をもつ個人が環境誘因に曝露することで生じる自己免疫疾患と考えられているが,環境誘因については十分に明らかにされていない。ときに自己免疫性の白斑または甲状腺炎に合併する。
円形脱毛症の診断
診察
円形脱毛症の診断は視診による。典型的には,円形脱毛症は境界明瞭な円形脱毛斑として生じ,その辺縁に短く折れた感嘆符様の毛髪を認めるのが特徴である。ときに爪甲に点状陥凹,縦方向の隆起,または粗造爪(trachyonychia)がみられるが,爪甲の粗造は扁平苔癬でもみられる。赤い爪半月もみられる場合がある。
鑑別診断としては,頭部白癬,抜毛症(トリコチロマニア),牽引性脱毛症,エリテマトーデス,第2期梅毒などがある。所見が不確かな場合は,KOH法による直接鏡検,真菌培養,梅毒のスクリーニング,または生検により,さらなる検査を行うことができる。自己免疫疾患(特に甲状腺疾患)の合併を示唆する臨床所見のある患者については,該当疾患に対する検査を行う。
ときに生検が必要になる。
円形脱毛症の治療
コルチコステロイド
ときに,アンスラリン,ミノキシジル,またはその両方の外用
ときに外用免疫療法
ときにバリシチニブ,リトレシチニブ,またはメトトレキサート
まれに光線化学療法またはソラレンと紫外線A波照射の併用(PUVA療法)
かつらの使用およびカモフラージュ法
治療を考慮する場合は,コルチコステロイドの病変内注射が成人では第1選択の治療法である。病変が小さければ,トリアムシノロンアセトニド懸濁液(典型的には2.5~5mg/mL懸濁液0.1~3mLを4~8週毎)の皮内注射が可能である。強力な外用コルチコステロイド(例,プロピオン酸クロベタゾール0.05%泡沫剤,ゲル,または軟膏を1日2回,約4週間)を使用してもよいが,それらの薬剤は,炎症の発生部位である毛球のレベルまで浸透しない場合が多い。コルチコステロイドの内服は効果的であるが,中止すると脱毛が再発することが多く,また有害作用のために使用に限界がある。
軽度の炎症反応を刺激するために,アンスラリン外用クリーム(0.5~1%製剤を1日10~20分間塗布してから洗い流し,患者が耐えられれば接触時間を1日1時間まで漸増する)を使用してもよい。コルチコステロイドまたはアンスラリンによる治療の補助として,ミノキシジル5%溶液が役立つ場合がある。
機序は不明であるが,ジフェニルシクロプロペノンまたはスクアリン酸ジブチルエステルを用いてアレルギー性接触皮膚炎を誘導すること(外用免疫療法)で毛髪の成長が得られるが,この治療法は他の治療に反応しないびまん性の円形脱毛症患者にのみ用いるのが最善である。
バリシチニブとリトレシチニブは,重症円形脱毛症の治療に有効なJAK阻害薬である(1–4)。
メトトレキサートの内服は,成人と小児の両方で全頭脱毛症および汎発性脱毛症の治療に用いられ成功を収めている。用量範囲は週15~25mgである。メトトレキサートは,コルチコステロイドの経口薬と併用することもできる。典型的には,標準治療が奏効しない難治性の円形脱毛症患者のみに使用する(5, 6)。
全身投与および外用のPUVA療法(ソラレンと紫外線A波照射の併用療法)は,従来の治療が奏効しない患者に使用され,限定的な効果が得られている。しかしながら,高い再発率,ランダム化比較試験の欠如,およびPUVA療法によるがんリスクの増大のため,これは好まれていない治療法である。
脱毛症の影響を隠すためにかつらおよびカモフラージュ法を用いることができる。
治療に関する参考文献
1.King B, Ohyama M, Kwon O, et al: Two phase 3 trials of baricitinib for alopecia areata.N Engl J Med 386(18):1687-1699, 2022.doi: 10.1056/NEJMoa2110343
2.Ko JM, Mayo TT, Bergfeld WF, et al: Clinical outcomes for uptitration of baricitinib therapy in patients with severe alopecia areata: A pooled analysis of the BRAVE-AA1 and BRAVE-AA2 trials.JAMA Dermatol 159(9):970-976, 2023.doi: 10.1001/jamadermatol.2023.2581
3.King BA, Craiglow BG: Janus kinase inhibitors for alopecia areata.J Am Acad Dermatol 89(2S):S29-S32, 2023.doi: 10.1016/j.jaad.2023.05.049
4.King B, Zhang X, Harcha WG, et al: Efficacy and safety of ritlecitinib in adults and adolescents with alopecia areata: A randomised, double-blind, multicentre, phase 2b-3 trial.Lancet 401(10387):1518-1529, 2023.doi: 10.1016/S0140-6736(23)00222-2.Erratum in: Lancet 401(10392):1928, 2023
5.Meah N, Wall D, York K: The Alopecia Areata Consensus of Experts (ACE) study: Results of an international expert opinion on treatments for alopecia areata.J Am Acad Dermatol 83(1):123-130, 2020.doi: 10.1016/j.jaad.2020.03.004
6.Strazzulla LC, Wang EHC, Avila L, et al: Alopecia areata: An appraisal of new treatment approaches and overview of current therapies.J Am Acad Dermatol 78(1):15-24, 2018.doi: 10.1016/j.jaad.2017.04.1142
円形脱毛症の予後
円形脱毛症は自然消退することもあれば,慢性化したり,びまん性に拡大したりすることもある。慢性化の危険因子としては,広範な罹患,青年期前の発症,側頭部および後頭部の髪際部の罹患(蛇行性脱毛の亜型)などがある(1)。
予後に関する参考文献
1.Strazzulla LC, Wang EHC, Avila L, et al: Alopecia areata: Disease characteristics, clinical evaluation, and new perspectives on pathogenesis.J Am Acad Dermatol 78(1):1-12, 2018.doi: 10.1016/j.jaad.2017.04.1141



