白斑とは,皮膚メラノサイトの欠損によって皮膚に様々な大きさの脱色素斑が生じる病態である。原因は不明であるが,遺伝因子と自己免疫因子が関与している可能性が高い。診断は通常,皮膚の診察所見から明らかとなる。一般的な治療法としては,コルチコステロイドの外用(しばしばカルシポトリオールとの併用),カルシニューリン阻害薬(タクロリムスおよびピメクロリムス),ナローバンドUVB(紫外線B波)療法またはソラレンとUVAの併用療法などがある。多くの疾患がナローバンドUVB療法に反応する可能性がある。色素脱失が重度で広範囲にわたる場合は,残存する正常皮膚の色素をモノベンジルエーテルまたはハイドロキノンで永続的に脱失(脱色)させる方法もある。外科的な皮膚移植術を考慮してもよい:
(色素異常症の概要も参照のこと。)
白斑は一般集団の最大2%に生じる。
白斑の病因
白斑の病因は不明であるが,患部ではメラノサイトの欠損がみられる。提唱されている機序としては,自己免疫によるメラノサイトの破壊,メラノサイトの生存性の低下,原発性のメラノサイトの異常などがある。
白斑は家族性の場合(常染色体顕性[優性],不完全浸透,発現形態が多様)と,後天性の場合がある。一部の患者ではメラニンに対する抗体が認められる。最大30%の患者で,他の自己免疫抗体(サイログロブリン,副腎細胞,および壁細胞に対する抗体)または臨床的な自己免疫性内分泌疾患(アジソン病,糖尿病,悪性貧血,甲状腺機能障害)が認められる。しかしながら,自己免疫疾患との関連は明らかでなく,偶然の結果である可能性もある。最も強い関連は甲状腺機能亢進症(バセドウ病)および甲状腺機能低下症(橋本病)との間で認められている。
ときに,皮膚の直接的な物理的損傷後に白斑が生じることがある(例,サンバーンに対する反応)。白斑は,白斑を誘発するフェノールへの曝露によっても生じる(1)。患者は白斑の発症を精神的ストレスと結びつけることがある。
黒色腫に対する免疫療法(例,BRAF阻害薬,PD-1[programmed death 1]阻害薬)は,免疫学的な副作用として白斑を誘発する可能性がある。
総論の参考文献
1.Arowojolu OA, Orlow SJ, Elbuluk N, et al: The nuclear factor (erythroid-derived 2)-like 2 (NRF2) antioxidant response promotes melanocyte viability and reduces toxicity of the vitiligo-inducing phenol monobenzone.Exp Dermatol 26(7):637-644.doi: 10.1111/exd.13350
白斑の症状と徴候
白斑は色素減少または色素脱失を来した領域を特徴とし,それらの領域は通常境界明瞭で,しばしば対称性である。色素脱失は限局性で,1~2カ所に生じる場合もあれば,皮膚分節全体に生じる場合もある(分節型白斑);まれではあるが,色素脱失が汎発化して,皮膚表面の大部分が侵される場合もある(汎発型白斑)。ただし,白斑の好発部位は顔面(特に開口部周辺),指趾,手背,手関節屈側,肘,膝,脛部,足背,腋窩,鼠径部,肛門性器部,臍部,および乳頭である。整容的に美観を損なう状態は,皮膚の色が濃い患者では特に重度となり,精神的に深刻となることがある。白斑部の毛髪は通常白くなる。
この写真には,足の限局性白斑が写っている。
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この写真では,整容的に美観を損なう状態が著しい。
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白斑部の毛髪は通常白くなる。
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白斑の診断
臨床的評価
皮膚の色素脱失は典型的には診察で明らかであり,皮膚の色が濃い人では特に明白である。微妙な色素減少または色素脱失病変は,ウッド灯(365nm)検査で一段と明瞭になり,色素脱失部の皮膚はチョーク様の白い外観を呈する。
鑑別診断としては,炎症後色素減少,まだら症(まれな常染色体顕性遺伝[優性遺伝]疾患であり,前額部,頸部,体幹前面,四肢の中間部を好発部位として脱色素斑が生じ,その周囲を色素減少の領域が取り囲む),斑状強皮症(限局性の強皮症で,通常は皮膚が硬化する),ハンセン病(通常は病変部に知覚鈍麻がみられる),硬化性苔癬,白色粃糠疹,化学物質による白斑,黒色腫による白斑などがある。
エビデンスに基づくガイドラインは存在しないが,システムレビュー(review of systems)の所見に基づく臨床的な適応に応じて,血算,空腹時血糖,甲状腺機能,および抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(橋本病でしばしば陽性となる)の検査を行うのが妥当である。
白斑の治療
患部の光防御
コルチコステロイドおよびカルシポトリオールの外用
顔面または鼠径部の病変にはカルシニューリン阻害薬の外用
ナローバンドUVB療法またはソラレンと紫外線A波照射の併用療法(PUVA療法)
白斑は管理が難しいことがあり,初期の色素再生や色素の維持は予測できない場合がある。医師は皮膚色が均一であることに関する個人的および民族的な感受性を認識しておかなければならない;この疾患は心理的に大きな影響を及ぼす可能性がある。色素脱失を来した領域は重度のサンバーンが生じやすくなるため,全ての患部を衣服またはサンスクリーン剤で防御する必要がある。
散在性の小さな病変は化粧でカモフラージュすることができる。患部がより広範に及ぶ場合は通常,色素再生を目的とした治療が行われる。しかしながら,このような治療法の有効性を比較により検討した研究はほとんどない。従来からの第1選択の治療法は,強力なコルチコステロイドの外用であるが,コルチコステロイドの長期使用の有害作用として周囲の正常皮膚に色素減少や萎縮を引き起こすこともある。カルシニューリン阻害薬(タクロリムスおよびピメクロリムス)は,外用ステロイド療法による有害作用の好発部位(顔面および鼠径部など)に対する治療で特に有用な代替薬となりうる。カルシポトリオールとジプロピオン酸ベタメタゾンの混合剤も役立つ可能性があり,いずれの単剤療法よりも効果が高い。
内服および外用のPUVA療法はしばしば有効であるが,100回以上の治療が必要になることもあり,皮膚がんのリスクを高める可能性がある。ナローバンドUVB療法は外用のPUVA療法と同等の効果を示す一方,有害作用がほとんどないため,PUVA療法よりもナローバンドUVB療法の方が望ましい。広範な白斑には,しばしばナローバンドUVB療法が望ましい初期治療となる。エキシマレーザー(308nm)が有用となる場合があり,初期の外用療法に反応しない限局例で特に有用である。
外科的治療については,安定した限局例で薬物療法が無効に終わった場合にのみ妥当となる。具体的には,自家微小移植術(1),吸引水疱植皮術,刺青などがあり,刺青は乳頭,口唇,指尖部など色素再生が困難な部位で特に有用である。
皮膚の色調を均一にするために正常皮膚の色素を脱失させる処置は,20%モノベンジルエーテルまたはハイドロキノンを1日2回外用することで可能である。この処置は,皮膚の大部分が侵され,患者に永続的な色素脱失とその後の光線性皮膚傷害(例,皮膚がん,光老化)のリスク増加を受け入れる覚悟がある場合にのみ適応となる。この処置は極めて強い刺激感を生じる可能性があるため,広範囲に適用する場合は,まず小さな領域で試すべきである。1年以上の治療が必要になることもある。
白斑の治療には,JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬であるルキソリチニブ(JAK 1および2)の外用薬が使用可能である(2)。別のJAK阻害薬であるトファシチニブ(JAK 1および3)が現在,研究段階にある。ただし,これらの薬剤を中止すると,色素脱失が再発する可能性がある。
治療に関する参考文献
1.Gan EY, Kong YL, Tan WD, et al: Twelve-month and sixty-month outcomes of noncultured cellular grafting for vitiligo.J Am Acad Dermatol 75(3):564-571, 2016.doi: 10.1016/j.jaad.2016.04.007
2.Rothstein B, Joshipura D, Saraiya A, et al: Treatment of vitiligo with the topical Janus kinase inhibitor ruxolitinib.J Am Acad Dermatol 76(6):1054-1060.e1.doi: 10.1016/j.jaad.2017.02.049
要点
一部の症例の白斑には,遺伝子変異または自己免疫疾患が関与している可能性がある。
白斑は限局型,分節型,全身型(まれ)の場合がある。
診断は皮膚診察により,さらに血算,空腹時血糖測定,甲状腺機能検査,および抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の測定を考慮する。
カルシポトリオールとジプロピオン酸ベタメタゾンの外用,コルチコステロイド単剤の外用,ナローバンドUVB療法,カルシニューリン阻害薬(タクロリムスおよびピメクロリムス)などの治療を考慮する。
白斑に対する新たな治療法としてJAK阻害薬が登場している。
より詳細な情報
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