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細菌の概要

執筆者:

Brian J. Werth

, PharmD, University of Washington School of Pharmacy

レビュー/改訂 2020年 5月
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細菌は環状二本鎖DNAと細胞壁(マイコプラズマは除く)を有する微生物である。大半の細菌は細胞外で生息する。一部の細菌(例,チフス菌[ Salmonella typhi サルモネラ( Salmonella)感染症の概要 Salmonella属はS. entericaS. bongoriの2菌種に分類され,2400を超える血清型が知られている。これらの血清型の一部には名前が付けられている。そのような場合によく用いられる慣用法は,属名と血清型だけが含まれるように学名を短縮するというもので,例えばS... さらに読む ],淋菌[ Neisseria gonorrhoeae 淋菌感染症 淋菌感染症は,淋菌(Neisseria gonorrhoeae)と呼ばれる細菌によって引き起こされる。典型的には,尿道,子宮頸部,直腸,咽頭の上皮,または結膜に感染し,刺激感または疼痛および膿性分泌物を生じさせる。皮膚および関節への播種はまれであるが,皮膚のただれ,発熱,および移動性の多関節炎または少関節型の化膿性関節炎を引... さらに読む 淋菌感染症 ], Legionella レジオネラ(Legionella)感染症 Legionella pneumophilaは,しばしば肺以外の症候を伴う肺炎を引き起こすグラム陰性桿菌である。診断には特別な培地による培養,血清学的検査もしくは尿中抗原検査,またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析が必要である。治療はマクロライド系薬剤,フルオロキノロン系薬剤,またはドキシサイクリンによる。... さらに読む レジオネラ(<i >Legionella</i>)感染症 属,Mycobacteria属, Rickettsia リケッチアとその近縁微生物による感染症の概要 リケッチア感染症(リケッチア症)とその関連疾患(アナプラズマ症,エーリキア症,Q熱,ツツガムシ病)は,偏性細胞内寄生性のグラム陰性球桿菌の一群によって引き起こされる。Coxiella burnetiiを除く全てが節足動物によって媒介される。症状は通常,重度の頭痛を伴う突然の発熱,倦怠感,極度の疲労と,大半の症例でみられる特徴... さらに読む リケッチアとその近縁微生物による感染症の概要 属, Chlamydia クラミジア Chlamydia属細菌のうち3つの菌種が,ヒトにおいて性感染症や呼吸器感染症などの疾患を引き起こす。いずれもマクロライド系(例,アジスロマイシン),テトラサイクリン系(例,ドキシサイクリン),およびフルオロキノロン系薬剤に感受性を示す。 クラミジアは非運動性の偏性細胞内寄生細菌である。DNA,RNA,およびリボソームをもち... さらに読む 属,およびChlamydophila属)は,選択的に細胞内に寄生して複製する。クラミジアやChlamydophila属,リケッチアなどの一部の細菌は,偏性細胞内寄生病原体である(すなわち,宿主細胞内でのみ増殖でき,疾患を引き起こすことができる)。その他(例,チフス菌[Salmonella typhi], Brucella ブルセラ症 ブルセラ症は,グラム陰性細菌であるBrucella属細菌により引き起こされる。症状は急性熱性疾患として始まり,局所的な徴候はほとんどまたは全くみられず,進行して慢性化すると発熱,脱力,発汗,および漠然とした疼きや痛みの再発を繰り返すようになる。診断は培養(通常は血液培養)による。至適な治療には通常は2剤の抗菌薬(ドキシサイク... さらに読む 属,野兎病菌[ Francisella tularensis 野兎病 野兎病は,グラム陰性細菌である野兎病菌(Francisella tularensis)により引き起こされる熱性疾患で, 腸チフスに類似することがある。症状は初期の限局性潰瘍性病変,所属リンパ節腫脹,著明な全身症状,ときに非定型肺炎である。診断は主として疫学的および臨床的に行い,血清学的検査によって裏付けを得る。治療はストレプ... さらに読む 野兎病 ],淋菌[N. gonorrhoeae],髄膜炎菌[ Neisseria meningitidis 髄膜炎菌感染症 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は,髄膜炎と髄膜炎菌血症を引き起こすグラム陰性球菌である。症状は通常重度で,頭痛,悪心,嘔吐,羞明,嗜眠,発疹,多臓器不全,ショック,播種性血管内凝固症候群などがみられる。診断は臨床的に行われ,培養により確定する。治療はペニシリンまたは第3世代セファロスポリン系薬剤によ... さらに読む 髄膜炎菌感染症 ],Legionella属, Listeria リステリア症 リステリア症とは,Listeria属細菌に起因する菌血症,髄膜炎,脳炎,皮膚炎,眼腺症候群,子宮内および新生児感染症,またはまれに起こる心内膜炎のことである。症状は侵された器官系により異なる。子宮内感染症では胎児死亡に至ることがある。診断は検査室での分離による。治療には,ペニシリン,アンピシリン(しばしばアミノグリコシド系薬... さらに読む 属,結核菌[ Mycobacterium tuberculosis 結核 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 結核 ])は通性細胞内病原体である。

ヒトの体内には様々な細菌が常在菌叢として,しばしば多くの領域(例,消化管)に多数存在する。少数の菌種だけがヒトにとって病原体となる。

細菌は以下の基準によって分類される(一般的な病原性細菌の分類 一般的な病原性細菌の分類 一般的な病原性細菌の分類 の表も参照):

  • 形態

  • 染色

  • 莢膜形成

  • 酸素要求性

形態

細菌は以下に分類できる:

  • 円柱形(桿菌)

  • 球形(球菌)

  • らせん形(スピロヘータ)

数種類の球菌,多くの桿菌,および大半のスピロヘータは運動性を有する。

染色

グラム染色は,一般的な細菌同定に最も頻用される染色法である。ヨウ素固定,アルコール脱色,およびサフラニンでの対比染色を行ったとき,グラム陽性細菌は菌体内にクリスタルバイオレット(暗青色を呈する)を保持する一方,グラム陰性細菌はクリスタルバイオレットを保持せず,赤く染色される。グラム陰性細菌はさらに,リポ多糖体(内毒素)を含有する外膜を有するが,これがグラム陰性菌の病原性を高めている。(細菌の病原性を高めるその他の因子については, 微生物の侵入を助長する因子 微生物の侵入を助長する因子 微生物の侵襲は以下の因子によって促進される: 病原因子 微生物の付着 抗菌薬に対する耐性 宿主防御機構の欠陥 さらに読む を参照のこと。)

Ziehl-Neelsen染色Kinyoun染色は抗酸菌染色であり,主に抗酸菌(特に結核菌[M. tuberculosis])の同定に用いられる。また,グラム陽性桿菌である ノカルジア ノカルジア症 ノカルジア症は,グラム陽性桿菌であるNocardia属の様々な好気性土壌腐生菌によって引き起こされる化膿性または肉芽腫性の急性または慢性感染症であり,しばしば播種性となる。肺炎が典型的であるが,皮膚および中枢神経系の感染症もよくみられる。診断は培養および特殊染色による。治療は通常,スルホンアミド系薬剤による。... さらに読む ノカルジア症 (Nocardia)と原虫 クリプトスポリジウム クリプトスポリジウム症 クリプトスポリジウム症は,Cryptosporidium属の原虫による感染症である。主な症状は水様性下痢で,しばしば他の消化管疾患の徴候を伴う。免疫能が正常な患者では通常は自然治癒するが,AIDS患者では持続性かつ重症となる可能性がある。診断は便中の原虫または抗原の同定による。免疫能が正常な人の治療に,必要であればニタゾキサ... さらに読む クリプトスポリジウム症 サイクロスポーラ サイクロスポーラ症 サイクロスポーラ症は,原虫Cyclospora cayetanensisによる感染症である。症状としては,消化管症状と全身症状を伴う水様性下痢などがある。診断は便または腸生検標本中の特徴的なオーシストの検出による。治療は,トリメトプリム/スルファメトキサゾールによる。... さらに読む サイクロスポーラ症 シストイソスポーラ シストイソスポーラ症 シストイソスポーラ症は,原虫Cystoisospora (Isospora) belliによる感染症である。症状としては,消化管症状と全身症状を伴う水様性下痢などがある。診断は便または腸生検標本中の特徴的なオーシストの検出による。治療は通常,トリメトプリム/スルファメトキサゾールによる。... さらに読む シストイソスポーラ症 も同定できる。石炭酸フクシンで処理した後,塩酸およびエタノールで脱色してから,メチレンブルーで対比染色する。

蛍光染色(例,オーラミン-ローダミン染色)でも抗酸菌の同定は可能であるが,特別な蛍光顕微鏡が必要である。

莢膜形成

酸素要求性

好気性細菌(偏性好気性菌)は,エネルギーの産生と培地中での増殖に酸素を必要とする。この種の細菌は有酸素呼吸によってエネルギーを産生する。

嫌気性細菌偏性嫌気性菌 嫌気性細菌の概要 細菌は酸素に対する要求性と耐性によって以下のように分類することができる: 通性嫌気性:酸素の存在下と非存在下のどちらでも増殖する 微好気性:低濃度(典型的には2~10%)の酸素を必要とし,多くは高濃度(例,10%)の二酸化炭素を必要とするもので,嫌気的条件下での増殖は極めて不良... さらに読む )は酸素を要求せず,空気の存在下では培地中で増殖しない。この種の細菌は発酵または嫌気的呼吸によってエネルギーを産生する。嫌気性細菌は,消化管,腟,歯間部,および血液供給が障害された慢性創傷でよく認められる。

通性嫌気性細菌は,酸素の有無にかかわらず増殖することができる。この種の細菌は,酸素がない環境では発酵または嫌気的呼吸によって,酸素がある環境では有酸素呼吸によってエネルギーを産生する。微好気性細菌は酸素分圧が低い環境(例,2~10%)を好む。

クラミジアは偏性細胞内寄生体であり,宿主細胞からエネルギーを獲得するが,自身ではエネルギーを産生しない。

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