肺炎球菌ワクチン

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
レビュー/改訂 2022年 10月
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肺炎球菌感染症(例,中耳炎肺炎敗血症髄膜炎)は,90を超える血清型の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae[肺炎双球菌])のうちの一部によって引き起こされる。感染症を引き起こす血清型の多くに対するワクチンが使用可能になっている。特定の医学的状態(例,慢性疾患,易感染状態,髄液漏,人工内耳)は肺炎球菌感染症のリスクを高める。

詳細については,Pneumococcal Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Pneumococcal Vaccinationを参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。

予防接種の概要も参照のこと。)

肺炎球菌ワクチンの製剤

肺炎球菌ワクチンには2種類ある:結合型ワクチンと多糖体ワクチンである。

13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は肺炎球菌(S. pneumoniae)の13種類の精製莢膜多糖体(1,3,4,5,6A,6B,7F,9V,14,18C,19A,19F,23F)を含有する。

15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)は肺炎球菌(S. pneumoniae)の15種類の精製莢膜多糖体(1,3,4,5,6A,6B,7F,9V,14,18C,19A,19F,22F,23F,33F)を含有する。

20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)は肺炎球菌(S. pneumoniae)の20種類の精製莢膜多糖体(1,3,4,5,6A,6B,7F,8,9V,10A,11A,12F,14,15B,18C,19A,19F,22F,23F,33F)を含有し,それぞれが毒性のないジフテリア毒素の変異体と結合している。

23価の肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)は,肺炎球菌(S. pneumoniae)の83種類ある血清型のうち最も病原性の高い23種類(1,2,3,4,5,6B,7F,8,9N,9V,10A,11A,12F,14,15B,17F,18C,19F,19A,20,22F,23F,33F)に由来する抗原を含有する。

旧来のPPSV23とは異なり,PCV13は乳児においても抗体産生を刺激することができる。また,侵襲性肺炎球菌感染症に対してPPSV23より強力な防御能を付与するようである。PPSV23は成人全体で菌血症を56~81%減少させるが,衰弱した高齢者では有効性が低下する。また,肺炎の発生率を低下させる。

肺炎球菌ワクチンの適応

肺炎球菌結合型ワクチンの接種歴がないか接種歴が不明である65歳以上の成人には,以下のいずれかを接種すべきである:

  • PCV20を1回接種,または

  • PCV15を1回接種した後,PPSV23を1回接種

特定の医学的状態または他の危険因子(以下参照)を有し,肺炎球菌結合型ワクチンの接種歴がないかワクチン接種歴が不明の19~64歳の成人には,以下のいずれかを接種すべきである:

  • PCV20を1回接種,または

  • PCV15を1回接種した後,PPSV23を1回接種

両年齢群とも,PPSV23の接種はPCV15の接種から1年以上経過してから行うべきである。易感染状態にあるか,人工内耳を使用している,または髄液漏がある成人では,PCV15からPPSV23までの接種間隔を最短で8週間にすることを考慮できる。

医学的状態および危険因子としては以下のものがある:

  • アルコール使用障害

  • 慢性の心疾患,肺疾患,または肝疾患

  • 慢性腎不全またはネフローゼ症候群

  • 喫煙

  • 人工内耳

  • 先天性または後天性無脾症

  • 髄液漏

  • 糖尿病

  • 全身性の悪性腫瘍

  • HIV

  • ホジキン病

  • 免疫不全または免疫抑制

  • 白血病,リンパ腫,または多発性骨髄腫

  • 臓器移植

  • 鎌状赤血球症またはその他の異常ヘモグロビン症

18歳までの小児は肺炎球菌ワクチンPCV13の接種を受けるべきである(0~6歳を対象とする推奨予防接種スケジュールの表を参照)。

肺炎球菌ワクチンの禁忌および注意事項

PCV13の主な禁忌は以下の通りである:

  • 以前のPCV7またはPCV13の接種後に,またはワクチン成分もしくはジフテリアトキソイドを含む含有するワクチンに対して,重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

PCV15の主な禁忌は以下の通りである:

  • PCV15のワクチン成分またはジフテリアトキソイドに対して重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

PCV20の主な禁忌は以下の通りである:

  • PCV20のワクチン成分またはジフテリアトキソイドに対して重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

PPSV23の主な禁忌は以下の通りである:

  • 以前のこのワクチンの接種後に,またはワクチン成分に対して,重度のアレルギー反応を起こしたことがある

両種のワクチンの注意事項としては以下のものがある:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)

機能的または解剖学的無脾症の小児に対しては,髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)とPCV13を1回の来院で一度に接種してはならず,4週間以上の間隔を空けるべきである。

肺炎球菌ワクチンの接種

各ワクチンの通常用量は以下の通りである:

  • PCV20は0.5mLを筋注

  • PCV13は0.5mLを筋注

  • PCV15は0.5mLを筋注

  • PCSV23は0.5mLを筋注または皮下注

HIV感染者には,症状の有無にかかわらず,診断後可及的速やかにワクチンを接種すべきである。

肺炎球菌感染症のリスクが極めて高い状態(例,機能的または解剖学的無脾症,慢性腎臓病,またはがんやコルチコステロイド使用など,その他の易感染状態)にある19~64歳の成人に対しては,PPSV23の1回目の接種から5年後にPPSV23の2回目の接種を行うべきである。

65歳時には全ての個人がPPSV23による予防接種を受けるべきである。65歳以前に何らかの適応でPPSV23の接種を1~2回受け,かつ前回のPPSV23の接種から5年以上経過している個人には,65歳時またはそれ以降に再度このワクチンを接種すべきである。2回目の接種は1回目の5年後に行う(例,前回の接種が64歳時であった場合は69歳時)。65歳時またはそれ以降にPPSV23を接種する場合は,1回のみの接種とするべきである。

がん化学療法またはその他の免疫抑制療法を考慮している場合は,ワクチン接種と免疫抑制療法との間隔を2週間以上空けるべきである。化学療法または放射線療法を受けている患者には,予防接種を行ってはならない。

小児における接種スケジュールについては,小児期の予防接種スケジュールを参照のこと。

肺炎球菌ワクチンの有害作用

有害作用は通常,軽度であり,具体的には発熱,易刺激性,眠気,食欲不振,嘔吐,局所の疼痛および紅斑などがみられる。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用かもしれない。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Pneumococcal ACIP Vaccine Recommendations

  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Pneumococcal Vaccination: Information for Healthcare Professionals

  3. Summary of changes to the 2022 adult immunization schedule

  4. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Pneumococcal Disease: Recommended vaccinations 2023

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