帯状疱疹

(Shingles:急性後根神経節炎)

執筆者:Kenneth M. Kaye, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2019年 10月
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帯状疱疹は,水痘帯状疱疹ウイルスが後根神経節で潜伏状態から再活性化される際に生じる感染症である。症状は通常,侵された皮膚分節に沿った疼痛から始まり,その後小水疱が2~3日以内に生じ,通常はこれが診断の決め手となる。治療は抗ウイルス薬であり,皮膚病変発現後72時間以内に投与するのが理想である。

ヘルペスウイルス感染症の概要を参照のこと。)

水痘と帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(ヒトヘルペスウイルス3型)により引き起こされるが,水痘は同ウイルスへの初感染による急性の臨床像であり,帯状疱疹は潜伏期からの再活性化を意味する。

帯状疱疹では,感覚神経節,関連する皮膚分節の皮膚,ときに灰白質の前角・後角,髄膜,および前根・後根に炎症が生じる。帯状疱疹は高齢者およびHIV感染患者によくみられ,易感染性患者ではより頻度が高く重症化するが,このような患者では細胞性免疫が低下しているためである。明確な誘因はない。

帯状疱疹の症状と徴候

刺すような疼痛,知覚異常を伴う疼痛,またはその他の疼痛が病変部で発生し,典型的にはその後2~3日以内に発疹が現れ,通常は紅斑上に小水疱の集簇がみられる。病変部は通常,胸部または腰部の1つまたは複数の隣接する皮膚分節であるが,少数の衛星病変がみられることもある。病変は典型的には片側性であり,体の正中線を超えることはない。病変部位は通常,知覚過敏を伴い,疼痛は重度となることがある。病変の形成は通常3~5日間ほど続く。

帯状疱疹は別の部位の皮膚や内臓に播種することがあり,特に易感染性患者で多くみられる。

膝神経節帯状疱疹(ラムゼイ-ハント症候群,耳帯状疱疹)は,膝神経節(顔面神経膝状部)が侵されることに起因する。耳痛と顔面神経麻痺のほか,ときに回転性めまいが生じる。小水疱性の発疹が外耳道に生じ,舌の前側3分の2で味覚が失われることがある。

眼部帯状疱疹は三叉神経節(ガッセル神経節)が侵されて起こり,第5脳神経(三叉神経)の眼分枝のV1分布領域である眼の周囲および額に疼痛および小水疱を伴う。眼病変は重症化する可能性がある。鼻の先端の小水疱(Hutchinson徴候)は鼻毛様体神経分枝への病変波及を示し,重度の眼疾患を来すリスクがより高いことを示唆する。しかしながら,鼻の先端に病変がなくても眼が侵される可能性がある。

口腔内帯状疱疹(intraoral zoster)はまれであるが,その病変は片側性で境界明瞭な分布を示すことがある。口腔内前駆症状は生じない。

帯状疱疹後神経痛

再発を経験するのは帯状疱疹患者の4%未満である。しかしながら,多くの患者,特に高齢者では病変部位に持続性または再発性の疼痛(帯状疱疹後神経痛)が残り,数カ月から数年または永久に続く場合がある。

帯状疱疹後神経痛の疼痛は鋭く,間欠性のこともあれば持続性のこともあり,また消耗性となることがある。

帯状疱疹の診断

  • 臨床的評価

特徴的な発疹がみられる患者では帯状疱疹が疑われ,皮膚分節の分布に沿って典型的な疼痛がみられる場合には,たとえ発疹が現れる前であっても,ときに帯状疱疹が疑われる。診断は通常,事実上この疾患特有の発疹に基づいて行う。

診断が紛らわしければ,ツァンク試験によって多核巨細胞を検出することでヘルペスウイルスによる感染を確認できるが,ツァンク試験は帯状疱疹でも単純ヘルペスでも陽性になる。単純ヘルペスウイルス(HSV)もほぼ同様の病変を引き起こすが,帯状疱疹とは異なり,HSVは再発しやすく,皮膚分節に沿った分布をしない。ウイルスは培養またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により鑑別できる。生検検体からの抗原検出は有用となることがある。

帯状疱疹の治療

  • 対症療法

  • 特に易感染性患者に対して,抗ウイルス薬(アシクロビル,ファムシクロビル,バラシクロビル)

湿布は疼痛を和らげるが,しばしば鎮痛薬の全身投与が必要となる。

眼部帯状疱疹の治療については,眼科医へのコンサルテーションを行うべきである。耳帯状疱疹の治療については,耳鼻咽喉科医へのコンサルテーションを行うべきである。

抗ウイルス療法

経口抗ウイルス薬による治療は,急性発疹の重症度および持続期間,ならびに易感染性患者における重篤な合併症の割合を減少させる;帯状疱疹後神経痛の発生率を低下させる可能性もある。

帯状疱疹の治療はできる限り速やかに,理想的には前駆期中に開始すべきであり,皮膚病変出現後72時間以上経過してから行った場合(特に新しく形成されている病変がない場合),効果がみられる可能性がより低い。ファムシクロビル500mg,経口,1日3回,7日間およびバラシクロビル1g,経口,1日3回,7日間の投与は,経口投与での生物学的利用能がアシクロビルより優れているため,一般に帯状疱疹には経口アシクロビル800mg,1日5回,7~10日間よりも望ましい。コルチコステロイドを投与しても,帯状疱疹後神経痛の発生率は低下しない。

より軽度の易感染性患者には,経口ファムシクロビル,バラシクロビル,またはアシクロビル(上記参照のこと)が合理的な選択肢である;ファムシクロビルおよびバラシクロビルがより望ましい。重度の易感染性患者に対するアシクロビルの推奨用量は,成人の場合,10~15mg/kg,静注,8時間毎,10~14日間であり,12歳未満の小児では10~20mg/kg,静注,8時間毎,7日間である。

アシクロビルおよびバラシクロビルの妊娠中の安全性に関するデータは良好であるが,妊娠中の抗ウイルス療法の安全性は確固として証明されているわけではない。先天性の水痘は母体の水痘に由来することがあるが,母親の帯状疱疹から生じることはまれであるため,妊娠中の患者を治療するのであれば,治療による潜在的なベネフィットが胎児に起こりうるリスクを上回る場合に限るべきである。重度の発疹,重度の疼痛,または眼部帯状疱疹を呈する妊娠中の患者は,特に妊娠後期において,バラシクロビルまたはアシクロビルによって治療することがある。妊娠中のアシクロビルについては,バラシクロビルより長い使用経験がある。

帯状疱疹後神経痛の管理

帯状疱疹後神経痛の管理は特に困難となることがある。治療法としては,ガバペンチン,プレガバリン,三環系抗うつ薬,外用カプサイシンまたはリドカイン,およびボツリヌス毒素注射などがある。オピオイド鎮痛薬を要することがある。メチルプレドニゾロンの髄腔内投与が有益となりうる。

帯状疱疹の予防

免疫能が正常な50歳以上の成人には,帯状疱疹の既往や旧来の弱毒生ワクチンの接種歴の有無にかかわらず,新しい組換え帯状疱疹ワクチンが推奨され,2~6カ月の間隔を空けて2回,弱毒生ワクチンの接種から2カ月以上空けて接種する(詳細については,Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices for Use of Herpes Zoster Vaccinesを参照)。新しい組換えワクチンでは,単回接種する旧来の弱毒生帯状疱疹ワクチン(水痘ワクチンを高用量にしたもの)と比較して,はるかに高い防御効果がより長期間にわたり得られるようである。免疫能が正常な60歳以上の成人には,組換えワクチンまたは弱毒生ワクチンが推奨されるが,組換えワクチンの方が望ましい。易感染性患者における組換えワクチンの効力に関するデータが増えつつあるが,現時点では易感染性患者への使用に関する推奨事項はない。弱毒生ワクチンは易感染性患者では禁忌である。

帯状疱疹の要点

  • 帯状疱疹は,潜伏感染中の水痘帯状疱疹ウイルス(水痘の原因)が再活性化することによって引き起こされる。

  • 有痛性の発疹(通常は紅斑上に集簇する小水疱)が単一または複数の隣接する皮膚分節に発生する。

  • 帯状疱疹が再発する患者は4%未満であるが,多くの患者,特に高齢者においては,持続性または再発性の疼痛が数カ月から数年間にわたってみられる(帯状疱疹後神経痛)。

  • 抗ウイルス薬(アシクロビル,ファムシクロビル,バラシクロビル)は有益である(特に易感染性患者)。

  • 鎮痛薬がしばしば必要となる。

  • 免疫能が正常な50歳以上の成人には,帯状疱疹の既往の有無にかかわらず,組換え帯状疱疹ワクチンを接種すべきである。

帯状疱疹についてのより詳細な情報

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