微小血管障害性溶血性貧血

執筆者:Evan M. Braunstein, MD, PhD, Johns Hopkins University School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 9月
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    微小血管障害性溶血性貧血は,循環血中の過剰なずり応力または乱流により引き起こされる血管内溶血である。

    溶血性貧血の概要も参照のこと。)

    循環血中の過剰なずり応力または乱流により,末梢血中の赤血球が物理的に損傷することで,破砕赤血球と呼ばれる断片化した赤血球(例,三角形,ヘルメット形)が生じる。末梢血塗抹標本で破砕赤血球を認めれば診断に至る。破砕赤血球により赤血球分布幅が大きくなるが,これは赤血球大小不同を反映する。

    微小血管障害性溶血性貧血には,機械的器具によるもののほか微小血管損傷によって引き起こされる赤血球断片化も含まれる。断片化による溶血の原因としては以下のものがある:

    • 敗血症,悪性腫瘍,妊娠合併症,外傷,手術など,他の病態に続発する消耗性の過程である播種性血管内凝固症候群

    • 心臓弁の狭窄,機械弁の使用,または人工弁の機能不全(すなわち,弁周囲の逆流)

    • 血栓性血小板減少性紫斑病

    • 溶血性尿毒症症候群またはHELLP症候群(溶血,肝酵素値上昇,血小板数低値)などの関連疾患,および全身性強皮症腎クリーゼ

    • Foot strike hemolysis(行軍血色素尿症)や空手の打撃,水泳,手での太鼓演奏など,反復的な強い衝撃により生じるまれなケース

    治療では原因となっている過程に対処する。慢性ヘモジデリン尿の結果として,溶血に鉄欠乏性貧血が加わることがときにあるが,この場合は鉄補充療法に反応する。ヘマトクリットを30%超に維持することで,乱流により生じる溶血を低減することができる。

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