減量・代謝改善手術の予後

執筆者:Shauna M. Levy, MD, MS, Tulane University School of Medicine;
Michelle Nessen, MD, Tulane University School of Medicine
Reviewed ByGlenn D. Braunstein, MD, Cedars-Sinai Medical Center
レビュー/改訂 修正済み 2023年 11月
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減量・代謝改善手術は,肥満に関連する代謝性疾患およびその続発症を有する患者の減量を目的として,胃,腸管,またはその両方に外科的に改変を加える治療である。

米国では,毎年約260,000例の肥満外科手術が行われる(1)。より安全な低侵襲アプローチが開発されたことで,この手術はより広く普及した。

肥満も参照のこと。)

参考文献

1.Clapp B, Ponce J, DeMaria, et al: American Society for Metabolic and Bariatric Surgery 2020 estimate of metabolic and bariatric procedures performed in the United State.Aurg Obes Relat Dis 18 (9):1134–1140, 2022.doi: 10.1016/j.soard.2022.06.284 Epub 2022 Jun 26.

肥満外科手術の適応

2022年にAmerican Society for Metabolic and Bariatric Surgery(ASMBS)およびInternational Federation for the Surgery of Obesity and Metabolic Disorders(IFSO)は,減量・代謝改善手術に関する推奨を,併存症にかかわらずBMIが35kg/m2を超える患者およびBMIが30~34.5kg/m2で代謝性疾患を有する患者を対象に含めるように更新した。併存症としては以下のものがある:

更新された勧告では,アジア人集団ではBMIの閾値を調整すべきであり,BMIが27.5kg/m2以上の患者には手術を勧めるべきであるとも明記されている(1)。

減量・代謝改善手術は,減量プログラムの一環として提供され,通常は以下のものが含まれる:

  • 医療提供者向けセミナー

  • 患者の心理学的評価

  • 外科医へのコンサルテーション

  • 管理栄養士へのコンサルテーション

  • ルーチンの臨床検査

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)のスクリーニング

  • 手術のリスク層別化

禁忌としては以下のものがある:

  • うつ病などのコントロール不良の精神疾患

  • 現在の物質またはアルコール使用症

  • 寛解状態にないがん

  • 生命を脅かす他の疾患

  • 生涯にわたるビタミン補充(適応となる場合)を含む栄養所要量を遵守できない

医学計算ツール(学習用)

適応に関する参考文献

  1. 1.Eisenberg D, Shikora SA, Aarts E, et al: 2022 American Society for Metabolic and Bariatric Surgery (ASMBS) and International Federation for the Surgery of Obesity and Metabolic Disorders (IFSO): Indications for metabolic and bariatric surgery.Surg Obes Relat Dis 18 (12):1345-1356, 2022.doi: 10.1016/j.soard.2022.08.013 Epub 2022 Oct 21.

肥満外科手術の手技

米国で行われる最も一般的な減量・代謝改善手術には以下のものがある:

垂直遮断胃形成術や調節性胃バンディング術などの手技が用いられることはまれである。手術合併症は術後(数カ月から数年後)のあらゆる時点で発生する可能性があるため,肥満外科医は過去の術式に精通しておくべきである(1)。

肥満患者の割合が増加しているにもかかわらず,減量・代謝改善手術は依然として十分に活用されていない。手術適応となる患者のうち手術を受けるのは1%未満である。オンライン診療によって術前相談へのアクセスが拡大している;それでも全体的な割合は低いままである(2)。

通常は低侵襲手技(腹腔鏡下またはロボット補助下)が用いられ,開腹手術よりも術後の疼痛が少なく,回復に要する期間が短い。肥満外科手術は従来から,推定される体重減少の機序に照らして,摂食量を制限するもの(restrictive)と吸収を抑制するもの(malabsorptive)に分類されている。しかし,その他の因子も体重減少に寄与すると考えられ,例えば,RYGB(従来から吸収を抑制するものに分類)とスリーブ状胃切除術(従来から摂食量を制限するものに分類)はともに,満腹感および体重減少に有利に働く代謝またはホルモンの変化と,糖尿病の急速な寛解に寄与するとみられる他のホルモンの変化(例,インスリン放出の増加[インクレチン効果])をもたらす。

RYGB(特にこちら)またはスリーブ状胃切除術の施行後には,グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)やペプチドYY(PYY)などの消化管ホルモンの血中濃度が上昇するが,これは満腹感,体重減少,および糖尿病の寛解に寄与する可能性がある。インスリン感受性の増加は,有意な体重減少がみられる前の手術直後から明白となり,神経ホルモンの因子が糖尿病の寛解に重要であることが示唆される。腸内細菌叢の変化も,RYGB施行後の体重変化の一因になる可能性がある。減量・代謝改善手術は,心血管疾患,糖尿病,およびがんによる死亡リスクを低下させる。

スリーブ状胃切除術

スリーブ状胃切除術は,米国で最も一般的に用いられている減量・代謝改善手術である。胃の約80%を切除し,バナナのような形の管状の胃の通路を形成する。形成されたスリーブでは貯留する食物の量がより少なくなり,摂取カロリーが減少する。また患者は空腹感を経験することも少なくなり,これはグレリン分泌の低下および他の神経ホルモンの変化と相関している。この手技はバイパス術よりも技術的に単純であり,十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術(BPD-DS)またはスリーブ状胃切除術および単吻合による十二指腸回腸バイパス術の併施(SADI-S)に向けた最初のステップとして行うことができる。スリーブ状胃切除術では小腸に変更は加えない。

まれではあるが重篤な合併症として,スリーブからの漏出や出血などがある。胃食道逆流症(GERD)の悪化や新たな発症を経験することもある。

Roux-en-Y法による胃バイパス術(RYGB)

RYGBは摂食量を制限し,吸収を抑制する手技と考えられている。近位胃の小部分を残りの部分から分離して,30mL未満の胃嚢を作る。食物が正常時に吸収の場となる残胃の一部と近位小腸を迂回し,そのため吸収される食物およびカロリーの量が減少する。胃嚢は近位空腸に結合する;開口部は狭く,胃排出の速度を制限する。バイパスされた胃とつながっている小腸部分は,遠位小腸に結合する。この配置により胆汁酸と膵酵素が消化管内容物と混ざり,吸収不良および栄養欠乏が抑えられる。

RYGBは糖尿病の治療に特に効果的であり,6年後の寛解率は最大62%である(3)。RYGBは,心血管疾患,糖尿病,およびがんなどの肥満関連疾患のリスク,ならびに全死亡率およびこれらの疾患に関連する死亡率も低下させることが示されている(4, 5)。

短期的な合併症としては,吻合部の縫合不全(胃空腸吻合部でより多くみられる)や出血などがある。脂肪および糖分を多く含有する食物を摂取するとダンピング症候群が起こることがある;症状としては,ふらつき,発汗,悪心,腹痛,下痢などがある。RYGB後の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の服用または喫煙により胃空腸吻合部に潰瘍が形成される長期リスクが生じる可能性がある。内ヘルニアまたは腸重積症が発生すると,腸閉塞が起きる可能性がある。

Roux-en-Y法による胃バイパス術

修正手術

スリーブ状胃切除術後の不十分な体重減少,体重再増加,またはGERD発症などの他の合併症を管理するために,修正手術(revisional procedure)を受ける患者が増えている。

RYGBの修正手術では,胃嚢の縮小,または胃につながっている十二指腸分節の短縮を行うことがある。その目的は,カロリーおよび栄養素の吸収を減少させることである。

術前評価には通常,内視鏡検査およびX線検査(例,食道造影)を含める。

十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術(BPD-DS)

BPD-DSは米国で行われる肥満外科手術の5%未満であるが,年間の手術件数は増加している。通常は極度の病的肥満(BMI > 50kg/m2)の患者にのみに行われる。BPD-DSは1つの手技として施行することも,段階的に施行することもできる(最初にスリーブ状胃切除術のみ行い,その後最初の体重減少後に十二指腸スイッチを伴う胆膵バイパス術を施行)。この手技では,上部小腸の約3分の2から4分の3がバイパスされる。

スリーブ状胃切除術を施行後,幽門のすぐ遠位側で十二指腸を離断し,回腸の一部を引き上げて近位十二指腸に吻合することにより,小腸の大部分とOddi括約筋(胆汁酸および膵酵素が放出される場所)をバイパスする約200cmの消化管を形成する。その結果として食物の吸収が低下する。十二指腸のもう一方の断端を結紮し,このループの遠位端を回腸に吻合して,胆汁および膵酵素が遠位小腸に入り消化を促進するための100 cmの経路を形成する。

BPD-DSはスリーブ状胃切除術またはRYGBよりも技術的に困難であるが,減量および2型糖尿病の解消に最も効果的な手技である。合併症発生率は他の手技よりわずかに高く,吸収不良,脂肪便,および栄養欠乏が起こる可能性がある。患者は栄養補助食品を摂取し,生涯にわたって欠乏症のモニタリングを受けなければならない。

スリーブ状胃切除術および単吻合による十二指腸回腸バイパス術の併施(SADI-S)

BPD-DSと同様,SADI-Sにはスリーブ状胃切除術および十二指腸第1部の分割が含まれる。1段階また2段階に分けて施行可能である。BPD-DSとの主な違いは,SADI-Sではループの吻合が一ヵ所のみであり,吸収経路がより長く確保される点である。この手技はBPD-DSよりも若干単純で迅速に施行でき,栄養欠乏のリスクがより低い。しかし,胃食道逆流症の症状悪化や,新たな発症につながる可能性が大きい。Roux脚がないため,胆汁逆流が起こることもある。

内視鏡手技

手術の適応がない患者や,より侵襲性が低い,手術以外のアプローチを希望する患者の治療に,比較的新しい内視鏡手技が役立つ可能性がある。

胃内バルーンが用いられることがある。膨らませていないシリコン製のバルーンを胃に挿入し,生理食塩水で満たす。バルーンにより胃容積が減少し,満腹感が促進される。6カ月後,バルーンを抜去する。患者は初期には体重が減少するが,長期的な成功は限られている。

内視鏡的スリーブ状胃形成術では,胃を内側から縫合することによって胃の容積を減少させる。縫合により胃壁がひだ状に寄せ集まることから,「accordion procedure」と呼ばれている。全体的な合併症発生率は低い;最も頻度の高い合併症としては,悪心,消化管出血,胃周囲の漏出,体液貯留などがある。

内視鏡的スリーブ状胃形成術はスリーブ状胃切除術よりも逆流が発生する率が低く,またこの手技は可逆的となりうる。5年間のデータからは持続的な減量が示唆されている;しかしながら,より長期のデータは不足している(6)。

調節性胃バンディング術

調節性胃バンディング術が米国で実施されることはまれである。むしろ,この手技を以前に受けた患者が,バンドを除去してスリーブ状胃切除術またはRYGBを受けることの方が多い。

調節性胃バンディング術では,胃の上部の周囲にバンドを留置し,胃を上部の小さな袋と下部の大きな袋に分割する。一般的には,皮下に埋め込んだポートを介して,バンド内に生理食塩水を注入することによって,4~6回バンドを調整する。生理食塩水を注入すると,バンドが膨張し,胃の上部の小袋を締めつける。その結果,小袋に貯留できる食物の量が極めて少なくなり,患者はよりゆっくり食事するようになり,より早期に満腹感が生じる。合併症が起こった場合,またはバンドを締めつけ過ぎた場合は,生理食塩水をバンドから取り除くことができる。

バンドによる体重減少は一定でなく,フォローアップの頻度と関連がみられ,フォローアップの頻度が高いほど,大幅な体重減少が得られる。術後早期の合併症発生率および死亡率は他の手技よりも低い。長期合併症には,胃食道逆流症,食道炎,バンドの逸脱,バンドの侵食などがある。

バンドの周囲に瘢痕組織が形成されるため,バンドの除去はときに技術的に困難である。

調節性胃バンディング術

手技に関する参考文献

  1. 1.Coblijn UK, Karres J, de Raaff CAL, et al: Predicting postoperative complications after bariatric surgery: The Bariatric Surgery Index for Complications, BASIC.Surg Endosc 31 (11):4438–4445, 2017.doi: 10.1007/s00464-017-5494-0 Epub 2017 Mar 31.

  2. 2.Hlavin C, Ingraham P, Byrd T, et al: Clinical outcomes and hospital utilization among patients undergoing bariatric surgery with telemedicine preoperative care.JAMA Netw Open 6 (2):e2255994, 2023.doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.55994

  3. 3.Adams TD, Davidson LE, Litwin SE, et al: Weight and metabolic outcomes 12 years after gastric bypass.N Engl J Med 377 (12):1143–1155, 2017.doi: 10.1056/NEJMoa1700459

  4. 4 Carlsson LMS, Carlsson B, Jacobson P, et al: Life expectancy after bariatric surgery or usual care in patients with or without baseline type 2 diabetes in Swedish obese subjects.Int J Obes (Lond).47 (10):931–938, 2023.doi: 10.1038/s41366-023-01332-2 Epub 2023 Jul 12.

  5. 5.Adams TD, Gress RE, Smith SC, et al: Long-term mortality after gastric bypass surgery.N Engl J Med 357(8):753–761, 2007.doi: 10.1056/NEJMoa066603

  6. 6.Yoon JY, Arau RT; Study Group for Endoscopic Bariatric and Metabolic Therapies of the Korean Society of Gastrointestinal Endoscopy.: The efficacy and safety of endoscopic sleeve gastroplasty as an alternative to laparoscopic sleeve gastrectomy.Clin Endosc 54 (1):17–24, 2021.doi: 10.5946/ce.2021.019 Epub 2021 Jan 22.

減量・代謝改善手術の術前評価

術前評価は以下で構成される:

  • 可能な限り併存疾患を診断して是正すること

  • 生活習慣の改善に取り組む準備状況と能力を評価すること

  • 手術に対する禁忌を排除すること

  • 術後の食事の見直しと,患者が食習慣の変更を行えるかどうかの栄養士による評価

  • 心理士または資格を有する他の精神医療従事者による,コントロールできない精神疾患や手術を妨げる依存症の同定,手術後の生活習慣の改善に対するアドヒアランスを阻みうる要因の同定および話し合い

広範な術前評価は必ずしもルーチンに必要ではないが,臨床所見に基づく術前検査が必要になることがあり,特定の病態(例,高血圧)を管理するまたはそのリスクを下げる対策をとることもある。

  • 肺:臨床上の疑いに基づく閉塞性睡眠時無呼吸症候群のリスクがある患者には,睡眠ポリグラフ検査によるスクリーニングを行うべきであり,閉塞性睡眠時無呼吸症候群がみられる場合は,持続陽圧呼吸療法(CPAP)で治療すべきである。この診断は,心血管疾患の罹患および若年死のリスクを示す。喫煙は,術後の肺合併症,潰瘍,および消化管出血のリスクを増加させる。周術期合併症を最小限に抑えるため,喫煙は手術の少なくとも6週間前(1年前が望ましい)から,さらに術後も無期限にやめさせるべきである。

  • 心臓:たとえ無症状の患者でも,潜在する冠動脈疾患を同定するため,個人のリスクに対して妥当と判断される場合には,術前の心電図検査とその他の非侵襲的な心機能検査を考慮する。肥満は肺高血圧症のリスクを増加させるが,心エコー検査はルーチンには行わない。その他の心機能検査はルーチンには行わず,むしろ個々の患者の冠動脈疾患の危険因子,手術のリスク,および身体機能状態に基づいて行う。手術前に血圧を至適レベルでコントロールしておくべきである。周術期には,急性腎障害のリスクが高まることから,その間は必要に応じて利尿薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を慎重に使用すべきである。

  • 消化管:臨床的に有意な消化管症状がみられる患者には,術前に内視鏡検査または消化管画像検査を施行すべきである。吻合部潰瘍のリスクを減らすために,医師がHelicobacter pylori感染症の検査および治療を行うことがあるが,そのような治療を術前に行う必要性に関するエビデンスには一貫性がない。

  • 肝臓:肝酵素(特にアラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT])の増加は,減量・代謝改善手術の適応がある患者でよくみられ,代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(かつては脂肪肝と呼ばれていた)を示唆している可能性がある。肝酵素値が臨床的に有意かつ持続的に上昇している場合は,脂肪肝の結果とは考えずにそれ以外の原因がないか調べるべきである。減量・代謝改善手術の際に予防的胆嚢摘出術(胆石症のリスクを減少させるため)を併施する計画がある場合は,肝超音波検査を行うことがある。

  • 代謝性骨疾患:肥満のある患者には,ビタミンD欠乏症および代謝性骨疾患のリスクがあり,ときに二次性副甲状腺機能亢進症を伴う。特にビタミンD欠乏症が術前によくみられ,術後に吸収不良が発生するため,術前にこれらの疾患のスクリーニングを行い治療すべきである。

  • 糖尿病:管理不良の糖尿病は,有害な手術結果のリスクを高めるため,術前に血糖コントロールを最適化すべきである。入院期間の短縮と肥満外科手術の成績改善を予測しうる術前血糖コントロールに対応するHbA1cの妥当な目標範囲は6.5~7.0%である。

  • 栄養:肥満のある患者には栄養欠乏のリスクがあり,食事の好みおよび耐性が変化し,胃の酸性度が変わり,小腸からの吸収が減少するため,術後に栄養欠乏が増悪することがある。ビタミンD,ビタミンB12,葉酸,および鉄の濃度のルーチンの測定が推奨される。特定の患者に対して,チアミン(ビタミンB1)など,他の栄養素の濃度測定も適応となることがある。

  • 生殖面の健康:妊娠可能年齢の女性には,術後に妊孕性が改善する可能性があることを忠告すべきである。該当する女性は,肥満外科手術の前後に用いる避妊法の選択についてカウンセリングを受けるべきであり,術前に妊娠すべきではなく,術後12~18カ月間は妊娠を避けるべきである。吸収を抑制する手術を以前に受けた患者は,栄養サーベイランスと栄養素の欠乏を調べる臨床検査をその後の妊娠時に受けるべきである。

減量・代謝改善手術のリスク

周術期のリスクは,減量・代謝改善手術を公認の施設で行う場合に最も低い。

合併症としては以下のものがある:

これらの合併症は,重大な病態,入院期間の延長,および費用の増加の原因となることがある。頻脈が吻合部からの漏出の唯一の初期徴候となることがある。

後期の問題には,小腸閉塞および吻合部狭窄に続発する長期の悪心および嘔吐がある。

栄養欠乏(例,タンパク質-エネルギー低栄養ビタミンB12欠乏症鉄欠乏症)が,不十分な摂取,不十分な補給,または吸収不良の結果,起こることがある。悪臭を放つ鼓腸,下痢,またはその両方が発生することがある(特に吸収を抑制する手術の後で)。カルシウムおよびビタミンDの吸収が障害されることがあり,欠乏症ならびにときに低カルシウム血症および二次性副甲状腺機能亢進症を引き起こす。長期にわたる嘔吐に伴って,チアミン欠乏症が起こることがある。

逆流の症状がみられることがある(特にスリーブ状胃切除術の後で)。急速に体重が減少する間に,胆石症(しばしば症状を伴う),痛風,および腎結石症が発生することがある。術前に症状を伴う胆道疾患がみられる患者の場合は,胆嚢摘出術の同時施行を考慮するが,予防的手術としては現在では行われていない。

減量・代謝改善手術を受ける患者では,うつ病などの精神疾患の発生率が高い。2016年のメタアナリシスでは,術前にうつ病が多いことが確認され,術後にはうつ病の有病率と重症度が低下したと報告された(1)。複数の後ろ向き研究および前向き研究を対象とした大規模なレビューでは,減量・代謝改善手術を受けた患者において,対照群と比較して自傷行為および自殺が多くみられた;様々な術前および術後因子が関与している可能性がある(2)。肥満外科手術の後にはアルコール使用症の発生率も上昇するようである(3)。

食習慣が乱れることがある。新しい食習慣への順応が困難なことがある。

リスクに関する参考文献

  1. 1.Dawes AJ, Maggard-Gibbons M, Maher AR, et al: Mental health conditions among patients seeking and undergoing bariatric surgery: A meta-analysis.JAMA 315 (2):150–163, 2016.doi: 10.1001/jama.2015.18118

  2. 2.Castaneda D, Popov VB, Wander P, et al:Risk of suicide and self-harm is increased after bariatric surgery—A systematic review and meta-analysis.Obes Surg 29 (1):322–333, 2019.doi: 10.1007/s11695-018-3493-4

  3. 3.Heinberg LJ, Ashton K, Coughlin J: Alcohol and bariatric surgery: review and suggested recommendations for assessment and management.Surg Obes Relat Dis 8 (3):357-363, 2012.doi: 10.1016/j.soard.2012.01.016

減量・代謝改善手術の予後

卓越した研究拠点(COE:centers of excellence)としてAmerican Society of Bariatric Surgeryが認定している病院における院内死亡率は0.08%であった(1)。しかし,一部のデータからは,COEであることよりも,病院および外科医によって行われた手術の数の方が,重篤な合併症の発生率の低下をより正確に予測することが示唆されている。肥満外科手術に関連する死亡リスクは約0.1%である;重篤な合併症の全体的なリスクは約4%である。ほとんどの患者にとって,肥満とその合併症のリスクは手術の直接的なリスクを上回る(2)。

より高い死亡リスクを予測する因子として,深部静脈血栓症または肺塞栓症の既往,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,身体機能低下などがある。重度の肥満(BMIが50を超える),高齢,男性など,他の因子にもリスク上昇との関連が報告されているが,エビデンスは一貫していない。

超過体重減少の平均値は,手技によって異なる。

スリーブ状胃切除術で減量できる過剰体重は以下の通りである:

  • 2年で33~58%

  • 3~6年で58~72%

Roux-en-Y法による胃バイパス術で減量できる過剰体重は以下の通りである:

  • 2年で50~65%

RYGB後の体重減少は最長で10年間維持される。

BPD-DSおよびSADI-Sでは,患者は以下の減量が可能である:

  • 過剰体重の75~90%

重度の肥満のある患者(50kg/m2以上)では,RYGB後よりもBPD-DS後の方が体重減少が大きい(3)。

減量・代謝改善手術後に軽減または消失する傾向がある併存症として,多くの心血管系危険因子(例,脂質異常症,高血圧,糖尿病),心血管疾患,糖尿病,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,変形性関節症,うつ病などがある。特に糖尿病は寛解する可能性が高い(例,RYGBでは6年時点で最大62%の患者が寛解している[4])。主に心血管死亡率とがん死亡率が低下することで,全死亡率が25%低下する。

予後に関する参考文献

  1. 1.Gebhart A, Young M, Phelan M, Nguyen NT: Impact of accreditation in bariatric surgery.Surg Obes Relat Dis 10 (5):767–773, 2014.doi: 10.1016/j.soard.2014.03.009 Epub 2014 Mar 15.

  2. 2.American Society for Metabolic and Bariatric Surgery: Metabolic and Bariatric Surgery.Published 2021.Accessed 10/31/23.

  3. 3.Prachand VN, Davee RT, Alverdy JC: Duodenal switch provides superior weight loss in the super-obese (BMI ≥ 50 kg/m2) compared with gastric bypass.Ann Surg 244 (4):611–619, 2006.doi: 10.1097/01.sla.0000239086.30518.2a

  4. 4.Courcoulas AP, King WC, Belle SH, et al; Seven-year weight trajectories and health outcomes in the Longitudinal Assessment of Bariatric Surgery (LABS) study.JAMA Surg.153 (5), 20:427–434.doi: 10.1001/jamasurg.2017.5025.

肥満外科手術後のフォローアップ

減量・代謝改善手術後の長期間かつ定期的なフォローアップが,十分な体重減少を確実にし,合併症を予防するのに役立つ。Roux-en-Y法による胃バイパス術またはスリーブ状胃切除術の施行後には,急速な体重減少がみられる期間(通常は術後最初の約6カ月間)は4~12週毎に,その後は6~12カ月毎に患者をモニタリングすべきである。

体重と血圧をチェックし,食習慣を確認する。血液検査(通常は血算,電解質,グルコース,血中尿素窒素,クレアチニン,アルブミン,およびタンパク質,ならびに肝機能検査)を定期的に行う。糖化ヘモグロビン(HbA1c)および空腹時の脂質濃度が術前に異常であった場合,これらをモニタリングすべきである。手技の種類に応じて,カルシウム,ビタミンD,ビタミンB12,葉酸,鉄,チアミン(ビタミンB1)など,ビタミンとミネラルの濃度のモニタリングが必要になることがある。二次性副甲状腺機能亢進症のリスクがあるため,副甲状腺ホルモンの濃度もモニタリングすべきである。スリーブ状胃切除術またはRoux-en-Y法による胃バイパス術の施行後には,骨密度を測定すべきである。

医師は,術後の急速な体重減少の間,降圧薬,インスリン,経口血糖降下薬,または脂質低下薬に対する反応の変化がないか確認すべきである。

さらに,患者をうつ病および飲酒について定期的にスクリーニングすべきである(特に手術前の飲酒が大量だった場合)。

糖尿病患者の低血糖のリスク(肥満外科手術後のインスリン感受性亢進による)を最小限に抑えるため,Roux-en-Y法による胃バイパス術またはスリーブ状胃切除術の施行後には,医師がインスリンの投与量を調整し,経口血糖降下薬(特にスルホニル尿素薬)を減量または中止すべきである。

要点

  • BMIが35kg/m2を超えているか,またはBMIが30kg/m2を超えていることに加えて肥満関連の併存症(例,糖尿病,高血圧,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,高リスクの脂質プロファイル)がある場合は,減量手術を考慮する。

  • 減量・代謝改善手術の禁忌としては,コントロールできない精神疾患(例,うつ病),物質またはアルコール使用症,寛解状態にないがん,もしくは生命を脅かす他の疾患,および患者が栄養所要量(適応がある場合,生涯にわたるビタミン補充を含む)を満たすことができない場合,などがある。

  • スリーブ状胃切除術は現在,米国で最も一般的に用いられている減量・代謝改善手術である。

  • 術後は,低下した体重の維持,体重に関連した併存症の解消,および手術の合併症(例,栄養欠乏,代謝性骨疾患,痛風,胆石症,腎結石症,うつ病,アルコール使用症)について患者を定期的にモニタリングする。

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