失神の主な原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ*

心臓の流出路または流入路の閉塞

弁膜症:大動脈弁狭窄僧帽弁狭窄ファロー四徴症,人工弁の離開または血栓

若年または高齢患者

失神はしばしば労作時に発生し,迅速に回復する

心雑音

心エコー検査

肥大型心筋症(HCM)拘束型心筋症

若年または高齢患者

失神はしばしば労作時に発生し,迅速に回復する

心雑音(肥大型心筋症の場合)

IV音(拘束型心筋症において)

心エコー検査

心臓腫瘍または血栓

失神は体位性のことがある

通常は雑音(可変性の可能性)

末梢での塞栓現象

心エコー検査

肺塞栓症,羊水塞栓症,または(まれに)空気塞栓症

通常は大きな塞栓によって生じ,呼吸困難,頻脈,または頻呼吸を伴う

しばしば肺塞栓症の危険因子を認める

ときにDダイマー

CT血管造影または核医学検査

不整脈

徐脈性不整脈(例,洞不全症候群,高度房室ブロック,薬剤†によるもの)

警告症状なく発生する失神で,覚醒後に直ちに回復する

あらゆる体位で生じうる。

徐脈性不整脈は高齢者で頻度が高くなる

薬剤(特に抗不整脈薬や感受性のある患者でQT間隔の延長を引き起こす他の薬剤)を服用している患者

構造的心疾患

心電図所見が明白でない場合は,ホルター心電計,イベントレコーダー,ときには植込み型ループレコーダーを検討する

異常が検出されるか強い疑いがある場合は,心臓電気生理検査

異常を疑う臨床的理由(例,利尿薬の使用,嘔吐,下痢)がある場合は,血清電解質

頻拍性不整脈,上室性または心室性のいずれか(例,虚血,心不全,心筋疾患,薬物†,電解質異常,不整脈源性右室異形成症,QT延長症候群,ブルガダ症候群,早期興奮によるもの)

警告症状なく発生する失神で,覚醒後に直ちに回復する

あらゆる体位で生じうる。

薬剤,特に抗不整脈薬または他の心疾患治療薬を服用している患者

構造的心疾患

心電図所見が明白でない場合は,ホルター心電計またはイベントレコーダーの使用を考慮する

異常が検出されるか強い疑いがある場合は,心臓電気生理検査

異常を疑う臨床的理由(例,利尿薬の使用,嘔吐,下痢)がある場合は,血清電解質

心室機能障害

急性心筋梗塞,心筋炎,収縮または拡張機能障害,心筋症

不整脈やショックで,まれに失神が心筋梗塞の主症状となることがある(そのような患者の大半は高齢者)

血清トロポニン

心電図検査

心エコー検査

ときに心臓MRI

心タンポナーデまたは心膜収縮

頸静脈拍動の上昇,10mmHgを超える奇脈

心エコー検査

ときにCT

血管迷走神経性(神経心原性)

胸腔内圧の上昇(例,緊張性気胸,咳嗽,排尿または排便時のいきみ,バルサルバ手技)

警告症状(例,めまい,悪心,発汗);回復は通常迅速であるが,即時ではないものの(5~15分),まれなケースでは長時間続くこともある

通常は誘発因子が明らかである

臨床的評価

強い情動(例,疼痛,恐怖,観血)

警告症状(例,めまい,悪心,発汗);回復は迅速であるが即時ではない(5~15分,ときに数時間にわたる)

通常は誘発因子が明らかである

臨床的評価

頸動脈洞の圧迫

警告症状(例,めまい,悪心,発汗);回復は迅速であるが即時ではない(5~15分,ときに数時間にわたる)

通常は誘発因子が明らかである

臨床的評価

嚥下性(まれ)

警告症状(例,めまい,悪心,発汗);回復は迅速であるが即時ではない(5~15分,ときに数時間にわたる)

通常は誘発因子が明らかである

臨床的評価

アナフィラキシー

薬剤投与,虫刺症,アレルギーの既往,アナフィラキシーのその他の徴候(例,発疹,喘鳴,低血圧)

アレルギー検査

起立性低血圧

薬物†

症状は立位の開始から数分以内に発生する

診察中の起立により血圧が低下する

臨床的評価

ときにティルト試験

自律神経機能障害

症状は立位の開始から数分以内に発生する

診察中の起立により血圧が低下する

臨床的評価

ときにティルト試験

長期臥床に起因するデコンディショニング

症状は立位の開始から数分以内に発生する

診察中の起立により血圧が低下する

臨床的評価

ときにティルト試験

貧血

慢性疲労,ときに暗色便,重い月経

血算またはヘマトクリット

内分泌疾患(例,副腎皮質機能低下症甲状腺機能低下症

症状は立位の開始から数分以内に発生する

しばしば基礎にある内分泌疾患の症状を伴う

基本的な生化学検査

早朝コルチゾール測定

甲状腺刺激ホルモン(TSH)

脳血管

脳底動脈系の一過性脳虚血発作または脳卒中

ときに脳神経の機能障害および運動失調

CTまたはMRI

片頭痛

視覚症状を伴う前兆,羞明;片眼性

脳底型片頭痛の症例における片側性の症状の欠如

臨床的評価

その他

長時間の立位

病歴より明らか;ほかに症状を認めない

臨床的評価

妊娠

妊娠可能年齢の健康な女性;ほかに症状を認めない

通常は早期または認識されていない妊娠

尿妊娠検査

過換気

しばしば失神に先立って口唇周囲または手指にピリピリ感がみられる

通常は感情的動揺のある状況で生じる

臨床的評価

低血糖

治療を行うまで精神状態の変化が続き,突然の発症はほとんどなく,発汗,起毛を伴う

通常は糖尿病またはインスリノーマの既往あり

指先採血での血糖値

ブドウ糖輸液に対する反応

精神疾患

真の失神ではない(イベント中に患者は部分的または一貫性なく反応を示すことがある)

通常の診察

しばしば精神疾患の既往あり

臨床的評価

*心電図検査とパルスオキシメトリーを全例で施行する。

失神を引き起こす薬物の表を参照のこと。

関連するトピック