多尿の主な原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ*

水利尿

中枢性尿崩症(部分型または完全型)

  • 遺伝性

  • 後天性(損傷,腫瘍,その他の病変に起因)

口渇および多尿で突然または慢性的に発症する

ときに外傷,下垂体手術,低酸素性もしくは虚血性脳血管傷害の後,または出生後数週間で発生する

臨床検査

ADH負荷を伴う水制限試験

依然として診断がつかない場合はADH測定

腎性尿崩症

以下に該当する患者における口渇および多尿の緩徐な発症:

  • 双極症に対するリチウムの使用歴

  • 副甲状腺機能亢進症に関連した高カルシウム血症

  • 過剰な水分摂取をする家族がいる(小児の場合)

  • 基礎疾患として腫瘍随伴疾患(高カルシウム血症を引き起こす可能性がある)

  • 生後数年以内

臨床検査

ADH負荷を伴う水制限試験

多飲

  • 原発性(視床下部口渇中枢の視床下部病変)

  • 心因性

不安,中年女性

精神疾患の既往

視床下部の浸潤性病変(通常はサルコイドーシス

臨床検査

ADH負荷を伴う水制限試験

過剰な低浸透圧輸液の投与

輸液を受けている入院患者

ときに浮腫

輸液の中止後または投与速度の低下後に消失

利尿薬の使用

容量負荷(例,心不全に起因するものまたは末梢浮腫)に対する利尿薬の最近の使用開始

減量のために内密に利尿薬を使用する可能性が高い患者(例,摂食症を呈するか体重を気にする人,アスリート,青年)

臨床的評価

無飲性尿崩症(尿崩症を伴う高ナトリウム血症への反応として起きる口渇感の喪失を特徴とする視床下部疾患)

過度の口渇を伴わない多尿

ときに胚細胞腫や頭蓋咽頭腫などの視床下部領域の病変,または最近の前交通動脈の修復

ときに過度の口渇を伴わない高浸透圧(例,300~340mOsm/kg[またはmmol/kg])および高ナトリウム血症

妊娠尿崩症(ADHの代謝亢進に起因する)

妊娠第3トリメスター中に初めて出現する多飲(過度の口渇を伴う)および多尿

不適切に正常な血漿ナトリウム値(正常では妊娠後期に約5mEq/L[またはmmol/L]低下する)で,尿浸透圧が血漿浸透圧より低くなる

分娩後2~3週間で消失する

溶質利尿†

コントロール不良の糖尿病

幼児または2型糖尿病の家族歴を有する肥満成人における口渇および多尿

指先採血による血糖値測定

等張または高張食塩水の輸液

輸液を受けている入院患者

臨床検査(例,モル浸透圧で見た総排泄量[浸透圧×尿量]を示す24時間蓄尿)

投与中止または投与速度の低下(多尿が消失することを確認するため)

高タンパク質の経管栄養

経管栄養を受けている全ての患者

低タンパク質の経管栄養に切り替える(多尿が消失することを確認するため)

尿路閉塞の軽快

下部尿路閉塞の患者に対する膀胱カテーテル挿入後の多尿

臨床的評価

*大半の患者で尿および血漿浸透圧と血清ナトリウム濃度を測定すべきである。

†尿浸透圧は典型的には水利尿で300mOsm/kg(300mmol/kg)未満,溶質利尿で300mOsm/kg(300mmol/kg)超である。

ADH = 抗利尿ホルモン。

関連するトピック