冠動脈疾患に対する薬剤*

薬剤

用法・用量

用途

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬

ベナゼプリル

カプトプリル

エナラプリル

ホシノプリル(fosinopril)

リシノプリル

モエキシプリル(moexipril)

ペリンドプリル

キナプリル

ラミプリル

トランドラプリル

一定ではない

冠動脈疾患患者の全例,特に広範囲の梗塞,腎機能不全,心不全高血圧,または糖尿病がある患者

禁忌には,低血圧,高カリウム血症,両側性腎動脈狭窄,妊娠,既知のアレルギーなどがある

アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)

カンデサルタン

エプロサルタン(eprosartan)

イルベサルタン

ロサルタン

オルメサルタン

テルミサルタン

バルサルタン

一定ではない

ACE阻害薬に耐えられない患者(例,咳嗽のため)に効果的な代替薬であるが,現在では心筋梗塞後の第1選択薬ではない

禁忌には,低血圧,高カリウム血症,両側性腎動脈狭窄,妊娠,既知のアレルギーなどがある

抗凝固薬

アルガトロバン

350μg/kg(急速静注)に続いて25μg/kg/分(点滴静注)

ヘパリン起因性血小板減少症の既往が判明しているかその疑いがあるACS患者に対するヘパリンの代替薬として

ビバリルジン(bivalirudin)

一定ではない

フォンダパリヌクス

2.5mg,皮下,24時間毎

アピキサバン

5mg,経口,1日2回

非弁膜症性心房細動の患者に長期的に有用となる可能性がある。

ダビガトラン

150mg,経口,1日2回(P2Y12阻害薬を併用している患者には110~150mg,経口,1日2回)

リバーロキサバン

20mg,経口,1日1回(P2Y12阻害薬を併用している患者には15mg,経口,1日1回)

低分子ヘパリン

  • ダルテパリン

  • エノキサパリン‡

  • チンザパリン

一定ではない

不安定狭心症またはNSTEMIの患者

テネクテプラーゼ(tenecteplase)の投与を受けている75歳未満の患者

ほぼ全てのSTEMI患者(ただしPCIの適応があり,90分以内に施行できる場合を除く)に対する未分画ヘパリンの代替薬として;PCIまたはCABGが施行されるか患者が退院するまで投与を継続する

未分画ヘパリン

60~70単位/kgを静注(最大5000単位;急速静注),その後12~15単位/kg/時(最大1000単位/時)で48時間またはPCIが完了するまで

不安定狭心症またはNSTEMIの患者に対するエノキサパリンの代替薬として

アルテプラーゼ,レテプラーゼ(reteplase),またはテネクテプラーゼ(tenecteplase)を開始する際に60単位/kgを静注(最大4000単位;急速静注),その後12単位/kg/時(最大1000単位/時)で48時間またはPCIが完了するまで投与

緊急血管造影およびPCIを受けるSTEMI患者またはテネクテプラーゼ(tenecteplase)の投与を受けている75歳以上の患者

ワルファリン

INRが2.5~3.5に維持されるように経口用量を調節する

全身性塞栓症のリスクが高い患者(すなわち,心房細動,機械弁,静脈血栓塞栓症,凝固亢進疾患,または左室血栓のある患者)の一次予防に推奨される

出血リスクが低い場合,前壁無収縮(akinesis)または奇異性収縮(dyskinesis)がみられるSTEMI患者の一次予防に有用となる可能性がある

無症候性の壁在血栓のある患者に妥当

抗血小板薬

アスピリン

安定狭心症の場合†:75mgまたは81mg,経口,1日1回(腸溶錠)

アスピリンに耐えられないか禁忌がある場合を除き,全ての冠動脈疾患患者および冠動脈疾患の発生リスクが高い患者;長期投与する

ACSの場合:救急部門到着時に160~325mgを咀嚼服用(非腸溶性)で投与し,その後の入院中は1日1回,退院後は81mg†を経口で1日1回長期投与する

クロピドグレル

75mg,経口,1日1回

アスピリンと併用するか,アスピリンに耐えられない患者には単剤投与する

PCIを受ける患者には,300~600mg,経口,1回,その後は75mg,経口,1日1回で1~12カ月間

待機的PCIに対して,ベアメタルステントでは1カ月以上,薬剤溶出性ステントでは6~12カ月以上の維持療法が必要である

ACSに対して,12カ月以上の抗血小板薬2剤併用療法(通常はアスピリンを使用する)が推奨される(ステントの種類を問わない)

プラスグレル

PCIの前に60mg,経口,1回,その後は10mg,経口,1日1回で1~12カ月間

PCIを受けるACS患者のみ

血栓溶解療法とは併用しない

チカグレロル

PCIを受ける患者では,手技の開始前に180mgを経口で単回投与後,90mg,経口,1日2回で1~12カ月間

チクロピジン

250mg,経口,1日2回で1~12カ月間

好中球減少症のリスクがあるため,ルーチンに使用されることはまれであり,白血球数を定期的にモニタリングしなければならない

糖タンパク質IIb/IIIa阻害薬

アブシキシマブ

一定ではない

一部のACS患者,特にPCIによるステント留置を受ける患者と不安定狭心症またはNSTEMIがあり大きな塞栓負荷のある高リスク患者

投与はPCI実施中から開始し,以降6~24時間継続する

エプチフィバチド(eptifibatide)

一定ではない

チロフィバン(tirofiban)

一定ではない

β遮断薬

アテノロール

急性期は50mg,経口,12時間毎;長期投与は50~100mg,経口,1日2回

β遮断薬に耐えられないか禁忌がある場合を除き,全てのACS患者,特に高リスク患者;長期投与する

通常の措置を講じても胸痛が続いている患者,頻脈が続いている患者,不安定狭心症または心筋梗塞の状態で高血圧がある患者には,β遮断薬を静注で使用してもよい。低血圧または血行動態の不安定性を示すその他の所見がある患者では,注意が必要である。

ビソプロロール

2.5~5mg,経口,1日1回,心拍数および血圧反応に応じて10~15mg,1日1回に増量

カルベジロール

25mg,経口,1日2回(心不全または他の血行動態不安定性を呈する患者では,開始量を1.625~3.125mg,1日2回の低用量とし,耐容性に応じて極めて緩徐に増量する)

メトプロロール

25~50mg,経口,6時間毎で48時間継続した後,100mg,1日2回または200mg,1日1回で長期投与する

カルシウム拮抗薬

アムロジピン

5~10mg,経口,1日1回

安定狭心症患者で,硝酸薬を使用しても症状が持続する場合,または硝酸薬に耐えられない場合

ジルチアゼム(徐放性)

180~360mg,経口,1日1回

フェロジピン

2.5~10mg,経口,1日1回

ニフェジピン(徐放性)

30~90mg,経口,1日1回

ベラパミル(徐放性)

120~360mg,経口,1日1回

硝酸薬:短時間作用型

ニトログリセリンの舌下投与(錠剤またはスプレー剤)

0.3~0.6mg,4~5分毎,最大3回まで

迅速な胸痛軽減のため全例に投与;必要に応じて使用

ニトログリセリン,持続静注

5μg/分から開始し,必要な反応が得られるまで数分毎に2.5~5.0μgずつ増量する

選択されたACS患者:

最初の24~48時間の使用では,心不全(ただし低血圧がある場合を除く),広範前壁梗塞,持続する狭心症,または高血圧がみられる患者(血圧を10~20mmHg低下させるが,収縮期血圧が80~90mmHgを下回らないようにする)

長期使用では,狭心症を繰り返す患者および肺うっ血が持続する患者

硝酸薬:長時間作用型

硝酸イソソルビド

10~20mg,経口,1日3回;40mg,1日3回まで増量できる

不安定狭心症または持続する重症狭心症を呈し,β遮断薬を最大量まで増量しても狭心症症状が持続する患者

耐性を回避するため,硝酸薬は約8~10時間の休薬時間(典型的には夜間)を設けることが推奨される(特定の薬剤では推奨される硝酸薬の休薬時間が異なる)

二硝酸イソソルビド(硝酸イソソルビド)(徐放性)

40~80mg,経口,1日2回(典型的には午前8時と午後2時に投与)

一硝酸イソソルビド

20mg,経口投与,1日2回,1回目と2回目の投与間隔は7時間

一硝酸イソソルビド(徐放性)

30または60mg,経口,1日1回,120mgまたはまれに240mgまで増量

ニトログリセリンパッチ

午前6時から9時までの間に0.2~0.8mg/時で貼付し,耐性を回避するため12~14時間後に除去する

ニトログリセリン軟膏2%製剤(15mg/2.5cm)

1.25cmを6~8時間毎に体幹上部または腕に均一に塗布して合成樹脂で被覆し,耐容性に応じて7.5cmまで増量し,耐性を回避するため,毎日8~12時間にわたり除去する

オピオイド

モルヒネ

2~4mg,静注,必要に応じて反復投与

死亡率が上昇する可能性があるだけでなく,P2Y12受容体阻害薬の活性が減弱する可能性もあるため,モルヒネは慎重を期して使用すべきである(例,ニトログリセリンが禁忌である場合,または最大用量のニトログリセリンを投与しているにもかかわらず症状がある場合)。

PCSK9阻害薬

アリロクマブ

初回用量:75mg,皮下,2週間に1回,または300mg,皮下,4週間に1回

LDL-Cが目標値に達していない患者には,原発性高脂血症(家族性高コレステロール血症を含む)の成人患者の治療として,単独投与または他の脂質低下療法(例,スタチン系薬剤,エゼチミブ)と併用

エボロクマブ

原発性高脂血症に対する初回用量:140mg,皮下,2週間に1回,または420mg,皮下,1カ月に1回

LDL-Cが目標値に達していない患者には,原発性高脂血症(家族性高コレステロール血症を含む)の成人患者の治療として,単独投与または他の脂質低下療法(例,スタチン系薬剤,エゼチミブ)と併用

スタチン系薬剤

アトルバスタチン

フルバスタチン

ロバスタチン

プラバスタチン

ロスバスタチン

シンバスタチン

一定ではない(脂質異常症を参照)

冠動脈疾患の患者には,最大忍容用量のスタチン系薬剤を投与すべきである

その他の薬剤

イバブラジン

5mg,経口,1日2回,必要に応じて7.5mg,経口,1日2回に増量

洞結節を阻害する

β遮断薬を使用できない正常洞調律の患者における慢性安定狭心症の対症療法

β遮断薬のみではコントロール不良で心拍数が60/分を超えている患者においてβ遮断薬と併用する

ラノラジン(ranolazine)

500mg,経口,1日2回,必要に応じて1000mg,経口,1日2回に増量

他の狭心症治療薬による治療にもかかわらず症状が持続している患者

*医師は認められる冠動脈疾患の種類に応じて,様々な組合せで薬剤を使用することがある。

†アスピリンをより高用量にしても,保護効果は高まらず,有害作用のリスクが増大する。

‡低分子ヘパリン(LMWH)の中ではエノキサパリンが望ましい。

ACS = 急性冠症候群;CABG = 冠動脈バイパス術;CAD = 冠動脈疾患;INR = 国際標準化比;LV = 左室;MI = 心筋梗塞;NSTEMI = 非ST上昇型心筋梗塞;PCI = 経皮的冠動脈インターベンション;STEMI = ST上昇型心筋梗塞。

関連するトピック