サルコイドーシスにおける臓器別病変

臓器

推定頻度

備考

> 90%

肺胞中隔ならびに細気管支および気管支の壁に肉芽腫を形成し,びまん性肺疾患を引き起こす;肺動脈および肺静脈も侵される

しばしば無症候性

多くの患者では自然に消失するが,進行性の肺機能不全を引き起こすこともあり,その結果,身体機能制限,呼吸不全,およびまれに死に至ることもある

肺リンパ系

90%

胸部X線で肺門部または縦隔病変が偶然見つかる場合がほとんどである;その他,末梢または頸部に圧痛を伴わないリンパ節腫脹がみられる

50~80%

ほとんどの患者において,酵素の上昇を伴うまたは伴わない無症候性の疾患である

ときに潜行性または急性のミオパチーがみられ,筋力低下を伴う

40~75%

通常無症候性

肝機能検査値は軽度上昇し,造影CTで高吸収病変として出現

まれに,臨床的に重大な胆汁うっ滞または肝硬変がみられる

肝病変のみのサルコイドーシスである場合,サルコイドーシスと肉芽腫性肝炎との区別ははっきりしない

関節

25~50%

足関節,膝関節,手関節,および肘関節の関節炎(最も多い)

Jaccoud変形または指炎を伴う慢性関節炎を呈することがある

Löfgren症候群(急性多関節炎,結節性紅斑,および肺門リンパ節腫脹の三徴)

血液

< 5~30%

リンパ球減少

慢性疾患に伴う貧血

肉芽腫が骨髄に浸潤することで貧血が生じ,ときに汎血球減少を起こす

Splenic sequestration(脾臓での血球の滞溜)は血小板減少の原因となる

白血球減少

皮膚

25%

結節性紅斑

  • 下肢前面の赤く,硬結し,圧痛のある結節

  • 欧州人,プエルトリコ人,およびメキシコ人により多くみられる

  • 通常1~2カ月以内に軽快する

  • 周囲の関節にしばしば炎症がみられる(Löfgren症候群)

  • 予後良好の徴候である可能性がある

サルコイドーシスに特徴的な肉芽腫はみられないため,結節性紅斑の生検は不要である

よくみられる皮膚病変:

  • 小斑点

  • 斑状皮疹および丘疹

  • 皮下結節

  • 色素減少

  • 色素沈着

凍瘡状狼瘡(びまん浸潤型皮膚サルコイドーシス):

  • 鼻,頬,口唇,および耳介に生じる紫色の局面

  • アフリカ系アメリカ人およびプエルトリコ人により多くみられる

  • しばしば肺線維症と関連する

  • 予後不良の徴候である

25%

ぶどう膜炎(最も多い)は,霧視,羞明,および流涙を起こす

失明に至ることもある

多くの患者では自然に消失する

結膜炎,虹彩毛様体炎,脈絡網膜炎,涙嚢炎,涙腺への浸潤によるドライアイ,視神経炎,緑内障,または白内障を起こすことがある

眼病変はアフリカ系アメリカ人および日本人を祖先に持つ人々に多い

疾患早期発見のため毎年のスクリーニングが適応となる

精神

10%

抑うつはよくみられるが,サルコイドーシスの初発症状であるか長引く疾患の経過および頻回の再発に対する反応であるかは不明である

10%

無症候性高カルシウム尿症(最も多い)

間質性腎炎

腎結石症および腎石灰化症により慢性腎臓病を生じ,一部の患者では腎代替療法(透析または移植)が必要となる

10%

通常無症候性

左上腹部痛および血小板減少を呈するか,X線またはCTで偶然発見される

神経

< 10%

脳神経障害,特に第7脳神経(顔面神経麻痺を起こす)または第8脳神経(難聴を起こす)の障害

視神経障害および末梢神経障害(よくみられる)

どの脳神経も侵される可能性がある

中枢神経系の神経障害,結節性病変またはびまん性の髄膜の炎症を伴い典型的には小脳および脳幹に生じる

中枢性尿崩症,過食および肥満,ならびに体温調節能力および性欲の変化

副鼻腔

< 10%

急性および慢性の副鼻腔粘膜の肉芽腫性炎症がみられ,アレルギー性および感染性の一般的な副鼻腔炎の症状と区別がつかない

生検で診断を確定する

凍瘡状狼瘡(びまん浸潤型皮膚サルコイドーシス)のある患者でより頻度が高い

5%

伝導障害および不整脈(最も多い),ときに突然死を引き起こす

拘束型心筋症(原発性)または肺高血圧症(続発性)による心不全

一過性の乳頭筋機能不全および心膜炎(まれ)

日本人でより頻度が高く,心筋症は日本人におけるサルコイドーシス関連死の最多の原因である

5%

溶骨性または嚢胞性病変

骨減少症

口腔

< 5%

無症候性の耳下腺腫脹(最も多い)

口腔乾燥症を伴う耳下腺炎

ぶどう膜炎,両側耳下腺腫脹,顔面麻痺,および慢性発熱を特徴とするHeerfordt症候群(ぶどう膜耳下腺熱)

口腔内凍瘡状狼瘡(びまん浸潤型皮膚サルコイドーシス)では,硬口蓋の変形ならびに,頬,舌,および歯肉病変を来しうる

胃または腸管

まれ

まれに胃肉芽腫

まれに腸病変

腹痛を引き起すことがある腸間膜リンパ節腫脹

内分泌

まれ

視床下部および下垂体茎への浸潤は,汎下垂体機能低下症を起こす可能性がある

機能障害を伴わない甲状腺浸潤を引き起こすことがある

高カルシウム血症による続発性副甲状腺機能低下症

胸膜

まれ

リンパ球を含む滲出性胸水が通常両側性に生じる

生殖器

まれ

子宮内膜,卵巣,精巣上体,および精巣の病変に関する症例報告がある

妊孕性への影響はない

妊娠中に軽快し,分娩後に再発することがある