上衣腫は,脳室系に生じる増殖の遅い中枢神経系腫瘍である。診断はMRIおよび生検に基づく。治療は手術および放射線療法のほか,ときに化学療法を併用して行う。
上衣腫は,小児の中枢神経系腫瘍で3番目に頻度が高く(星細胞腫および髄芽腫に次ぐ),小児脳腫瘍の10%を占める(1)。診断時の平均年齢は6歳であるが,上衣腫の約30%は3歳未満の小児に発生する。
上衣腫は,脳室系の上衣層を起源とする腫瘍であり,テント上領域,後頭蓋窩,または脊髄に発生する可能性がある。上衣腫は通常悪性である。
小児では,上衣腫の発生部位は後頭蓋窩が最も多く,次いでテント上領域が多く,脊髄は最も少ない(全症例の最大10%)。対照的に,成人では上衣腫の大半(60%超)が脊髄に発生する(2)。
参考文献
1.Ostrom QT, Price M, Neff C, et al: CBTRUS statistical report: Primary brain and other central nervous system tumors diagnosed in the United States in 2015-2019. Neuro Oncol 24(Suppl 5):v1–v95, 2022.doi: 10.1093/neuonc/noac202
2.McGuire CS, Sainani KL, Fisher PG: Incidence patterns for ependymoma: A surveillance, epidemiology, and end results study. J Neurosurg 110(4):725–729, 2009.doi: 10.3171/2008.9.JNS08117
上衣腫の症状と徴候
最初の臨床像は腫瘍の位置に依存する。
テント上上衣腫の症状としては,人格または集中力の変化,頭痛,痙攣発作,局所神経脱落症状などがある。
後頭蓋窩腫瘍では,症状は典型的には頭蓋内圧亢進に関連したものとなる。乳児では発達遅滞,易刺激性,および頭囲の増大で発症することがある。より年長の小児では,典型的には悪心,嘔吐,頭痛,運動失調/平衡障害,および嗜眠で発症する。
脊髄腫瘍では,脊髄圧迫の症状(例,背部痛,尿失禁,便失禁)がみられることがある。
上衣腫の診断
MRI
生検検体または切除腫瘍全体の組織学的評価
上衣腫の診断はMRIに基づく。
確定診断は,初回来院時に生検または理想的には肉眼的全摘出により得た腫瘍組織を用いて行う。
(世界保健機関[World Health Organization]の2021年版の中枢神経系腫瘍分類も参照のこと。)
上衣腫の治療
外科的切除,通常次いで放射線療法
ときに化学療法
外科的切除が重要であり,摘出度が最も重要な予後因子の1つである。
放射線療法は生存率を高めることが示されており,手術後に施行すべきであるが,放射線療法を受けないテント上上衣腫患者のごく一部は手術単独で治癒する可能性がある。
化学療法は生存率を改善することが明らかに示されているわけではないが,一部の患児では,肉眼的全摘出または二次手術前に腫瘍を縮小させるために使用される場合がある。
上衣腫の予後
生存率は年齢と腫瘍をどれだけ切除できたかに依存する:
生存する小児には,手術または放射線療法の合併症として神経脱落症状が生じるリスクがある。
予後に関する参考文献
1.Cage TA, Clark AJ, Aranda D, et al: A systematic review of treatment outcomes in pediatric patients with intracranial ependymomas. J Neurosurg Pediatr 11(6):673–681, 2013.doi: 10.3171/2013.2.PEDS12345
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
World Health Organization (WHO): The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: A summary