癒着胎盤

(癒着胎盤スペクトラム)

執筆者:Julie S. Moldenhauer, MD, Children's Hospital of Philadelphia
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2024年 1月 | 修正済み 2024年 3月
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癒着胎盤は異常に付着した胎盤であり,胎盤の娩出が遅延する原因となる。胎盤機能は正常であるが,トロホブラストが子宮内膜と子宮筋層の間の正常境界(Nitabuch layer)を超えて浸潤する。これらの症例では,細心の注意を払って行わなければ,胎盤の用手剥離により大量の分娩後異常出血が起こる。出生前の診断は超音波検査による。治療は通常,帝王切開とそれに続く子宮摘出術(cesarean hysterectomy)である。

癒着胎盤では,正常時のように胎盤絨毛が脱落膜細胞内にとどまらず,子宮筋層に付着する。

癒着胎盤(placenta accreta spectrum:PAS)にはさらに以下の2つの亜型がある(1):

  • 嵌入胎盤:絨毛の子宮筋層への侵入

  • 穿通胎盤:絨毛の子宮漿膜面への進入または貫通

これら3つの亜型はいずれも同様の合併症を引き起こす。

総論の参考文献

  1. 1.American College of Obstetricians and Gynecologists; Society for Maternal-Fetal Medicine: Obstetric Care Consensus No. 7: Placenta Accreta Spectrum. Obstet Gynecol 132(6):e259-e275, 2018.doi:10.1097/AOG.0000000000002983

癒着胎盤の病因

癒着胎盤の主な危険因子は以下のものである:

米国では,帝王切開の割合が上昇しており,癒着胎盤の発生率も上昇している。退院に関するある大規模な研究の報告によると,1970年代には分娩2510件当たり1件,1980年代には4027件当たり1件,1982年から2002年には533件当たり1件の割合で癒着胎盤が発生した(1)。臨床データベースを用いたある研究では,1998年から2011年の間に分娩272件当たり1件の割合で癒着胎盤が発生したと報告した(2)。

癒着胎盤は,現在の妊娠で前置胎盤を有しており,帝王切開の既往がある女性で最も高頻度に発生する。前置胎盤を伴う妊娠では,これまでの帝王切開の回数が多いほど癒着胎盤のリスクが高くなる(3):

  • 帝王切開の既往なしの場合,3%

  • 帝王切開の既往が1回の場合,11%

  • 帝王切開の既往が2回の場合,40%

  • 帝王切開の既往が3回の場合,61%

  • 帝王切開の既往が4回の場合,67%

その他の危険因子としては以下のものがある:

  • 母体年齢35歳以上

  • 多産(経産回数が増えるに従いリスクが上昇する)

  • 粘膜下筋腫

  • 子宮筋腫核出術を含む子宮手術の既往(帝王切開を除く)

  • アッシャーマン症候群などの子宮内膜病変

病因論に関する参考文献

  1. 1.Wu S, Kocherginsky M, Hibbard JU: Abnormal placentation: twenty-year analysis. Am J Obstet Gynecol 192(5):1458-1461, 2005.doi:10.1016/j.ajog.2004.12.074

  2. 2.Mogos MF, Salemi JL, Ashley M, et al: Recent trends in placenta accreta in the United States and its impact on maternal–fetal morbidity and healthcare-associated costs, 1998–2011.J Matern Fetal Neonatal Med 29 (7):1077–1082, 2016, 2016.doi: 10.3109/14767058.2015.1034103

  3. 3.Silver RM, Landon MB, Rouse DJ, et al: Maternal morbidity associated with multiple repeat cesarean deliveries. Obstet Gynecol 107(6):1226-1232, 2006.doi:10.1097/01.AOG.0000219750.79480.84

癒着胎盤の症状と徴候

出血はごく少量またはないこともあり,胎盤が胎児の分娩後30分以内に娩出されなければ,しばしば癒着胎盤が疑われる。通常,胎児分娩後の胎盤用手剥離中に性器出血が多量となる。

癒着胎盤の診断

  • リスクのある女性に対して超音波検査

リスクのある女性では,超音波検査(経腟または経腹)により子宮と胎盤の境界を完全に評価することが必要である;マーカーの定義に関するコンセンサスが公表されている。診断が不確かな場合は,超音波検査を定期的に繰り返すことができ,妊娠20~24週で開始する(1)。Bモード(グレースケール)超音波検査が確定的でなければ,MRIまたはドプラ血流検査が役立つことがある。

分娩中,以下の場合には癒着胎盤が疑われる:

  • 児の分娩から30分以内に胎盤が娩出されない。

  • 用手剥離を試みても剥離面が得られない。

  • 胎盤の牽引で大量の出血が起こる。

癒着胎盤が疑われる場合は,大量の出血に備えた上での開腹が必要となる。

診断に関する参考文献

  1. 1.Shainker SA, Coleman B, Timor-Tritsch IE, et al: Special Report of the Society for Maternal-Fetal Medicine Placenta Accreta Spectrum Ultrasound Marker Task Force: Consensus on definition of markers and approach to the ultrasound examination in pregnancies at risk for placenta accreta spectrum [published correction appears in Am J Obstet Gynecol 2021 Jul;225(1):91]. Am J Obstet Gynecol 224(1):B2-B14, 2021.doi:10.1016/j.ajog.2020.09.001

癒着胎盤の治療

  • 帝王切開とそれに続く子宮摘出術(cesarean hysterectomy)

癒着胎盤が疑われる場合,医師は帝王切開とそれに続く子宮摘出術の経験が豊富な骨盤外科医のいるセンターへの女性の紹介を考慮すべきである。

癒着胎盤の疑いが強い場合は,計画的な帝王切開が最善の治療選択肢である。通常,34週~35週6日で帝王切開とそれに続く子宮摘出術を施行する;このアプローチは母体と胎児の転帰に最善のバランスをもたらす傾向がある。

帝王切開とそれに続く子宮摘出術を施行する場合,子宮底部切開を行い,分娩後直ちに臍帯をクランプすれば失血を最小限にするのに役立つ。子宮摘出の術中は,胎盤はその場においたままとする。

まれに(例,癒着胎盤が限局性,底部,または後方である場合),医師は子宮の温存を試みることがあるが,急性出血がみられない場合に限る。例えば子宮を残し,胎盤の吸収を促進するために高用量メトトレキサートを投与することができる。子宮動脈塞栓,動脈結紮およびバルーンタンポナーデもときに用いられる。

要点

  • 米国では,癒着胎盤の頻度は増えてきており,前置胎盤を有し,以前の妊娠で帝王切開を行った女性に最も頻繁に起こる。

  • 35歳以上または経産(特に以前に前置胎盤を認める場合や帝王切開の既往がある場合)の女性,粘膜下筋腫や子宮内膜病変のある女性,または子宮手術の既往がある女性では,スクリーニングのための定期的な超音波検査を考慮する。

  • 児の分娩から30分以内に胎盤が娩出されない,用手剥離を試みても剥離面が得られない,または胎盤の牽引が大量の出血を引き起こす場合は癒着胎盤を疑う。

  • 癒着胎盤と診断されたら,妊婦が反対しない限り34週~35週6日で帝王切開とそれに続く子宮摘出術を行う。

  • 癒着胎盤の管理に精通したセンターへの紹介を考慮する。

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